温泉ライター、小暮淳の公式ブログです。雑誌や新聞では書けなかったこぼれ話や講演会、セミナーなどのイベント情報および日常をつれづれなるままに公表しています。
プロフィール
小暮 淳
小暮 淳
こぐれ じゅん



1958年、群馬県前橋市生まれ。

群馬県内のタウン誌、生活情報誌、フリーペーパー等の編集長を経て、現在はフリーライター。

温泉の魅力に取りつかれ、取材を続けながら群馬県内の温泉地をめぐる。特に一軒宿や小さな温泉地を中心に訪ね、新聞や雑誌にエッセーやコラムを執筆中。群馬の温泉のPRを兼ねて、セミナーや講演活動も行っている。

群馬県温泉アドバイザー「フォローアップ研修会」講師(平成19年度)。

長野県温泉協会「研修会」講師(平成20年度)

NHK文化センター前橋教室「野外温泉講座」講師(平成21年度~現在)
NHK-FM前橋放送局「群馬は温泉パラダイス」パーソナリティー(平成23年度)

前橋カルチャーセンター「小暮淳と行く 湯けむり散歩」講師(平成22、24年度)

群馬テレビ「ニュースジャスト6」コメンテーター(平成24年度~27年)
群馬テレビ「ぐんまトリビア図鑑」スーパーバイザー(平成27年度~現在)

NPO法人「湯治乃邑(くに)」代表理事
群馬のブログポータルサイト「グンブロ」顧問
みなかみ温泉大使
中之条町観光大使
老神温泉大使
伊香保温泉大使
四万温泉大使



著書に『ぐんまの源泉一軒宿』 『群馬の小さな温泉』 『あなたにも教えたい 四万温泉』 『みなかみ18湯〔上〕』 『みなかみ18湯〔下〕』 『新ぐんまの源泉一軒宿』 『尾瀬の里湯~老神片品11温泉』 『西上州の薬湯』『金銀名湯 伊香保温泉』 『ぐんまの里山 てくてく歩き』 『上毛カルテ』(以上、上毛新聞社)、『ぐんま謎学の旅~民話と伝説の舞台』(ちいきしんぶん)、『ヨー!サイゴン』(でくの房)、絵本『誕生日の夜』(よろずかわら版)などがある。

2018年10月03日

霧積温泉 「金湯館」⑧


 「群馬県で一番の秘湯は、どこですか?」
 と問われれば、僕は迷わず霧積温泉と答えます。
 今日は1年ぶりに雑誌の取材で、霧積温泉の一軒宿 「金湯館」 に行って来ました。

 金湯館の創業は、明治17年(1884)。
 当時は5、6軒の旅館がありました。
 さらに周辺には、別荘が約50棟も立ち並ぶ避暑地だったのです。

 ところが明治43年(1910)、未曾有の悲劇が温泉地を襲いました。
 この年の大洪水で、山津波が一帯を襲い、金湯館ただ一軒が難を逃れました。

 昭和30年代になり、1キロ下がった場所で親族が旅館を開業しましたが、平成23年に廃業。
 金湯館は、また一軒宿になってしまいました。


 「お世話になります」
 「こちらこそ、ありがとうございます」
 道路のドン詰まり、鼻曲山登山口の駐車場まで、4代目主人の佐藤淳さんが4駆車で迎えにきてくれました。

 時間に余裕のある時は、ここから 「ホイホイ坂」 と呼ばれる山道を約30分かけて歩いて登るのですが、今日は日帰り取材です。
 わがままを言って、車で迎えに来てもらいました。
 だって、ここから先の車道は、一般車両は通行止めの林道です。
 急峻なうえ、ガードレールも無く、対向車とのすれ違いもままなりません。
 これも、“取材” という特権なのです。


 「小暮さんの本、全部売れちゃった。また、送っといて!」
 と、開口一番。
 玄関で、いつも元気な3代目女将の佐藤みどりさんが出迎えてくれました。
 御年、81歳!
 まだまだ現役女将です。

 宿では、霧積温泉が舞台の森村誠一の小説 『人間の証明』(角川文庫) と、拙著 『新ぐんまの源泉一軒宿』(上毛新聞社) が販売されています。
 「どちらも、良く売れるのよ」
 なんて女将に言われて、ベストセラー作家と肩を並べたようで、気分は有頂天!
 そのままのテンションで、浴室まで直行!
 さっそく湯を浴むことに。


 ぬる湯ファン垂涎(すいぜん) の、絶妙な39℃!
 相変わらず絹のような、肌にまとわりつく、なまめかしい湯であります。
 しかも、あっという間に全身泡だらけ!

 アソコの毛といわず、全身の体毛が “真っ白毛” です。
 それを手で払えば、名物 “サンゴの産卵” のはじまり、はじまり~!!
 一斉に、泡の粒が舞い上がります。


 湯上がりには、これまた山の幸たっぷりの名物 「山菜そば」 をすすりながら、女将の話す昔話に耳を傾けていたのであります。
 ご主人との馴れ初めなんて、1度や2度、取材に訪れた新米記者には絶対に聞き出せない、なかなかのレア話ですぞ!

 温泉宿は、通えば通うほどに、奥が深くなっていくのであります。
  


Posted by 小暮 淳 at 22:02Comments(0)温泉地・旅館

2018年08月29日

万座温泉 「日進館」


 標高1,800メートル、通年車で行ける日本最高所の温泉。
 硫黄の含有濃度、日本一。
 標高1,000メートル以上の高地温泉で、唯一の酸性硫黄泉。
 などなど、万座温泉は、われら群馬県民が世界に誇る宝の温泉であります。


 僕が講師を務めるNHK文化センターのカルチャースクール 「名湯・秘湯めぐり講座」 も、今年で10年目を迎えました。
 人気の万座温泉(群馬県吾妻郡嬬恋村) は、季節を替え、宿を替えて、過去に3回、講座で訪れています。
 昨日、訪ねた 「日進館」 は、8年ぶり2回目となります。
 前回は、極寒の1月でした。
 吹雪の露天風呂で、首から上が雪ダルマになりながら湯に入った記憶があります。

 今回は夏。
 残暑厳しい下界を逃げ出して、雲上の別天地へ!
 なんと、気温は18℃です。

 「す、涼しい!」
 バスから降りた受講生たちは、みんな、標高の高さに驚いていました。


 万座温泉といえば、乳白色のにごり湯です。
 しかも硫黄濃度が濃いため、どこにいてもゆで卵が腐ったような独特のにおいにつつまれています。
 でも、その白濁の度合は、源泉によって微妙に異なります。

 「日進館」 は、明治6年創業の老舗旅館です。
 また 「苦湯」 という万座最古の源泉を保有する宿としても、コアな温泉ファンには知られています。
 “日本一の木造建築風呂”を誇る大湯殿 「長寿の湯」 の中に、その苦湯風呂があります。

 が、熱い!
 「先生、5秒しか沈めませんでしたよ」
 「私は足だけでした」
 と受講生らは、完敗の様子。

 「では講師が、お手本を見せましょう」
 と、淡いエメラルドグリーン色した半透明な湯に、そろりそろりと足を入れました。
 「あ、あ、熱い!」
 でも、歳はとっても男の子であります。
 講師のプライドにかけても、エーーーイッ!と肩まで沈みましたが、早々に湯舟から飛び出てしまいました。

 「先生、こちらの湯が、ちょうど良いですよ」
 と呼ばれ、半露天の 「姥湯」 へ。
 白濁の度合は、この湯が一番濃いようです。
 湯は熱からずぬるからず、ちょうどいい!

