温泉ライター、小暮淳の公式ブログです。雑誌や新聞では書けなかったこぼれ話や講演会、セミナーなどのイベント情報および日常をつれづれなるままに公表しています。
プロフィール
小暮 淳
小暮 淳
こぐれ じゅん



1958年、群馬県前橋市生まれ。

群馬県内のタウン誌、生活情報誌、フリーペーパー等の編集長を経て、現在はフリーライター。

温泉の魅力に取りつかれ、取材を続けながら群馬県内の温泉地をめぐる。特に一軒宿や小さな温泉地を中心に訪ね、新聞や雑誌にエッセーやコラムを執筆中。群馬の温泉のPRを兼ねて、セミナーや講演活動も行っている。

群馬県温泉アドバイザー「フォローアップ研修会」講師(平成19年度)。

長野県温泉協会「研修会」講師(平成20年度)

NHK文化センター前橋教室「野外温泉講座」講師(平成21年度~現在)
NHK-FM前橋放送局「群馬は温泉パラダイス」パーソナリティー(平成23年度)

前橋カルチャーセンター「小暮淳と行く 湯けむり散歩」講師(平成22、24年度)

群馬テレビ「ニュースジャスト6」コメンテーター(平成24年度~27年)
群馬テレビ「ぐんまトリビア図鑑」スーパーバイザー(平成27年度~現在)

NPO法人「湯治乃邑(くに)」代表理事
群馬のブログポータルサイト「グンブロ」顧問
みなかみ温泉大使
中之条町観光大使
老神温泉大使
伊香保温泉大使
四万温泉大使
ぐんまの地酒大使
群馬県立歴史博物館「友の会」運営委員



著書に『ぐんまの源泉一軒宿』 『群馬の小さな温泉』 『あなたにも教えたい 四万温泉』 『みなかみ18湯〔上〕』 『みなかみ18湯〔下〕』 『新ぐんまの源泉一軒宿』 『尾瀬の里湯~老神片品11温泉』 『西上州の薬湯』『金銀名湯 伊香保温泉』 『ぐんまの里山 てくてく歩き』 『上毛カルテ』(以上、上毛新聞社)、『ぐんま謎学の旅~民話と伝説の舞台』(ちいきしんぶん)、『ヨー!サイゴン』(でくの房)、絵本『誕生日の夜』(よろずかわら版)などがある。

2022年02月05日

座敷わらしの足音


 「小暮さん、ついに出ました!」

 開口一番、興奮気味に、そう言いました。
 声の主は、ご存じ、新聞記者のKさんです。
 このブログでは、もう、お馴染みですね。


 彼は妖怪や未確認生物など、不思議なものが大好き。
 群馬に赴任早々、僕の著書と出合い、強引に面会を求めてきたほどのガッツの持ち主です。
 その彼が、今、夢中になっているのが 「座敷わらし」 です。

 <さて私が泊まった部屋は、座敷わらしがよく出るといわれる廊下のすぐ近く。深夜3時。私はもう一度風呂に入った。わらしはいるのだろうか。>
 <出会った人には幸運をもたらすという座敷わらし。目撃した宿泊客は 「可愛いです。お菓子をあげるとすごく喜びます」。私はついぞ会えず、残念な気持ちで帰路に就いた。>
 (2022年1月4日付 朝日新聞群馬版 「座敷わらし 会えるかな」 より)


 場所は群馬県猿ヶ京温泉 「わらしの宿 生寿苑」。
 温泉ライターとしてはもちろん、テレビ番組のミステリーハンターとしても、たびたび僕が紹介してきた温泉宿です。
 K記者は、この話に俄然、奮起!
 カメラを片手に、意気揚々と出かけて行ったのであります。

 ところが、ICレコーダーに 「ピクニッ」 という謎の言葉を残しながらも……
 <でも恥ずかしがり屋なのかなあ。姿は見せてくれなかった。次回は絶対に会おうね。>
 というエンディングに終わってしまったのです。
 ※(このブログの2022年1月8日 「ピクニックに連れてって……」 参照)


 そして、リベンジの時が来ました。
 彼は、宿に再取材を申し込んだのです。

 「ご主人も、あの声には驚いていましたよ。こんなにハッキリと聞いたのは初めてだと」
 「で、ついに出たって?」
 「そうなんです。夜中ですよ。私の部屋の前の廊下を、タタタッて、足音が聞えたんです」
 「足音?」
 「ええ、あれは絶対に子どもの足音です!」
 「ということは?」
 「座敷わらしです!」

 彼の興奮は、ピークに達したようです。
 これは、クールダウンをさせねば……

 「足があるということは、幽霊ではない」
 「座敷わらしは、妖怪ですから」
 「……」

 「でも足音は聞いたけど、姿は見てないんだよね?」
 「そこなんですよ、残念なのは」
 「座敷わらしは、見た者だけが出世をしたり、お金持ちになったり、幸運をもたらすんだよね?」
 「ええ」
 「前回は声、今回は足音。なかなか会えませんな」

 少しはクールダウンしたかと思いきや、
 「もう一度、行って来ます!」


 この懲りないところが、根っからの記者魂なんですね。
 いいぞ、Kさん! 行け行け~!

