温泉ライター、小暮淳の公式ブログです。雑誌や新聞では書けなかったこぼれ話や講演会、セミナーなどのイベント情報および日常をつれづれなるままに公表しています。
プロフィール
小暮 淳
小暮 淳
こぐれ じゅん



1958年、群馬県前橋市生まれ。

群馬県内のタウン誌、生活情報誌、フリーペーパー等の編集長を経て、現在はフリーライター。

温泉の魅力に取りつかれ、取材を続けながら群馬県内の温泉地をめぐる。特に一軒宿や小さな温泉地を中心に訪ね、新聞や雑誌にエッセーやコラムを執筆中。群馬の温泉のPRを兼ねて、セミナーや講演活動も行っている。

群馬県温泉アドバイザー「フォローアップ研修会」講師(平成19年度)。

長野県温泉協会「研修会」講師(平成20年度)

NHK文化センター前橋教室「野外温泉講座」講師(平成21年度~現在)
NHK-FM前橋放送局「群馬は温泉パラダイス」パーソナリティー(平成23年度)

前橋カルチャーセンター「小暮淳と行く 湯けむり散歩」講師(平成22、24年度)

群馬テレビ「ニュースジャスト6」コメンテーター(平成24年度~27年)
群馬テレビ「ぐんまトリビア図鑑」スーパーバイザー(平成27年度~現在)

NPO法人「湯治乃邑(くに)」代表理事
群馬のブログポータルサイト「グンブロ」顧問
みなかみ温泉大使
中之条町観光大使
老神温泉大使
伊香保温泉大使
四万温泉大使
ぐんまの地酒大使
群馬県立歴史博物館「友の会」運営委員



著書に『ぐんまの源泉一軒宿』 『群馬の小さな温泉』 『あなたにも教えたい 四万温泉』 『みなかみ18湯〔上〕』 『みなかみ18湯〔下〕』 『新ぐんまの源泉一軒宿』 『尾瀬の里湯~老神片品11温泉』 『西上州の薬湯』『金銀名湯 伊香保温泉』 『ぐんまの里山 てくてく歩き』 『上毛カルテ』(以上、上毛新聞社)、『ぐんま謎学の旅~民話と伝説の舞台』(ちいきしんぶん)、『ヨー!サイゴン』(でくの房)、絵本『誕生日の夜』(よろずかわら版)などがある。

2024年03月06日

難読温泉地名


 あれは昨年聴講した、さる大学教授の講演会でのこと。
 テーマは、温泉でした。

 話が群馬の温泉に触れた時でした。
 教授は、鹿沢温泉のことを 「しかざわ」 と発音しました。
 聴講者のほとんどが群馬県民ですから、怪訝な顔をしました。

 正しくは 「かざわ」。
 群馬の温泉ファンなら難なく読める温泉地名なのに、読み間違えたことが不思議でした。
 「なんだよ、行ったこと、ねーのかよ」
 そんな声が聞こえてきました。

 この教授は、県外在住者だったのです。


 確かに、行ったことがなければ 「鹿沢」 を 「しかざわ」 と読んでしまっても仕方ありませんね。
 温泉地に限らず、地名には、その土地独特の読み方というのがあります。
 ということで、群馬県内の難読温泉地名をいくつか挙げてみました。

 みなさんは、正しく読めますか?

 ①湯檜曽 (みなかみ町) ②奈女沢 (みなかみ町) ➂真沢 (みなかみ町) ④湯宿 (みなかみ町) ➄沢渡 (中之条町) ⑥応徳 (中之条町) ⑦半出来 (嬬恋村) ⑧梨木 (桐生市) ⑨猪ノ田 (藤岡市)  ➉向屋 (上野村)
 


 ところで昨晩放送の 『ぐんま!トリビア図鑑』 は、ご覧になりましたか?
 前出の難読温泉地名が舞台です。
 見逃した人は、再放送をご覧ください。


         『ぐんま!トリビア図鑑』
         温泉王国ぐんま Vol.6
          「山の湯 鹿沢温泉」

 ●放送局  群馬テレビ (地デジ3ch)
 ●再放送  3月9日(土) 10:30~ 11日(月) 12:30~



 <正解>
 ①ゆびそ ②なめざわ ➂さなざわ ④ゆじゅく ➄さわたり ⑥おうどく ⑦はんでき ⑧なしぎ ⑨いのだ ➉こうや
  


Posted by 小暮 淳 at 11:31Comments(2)温泉雑話

2023年11月17日

先輩の背中


 「飯出先生!」
 「先生はやめてください。小暮先生!(笑)」

 それが僕と飯出さんとの出会いでした。
 緊張していたことを覚えています。
 だって、あこがれの大先輩と、こうやって酒を酌み交わしながら話ができるなんて、夢のようなひと時でした。


 温泉紀行ライター、飯出敏夫さん。
 温泉好きなら誰もが、その名を知っていると思います。

 僕も駆け出しのライターの頃から、数々の飯出さんの著作を読んで、勉強させていただきました。
 近年では70歳の時に日本百名山を完登し、『温泉百名山』(集英社) を出版されました。


 僕がお会いしたのは、『続・温泉百名山』 の取材中でした。
 群馬の山行中に、温泉宿で合流しました。

 古希を過ぎているというのに、その強靭な体力に感服しました。
 大病を患ったとは思えぬ精神力にも脱帽です。
 何よりも、その酒豪ぶりは惚れ惚れとします。

 山から下りて来て、宴会に加わり、翌朝には、また次の山へと向かって行きました。
 まさに、フィールドワークを骨子とするライターの鑑であります。


 そんな飯出さんの不定期連載が、上毛新聞で始まりました。
 「オピニオン21」 です。
 このコーナーは、群馬県にゆかりの著名人や各ジャンルで活躍する県民が持ち回りで寄稿するコラム欄です。

 実は飯出さんは、群馬県上野村の出身なんですね。
 それだけで親近感がわきます。


 次回の掲載日は、いつだろうか?