 その後、源泉の異なる6つの湯を堪能しました。


 「では、カンパイ!」
 「やっぱ、湯上がりのビールは最高ですね」
 「しかも天然クーラーの中で飲むとは、贅沢です」

 午後は、天空の露天風呂を満喫するとして、しばし、高原の風を感じながら食膳を囲み、団らんの時を楽しみました。


 受講生のみなさん、次回は県外へ遠出をしますよ。
 残暑の厳しいおり、お体には十分気をつけてくださいね。
 また来月、元気に会いましょう!
  


Posted by 小暮 淳 at 12:20Comments(0)温泉地・旅館

2018年08月04日

奈女沢温泉 「釈迦の霊泉」④


 秘湯ファンに朗報です。

 今週、奈女沢温泉(群馬県利根郡みなかみ町) の一軒宿、「釈迦の霊泉」 の2代目女将、今井経子さんから直々に電話がありました。
 「長い間、ご心配をおかけしましたが、ようやく再開いたしました。ぜひ、またお越しください」 と。


 コアな温泉ファンは、ご存知かと思いますが、2015年の夏、突如、土砂災害に遭い、旅館は余儀なく休館をしていました。
 しばらくは 「御神水」 と呼ばれる源泉水の販売のみを行っていましたが、復旧が進み、昨年の暮れには、日帰り入浴と素泊まりのプレオープンに、こぎ着きました。

 あれから丸3年。
 電話の中の女将さんの声も嬉しそうです。
 「良かったですね。全国のファンが喜んでいますよ」
 そう言葉を返しました。


 「釈迦の霊泉」 といえば、知る人ぞ知る “万病に効く湯治場”。
 全国から難病に苦しむ患者たちが、ワラにもすがる思いでたどり着く 「奇湯」 です。
 奇湯とは、もちろん僕の造語ですが、それだけ数々の奇跡を起こす湯として知られています。

 僕自身、大変奇妙な体験をいくつもしています。
 詳しくは、拙著 『みなかみ18湯(下)』 や 『新ぐんまの源泉一軒宿』 をお読みください。


 入って残そう! 群馬の温泉
 ぜひ、奇跡の復活をした天下の“奇湯” に、足を運んでください。
   


Posted by 小暮 淳 at 13:58Comments(2)温泉地・旅館

2018年08月02日

梨木温泉 「梨木館」④


 ♪ 梨木よいとこ 赤城のふもと 雲の中から お湯が湧く

 西条八十作詞による 『梨木(なしぎ)小唄』 の一節です。
 作曲は群馬県伊勢崎市出身の作曲家、町田嘉章。
 昭和のはじめ、梨木の湯に惚れ込んだ嘉章は、友人の西条八十と訪れて、この歌を作りました。


 今日は雑誌の取材で、赤城山南面の山ふところに湧く、秘湯の一軒宿 「梨木館」 に行ってきました。
 最後に訪れたのは2013年の12月、拙著 『新ぐんまの源泉一軒宿』 の取材ですから、約5年ぶりとなります。

 梨木温泉といえば?
 そう! 鉄分の多い “赤い湯” であります。
 なぜか、赤城山の南麓には、赤い湯が湧く温泉が多いのです。
 ※(詳しくは、当ブログ2013年12月25日 「梨木温泉 梨木館③」 を参照)

 今日の湯も、レンガの粉を溶かしたような濃厚なオレンジ色をしていました。
 内風呂と露天風呂、両方の湯に入りましたが、やはり歴史の古い内風呂は、相変わらず見事です。

 何が見事かって?
 はい、塩分や鉄分、カルシウムなど、温泉に溶け込んでいる成分が多いため、浴槽の縁はもちろんのこと、洗い場の床までもが、析出物が堆積して、まるで鍾乳洞の千枚皿のように幾何学模様を描いているのです。
 まさに自然の造形によるアート!
 開湯1200年の時の重さを感じる湯であります。


 6代目主人の深澤幸司さんによれば、「にごり湯は汚い」 と敬遠された時代もあったといいます。
 でも代々、かたくなに 「にごり湯じゃなけりゃ、温泉じゃねぇ!」 と守り続けてきた唯一無二の源泉です。

 後世へ大切に残したい、群馬の温泉遺産の1つだと思います。
  


Posted by 小暮 淳 at 19:06Comments(0)温泉地・旅館

2018年07月25日

上の原温泉 「水上高原ホテル200」④


 暑い! あつい!! アツーーーイ!!!!
 こんな体温より暑い街には、いられな~い!

 そうだ、高原へ行こう!!


 ということで、昨日は標高996メートル、白樺林に囲まれた別天の温泉地へ行ってきました。
 上の原温泉(群馬県利根郡みなかみ町藤原) のリゾートホテル 「水上高原ホテル200」。
 “200” と表記して、「トゥーハンドレッド」 と読みます。

 なんで “200” かって?
 敷地面積が、200万坪あるからなんです。
 “200万坪” といわれても、ピンとこないですよね。
 だから以前、取材で訪ねた時に総支配人に訊いたことがありました。

 彼、いわく
 「芦ノ湖と同じ広さです」
 「?」
 「東京ドームだと164個分です」
 「?」
 「う~ん、そうですね、江ノ島10個分というのでは」
 「ああ、なるほど」
 と返事をしたところで、やっぱりイメージは湧いてきません。
 ま、いずれにせよ、ケタ違いの広さであることには間違いありません。
 冬はスキー場、夏はゴルフやテニス、トレッキングをはじめとするアウトドアスポーツが楽しめます。


 今回は、僕が講師を務める野外温泉講座で訪れました。
 「す、涼し~い!」
 「気持ちい~い!」
 バスから降りた受講生たちは、高原の空気を全身に浴びながら、口々に感想を言い出しました。

 でも、ロビー前の寒暖計を見ると、29℃もあるんです。
 たぶん湿度が低いんでしょうね。
 それと、白樺林を抜けて来る高原の風。
 とっても爽やかであります。


 ここ上の原温泉は、リゾート地として有名ですが、実は、温泉マニアには知る人ぞ知る名湯なのであります。
 アルカリ度を示すpH値は、なんと! 9.26。
 アルカリ性の単純温泉と単純硫黄泉の2本の源泉が湧出しています。

 その浴感は、まさにトロトロのヌルヌルであります。
 湯上がりは、肌がツルツルのスベスベになることから別名 「ツルスベの湯」 なんて呼ばれています。
 「美人の湯」 「美肌の湯」 と呼ばれる温泉が多い、みなかみ地区ですが、その中でもダントツに存在感のある温泉です。


 「ああ、帰りたくなーい!」
 受講生らの願いも空しく、バスは白樺林を抜けて、高原を下り、灼熱の下界へ舞い戻ったのでありました。
   


Posted by 小暮 淳 at 11:45Comments(2)温泉地・旅館

2018年07月22日

四万温泉 「やまの旅館」


 <レトロ温泉街 懐メロに沸く>

 一夜明けた今日、上毛新聞に昨日、四万温泉(群馬県吾妻郡中之条町) で開催された 『レトロ通りの懐かしライブ』 の記事が載りました。

 <KUWAバンは四万温泉がテーマの 「四万のうた」 や県内各地の温泉名が登場する 「温泉パラダイス」 を披露した。> と、僕らのバンドのことも書かれていました。


 午後1時、メンバーと楽器を車に積み込み、出発したときの前橋の気温は38℃!
 渋川~中之条と北に向かうにつれ、外気温は1℃、また1℃と下がります。
 そして、山と清流に囲まれた温泉街の駐車場に着いたときの気温は、30℃!