 次回は、座敷わらしとのツーショット写真入りの記事を待っています。
  


Posted by 小暮 淳 at 11:47Comments(0)謎学の旅

2022年02月02日

伝説の巨人を追え!


 ダイダラボッチやデーラン坊など、群馬県内には、いくつもの巨人伝説があります。
 でも、その舞台や物証が残っている伝説といえば、妙義山の 「百合若大臣」 しかいません。

 百合若大臣 (ゆりわかだいじん) とは?
 伝説上の英雄で、弓の名手です。
 そもそもは室町時代に北九州で作られた話で、のちに浄瑠璃や歌舞伎によって全国に広まりました。
 物語はシンプルな復讐劇なのですが、百合若という主人公の体が大きく、力持ちであったことから流布する過程で巨人話に脚色されたようです。
 伝説は全国に残されていますが、なぜか関東地方にだけ巨人化した話が多いのです。


 実は、この話、拙著 『ぐんま謎学の旅 民話と伝説の舞台』(ちいきしんぶん) の中に収められています。
 そのタイトルは、「巨人が射抜いた岩は、どこへ落ちたか?」。

 本書では、巨人が矢で射抜いた岩山、その時に踏ん張った足跡、今も宝物として大切に保管されている弓と矢、その矢が落ちた場所、さらには矢と射抜かれた岩の飛行ルートを追いました。
 荒唐無稽な創話でありながらも、つじつまを合わせが巧みにされている秀逸な民話であることが分かります。


 「小暮さん、リポートしていただけませんか?」
 先月、テレビ局のディレクターから電話がありました。
 予定していた番組の撮影が、“まん防” のため中止となってしまったといいます。
 急きょ、代替案として浮上したのが、三密を避けた、ソロリポートによる撮影だったようです。

 「小暮さんの著書に書かれた百合若大臣が放った矢の飛行ルートを追いましょう!」

 それは面白い!
 すべて物証が残っている民話なのだ。
 映像として世に送り出すチャンスでもあります。

 二つ返事で引き受けると、数日後、台本が送られてきました。


 そして昨日、妙義山麓にて、ロケを行ってきました。
 足跡、射抜いた岩山の空洞、弓矢、そして……

 あっと驚く、エンディングが待ち受けています。

 乞う、ご期待!

 ※放送は2月15日(火) 21:00~、群馬テレビ 「ぐんま!トリビア図鑑」
   


Posted by 小暮 淳 at 10:21Comments(0)謎学の旅

2022年01月08日

ピクニックに連れてって……


 みなさんは、覚えていますか?
 レコーダーの中から謎の声が聞こえたという話を?
 ※(当ブログの12月13日 「謎の声 ピクチー」 参照)


 あれは昨年12月、とある朝のこと。
 突然、知人の新聞記者、Kさんからの電話で起こされました。

 「小暮さん、これを聞いてください!」


 Kさんは僕の勧めで、座敷わらしが出るという温泉旅館に泊まりました。
 その夜は何事もなく、順調に取材を終えたといいます。
 ところが翌日、新聞社に帰り、昨晩の録音を再生してみると……

 <だがインタビューの際に使ったICレコーダーを再生したら子どものような可愛い声が一瞬入っていた。意味は分からないが、「ピクニッ……」 と聞こえる。>
 (2022年1月4日付 朝日新聞群馬版 「座敷わらし 会えるかな」 より)

 さらに記者は、こう記します。

 <座敷わらしはいたんだ。怖いというより何だかうれしくなった。「ピクニックに連れてって」 とでも言っていたのだろうか。でも恥ずかしがりやなのかなあ。姿は見せてくれなかった。>


 そうか、彼には 「ピクニッ」 って聞こえたんですね。
 あの時、僕には 「ピクチー」 と聞こえました。
 「ピクチー」 だから意味不明だったのであって、「ピクニック」 と言おうとしていたのであれば、なんとなく意味も通ります。

 でも、座敷わらしって、江戸時代の子どもですよね?
 ピクニックなんて言葉、知っているんでしょうか?