 これからも偉大なる先輩の背中を追い続けたいと思います。
    


Posted by 小暮 淳 at 10:18Comments(0)温泉雑話

2023年10月27日

群馬県民は草津を 「くさつ」 とは言わない


 先日のフジテレビ 『ホンマでっか!?TV』 に出演以降、SNS上で僕の発言について物議をかもしていることを知りました。
 番組の中で、僕が草津温泉のことを 「くさつ」 ではなく、「くさづ」 と発音していたことについてのようです。


 ハハハハ(笑) 
 書き込んだ人は、すべて群馬県民ではありませんね!
 根っからの県民は、「くさつ」 なんて言わない。
 「くさづ」 と濁るんですよ!

 確かに、草津温泉の正しい表記は 「くさつ」 です。
 でも、それは標準語のようなもの。
 江戸っ子が 「ひ」 と 「し」 を区別できないように、ネイティブ県民は 「つ」 なんて言えません。
 生まれてからこのかた、ずーーーっと、草津は 「くさづ」 なのであります。


 では、どちらが正しいのか?

 草津の語源には諸説あるようですが、あの独特の硫黄成分のにおいから 「臭い水」 を表す 「くさみず」 だといわれています。
 「くさみず」 → 「くそうづ」 → 「くさづ」 → 「くさつ」

 ほらね、最終表記は 「くさつ」 でも、言葉の由来でみれば 「づ」 と濁るわけです。
 しかも “水” を意味するわけですから 「づ」 ではなく、「ず」 が正しいことになります。


 結論、どちらも正しいと思います。
 現代表記では、「くさつ」 と発音します。
 (パソコンでも 「くさつ」 で変換)

 でもネイティブの県民語では、「くさづ」 が一般的ということになります。


 群馬県民御用達の 『上毛かるた』 の 「く」 の札には、なんと書かれているか、ご存知ですか?

 「草津 (くさづ) よいとこ 薬 (くすり) の温泉 (いでゆ)」 です。

 ほらね、ルビは、しっかりと 「くさづ」 とふられています。


 かつて、「た」 の読み札が、地元民の要望により変更されたことがありました。

 「滝は吹割 片品渓谷」

 改定前のルビは 「ふきわり」 でしたが、「地元では “ふきわり” とは言わない」 との意見が多く寄せられ、ネイティブ語の 「ふきわれ」 と書き換えられました。


 ということで、いずれ草津温泉も 「くさづ」 が主流になる日が来るかもしれませんね。
  


Posted by 小暮 淳 at 10:10Comments(7)温泉雑話

2023年04月01日

四月馬鹿がやって来た!


 今年も、粋な絵ハガキが届きました。

 “ なぜ今までなかったのか!!
  <四万ブルー色>絵の具
  待望の新色 新発売 ”

 そんなキャッチーなコピーが躍っています。
 そして鮮やかなコバルトブルー色した奥四万湖をバックに、絵の具のチューブの写真がメインに印刷されています。


 一見、ふつうのDMハガキのようで、「へぇ~、そんな色の絵の具が発売されたんだ」 と受け流してしまいそうですが、次のコピーで、まんまとだまされたことに気づきます。

 “ 四万温泉にちなんで 1本四万円で販売中!”


 これ、毎年恒例の 「エイプリルフール in かしわや」 という、お遊びハガキなのであります。
 そして差出人は、四万温泉 (中之条町) 「柏屋旅館」 の主人、柏原益夫さんであります。

 柏原さんとは、長い付き合いになります。
 2000年に四万温泉で開催されたイベントからですから、かれこれ四半世紀。。
 四万温泉協会長も歴任し、2011年に出版した拙著 『あなたにも教えたい四万温泉』(上毛新聞社) の制作では、多大なる協力をいただきました。

 いわば僕にとっては、四万温泉を語るには欠かせない人物であります。


 ちなみに 「四万ブルー」 とは、四万温泉の最奥にある奥四万湖の湖水の神秘的な色を表現した、四万オリジナルの造語です。
 初めて見る人は、その吸い込まれそうな青より青い、独特な色合いに息を呑むことでしょう。

 女優の吉永小百合さんが奥四万湖でカヌーを漕ぐ、JR東日本 「大人の休日倶楽部」 のテレビCMでも有名になりました。


 それにしても、なぜ、こんなにも “美しい青” なのでしょうか?

 専門家が奥四万湖を調査したところ、湖水には 「青く見える物質は含まれていない」 との分析結果でした。
 では、なぜ?
 一説には、温泉水が関係しているのではないか?と言われていますが、いまだに謎のようです。


 今日は、エイプリルフールです。
 どうせ嘘をつくなら、だまされても楽しくなる、柏屋さんのようなキラリとセンスが光る嘘をつきましょうね!
  


Posted by 小暮 淳 at 12:50Comments(0)温泉雑話

2023年03月05日

ガラメキ温泉に生まれて


 「私は4代目でした」
 そう、講師は語り始めました。

 昨日、「榛東村耳飾り館」 (群馬県北群馬郡) で開催された 「しんとう・ふるさと歴史講座」 を受講してきました。
 講師の中村智明さんは昭和10(1935)年、ガラメキ温泉に3軒あった旅館の一軒 「富士見館」 に生まれました。
 今は無き、消えた温泉です。


 “消えた温泉” とは、かつて旅館があった温泉地のこと。
 群馬県内にはいくつかありますが、そのほとんどは源泉が涸渇してしまったか、ダム建設に伴い湖底に水没して姿を消したものです。

 ところが榛名山中にあったガラメキ温泉は、事情が違いました。
 敗戦の翌年、昭和21(1946)年4月。
 突然、役場から “72時間以内の立ち退き” を言い渡されました。
 同じ榛名山中にある旧日本陸軍の相馬ヶ原演習場を米軍が接収し、射撃訓練に土地を使用するという理由で、強制撤去を命じられたのでした。
 ※(詳しくは、当ブログの2013年9月7日 「消えたガラメキ温泉」 参照)


 10歳まで暮らしていた中村さんは、まさにガラメキ温泉の “生き証人” であります。
 すでに親世代は他界しているため、当時のガラメキ温泉を知るのは中村さんと、中村さんの弟妹だけとのこと。
 こんな貴重な話を、聞き逃すわけにはいきません。

 「何が何でも聴講したい!」
 その願いを叶えてくれたのは、3人の青年 (年齢不詳) たちでした。


 実は、この講座、一般には非公開でした。
 地元に回覧板で告知されただけです。
 では、なぜ僕が参加できたのでしょうか?