 「8℃も違う!」
 と喜んだものの、それでも30℃あるわけですから、楽器の搬入やライブ中は、汗だくとなり、常にキーンと冷えた缶ビールが手放せません。


 「お疲れさまでした!」
 「今年もライブ、大成功でしたね」
 「カンパ~イ!!」

 夕方、5時。
 陽が少し西に傾き出した清流沿いの宿に、片づけを終えたメンバーが集まり、“打ち上げ” 前の “仮祝い” が始まりました。
 温泉協会がメンバーのために用意してくださった宿は、温泉街の目抜き通り 「桐の木平商店街」 にある 「やまの旅館」 であります。

 「やまの旅館」 といえば、四万温泉ファンの中でも “四万通” が通うレトロ旅館です。
 「カメラ、フィルム 山野」 の看板が、かつて、ここが温泉街唯一の写真館であったことを伝えています。

 そして、見逃せないのが 「内湯 やまの旅館」 の文字です。
 “内湯” とは、“外湯” に対して使われていた言葉です。
 「うちは共同湯に行かなくても宿の中に風呂があります」 という、古き良き湯治場風情の名残なのであります。


 「さ、ひと風呂浴びて、汗を流してから出かけますか?」

 平均年齢56歳のオジサンたち6人が、一同に浴室へ向かいました。
 「くー、たまらん!」
 「いい湯だ!」
 「四万の病を癒やす湯ですぞ。今日の疲れなんて、一浴しただけで取れちまいますよ」

 そしてオジサンたちは、夜の温泉街へと消えて行ったのであります。
   


Posted by 小暮 淳 at 19:18Comments(4)温泉地・旅館

2018年06月21日

御裳裾の湯を訪ねて


 谷川温泉(群馬県みなかみ町) には、こんな “いで湯発見伝説” があります。

 その昔、谷川の川岸に夜な夜な、ルリ色の光が立つようになりました。
 村人たちは不思議に思い、ある夜、ひそかに近寄ってみると、輝くばかりの美しい娘が流れに身を清めていました。
 村人が近づくと、光も娘も消えうせ、岩間から温泉が湧き出たといいます。
 この湯を浴むと、疲れも病もたちどころに癒えたため、村人たちは 「これは菩薩のお告げ」と喜び、姫が裾を洗ったら湯に変じたことから 「御裳裾(みもすそ) の湯」 と名づけられました。


 昨日は朝から雑誌の取材で、谷川温泉へ行って来ました。
 訪ねたのは3ヶ所。
 日帰り温泉施設の 「湯テルメ・谷川」 と 「旅館たにがわ」、「金盛館せゝらぎ」 です。

 「湯テルメ・谷川」 には、3種類の異なる源泉風呂があるのをご存じですか?
 単純温泉とアルカリ性単純温泉とカルシウム・ナトリウム-硫酸塩・塩化物温泉です。
 それぞれに浴槽が異なり、加水や加温なしにかけ流されています(一部、循環併用)。
 露天風呂のみ混合泉を加温しています。

 都会の入浴施設では味わえない、ちょっと贅沢な日帰り施設なのです。


 「旅館たにがわ」 では、文豪・太宰治のギャラリーを取材。
 くしくも一昨日が、命日の 「桜桃忌」 でした。
 宿前に立つ記念碑には、献花がされていました。

 「金盛館せゝらぎ」 は、歌人・若山牧水ゆかりの宿です。
 大正7年(1918) 11月16日から3日間、投宿しています。
 牧水は滞在中に、妻に宛て、こんな手紙を書いています。
 <夕方、山路を越えて、ここに着いた。名のごとく、谷川の岸。通された部屋は、その谷の瀬の上に、突き出していた。>


 文人たちも浴んだであろう、御裳裾の湯。
 谷川の清流のように澄んだ、実に美しい湯であります。

 伝説の美女に、我も会いたし……

 雨音と瀬音を聴きながら、湯の中で妄想を膨らませていたのでした。
  


Posted by 小暮 淳 at 14:39Comments(0)温泉地・旅館

2018年06月10日

相間川温泉 「ふれあい館」⑤


 楽しい時間というのは、あっという間に過ぎ去って行くものであります。
 それでも、たまには、こんな日がないと……
 昨日は、自分にご褒美をあげました。

 取材でも、仕事でもない、純粋に温泉に入り、気の置けない仲間たちと酒を酌み交わしてきました。


 相間川温泉(高崎市倉渕町) の一軒宿、「ふれあい館」。
 拙著 『西上州の薬湯』(上毛新聞社) の表紙となった温泉宿です。
 幾度となく取材で泊まっていますが、今まではすべて宿泊施設のある本館でした。
 今回は、併設されている市民農園 「クラインガルテン」 の中にあるログハウスに泊まってきました。

 プロジェクトK主催による、バーベキュー大会です。
 僕は、5年ぶりに参加しました。
 というのも、毎年この時期の土日に開催されていますが、週末は親の介護のため、泣く泣く欠席を続けていたのです。
 でも今年は幸か不幸か、オフクロはリハビリ施設に入院中だし、運良くオヤジもショートステイが取れたので、久しぶりの参加となりました。


 「プロジェクトK」 とは?
 読者なら、ご存じだと思いますが、群馬県を中心に県内外で活動するフリーランスのクリエーター軍団です。
 ライターやカメラマン、デザイナー、イラストレーターら約20人で構成されています。
 ま、ひと言で言えば、組織に属せないアウトローの集まりです。

 だから気心も知れています。
 苦労話も共有し合えます
 まさに、友人・知人というよりは、“仲間” なのであります。


 午後3時、バンガロー前のバーベキュー会場に、9人の男女が集まりました。
 少し遅れた僕が着いた頃には、炭火をおこし、鉄板の上では、上質の牛肉が音を立てていました。
 「あれ、みんな早いな~」
 といえば、「私なんか、2時半に来ちゃいましたから~」 とイラストレーターの I 女子。
 すでに、紙コップでワインを飲んでいます。

 平均年齢は、たぶん、50代半ばだと思います。
 内訳は、60代3人、50代4人、40代1人、20代1人。
 20代のF君(カメラマン) は、父親の後を継いでメンバーになりました。


 午後7時、バーベキュー会場を片付けて、いったんバンガローに戻り、各々タオル片手に浴室棟へ。
 今日も今日とて、黄金色に光り輝く、濃厚な湯をたたえています。
 「湯が茶色いのは、鉄分ですか?」
 と、建築家のY君。
 「ですね。それと、塩分が濃厚だから、ちょっと、なめてみて」
 「本当だ、しょっぺ~!」

 さらに油分が多く、ほのかに重油のような臭いも漂います。
 まさに、西上州(群馬県西部) を代表する薬湯であります。
 でも、長湯は禁物です!
 塩分と鉄分の多い湯は、体感温度が低く感じられるという特徴があります。
 ついつい長湯が過ぎて、湯あたりをする浴客が後を絶たない温泉なのです。


 「夜風が気持ちいいね」
 とカメラマンのS君が、森の中の小道を歩きながら、しみじみと言いました。
 彼は、僕の50年来の友人です。
 誕生日が来て、ひと足先に還暦を迎えました。

 「淳ちゃん、ダバダ飲んでよ、ダバダ!」
 「ダバダ? なんだい、そりゃ?」
 「四国の焼酎だよ。おいしいんだから、飲んでよ!」

 「きーーー、効くねぇ~~!! でも、うまい!」
 「でしょ、でしょ!」
 ロックでいただく焼酎に、気も大きくなり、昔見ていた夢のつづきが饒舌に語られ出したのであります。