 いえいえ、座敷わらしは何百年もの間に、時代の変化を確実に学習しています。
 その証拠に、この宿に居つく座敷わらしは、コーラが好物なんです。

 <部屋に帰る途中、飲料水の自動販売機コーナーに寄った。お金を入れると 「僕、コーラ」 と声がするというが、何も聞えなかった。こちらが意識しすぎると、警戒して近寄ってこないのだろうか。>


 昨日、またKさんから電話がありました。
 もう一度、旅館に泊まってくると言います。
 何が何でも座敷わらしに会いたいのだと。

 「今回は群馬版でしたけど、次回は全国版に書きます。座敷わらしは、絶対にいますよ!」


 僕も過去に数回、その宿に泊まっていますが、まだ一度も座敷わらしには会っていません。
 彼に先を越されるのも悔しいですが、同じ謎を追うミステリーハンターとしては、応援したいと思います。

 行け行け、K記者!
 座敷わらしを捕獲せよ!
   


Posted by 小暮 淳 at 11:33Comments(0)謎学の旅

2021年12月13日

謎の声 「ピクチー」


 「朝、早くに、すみません。今、大丈夫ですか? 小暮さん! これを聴いてくださいよ!」

 電話の主は、新聞記者のKさん。
 声のトーンからして、ただ事ではない様子です。


 2日前の夕方、やはり彼から電話がありました。
 「今、S温泉のS苑に来ているんです」
 「おお、ついに泊まることにしたのか!?」
 「ええ、小暮さんがテレビで言っていた座敷わらしに会いに来ました」
 「Kさんなら会えるかもよ。霊感、強そうだし」
 「今からワクワクしています」
 「で、プライベートなの? それとも取材?」
 「仕事です。今夜、ご主人から話を聞けることになりました」

 そんな内容のやりとりでした。


 「いいですか、これから流しますから、よーく聴いてください」
 
 電話の奥から話声が聞こえてきました。。
 あまり良くは聞き取れませんが、彼の声に重なって、もう一人、ご主人らしき男性の声が聞こえます。
 取材した時に録音した音声のようです。

 「キーン」

 会話の途中に、突然、変な音が入りました。
 僕には、何か金属音のように聞こえました。

 「今のところです。もう一度、再生しますよ」

 今度は、かん高い女の人の叫び声のようにも聞こえます。

 「分かりました?」
 「ああ、聞こえた。声のようでもあり、なんだか高音のノイズにも聞こえるね」
 「子どもの声ですよ、子どもの声!」
 「ああ、言われてみれば……」
 「なんて、聞こえましたか?」
 「えー、そこまでは……」

 「僕には、“ピクチー” って聞こえます」

 「ピクチー? ピクチーってなんだよ」
 「分かりません」


 “ピクチー” って、何だろう?
 そう思い、ネットで検索してみました。
 一件だけヒットしました。
 豆菓子の商品名です。

 まさか、座敷わらしが、こんなマニアックなお菓子を、ねだるでしょうか?

 もしかしたら、“ピクチー” は彼の聞き違いで、似たような別の言葉だったのかも?
 たとえば、“ピクシー” とか?

 でも、“ピクシー” は、ポケモンのキャラクターの名前でした。
 いくら座敷わらしが子どもだからいっても、現代のアニメを知っているとは思えません。


 はたして、謎の声が発した 「ピクチー」 という言葉の意味は?

 彼の書く新聞記事の掲載が待たられます。
  


Posted by 小暮 淳 at 11:07Comments(0)謎学の旅

2021年10月05日

地獄へ行く覚悟


 <ある日の事、小学校6年生になっていたその人は、先代さんに言ったそうです。
   「お坊さんはいいなぁ。お金には困らまいし、死んだら天国 (子どもの認識における仏の国。豊かで幸せな場所、という意) に行けるんだから…」
  すると先代さんは、小学生のその人に対し、
   「そうではないんだよ。坊さんっていうのは、天国に行ってはいけないんだ。そうではなくって、お坊さんは、死んだら地獄へ行かなければいけないんだ」
  と応えたとのこと。>


 先週、テレビの取材で群馬県内のさる天台宗のお寺を訪ねました。

 僕は現在、群馬テレビの 『ぐんま!トリビア図鑑』 という番組のスパーバイザー (監修人) をしていますが、同時に番組のレポーターもしています。
 年に何本もありませんが、自分がレポーターをする番組については、ロケハンも行います。

 「ロケハン」 とは、ロケーションハンティングの略。
 ロケ=撮影(本番)、に入る前の下見です。
 同時に、出演者などに取材も行います。

 同行したのは、番組のディレクターと放送作家です。
 3人で県内2ヶ所の寺を回り、撮影場所の確認や出演者との打ち合わせを済ませてきました。


 冒頭の話は、その時行った寺の住職からいただいた 「法話集」 に載っていた一話です。
 『地獄へ行く覚悟、ありますか?』 というショッキングなタイトルに目が留まり、真っ先に読み始めました。


 <(エッ!?)
  頭に疑問符を浮かべる小学生に対し、先代さんは続けて、次のように諭したそうです。
   「死んだら自分だけ天国に言ったりせず、地獄へ行って、そこで苦しんでいる人たちの事を、(どうかお助けください、お救いください!) と、仏さまに一生懸命お願いするのが、お坊さんの役目なんだよ」 と…。>