 まず、回覧板を見た榛東村在住のA君が、村内のB君に話をしました。
 するとB君は、村外に住む温泉マニアのC君に連絡しました。
 C君は、たびたび僕の講演会などにも参加している人です。
 そして彼が、僕にメールをくれたという次第です。


 会場では、3人の青年(?)たちと会うことができました。
 C君以外は、初対面です。

 「貴重な情報をありがとう!」
 温泉ファンの絆に、ただただ感謝であります。


 そして講師の中村さん、これからも長生きをして、戦争と温泉の歴史を語り続けてください。
 ガラメキ温泉は、永久に不滅です!

 源泉は、こんこんと湧き続けているのですから……
   


Posted by 小暮 淳 at 12:29Comments(6)温泉雑話

2023年03月03日

湯守失格


 「小暮さんは、どう思われますか?」
 知人との雑談の中で、不意に意見を求められました。

 福岡県の温泉旅館で、基準値の最大3,700倍のレジオネラ属菌が検出されたニュースについてです。
 運営会社社長の記者会見を見れば、ただただ、あきれるばかり。
 起こるべくして起きた、まったく客のことを考えていない怠慢経営であります。

 「愚の骨頂! 湯守(ゆもり)失格」
 これが、僕が知人に返した感想でした。


 まず、週に1回以上必要な浴槽の湯の取り換え清掃を怠っていたこと。
 それも驚くべきことに、盆と正月の年2回だけだっというから、開いた口が塞がりません。

 ちなみに “週1回以上” というのは、循環ろ過式の浴槽の場合の施行条例です。
 これが完全放流式 (かけ流し) となると、毎日の換水清掃が義務付けられています。
 僕が知る限り、源泉かけ流しの宿では、必ず毎日清掃時間があり、その間は客の入浴を断っています。

 これが、正しい湯守のいる宿なのです。


 もう一つ、記者会見で気になることがありました。
 社長は、「塩素のにおいが嫌いだった」 と言います。
 これ、過去のレジオネラ菌による死亡事故の際にも、たびたび経営者から語られた言葉です。

 「客から塩素くさいといわれるので……」

 という理由から定められた塩素量の消毒を怠ったといいます。
 “嫌い” は結構です。
 その人の主観ですからね。

 僕も嫌いです!

 でもね、循環式である限り、仕方がないことなのです。
 世の中が便利になれば、便利になるほど、その代償も大きいのです。
 それが面倒くさいというなら、浴槽を小さくして、完全放流式にしなさい!

 そうすれば、換水清掃も楽だし、塩素消毒も必要ありません。
 ※(都道府県によっては、かけ流しでも塩素消毒を義務付けている自治体があります)


 とかなんとか知人には、うんちくを述べながら説明しましたが、今回の一件は、ただただ残念です。
 僕は知らなかったのですが、昭和天皇も宿泊したことのある歴史ある老舗旅館なんですってね。
 従業員は気づいていたようですから、老舗にありがちなワンマン経営が起こした不祥事といえそうです。

 即刻、社長更迭!
 経営陣を総入れ替えして、その歴史と伝統を引き継いでいってほしいものです。
   


Posted by 小暮 淳 at 11:42Comments(2)温泉雑話

2023年01月18日

「群馬といえば温泉」 から 「温泉といえば群馬」 へ


 <「群馬といえば温泉」 から 「温泉といえば群馬」 へ>

 これは来週、みなかみ町で開催される某企業主催による講演会の演題です。
 近年、このテーマで講話をすることが増えました。

 では、2つの言葉は、どこがどう違うのでしょうか?


 僕は2009年に出版した 『ぐんまの源泉一軒宿』(上毛新聞社) をはじめとして、今日までに10冊の温泉関連本を世に出してきました。
 しかも、すべて群馬県の温泉です。

 「たった1つの県で、こんなにも温泉の本が出せるんだぞ!」
 「それだけ群馬は、すごい県なんだぞ!」
 という郷土愛から書きました。

 だから最初は、県の観光PRへの不満から始まった実力行使だったのです。
 「あれもある」 「これもある」
 という割には、結局、他県に秀でたモノなんてねーじゃねーか!

 「温泉もあります」
 と言われた時に、カチンと来ました。
 「温泉も」 だ?

 何を言ってるんだ!
 「温泉しかないじゃないか!」
 でもね、“しか” というのは最強の誉め言葉なんだよ!

 すると、こう言い返されました。
 「“しか” ということはないでしょう。群馬には温泉以外にも、いいところがたくさんあれます」
 だと!

 売り言葉に、買い言葉。
 これにより僕と県の全面戦争が始まったのであります。
 ※(勝手に僕がケンカを仕掛けて、勝手にムキになっただけですけど)


 あれから14年が過ぎました。
 ことあるごとに僕は、「群馬といえば温泉」 と言い続けて来ました。
 ところが……
 ここ数年、群馬の温泉に対する流れが変わって来たのです。

 それは、県外者からの目です。


 これまでも県外の企業や自治体から講演依頼を受けることはありました。
 そんな時は、当たり障りのない温泉の基礎話をしてきました。
 でも、ここ数年は変わりました。

 「ぜひ、群馬の温泉の話を聞かせてください」
 と、テーマの指定まで受けるようになったのです。
 「いいんですか? マニアックな話になりますよ?」
 と言えば、
 「だって、温泉といえば群馬じゃないですか!」
 と返されました。

 やったー!
 ついに、この時が来たと思いました。

 「群馬といえば温泉」 は、内から外へのメッセージ。
 でも 「温泉といえば群馬」 は、外から内へのエールであります。

 これは僕にとって、活動への励みになりました。
 いわば、このために長年、取材活動を続けてきたのですからね。

 努力が報われた瞬間でもありました。


 群馬県民のみなさん!
 あなた方が思っている以上に、他県の人たちは群馬が日本を代表する温泉県だと知っています。
 もっと、自信を持ってください!
 胸を張って、大きな声で言ってください。

 「温泉といえば群馬」 と!
  