 良き湯、良き酒、そして我に、良き仲間あり。
   


Posted by 小暮 淳 at 12:36Comments(2)温泉地・旅館

2018年06月02日

老神温泉 「伍楼閣」②


 最近は、なんだか老神(おいがみ) 温泉づいています。
 昨日も老神温泉(群馬県沼田市) を訪ね、「伍楼閣(ごろうかく)」 に1泊してきました。

 とはいっても、取材ではありません。
 かといって、温泉大使としての公務でもありません。
 では、仕事ではないのか?
 と問われれば、微妙なのであります。
 しいていえば、“ご褒美” のようなものです。


 2016年4月から上毛新聞社が発行している 『ぐんまの源泉パスポート』。
 ご存知ですか?
 群馬県内の温泉旅館や日帰り入浴施設の割引クーポンが付いている本です。
 おかげさまで発売以来、大好評でして、昨年11月には第2弾が発売になりました。

 96温泉157施設が掲載された <2018-19年版> であります。

 で、この最新版が、わずか6ヶ月で、早くも増刷されました!
 ということで、「増刷祝い」 に温泉宿泊が “ご褒美” となりました。
 僕も末席ながら、コラム執筆と監修をやらせていただいたので、参加してまいりました。


 その会場となったのが、「伍楼閣」 であります。
 館内には、宿名にちなんで5つの浴場があります。
 混浴露天風呂が2つ、男女別の内風呂が2つ、そして貸切露天風呂が1つ。

 かつて僕は、“五湯めぐり” を制覇したことがありますが、今回は取材ではありませんので、無理をせず、ゆっくりと湯を楽しむことにしました。

 まずは、ぬる湯が味わえる混浴露天風呂 「赤城の湯」 へ。
 新緑を愛でながら、暮れゆく初夏の里山風景を存分に堪能しました。

 ま、宴会前ですから欲を張らずに、一浴で浴衣に着替えて、制作スタッフの待つ広間へ。


 「おかげさまで、増刷になりました。これからもよろしくお願いいます。乾杯!」 
 アートディレクターの発声で、宴が始まりました。

 良き仕事に、良き仲間。
 そして、良き酒と、良き湯があれば、いうこと無し!

 しばらくして、
 「あらためて、日本酒で乾杯!」
 長い長い夜が、始まりました。
  


Posted by 小暮 淳 at 17:57Comments(0)温泉地・旅館

2018年05月25日

猿ヶ京温泉 「千の谷」


 昨日から猿ヶ京温泉(みなかみ町) に、泊まりで行って来ました。
 といっても、取材ではありません。
 今回は、みなかみ温泉大使として、みなかみ町観光協会の定時総会に来賓として出席してきました。
 その会場となったのが、「源泉湯の宿 千の谷」 でした。

 えっ、知りませんか?
 猿ヶ京に、そんな宿はあったっけって?
 実は、最近リニューアルオープンしたホテルなのです。

 その昔は 「ホテルコープシャトウ猿ヶ京」 といっていました。
 後に経営が替わり、「ホテル シャトウ猿ヶ京 咲楽(さくら)」 となりました。
 僕の著書 『みなかみ18湯』 では、「咲楽」 の名で掲載されています。

 今回のリニューアルは、今までとは違い、大改装されました。
 たぶん、以前、訪れたことのある人は、驚かれるでしょうね。
 これが、同じホテルなの?って。

 それもそのはずです。
 今度の経営は、かの “松乃井リゾートグループ” なのであります。
 水上温泉(みなかみ町) の 「松乃井」 や老神温泉(沼田市) の 「紫翠亭(しすいてい)」 と姉妹館になりました。
 だもの、かなり洗練されました。

 僕も久しぶりに訪れて、大変驚きました。
 ロビーに多少面影が残っているものの、それ以外は、まったく別のホテルに来たようです。
 部屋もきれいにリニューアルされ、清潔感あふれるものでした。


 総会が終われば、お待ちかねの懇親会です。
 例年だと、この席で僕はバンドメンバーとライブをやるのですが……
 まあ、なんといいますか、みなさんもご存知のように、みなかみ町は、なにかといろいろありまして、今回は、なにげに自粛ムードが漂っていたのであります。
 ということで、今年は余興は中止となりました。

 懇親会の後は二次会がお決まりですが、やっぱり温泉ライターとしては、一刻も早く湯に浸かりたいのであります。
 ということで深酒する前に、一浴することにしました。


 まずは1階に新設された 「名月の湯」 へ。
 これは、広い!
 温度の異なる浴槽のほか、浅い寝湯や深い立ち湯まであるのです。
 露天風呂は、さほど大きくありませんが、まさに名前どおりの “月見風呂” が楽しめました。

 一夜明けて、朝風呂に訪れたのは3階にある 「星あかりの湯」。
 朝だったので、“星見風呂” というわけにはいきませんでしたが、そのぶん、まばゆいばかりの新緑を愛でながら、存分に湯を楽しんでまいりました。

 ぜひ、みなさんも新しくなった 「千の谷」 で、リゾート気分を味わってください。
    


Posted by 小暮 淳 at 12:32Comments(0)温泉地・旅館

2018年05月23日

沢渡温泉 「まるほん旅館」⑥


 <しんしんと雪降る宿で福田おやじとサトボオと酒を飲むと、深夜〇時になってしまった。サトボオは純朴なマジメ人間で、まだ発展途上の道楽者予備軍である。福田おやじは「これで、まるほん旅館は安泰です」と感慨深げだった。>
 (嵐山光三郎著『日本百名町』光文社知恵の森文庫 より)


 今日は雑誌の取材で、中之条町の沢渡(さわたり)温泉へ行って来ました。
 思えば、昨年6月のNHKBSプレミアムの旅番組のロケ以来ですから、ちょうど1年ぶりになります。

 午前8時、共同浴場に着くと、沢渡温泉組合長の林伸二さんが出迎えてくれました。
 「小暮先生が来られるというので、また、こちらを用意しておきました」
 と、沢渡温泉名物の 「きび大福」 を渡されました。

 別に “先生” ではないのですが、中之条町の観光大使をしているからでしょうか、なぜか組合長は僕のことを 「先生」 と呼ぶのです。
 そして会うときは、必ず僕の大好物の 「きび大福」 をくださるのです。


 組合長との雑談と、共同浴場での写真撮影の後、隣接する 「まるほん旅館」 へ。
 温泉ファンなら誰でも知っている創業400年の老舗旅館です。
 そして、作家の嵐山光三郎先生が、著書の中で 「サトボオ」 と呼ぶ16代目主人の福田智さんのいる宿です。

 有名な話ですが、智さんは元銀行員で、湯と歴史と先代の主人に惚れ込んで、脱サラして福田家に養子として入ったという異色の “湯守人” であります。
 その経緯については、嵐山先生や僕の著書をお読みください。


 「まずは、湯をいただいてきます」
 と勝手知った館内を、ドカドカと歩いて、名物の混浴大浴場へ。
 といっても、今日は休館日なので、他に客はいません。
 貸切であります。

 別名、「ひのき張り湯小屋風呂」。
 群馬県内でも3本の指に入る、僕の大好きな湯殿です。
 湯殿もいいが、なによりも湯がいい!

 湯葉のように幅広の湯の花が、ゆらゆらと湯の中をたゆたう姿は、なかなか他の温泉では見られるものではありません。
 隣の共同浴場と同じ源泉なのに、なぜか湯の花のサイズが違うのです。
 (共同浴場の湯の花は、もっと小さくて細かい)

 極楽、極楽!
 やっぱ、ここの湯、好きだわ~!!
 と、声を出さずにはいられない至福感を存分に堪能してきました。


 湯上がりは、サトボウこと智さんとコーヒーをいただきながら、いつもの温泉談義に花を咲かせてきました。
 またしても彼の温泉に対する情熱に触れ、「負けるもんか!俺だって」 という闘志が湧いてきたのであります。

 もっともっと、沢渡温泉の湯を全国の人に知ってほしいものです。
  


Posted by 小暮 淳 at 20:58Comments(0)温泉地・旅館

2018年05月22日

川原湯温泉 「丸木屋旅館」


 昭和27年だったといいますから、66年の歳月が過ぎたことになります。
 のどかな温泉街に、突然、ダム建設の計画が持ち上がった年です。
 いまだに、ダムは完成していません。

 国の方針も中止と再開をくり返し、温泉街をはじめ水没予定地区の住民は、賛成派と反対派に分かれ、確執と翻弄の中で闘い続けて来た66年間でした。
 それでも終結の日が、いよいよ、あと2年と近づいています。
 ダム堤は完成すれば、高さ116メートル、幅290メートル。
 現在、24時間態勢で、コンクリート打設工事が進んでいます。


 「旅館が移転したら、また取材してくださいね」
 と9年前に言ってくださったのは、“旧七軒” と呼ばれる老舗旅館の主人でした。
 その主人の旅館は、まだ新天地には移転していませんが、すでに5軒の宿が営業を再開しています。
 今日、そのうちの1軒、「丸木屋旅館」 へ行って来ました。


 NHK文化カルチャーの野外温泉講座です。
 僕は9年前から、この講座の講師をしています。
 開講した初年度に、講座では旧川原湯温泉を訪ねています。

 「旧川原湯温泉に行ったことある人は、いますか?」
 行きのバスの中で、受講生に声をかけると2名が手を挙げました。
 顔を見れば、初回講座から受講している方でした。


 「うわ~、なんだか温泉地という雰囲気じゃないですね」
 バスを降りた受講生の第一声でした。
 「ですね、まだ道路も工事中だし、宿も商店もまばらです。これからですよ」

 僕は昨年、雑誌の取材で、川原湯温泉協会長の樋田省三さんにインタビューをしました。
 彼いわく、「次世代を担う若い後継者たちが、帰って来ています。私たちは過去を引きずっていますが、彼らには未来しかない。新しい川原湯温泉に期待しています」
 もちろん、僕も期待しています。
 10年後、20年後の川原湯温泉を見てみたいものです。


 現在の温泉街の入り口に建つ、「丸木屋旅館」。
 黒を基調としたモダンな和風旅館です。
 部屋は全6室、家族だけで商うアットホームな宿です。

 なによりも、湯がいい!
 旧温泉地からポンプアップされていますが、源泉の温度が約80度もあるため、加温する必要はありません。
 この時季だと、ちょっと熱いくらいです。

 でも、これが不思議なんです。
 昔から川原湯の湯は、“熱いけれど涼しさを感じる” のであります。
 ま、これは僕の大げさな表現なんですけどね。
 入るときは確かに熱いのです。
 でも肩まで浸かる頃には、もう熱さは感じません。
 「あれ、ちょうどいい湯加減じゃない」
 と、受講生たちも大変驚いていました。


 湯上がりにいただいた料理は、フキとタケノコの煮物、ウドやコシアブラの天ぷらなど、山の幸たっぷりで、ついつい酒も進んでしまいます。
 「先生、最高ですね!」
 「でしょう、いいでしょう!」

 みなさんも、新しくなった川原湯温泉へ、ぜひ足を運んでください。
 今だと、「八ッ場(やんば)ダム現場見学ツアー」 を行っていますよ。
   


Posted by 小暮 淳 at 22:13Comments(0)温泉地・旅館

2018年04月25日

川場温泉 「悠湯里庵」⑤


 <まだ木の香が漂う新しい湯舟に、悠久の時を超えて湧きつづける古湯が、かけ流されている。ややぬるめだが、ツルンとした滑らかな浴感のする湯だ。古くも新しい湯、新しくも古い宿、「新」 と 「古」 が見事に融合している。>
  ( 『群馬の小さな温泉』 より)


 2009年4月、NHK文化センターのカルチャー前橋教室に、全国で唯一の “野外温泉講座” が開講しました。
 前例のない講座の講師を引き受けて、はや9年。
 今月から10年目を迎えました。

 開講当初は、県内在住の受講者で占められていましたが、年々、そのウワサや情報が知れ渡り、現在では県外からの受講生が増えています。
 今年度から新しく受講するOさん(女性) は、東京都からの参加です。
 聞いて驚くなかれ、御年89歳!
 もちろん介助なして、単独での参加です。

 「埼京線と新幹線で来ました」
 と、かくしゃくとしたスピーチに、在講生一同、驚愕であります。

 僕のオフクロは90歳。
 寝たきりのオフクロと比べたら申し訳ありませんが、それでも嫉妬してしまうほどの元気であります。
 一人でどこへでも行けて、大好きな温泉めぐりができるなんて、うらやましい限りです。


 さてさて、記念すべき10年目となる2018年度上期の第1回講座を飾ったのは、川場温泉(群馬県利根郡川場村) の 「悠湯里庵(ゆとりあん)」 であります。
 薬師温泉(群馬県吾妻郡東吾妻町) 「旅籠」 の姉妹館として知られる 「悠湯里庵」 ですが、この講座では8年前のオープン年に訪ねています。
 当時は、かやぶき屋敷の宿泊棟は4棟で客室も全8室でしたが、その後、裏山の斜面に10室の別館 「悠山」 が完成しました。
 今回は、この新しくできた 「悠山」 を訪ねることにしました。

 「悠湯里庵」 といえば 「旅籠」 同様に、かやぶき屋敷の旅館として有名ですが、「旅籠」 との違いは全国でも珍しいアトラクション(?) があることです。
 アトラクションとは?
 宿泊棟へは、無人の電気カートで移動します。
 そして新たに、別館へ行くために作られたのが、モノレールです!


 僕は去年、プレス向けの内覧会に招待され、ひと足先にモノレールを体験しました。
 その時に、「絶対に講座でも来よう! 受講生たちにも、この体験をさせてあげたい」 と思ったのです。

 で、やっと昨日、その夢が叶いました。
 モノレールの定員は10名なので、2班に分かれて乗車。
 急な斜面をグングン登る、その力強さに喚声が上がります。
 振り返れば、本館のかやぶき屋根が、遠ざかっていきます。

 モノレールは、宿泊棟を通過して、頂上の展望台へ。
 眼下には、新緑に萌え出した川場盆地が広がります。
 天気は、あいにくの雨でしたが、かえって霧に煙った幻想的な風景となり、受講生らには大好評でした。

 これから田植えの季節となり、さらに緑豊かな景色を彩ります。
 まさに、ここは日本の原風景!
 僕の大好きな風景です。


 湯は、開湯1200年の歴史をもつ 「弘法の湯」。
 弘法大師(空海) により発見されたといわれる名薬湯です。

 “湯よし、宿よし、食よし”

 受講生一同、大満足の一日でした。
   


Posted by 小暮 淳 at 11:40Comments(0)温泉地・旅館

2018年04月04日

伊香保はどんな所です?