Posted by 小暮 淳 at 11:14Comments(2)温泉雑話

2022年09月26日

温泉はラーメンである


 さるイベント会場でのこと。
 客席で座っていると、いきなり司会者が、こんなことを言い出しました。

 「今日、この会場に、温泉ライターの小暮淳さんがお見えになっています」

 驚いたのなんのって!
 受付で、正体がバレてしまったようです。
 司会者に半強制的に促され、その場で起立! 礼! 着席!

 まったくもって恥ずかしい体験でした。


 そんなことがあったからでしょうか?
 イベント終了後、会場を出ようとした時、ひとりの初老の婦人が近寄って来ました。
 そして、僕に、こう言ったのです。

 「一番いい温泉は、どこですか?」

 自己紹介もなく、あいさつもなく、唐突にであります。
 「失礼な!」
 と思った気持ちをグッと、こらえました。


 実は、講演会やセミナーなどの質疑応答の場で、一番多い質問なんです。
 でありながら、最大の難問でもあります。
 いつも僕は、質問者が納得するような回答ができずに、話をごまかしてしまいます。

 でも、考えてみてください。
 “一番いい” って、主観ですよね?
 定義も基準もありません。
 「いい」 と思えば、いい温泉だし、「いや」 と思えば、それは悪い温泉、または嫌いな温泉ということになります。

 だから僕は、この質問をされると、必ず、話を 「ラーメン」 に例えます。
 「どこのラーメンが一番、おいしいですか?」
 と……
 そう訊かれたら、どう答えますか?

 ただ単に、“おいしい” だけでは、情報が足りないですよね。
 しょうゆ味なのか? みそ味なのか? 塩味なのか? とんこつ味なのか……
 麺も種類があります。
 細麺なのか? 中太麺なのか? 太麺なのか? ちぢれ麵なのか……
 また、こってり系なのか? あっさり系なのか?

 さらに細かいことをいえば、この “ラーメン” という、くくりの中には、インスタントの袋ラーメンやカップラーメンは、含まれているのだろうか?
 そう考えると、玉石混交すぎて、回答に窮するのであります。


 ということで僕は、ラーメンのたとえ話をしたあとに、
 「もうすこし、温泉の種類かエリアを絞り込んでいただけますか?」
 と、お答えしました。

 すると初老の婦人は、
 「あの……、もう結構です」
 と、そそくさに僕の前から姿を消してしまいました。


 ちょっと大人げが、なかったですかね?
 でも、無礼だったのは、その婦人の方ですよ。
 結局、最後まで名前も身分も告げませんでしたもの(笑)。
   


Posted by 小暮 淳 at 12:24Comments(0)温泉雑話

2022年08月06日

強そうな温泉


 さて、問題です。
 群馬県内で一番強い温泉は、どこでしょうか?


 今週火曜日、群馬テレビで放送された 『ぐんま!トリビア図鑑』 は、ご覧いただけたでしょうか?
 「温泉王国ぐんま~泉質が変わった温泉~」 と題して、僕が旧倉渕村 (高崎市) の2つの温泉地からリポートしました。

 放送後、知人から、こんなメールが届きました。
 <ガンテツセン、名前からして強そうだ。海軍カレーと合わせて最強!>

 思わず、笑ってしまいました。
 言われてみれば、本当だ。
 とっても強そうです。


 番組では、倉渕川浦温泉を紹介。
 10年に1度の成分分析検査をしたところ泉質名が、以前の 「塩化物泉」 から 「含鉄泉」 に変化していたというミステリー。
 しかも、県内では唯一入浴できる含鉄泉ということで、話題になっています。

 また一軒宿の 「はまゆう山荘」 の名物料理は、海軍カレー!
 なぜ、横須賀発祥のカレーライスが名物なのかは、テレビをご覧ください。

 「含鉄泉」 と 「海軍カレー」
 その言葉の響きは、確かに強そうです。
 ということで、冒頭の問題の答えは、倉渕川浦温泉でした。


 同じ発想で、全国の温泉地名を思い浮かべてみると、強そうな名前がありました。
 強羅(ごうら)温泉、強首(こわくび)温泉、地鉈(じなた)温泉、龍神温泉、熊ノ湯温泉なんて、強そうじゃありませんか?

 逆に弱そうな温泉は……
 はい、半出来温泉 (群馬) くらいしか思い浮かびませんでした。

 ほかにあったら、教えてください。
 


            ぐんま!トリビア図鑑
       「温泉王国ぐんま ~泉質が変わった温泉~」

 ●放送局  群馬テレビ (地デジ3ch)
 ●再放送  8月8日(月) 12:30~12:45
  


Posted by 小暮 淳 at 11:39Comments(7)温泉雑話

2022年07月15日

脱帽神話


 伊香保温泉へ行く野暮用があり、「どうせ来たのだから」 と、帰りに露天風呂に立ち寄り、一浴して来ました。
 たびたび取材や撮影で訪れている浴場ではありますが、プライベートで入るのは初めてのことでした。
  

 平日の昼間ということもあり、割と空いていました。
 男風呂の浴客は僕のほか3人。
 内訳は、30代とおぼしき男性と40代だろうと思われる男性。
 2人は日本人です。

 もう一人、西洋人の男性がいました。
 歳の頃は……
 西洋人の年齢は読みにくいのですが、若者ではありません。
 たぶん、40代ではないでしょうか。


 当然ですが、外人コンプレックスの僕は、西洋人の股間に目がいきます。

 大きい!
 我々日本人の倍はあります。

 でも……

 やっぱり!
 彼は、しっかりと “帽子” をかぶっていたのです。
 この暑い夏の最中、しかも湯舟の中でも、帽子を脱ぎません。

 一方、3人の日本人はサイズこそ劣るものの、ちゃんとマナー (?) を守り、湯舟の中では帽子を脱いでいます。

 この違いって、何なんでしょうか?
 東洋と西洋の文化の違いなんでしょうか?