 <伊香保はどんな所です?>

 この言葉は、昨年5月に出版した拙著 『金銀名湯 伊香保温泉』(上毛新聞社) の 「あとがき」 のタイトルです。
 本の帯コピーにもなりました。

 そもそも、これは郷土の詩人・萩原朔太郎の言葉です。
 大正8(1919)年 に発行された 『伊香保みやげ』 という随筆集に、こんな一文を寄せています。

 <私の郷里は前橋であるから、自然子供の時から、伊香保へは度々行つて居る。で 「伊香保はどんな所です」 といふやうな質問を皆から受けるが、どうもかうした質問に対してはつきりした答をすることはむづかしい。> (『石段上りの街』より)

 同じく前橋に生まれ育った僕にとっても、朔太郎同様、伊香保温泉は子どもの頃から慣れ親しんだ温泉なので、答えに窮するのであります。
 だから1年間、伊香保に通い、本を書き上げたのですが、それでもまだ答えには窮しています。
 それは伊香保温泉が、日々成長し、進化している温泉地だからです。


 昨日、久しぶりに伊香保温泉を訪ねて来ました。
 雑誌の取材のためです。
 客が来る前にということで、早朝より 「伊香保露天風呂」 と 「石段の湯」 を訪ね、撮影を済ませました。
 その後、渋川伊香保温泉観光協会にて、協会長の大森隆博さんと面談。
 インタビュー取材をしてきました。

 なんといっても話題は、今月、伊香保に開山する寺院です。
 ご存知でしたか?
 水沢観音から温泉街へ抜ける県道の途中に、大きなお寺が建設中であることを。

 正式名を 「臨済宗佛光山法水寺」 といいます。
 総本山は台湾の 「佛光山寺」 で、法水寺は日本の本山として設立されました。
 佛光山は、東京や山梨、大阪など日本各地に複数の寺院や道場があり、信者の数は500万人以上いるといわれています。


 「伊香保はインバウンド(外国人観光客) では、かなり後発の温泉地です。年間訪れる観光客約100万人のうち、外国人はわずか1%に過ぎません。町は、今後の対応に追われています」
 と、会長は話していました。

 言葉の問題、食事の問題、マナーの問題……
 各旅館の経営者を集めて、迎える準備のための勉強会を開いているといいます。


 伊香保はどんな所です?

 朔太郎が見ていた伊香保温泉とは、だいぶ様変わりするかもしれませんね。
  


Posted by 小暮 淳 at 11:52Comments(0)温泉地・旅館

2018年03月28日

谷川温泉 「金盛館 せゝらぎ」②


 『わがゆくは山の窪なるひとつ路 冬日光りて氷りたる路』


 大正7(1918)年11月12日、歌人の若山牧水は上野駅を発ち、伊香保温泉~水上温泉(旧湯原の湯)~湯檜曽温泉とめぐり、16日から3日間、谷川温泉の金盛館に投宿しました。
 この奥利根を旅した紀行文は、大正10年にアルス社(大正6年創立・現存せず) から出版された 『靜かなる旅をゆきつゝ』 に収録されています。
 そのときに、湯檜曽温泉から谷川温泉に向かう途中で詠んだのが、冒頭の歌です。

 ちなみに大正11年に群馬を旅した 『みなかみ紀行』 では、牧水は水上には訪れていません。
 「みなかみ」 とは、川の上流との意味で書かれたようです。


 昨日は、僕が講師を務めるNHK文化センター野外温泉講座の平成29年度最終講座日でした。
 年度のファイナルを飾るのにふさわしく、ちょっとリッチに格式の高い老舗旅館を訪れました。

 群馬県利根郡みなかみ町の谷川温泉 「金盛館 せゝらぎ」。
 4代目主人の須藤温(みつる) さんは、僕を 「みなかみ温泉大使」 に任命してくださった前みなかみ町観光協会長ということもあり、一行を乗せたバスが旅館に着いたときは、協会職員らとともに盛大に出迎えてくれたのであります。

 「先生、大使って、すごいですね!」
 「熱烈歓迎ぶりじゃないですか!」

 ま、たまには、いいんじゃないですかね。
 受講生のみなさんも大喜びの様子だし、講師としては、ちょっぴり優越感を味わったのでありました。


 さてさて、宿に着いたら、まずは入浴です。
 4本の源泉から引かれた総湯量は、毎分約600リットル!
 これを一軒で利用しているのですから、贅沢です。
 しかも、33~58度の異なる源泉の湯を混合することにより、季節を通じて適温になるように調節されています。

 で、宿の自慢はなんといっても、河川敷の中にある野趣あふれる露天風呂であります。
 ここは混浴なので、時間をずらして男女で交互に入りました。

 残雪の間を流れる谷川の清流。
 手を伸ばせば届きそうな川瀬。
 まさに宿名どおりの “せせらぎ” の中で湯を浴む最高のロケーションであります。


 湯上がりは、お約束の生ビールで乾杯!
 春をあしらった旬の味覚に舌鼓を打ちながら、らんまんと宴が始まったのでした。

 いよいよ、この講座も来月からは10年目に入ります。
 受講生のみなさん、今年度もよろしくお願いしますね。
   


Posted by 小暮 淳 at 12:14Comments(0)温泉地・旅館

2018年03月11日

あれから7年、大胡温泉


 <東日本大震災の3月11日、大胡温泉・三山センターに来ていた。大きな揺れに、女将と戸外に飛び出した。群馬に大きな被害はなかったが、群馬の温泉地では、「温泉はぜいたく」という自粛ムードも広がり客が激減している。
 古来、日本人は温泉を質素な癒やしの場としてきた。群馬の豊かな「湯力(ゆぢから)」は人々を元気にしてくれる。利用者も温泉宿も、温泉=ぜいたく、という考えを改めてほしい。>

 当時、僕は朝日新聞の群馬版に 『湯守の女房』 というエッセイを連載していました。
 冒頭の文章は、2011年4月6日に掲載された 「大胡温泉・三山センター」 の文末に添えられた一文です。
 震災後、全国に自粛ムードが広がり、温泉地に人が来なくなってしまったことを懸念して書いたようです。


 今年も、この日がやって来ました。
 7年前のあの日以来、僕は必ず、この日には大胡温泉(前橋市) の一軒宿 「三山の湯 旅館 三山センター」 を訪ねています。

 旅館の駐車場に着いて、驚きました。
 ほぼ満車なのです。
 僕は10年以上通ってますけど、こんなことは初めてです。
 何かヘンだぞ……

 「久しぶりじゃないですか! 今日は来てくれると思っていましたけど」
 と女将さんをはじめ、従業員が出迎えてくれました。
 「ご無沙汰しています。何度か寄っているんですよ。でも、いっつも閉まっているんだもの」
 「それは、ごめんなさいね。平日の日帰り入浴は、やめちゃったのよ。今は日曜だけ」
 「それでですか! 満車じゃないですか」
 「そうなのよ。お客さんが集中しちゃうの」

 でも偶然にも、今年は3月11日が日曜日です。
 よかった!
 来年からは、どうするんだろうか?