 僕は職業柄、たぶん今までに何千回と温泉地を訪ねています。
 ということは、何万本という男性の股間を見て来たことになります。
 その僕が、長年、疑問に感じていることが、この “帽子” の着脱率であります。

 日本人は、圧倒的に 「脱帽率」 が高いのです。
 9割がた、帽子を脱いだ状態で入浴しています。

 ところが外国人 (西洋人しか区別がつきませんが) は、その真逆です。
 圧倒的に 「着帽率」 が高いのです。
 帽子を脱いで入浴している外国人にお会いしたことは、過去に数回しかありません。

 思えば、かのジョン・レノンも着帽派でした。
 古くは、ダビデ像も着帽です。

 なのに日本人ときたら浮世絵にしても、脱帽で描かれています。


 これは、どういうことなのでしょうか?
 いったい、いつから日本に “脱帽神話” が根づいたのでしょうか?

 思い返しても、学校や家庭で、「大人になったら帽子は脱ぎましょうね」 なんていう教育を受けた覚えはありません。
 ただ、なんとなく暗黙のうちに日本人は思春期になると、「恥ずかしい」 という感情が芽生えてくるようであります。。


 「恥ずかしい」 と思う日本人。
 「恥ずかしい」 と思わない西洋人。

 では逆に、西洋人にとっては “脱帽” のほうが、恥ずかしいのでしょうか?
 ぜひ、訊いてみたいものです。


 黄金色の湯に身を沈めながら、とりとめもなく、そんなことを考えていました。
 もちろん、湯は絶品でした。
   


Posted by 小暮 淳 at 11:07Comments(2)温泉雑話

2022年03月05日

花袋の愛した群馬の温泉


 もう10年以上前ですが、館林市文化会館で開催された、館林市教育委員会主催による講演会の講師を務めたことがありました。
 演題は 『花袋の愛した群馬の温泉』

 その時の光景が、よみがえってきました。


 今月に入って、いきなり、このブログの検索キーワードのトップに浮上した言葉があります。
 「西長岡温泉」 です。
 たぶん、聞きなれない温泉名だと思います。
 それもそのはず、昭和30年代に消えた幻の温泉なのです。

 なぜ、今になって、突然、検索されたのでしょうか?


 僕には心当たりがあります。
 上毛新聞に連載されていたシリーズです。
 『生誕150年 花袋の故郷をたどる』
 この最終回 (3月1日掲載) で、「紀行文に今はなき秘湯」 と題して、西長岡温泉に触れています。

 《誇る文豪 田山花袋》

 「上毛かるた」 でも知られる文豪・田山花袋は、『蒲団』 や 『田舎教師』 などの作品で知られる自然主義文学者です。
 花袋の出身である館林市には記念文学館もあります。

 ただ、あまり知られていないのが、元祖 “温泉ライター” としての、もう一つの顔。
 全国の温泉地を訪ね歩いた 『温泉めぐり』(岩波文庫) をはじめ、幾多の紀行文を世に残しています。


 新聞記事では、『温泉めぐり』 に登場する 「西長岡の湯」 に触れています。

 <藪塚本町誌によると、西長岡温泉は現在の太田市西長岡町にあり、明治期から唯一の温泉宿 「長生館」 が営業した。(中略) 1913年の東武鉄道薮塚駅開設を契機に栄えた。花袋もこの頃に訪れている。しかし57年に同館は火災で焼失し、記述は途絶える。>


 僕も講演では、花袋が愛した幻の温泉について話をしました。
 花袋は、著書の中で、こう記しています。

 <その西長岡の温泉に初めて私の出かけて行ったのは、そのあくる年の二月のまだ寒い頃であった。(中略) 藪塚よりも深く丘陵の中にかくれたようになっていて、一歩一歩入って行く心持が好かった。>

 花袋は、この温泉を大変気に入ったようで、のちに西長岡温泉を舞台にした小説 『野の道』 を書いています。


 残念ながら当時僕は、幻の温泉跡にたどり着くことができませんでした。
 しかし、新聞記事には、こう記されています。

 <今も残るため池や稲荷を目印に、古い住宅が並ぶ細い道を進んだ。空き地にぶつかり、奥には雑木林と積み上がる石垣が見えた。焼失後を知る近くの男性(65)によると、宿泊棟として利用していた建物の跡だという。>

 ぜひ、今度、訪ねてみたいものです。


 ということで、新聞記事を読んだ人が、「西長岡温泉」 でネット検索をした結果、このブログの過去記事にたどり着いたようであります。
 少しでもお役に立ちましたでしょうか?
   


Posted by 小暮 淳 at 10:44Comments(6)温泉雑話

2021年11月29日

2番じゃダメなんです!


 「くやしいです!」
 思わず、ザブングルのギャグが口を突いて出てしまいました。

 先日発表された “温泉イメージランキング” です。


 リクルート (東京都) が発行する 「じゃらん」 が、インターネットで全国の20~50代計1,005人からアンケートを行い、「温泉と聞いてイメージする都道府県ランキング」 を発表しました。
 その結果、1位は大分県、2位は群馬県、3位は北海道でした。

 ぬぁぬぁぬぁんですとーーーーーーー!!!!!

 怒り心頭に発し、お笑い芸人・ザブングル加藤の顔になってしまいました。

 ダメなんです!
 2番じゃ、絶対にダメなんです!


 先日、読売新聞の取材に対して僕は、こうコメントしています。
 < 「 『群馬と言えば?』 と問われると、温泉と返す人は多い。逆に、『温泉と言えば?』 と問われて群馬と即答する人はあまりいない。>
 (2021年11月8日 読売新聞群馬版 「クローズアップ」 より)

 コメント通りの結果となってしまいました。
 「群馬と言えば温泉」 と答えるのは当たり前。
 その逆こそ、真なり!
 「温泉と言えば群馬」 と答えてこそ、温泉界の “絶対王者” になれるのです。

 たぶん、僕の力不足なんでしょうね。
 大いに反省しています。


 「じゃらん」 によれば、群馬について 「草津温泉が有名だから」 「湯畑を思い出す」 との草津温泉に関するコメントが多かったといいます。
 ほーらね、草津に “おんぶにだっこ” されているからダメなんです!

 チームですよ、チーム!
 「湯の国ぐんま」 が一丸となって闘わなければ、1位の座は永遠にありませんぞ!

 さあ、立ち上がれ!
 百九十万の民よ!

 そして、温泉大国として、絶対王者になるのだ!

 断じて、2番じゃダメなんです!
   


Posted by 小暮 淳 at 09:33Comments(0)温泉雑話

2021年11月20日

太宰と群馬の温泉


 『わらう!太宰治』

 そのタイトルに、惹かれた。

 太宰治=苦悩する作家、というイメージの真逆のコピー。
 思わず、受付で 「どなたのコピーですか?」 と訊いてしまいました。
 当然ですが、「学芸員です」 との回答。

 つくづく、ネーミングは大切だと思いました。


 現在、群馬県立土屋文明記念文学館 (高崎市) で開催中の第113回企画展 『わらう!太宰治』 に行って来ました。

 僕にとっての太宰との出合いは、ご多分にもれず、まずは教科書の 『走れメロス』 でした。
 そして、思春期に読んだ 『人間失格』。
 それと 『津軽』 『斜陽』 『女生徒』 くらいでしょうか……

 しかし展示会では、そういった代表作ではなく、数ある太宰の作品の中でも 「わらい」 に注目。
 ユーモアや機知に富む秀作群に光を当てて、太宰文学の懐の深さを紹介しています。


 大人になって僕は、思わぬところで太宰文学と再会しました。
 それは、温泉です。

 太宰は、2度、群馬の谷川温泉 (みなかみ町) に訪れています。
 1度目は、昭和11(1936)年8月、薬物中毒と肺病の治癒のために単身で滞在しています。
 2度目は、同12年3月、妻の小山初代と2人で訪れています。
 初代と谷川山麓で心中を図ろうとしますが、未遂に終わり、その後2人は離婚します。

 この2回の滞在で宿泊した宿は、川久保旅館でした。
 (現在の 「旅館たにがわ」 の駐車場が跡地)
 谷川温泉では、『創生記』 を執筆しています。
 また後に 『姥捨(うばすて)』 の舞台としても描かれました。


 太宰は、昭和15(1940)年4月、四万温泉 (中之条町) にも訪れています。
 この時は、太宰が師と仰ぐ井伏鱒二や友人たち数名と滞在しています。
 のちに発表された 『風の便り』 は、四万温泉がモデルとされています。

 この時、一行が滞在したのは 「四萬館」 でした。


 2つの温泉地での太宰にまつわるエピソードは、拙著 『みなかみ18湯 【下】』 と 『あなたにも教えたい四万温泉』 に記載されていますので、興味のある方は、ぜひ、一読されたし!

 企画展では、「群馬と太宰」 と題し、2つの温泉地での貴重な写真や資料が展示されています。



    企画展 『わらう!太宰治』

 ●会期  開催中~2021年12月19日(日)
 ●開館  9:30~17:00
 ●休館  火曜日
 ●料金  一般 500円 大学・高校生 250円
 ●問合  群馬県立土屋文明記念文学館 TEL.027-373-7721
  


Posted by 小暮 淳 at 11:18Comments(0)温泉雑話

2021年11月12日

リンダ、こまっちゃう!


 ♪ うわさを信じちゃいけないよ 私の心はうぶなのさ
    いつでも楽しい夢を見て 生きているのが好きなのさ
    (中略)
    あゝ 蝶になる あゝ 花になる
    恋した夜は あなたしだいなの
    あゝ 今夜だけ あゝ 今夜だけ
    もう どうにも とまらない ♪
    <『どうにもとまらない』 より>


 伊香保温泉(渋川市) に 「リンダ坂」 という坂があるのをご存じですか?
 もちろん地元での通称です。
 正式名は 「八千代坂」。

 傾斜角度23度。
 坂の多い温泉街の中でも最大級です。
 では、なぜ、「リンダ坂」 と呼ばれるようになったのか?

 もう、お分かりですね。
 そう、歌手・山本リンダさんのヒット曲 『どうにもとまらない』 からであります。

 誰が付けたのか?
 坂の途中の旅館のご主人によれば、
 「雪でも降った日には、お客さまはスッテンコロリン。車だって、ブレーキが甘いとズズズーっと下ってしまう。誰が言ったのか、いつしかみんな 『リンダ坂』 と呼ぶようになっていました」


 季節は、絶好の行楽日和です。
 緊急事態宣言が解除されてからというもの、群馬県内の行楽地には、たくさんの観光客が訪れています。

 「友だちと伊香保温泉に行ってきたんですよ」
 若い女性に話しかけられました。
 「散々な目に遭ってしまいました。渋滞が凄くて、全然、車が進まないんですよ。みーんな県外ナンバーです」
 確かに、テレビの報道番組を観ていると、観光地はどこも、かなりの人出となっているようであります。

 それでも、やはり第6波が来るのではないか? という恐怖心はぬぐえません。
 “3密” になる電車での長距離移動は避け、マイカーでの “安近短” 旅行を楽しんでいるようです。
 ということで群馬県は、首都圏からコロナ禍に訪れるのには絶好の行楽地といえそうです。


 もちろん、県内の温泉地に観光客が戻ってきたことは、うれしいことです。
 と、同時に、「本当なのだうか?」 という不安もあります。
 日々伝わる感染者数の急激な減少です。
 まさか、政府が操作しているんじゃないでしょうね?

 うれしいようで、こわいようで、ドキドキしてしまいます。

 これまた伊香保だけに、リンダつながりで 、こまっちゃうナ~!


 ♪ こまっちゃうナ デイトにさそわれて
    どうしよう まだまだはやいかしら
    うれしいような こわいような
    ドキドキしちゃう 私の胸
    ママに聞いたら 何んにも言わずに笑っているだけ
    こまっちゃうナ デイトにさそわれて ♪
    <『こまっちゃうナ』 より>
   


Posted by 小暮 淳 at 10:26Comments(0)温泉雑話

2021年11月08日

今日の読売新聞 「クローズアップ」


 大変お待たせいたしました!
 長~い首が折れてしまいそうになるくらい、お待たせしてしまいました。

 最初に掲載の告知をしたのが、ちょうど1カ月前。
 その間に衆院選の報道が入り、たびたび掲載日の変更をお知らせしてきました。
 が!
 ついに本日(11月8日)、掲載されました。


 読売新聞群馬版 「クローズアップ」。

 “群馬の温泉 魅力発掘”

 と、見出しが躍っていますが、それ以上に目立つのが写真です。
 そのサイズ、ヨコ98mm×タテ93mm!
 今までに掲載された新聞記事では、過去最大だと思います。


 さてさて、その内容は?