 「先に、お風呂に入るでしょう!?」
 「はい、そうします」
 「食事の用意をして、待っていますから、ゆっくり入ってきてください」
 「でも、席があるの?」
 大広間前の廊下には、ずら~り、スリッパが並んでいます。
 「小暮さんの席は、ちゃんととってありますよ」

 なんだか、親戚の家に遊びに来たような心地よさであります。
 しかも温泉の入浴付きです。
 仕事部屋をここに移しちゃおうかしらん!
 などと、気分も上々で、一浴したのでした。

 車で来ているので、湯上がりは、もちろんノンアルビールです。
 料理のほかに、名物の焼きまんじゅうもいただきながら、その時を待ちました。


 「黙とう!」

 午後2時46分、テレビの時報とともに、女将さんと従業員、大広間に居合わせたお客たちと黙とうを捧げました。
 あの日、あの時の光景が、まるで昨日のようにありありと浮かぶ1分間でした。

 もう7年も経ったんですね。
 でも東北の人たちにとっては、まだ7年かもしれません。
 あの日が色あせることなく、国民一人一人が胸に刻んでいかねばならない歴史であります。


 「来年も来ますから」
 「1年にいっぺんじゃ、さみしいじゃないの!」
 「もちろん、ときどき顔を出しますよ。日曜日にね」

 女将さんは、わざわざ駐車場まで出てきて、見送ってくれました。
 やっぱり僕にとっては、親戚の家のように心地よい場所なのであります。
  


Posted by 小暮 淳 at 21:15Comments(0)温泉地・旅館

2018年03月02日

猪ノ田温泉 「久惠屋旅館」⑩


 なんだか今年は、猪ノ田(いのだ) づいています。
 1月に新年会で訪ねたばかりなのに、また今週も行ってきました。
 でも、何度訪ねても飽きないのが、猪ノ田温泉なのであります。


 僕が講師を務めるNHK文化センターの野外温泉講座も、今年で10年目を迎えます。
 この講座では、県内外の名湯・秘湯をめぐっています。
 今回は、西上州の名薬湯といわれる猪ノ田温泉(藤岡市) の一軒宿 「久惠屋旅館」 を訪れました。

 なぜに名薬湯なのか?

 歴史は古く、江戸時代にまで起源はさかのぼります。
 源泉の湧き出し口に野天の湯舟があり、地元の湯治場として利用されていました。
 ゆで玉子のような腐卵臭がすることと、卵の白身のようなトロンとした肌触りから 「たまご湯」 と呼ばれ親しまれていました。

 明治初期には 「皮膚病に効く」 という評判が高まり、県内はもとより東京方面からも医者に見放された患者が療養にやって来るようになったといいます。
 大正時代になり旅館が建てられ、戦前までは大いににぎわっていましたが、戦後になって経営が悪化し、昭和40年代に廃業してしまいました。

 その後しばらくの間、源泉は森の中で眠ったままでした。
 昭和58年(1983)年、地元で牛乳販売店を営んでいた先代主人が、現在の旅館を再建しました。
 肌にまとわりつくような湯のやわらかさから “絹の湯” と呼ばれ、ふたたび傷ややけど、アトピー性皮膚炎に効く薬湯として、全国からうわさを聞きつけた湯治客が訪れています。


 「わー、これ白鵬じゃない?」
 「そうだ、白鵬だよ!」
 宿に到着するなり、玄関ロビーで喚声が上がりました。

 そーなんです!
 ここは平成24年に地方巡業で藤岡市を訪れた際に、横綱・白鵬が泊まった宿なんです。
 壁に貼られた写真には、大広間で白鵬と一緒に若女将とお子さんたちが写っています。

 「まだ性格が良かった頃の白鵬だね」
 受講生の言葉に、大爆笑が起こりました。


 「あっ、本当だ! タマゴの白身のようですね」
 「体をさするとローションのようにツルツルします」

 湯舟の中では、口々に感想が飛び交いました。
 これぞ、生きた温泉講座です。

 群馬県内には、まだまだ知られざる名湯や秘湯がたくさんありますよ!
 今年も、楽しく温泉めぐりをしましょうね。
  


Posted by 小暮 淳 at 12:31Comments(0)温泉地・旅館

2018年02月23日

鳩ノ湯温泉 「三鳩樓」②


 <細い坂道を下り、小さな橋を渡ると、老木に囲まれたおもむきのある玄関が出迎えてくれた。四季折々、いつ訪ねても風情を感じさせ、旅人を飽きさせることのない宿だ。>


 ちょうど10年前、僕は 『上州風』(上毛新聞社) という文芸雑誌に、「源泉 湯守の一軒宿」 という連載を始めました。
 2年ほど続きましたが、雑誌の休刊とともに連載も終わりました。
 その連載の第1回目が、浅間隠温泉郷(群馬県吾妻郡東吾妻町) の一軒宿、鳩ノ湯温泉 「三鳩樓(さんきゅうろう)」 でした。

 冒頭の文章は、その時の書き出しの部分です。


 「ご無沙汰しています」
 「だいぶ、儲かっているみたいじゃないか」
 「まっさか、そんなこと、あるわけないじゃないですか」

 ご主人の轟徳三さんにお会いするのは、4年ぶりです。
 2014年に出版した 『新ぐんまの源泉一軒宿』(上毛新聞社) の取材以来です。
 今回も雑誌の取材で伺いました。

 「お変わりはありませんか?」
 「ああ、何も変わっちゃいないよ。俺が老けたくらいかな」


 開湯の歴史は古く、寛保年間(1741~1744) と伝わります。
 文献によれば当時は 「花の湯」 と呼ばれていたらしく、「鳩ノ湯」 というようになったのは江戸後期になってからのようです。

 「ご主人が何代目かは、分からないんですよね?」
 「だいね。あまりにも歴史が古過ぎるもの」
 「前回来た時は、14~15代目じゃないかと言ってましたよ」
 「たぶん、そのくらいだと思うよ」


 今回は、宿に残る文化文政時代(江戸時代後期) に江戸で配ったという 「効能書き」 のチラシを見せてもらいました。
 きりきず、やけど、などに加えて、「まむしくい」(マムシ喰い?) や 「せんき」(腰腹の疼痛) などの当時ならではの疾患名がずらりと表記されています。

 最後には、こんな文言もありました。
 <草津入湯のただれには、一夜二夜にして歩行自由になること神妙の如し> 

 江戸と信州を結び、草津温泉にも抜ける裏街道の宿場町にある湯治場として、多くの旅人たちでにぎわっていた様子が伺える貴重な文献です。


 難しい話は、さて置いて、取材の一番の目的は、もちろん入浴です。
 長くなりそうな話を、ひとまず中断して、湯屋へ。
 長い長い渡り廊下を歩いて、源泉の湧出地のある川沿いの階下へ向かいました。

 「万華鏡の湯」

 僕は、ここの湯を、そう呼んでいます。
 季節、天候、時間帯によって、訪ねるたびに湯の色が異なるからです。

 最初に訪ねた時は、茶褐色。
 次は、淡黄色でした。

 ご主人いわく、
 「白くなったり、青くなったり、ごく稀だけど透き通ることもある」

 で、今日の湯の色は、濃い抹茶色でした。
 古沼のような深く神秘的な色合いです。

 源泉の温度は、約44度。
 加水も加温もすることなく、惜しげもなくかけ流されています。

 「うーーーーーん、いい湯だ!」

 思わず、独りごちたのであります。
   


Posted by 小暮 淳 at 20:25Comments(0)温泉地・旅館

2018年02月16日

四万温泉 「四万たむら」③


 11時35分、JR吾妻線中之条駅着。
 改札口を抜けると、役場の職員が出迎えてくれました。
 「お待ちしていました」
 「今日は、よろしくお願いします」

 そのままマイクロバスに乗り込み、中之条町役場へ。
 他の職員、参加メンバーと合流して、目的地へと向かいました。


 参加メンバーとは?