 いやいや、若手記者ならではの歯に衣着せぬストレートな表現で、フレッシュな読後感のある記事です。
 何よりも中学時代の読書趣向から結婚、就職、雑誌の廃刊、独立にいたるまでの僕の経歴を追っている記事は、初めてです。
 これは、一つの小さな “小暮淳ヒストリー” であります。

 たぶん、僕のことを知らない人でも、なんとなく人となりが分かったんじゃないでしょうかね。


 乙藤記者、素敵な記事をありがとうございました。
  


Posted by 小暮 淳 at 11:25Comments(4)温泉雑話

2021年10月28日

逆襲の逆襲なのだ~!


 朝日新聞社から 「全国版に小暮さんのことを書きました」 と、10月25日付の夕刊が届きました。
 紙面には大きく、こんなタイトルが躍っています。

 ≪温泉の宝庫 地味でも極楽~ 群馬の逆襲①≫


 「現場へ!」 というシリーズで、群馬県駐在の記者によるレポートであります。
 一部を抜粋します。

 <「温泉地は100カ所以上。乳白色、茶褐色、赤褐色、黄土色など色もよりどりみどり。群馬はまさに 『湯煙パラダイス』 です」。
  県都の前橋市に住む温泉ライターで、「ぐんまの源泉一軒宿」 など温泉に関する数々の著書がある小暮淳さんはそう語る。>


 記事では今月、ブランド総合研究所が発表した2021年の 「都道府県の魅力度ランキング」 にも触れ、数字では還元されない魅力として、温泉にスポットを当てています。
 記事は、こう結ばれています。

 <とかく地味なイメージが強い群馬。だが住んでいる人が楽しく生きていれば、それが幸せなのではないか。群馬で暮らす記者が、そのいくつかを紹介する。>

 シリーズ記事 「群馬の逆襲」 の第1回が “温泉” というのが、うれしいじゃありませんか!
 今年、赴任してきた記者のようですが、やっぱり群馬と言えば、温泉なのですね。


 さて、「群馬の逆襲」 といえば忘れてはならないのが、2010年に出版されたジャーナリスト・木部克彦氏の 『群馬の逆襲』(彩流社) であります。
 ベストセラーとなり、2年後には 『続・群馬の逆襲』(言視社) が出版されました。

 この時も木部氏から連絡があり、“逆襲の刺客” として取材を受けました。
 氏は著書の中で僕のことを、こう表現しています。

 <いかにも世界屈指の温泉大国・群馬らしいオジサンがいます。>
 <ここまで 「人生のすべて」 を温泉につけこんでしまう人は、なかなかいません。まさに 「温泉バカ一代」。>

 まあ、ほめられているのか、笑われているのか分かりませんが、氏独特のユーモアセンスで、僕の人となりが描かれています。


 くしくも10年の時を経て、またしても 「群馬の逆襲」 に登場です。
 はたして群馬の逆襲は、いつまで続くのでしょうか?

 いつか、“逆襲” の冠が取れる日が来ることを待ち望んでいます。  
  


Posted by 小暮 淳 at 11:44Comments(3)温泉雑話

2021年09月13日

時間湯 VS 伝統湯


 なんだか、きな臭い雰囲気になってきました。

 草津町議会は、湯治客の健康や症状を判断することなどが医療的行為として法令に反する恐れがあるとして、2019年に入浴法を指導する 「湯長」 制度を廃止した草津温泉独自の入浴法 「時間湯」 について、名称を 「伝統湯」 に変更することを決定。
 施行は10月1日からで、以後、「時間湯」 の名称を使わないことになりました。


 ほほう、そういう展開になりましか!
 なんだか、全面戦争の装いであります。

 発表によれば、条例改正により、2ヶ所ある時間湯を行っていた共同浴場の 「地蔵の湯」 と 「千代の湯」 は、それぞれ 「伝統湯地蔵」 「伝統湯千代」 と改名し、これまで時間湯が行われてきた浴場のことは 「伝統湯浴場」 と呼ぶことになりました。


 この条例改正について、黒岩信忠町長は、このようにコメントしています。

 <湯長廃止の議論の中で 「時間湯」 を商標登録しようとしたが、町側の申告より前に “時間湯関係者” が申請していたことが判明した。>
 <(関係者らによる時間湯の) 私物化の証しそのものだ。いつまでも科学や法令に基づかない伝統への独善を断ち切る意味でも、「伝統湯」 と改めた。>
 (2021年9月11日付 上毛新聞より)

 おおお~、完全なる宣戦布告であります!


 今後の運営については、「伝統湯地蔵」 では時間湯としての利用を廃止し、貸切風呂として有料化。
 これに伴い、浴槽の改修やシャワー設備の増設を行うため、一時利用を中止するとのことです。
 一方 「伝統湯千代」 は管理人が常駐し、湯もみやかぶり湯といった時間湯での伝統的な作法を利用者に手ほどきするとのこと。入浴料は無料。
 また時間湯で48度前後と高温が問題視されていた湯温については、いずれの浴場も44度以下とすることになりました。


 伝統か? 行政か?
 この問題のややこしい所は、行政側が “伝統” という言葉を使っているところです。

 混浴問題しかり!
 伝統や文化は本来、守り継ぐべきものなのですが、令和の時代には、そぐわなくなっているようであります。


 時間湯 VS 伝統湯
 はたして軍配は、どちらに?

 (ところで町長と女性議員のスキャンダル問題って、解決したんでしたっけ?)
  


Posted by 小暮 淳 at 11:42Comments(3)温泉雑話

2021年07月16日

スキヤキと温泉


 「なんで群馬県が、スキヤキなんですか?」
 県外の人に、そう訊かれて、
 「なんでなんでしょうねぇ……」
 と答えに窮する僕。

 いつからか群馬県は、「すき焼き応援県」 を宣言しています。
 そのココロは?
 「県内で、すき焼きの食材が、すべて揃うから」
 のようであります。
 
 牛肉、しらたき、ネギ、シイタケ、白菜、春菊……

 ちょっと、ちょっと! 待ってくださいよ!
 その食材、どこの県でも揃いますって!
 まあ、百歩譲って、ネギとしらたき (こんにゃく)、生しいたけの生産量は群を抜いているにしても、やっぱ、すき焼きの主役は牛肉ですからね。

 さらに言えば、群馬県民って、日常、すき焼きは食べませんよ!
 たまに食べたとしても、肉は豚肉です。
 ならば、せめて 「豚すき」 を群馬名物として推してほしいものです。


 「群馬といえば、やっぱり温泉ですよね!」
 県外の人に、そう言われれば、
 「まあね~!」
 と僕だって、得意になって答えます。

 先日、そのことを証明するようなニュースが飛び込んで来ました。
 リクルート (東京) の観光に関する調査研究機関 「じゃらんリサーチセンター」 が、「じゃらん宿泊旅行調査2021」 を発表しました。
 この調査で、国内旅行先に選んだ理由別の都道府県ランキングで、群馬県が 「魅力的な温泉」 の第1位になりました。

 ほ~らね、誰もが “群馬” と言えば “温泉” だと思っているでしょう!
 同センターは、この調査結果について、こうコメントしています。

 <コロナ下でゆっくり安心安全に過ごす旅行スタイルが支持される中、群馬の温泉地が期待に応えた。>


 ところが!
 こと “食” に関しては、厳しい見解を発表しました。

 <地域性が目立たない。特産品を生かした群馬でしか食べられないメニューや食材の開発、発掘などが求められる。>

 ほ~ら、やっぱ、スキヤキじゃありませんって!
   


Posted by 小暮 淳 at 11:23Comments(3)温泉雑話

2021年07月05日

あっぱれ! 草津温泉


 さすが天下の草津温泉です。
 やることが速い!

 以前、草津温泉の源泉が、新型コロナウイルスの感染力をなくす 「不活化」 に効果があるということが研究機関の調査で判明したというニュースを、このブログでも取り上げました。
 (2021年2月11日 「草津よいとこコロナに効く湯?」 参照)


 あれから5か月……
 たった5ヶ月ですぞ!

 さらに科学的な研究を重ねた結果、草津温泉の源泉 (なかでも湯畑源泉) が新型コロナウイルスの感染力を10秒間で97.51%、さらに1分間では99.12%も失わせる効果があることが証明されました(これはスゴイ!)。
 ということは手指を温泉で洗い流すことで、新型コロナウイルスや有害微生物などを効果的に除去できるということです。

 ならば!と草津温泉は、さっそく湯畑広場に3ヶ所、地蔵広場に1ヶ所の計4ヶ所に 「手洗乃湯」(手洗い場) を設置しました。
 今後、草津温泉バスターミナルや西の河原公園にも設置を予定しています。


 昔から草津温泉は、「恋の病」 以外はどんな病にも効くといわれた名薬湯です。
 この調子でコロナ収束後も、グイグイと群馬の温泉界をけん引していただきたいものです。

 “唯一無二の温泉力”

 あっぱれであります。
  


Posted by 小暮 淳 at 18:35Comments(0)温泉雑話

2021年05月05日

絶滅危惧温泉は守れるか?


 <公衆浴場や温泉で、混浴できるのは何歳までか?>

 厚生労働省は男女の混浴禁止年齢の基準を 「おおむね10歳以上」 から 「おおむね7歳以上」 に引き下げたとの報道がありました。
 これを受け、公衆浴場を規制する条例を定める都道府県や保健所を運営する一部の市では、条例改正に動き出したといいます。

 そんな中、群馬県は現条例の 「おおむね10歳以上」 を当面維持すると発表しました。


 なぜ、今になって、そんな論争が起きたのでしょうか?
 それは、時代の推移による “恥ずかしさ” への変化です。

 最新の混浴に関するアンケートによると、成人に聞いた制限すべき年齢で最も多かったのは 「6歳以上」 で、次いで 「7歳以上」。
 一方、児童が混浴を恥ずかしいと思い始める年齢でも 「6歳」 と 「7歳」 が多かったといいます。
 同省は、この結果を踏まえて、公衆浴場の混浴制限年齢を引き下げたようです。


 みなさんは、どう思われましたか?
 僕は率直な感想、「仕方ないかな」 と思っています。
 だって今の10歳って、男の子も女の子も発育が昔とは、だいぶ異なりますからね。
 子どもが恥ずかしいと思っているのであれば、混浴を強制することはないと思います。
 逆に強制することは、親の子への虐待にもなりかねませんものね。


 さて、公衆浴場の混浴問題は、お役人たちに任せることとして、由々しき現状は、温泉地での混浴風呂の減少問題です。

 その前に、なぜ、公衆浴場では成人男女の混浴は禁止されているのに、温泉地での混浴は許されているのでしょうか?
 講演やセミナーでも、よく質問されるテーマです。

 これって、早い話 「お目こぼし」 なんです。
 “混浴” という日本独特な文化は、法律ができる前から伝統的に存在していました。
 よって既得権益により認められているのです。
 ただし、これは “伝統” に限った特例ですから、新設または改修された場合には認められません。


 ところが、歴史と伝統のある混浴風呂が、年々温泉地から姿を消しています。
 それも新設や改修による理由ではありません。

 理由は、もうお分かりですね!?

 一番の理由は、「盗撮」 です。
 スマホの普及と同時に、混浴風呂でのトラブルが多発し、結果、閉鎖に追い込まれています。
 また、閉鎖されなくても伝統と文化を大きく覆す由々しき事態も……

 そうです!
 着衣問題です。


 本来、温泉場での混浴は 「全裸」 です。
 ところが最近、“湯あみ着” の着用を義務付ける温泉宿が増えています。
 これでは “混浴風呂” とは呼べません。
 温水プールに入っているのと同じです。

 やはり、この奇怪な現象もすべて、“盗撮” が理由です。


 もし、江戸時代の人が、令和の混浴事情を見たら、なんて言うんでしょうかね?
 「便利になるって、なんて不粋なんだ。風情も情緒もあったもんじゃねえ」
 そんな声が聞こえてきそうです。
  


Posted by 小暮 淳 at 11:56Comments(0)温泉雑話