 実は昨日、中之条町企画政策課主催による 「中之条町観光大使・アドバイザー意見交換会」 が開催され、僕は観光大使として出席しました。
 交換会は夜に行われたのですが、その前に、より中之条町を知ってもらおうという役場のはからいで、「そば打ち体験」 と 「お茶講体験」 をしてきました。

 もちろん、そばを打つもの初めてのことでしたが、“お茶講” というものは、聞くのも、見るのも、まして体験するなんて、すべてが初体験づくしでありました。

 そもそも、お茶講とは?

 14世紀の中頃(1350年前後)、南北朝時代に武士の間で、さかんに “香のにおい” や “茶の味” を当てる遊びが行われていました。
 お茶の飲み当ては 「闘茶」 と呼ばれていたといいます。
 ここ中之条町(群馬県吾妻郡) に残る 「お茶講」 も、闘茶と記録方法が同じもので、江戸時代から行われていました。
 中世の闘茶のやり方を現在に伝える全国にただ1ヵ所残されている大変貴重な民俗行事で、国の重要無形文化財に指定されています。

 まー、これが難しいのなんのって、全然、わかりません!
 煎茶と甘茶とミカンの皮、この3種類を粉末にしたものが微妙に混ざりあったお茶を飲んで、「さあ、今のは、どのお茶でしょう?」 と当てる、なんとも高度なお遊び(ゲーム) なのであります。

 でも、これが面白い!
 会場は、そのつど、爆笑が沸き上がります。
 昔の人は、粋で優雅で心豊かな遊びを考えたものですね。
 感心するやら、熱中するやら、初体験にして、すっかり虜になってしまいました。
 ちなみに僕の成績は、7回やって2勝5敗でした。


 さてさて、時は夕刻となり、交流会場のある旅館へ。
 ご存知、中之条町の名湯といえば四万温泉です。
 その中でも、一番の老舗旅館 「四万たむら」 に到着。

 創業は室町時代、永禄6(1563)年と伝わり、旧田村旅館の祖、田村甚五郎清政氏が湯宿を始めたとされています。
 現在の館主で15代目となる四万温泉最古の旅館です。

 でも 「四万たむら」 が凄いのは、歴史だけではありません。
 湯も凄いんです!
 敷地内には10本の源泉があり、すべてが自然湧出泉で、総湧出量は毎分2000リットル以上。
 うち、利用されている源泉は7本で、毎分1600リットルの豊富な湯が、館内にある8つの浴場と姉妹館 「四万グランドホテル」 の3つの浴場で、存分にかけ流されています。

 以前、僕は取材で、すべての浴場に入った経験がありますが、今回は目的が違います。
 部屋で旅装を解いた後、浴衣に着替え、大浴場の 「甍(いらか)の湯」 で軽く一浴しただけで、会場へ向かいました。


 中之条町には、「観光大使」 「ふるさとアドバイザー」 「観光アドバイザー」に任命されている人が、現在13人いますが、昨晩は8人が出席しました。
 観光大使として出席したのは、僕のほかに落語家の三遊亭竜楽さんと、歌手のRyu Mihoさんです。
 2人とも、中之条町にゆかりの深い方々です。

 楽しい時間は、本当に過ぎるのが早いものですね。
 伊能町長のあいさつで幕を開け、乾杯の後、各々の近況報告があり、意見交換が盛んに行われました。
 これからの中之条町に必要なこととは? 求められてるものは? 全国に自慢できるものとは?
 それはそれは熱く、楽しく、笑いに包まれたひと時でした。


 町長をはじめ町議、役場職員のみなさん、そして魅力ある大使およびアドバイザーのみなさん。
 大変お世話になりました。
 これからも全国に中之条町の魅力を発信していきましょう!

 もちろん僕も、中之条町の温泉 「なかんじょ9湯」 を大いにPRしていきます。
   


Posted by 小暮 淳 at 19:27Comments(0)温泉地・旅館

2018年01月24日

薬師温泉 「旅籠」②


 <何度訪れても、そのたびに息をのむ自分がいる。やがて、ゆるりと心がほぐされ、誰もが時空(とき)の旅人となり、江戸の町並みを歩き出す。>
 (『新ぐんまの源泉一軒宿』(上毛新聞社) より)


 大雪の朝、余裕を持って1時間早く家を出ました。
 ニット帽、マスク、ネックウォーマー、手袋にコートのフードを頭からかぶり、足元は山用のトレッキングシューズ姿。
 完全防寒スタイルにて、一夜にして雪原と化した住宅街を歩き出しました。

 ザク、ザク、ザク、ザク……

 「おはようございます」
 「ご苦労さまです」
 家や店舗の前を雪かきする見知らぬ人たちと、声を掛け合います。
 「お気をつけて」
 なんだか、ホッとなごむ光景です。

 4年前の大雪の教訓なのでしょうか。
 あの時とは違い、なんだか町が活気付いて見えました。


 途中、コンビニに寄って、コーヒーを飲みながら暖をとりましたが、それでも1時間半でJR前橋駅に着きました。
 昨日は、僕が講師を務める月に1回の温泉講座日だったのです。
 前の日から、すでに “雪天決行” は決まっていました。
 あとは当日、何人出席するかだけです。

 第1発着場のJR高崎駅を出発したバスは、この雪にもかかわらず5分遅れただけで前橋駅に到着。
 欠席者も2名だけでした。

 「おはようございます。この講座も丸9年となり、春からは10年目を迎えます。この9年間、雨の日も風の日も雪の日も、一度も休講になったことはありません。今日は、断念して休んだ人たちたちの分も、大いに温泉を楽しんできましょう!」
 バスは、白銀に染まった街を北へと向かいました。

 雪の街から、雪の山へ。

 「今日は思う存分、雪見風呂と雪見酒を味わってくださいね」


 今年最初の温泉講座は、群馬県吾妻郡東吾妻町の薬師温泉 「旅籠」。
 山深い渓流沿いに一軒宿ばかりが点在する、浅間隠(あさまかくし)温泉郷の一つです。
 手前から温川(ぬるがわ)温泉、鳩ノ湯温泉、そして一番奥が薬師温泉です。
 ※(温川温泉は現在、休業中です。)

 バスは、温泉郷の入口で、チェーンを装着。
 ここからは急坂のため、スタッドレスタイヤでも通行不可とのことです。

 わずかの距離ですが、バスはエンジン音を轟かせながら、一気に雪の坂道を上ります。
 「おおおーーーっ!!」
 受講生から、喚声が上がりました。
 雪に覆われた、かやぶき民家がいくつも現れたからです。


 ここ薬師温泉 「旅籠」 は、別名 「かやぶきの郷」 とも呼ばれています。
 約7000坪という広大な敷地内には、築150年を超える古民家が全国から移築されています。
 まるでテーマパークのよう。
 でも温泉の歴史は、とっても古いんですよ。

 開湯は寛政5年(1793)年、温泉坊宥明(ゆうめい) という旅の行者により発見されたと伝わります。
 当時は鳩ノ湯と一体で、薬師を「上の湯」、鳩ノ湯を「下の湯」と呼んでいました。
 薬師温泉と呼ばれるようになったのは、昭和になってからのこと。
 「偕楽荘」 という温泉宿がありましたが、平成17年に経営が替わり、「旅籠」としてリニューアルしました。


 とかなんとか、うんちくを語りつつ、湯を浴み、料理に舌鼓を打ちつつ、今年の講座も酒に酔いしれながらスタートしたのであります。

 受講生のみなさん、また1年間、よろしくお願いいたします。
   


Posted by 小暮 淳 at 19:03Comments(2)温泉地・旅館