 この後、法話では、著者 (住職) の心の葛藤が記されています。

 <死んでから地獄に行く覚悟かぁ…。
  今までの俺にはなかったよなぁ。
  お浄土に行くことしか考えてなかったしなぁ。
  先代さんは今、どこでどうしていらっしゃるだろう?>

 そして著者は、ある見解を導き出します。
 それは、逆説です。

 <「死後の地獄行き」 を念じながら生涯を尽くしたような人が、結果として、安らかな極楽往生を果たし、やがては仏と成り、地獄に手を差し伸べたりするものかもしれません。>


 いやはや、僧侶とて、人の子なんですね。
 仏門に入ったからといって、すぐに悟りが開けるものではないんですね。

 最後に著者は、こう言葉をつづっています。

 <よおし、俺も死んだら地獄へ行くぞ!>

 なんとも明るい住職であります。


 番組では、住職と僕が、“疫病退散” をテーマに一問一答いたします。
 内容の詳細は、後日、発表いたします。

 ※放送は11月2日(火) よる9時~です。
  


Posted by 小暮 淳 at 11:20Comments(0)謎学の旅

2021年09月29日

落語 『末期の酒』 動画配信開始!


 お待たせしました!
 本日より、落語 『末期の酒』 がYouTubeにて、動画の配信が始まりました。
 ※(動画配信までの詳細は、当ブログの2021年9月26日 「『末期の酒』 再演」 参照)

 ぜひ、お楽しみください。


 一席目 『末期の酒~牢番編』  https://youtu.be/rrRiHMlsYM8

 二席目 『ねずみ穴』  https://youtu.be/Dy1OA-kQi-c

 ※つながらない場合は、「都家前橋 末期の酒」 で検索してください。
  


Posted by 小暮 淳 at 12:15Comments(0)謎学の旅

2021年09月26日

『末期の酒』 再演


 『末期の酒』 という話を覚えていますか?

 昨年9月、僕は高崎市のフリーペーパー 「ちいしんぶん」 に、≪忠治外伝 末期の酒 「牡丹」 を探しに≫ という記事を書きました。
 嘉永3(1850)年に国定忠治が関所破りの罪で、大戸 (群馬県東吾妻町) の処刑場で磔(はりつけ)の刑に処せられた際、“末期の酒” に選んだのが 「牡丹」 という酒だったという内容でした。

 この記事が発端となり、忠治ファンや地酒マニアの間で、小さなムーブメントが起き始めました。


 今年3月、群馬テレビ 「ぐんま!トリビア図鑑」 で、『伝説のお大尽 「加部安」 とは?』 放送。
 番組では、僕がリポーターとなり、当時 「牡丹」 を醸造していた 「加部安」 こと加部安左衛門の酒蔵跡を訪ねました。
 この番組の冒頭とエンディングに流れたのが、落語の 『末期の酒』 でした。

 『末期の酒』 は、前橋市在住の噺家、都家前橋(みやこや・ぜんきょう) さんの創作落語です。
 前橋さんと僕は、飲み屋の常連同士。
 昨年、「ちいきしんぶん」 の記事を見せたところ、いたく感動して、この話を落語にしてくださったのでした。


 さて、群馬テレビで放送されると、「末期の酒」 は、各方面で反響がありました。
 今年4月、朝日新聞が ≪国定忠治の最期の一献 落語に≫ と見出しを付けて、大々的に報道しました。
 これに触発され、がぜん奮起したのが、都家前橋さんであります。

 「番組で放送されたのは、ほんのさわりの部分だけ。ちゃんとした落語に仕上げたい」
 と一念発起!
 めでたく、このたび完成しました。

 題して、『末期の酒 ~牢番編~』


 ということで昨日、前橋市内の某会館にて、完成お披露目会を兼ねたユーチューブ用の収録が行われました。
 コロナ禍の緊急事態宣言下のため、関係者のみの入場で行われましたが、僕も “発案者” という特別枠にて、観覧させていただきました。

 忠治が処刑前夜、末期の酒を所望します。
 出された酒は、はたして本当に 「牡丹」 なのか?
 ばくち打ちの忠治らしく、役人と最期の賭けをします。
 その丁々発止の妙技が、笑いを誘います。

 さて、その結末は、いかに!?


 ユーチューブでの配信日が決定しましたら、お知らせします。
 乞う、ご期待!


 ※(落語ができるまでの概略は、当ブログの2021年2月27日 「忠治と落語」 を参照)
   


Posted by 小暮 淳 at 12:32Comments(2)謎学の旅

2021年08月26日

ヒーロー or ダーティー


 2020年9月
 僕は高崎市のフリーペーパー 「ちいきしんぶん」 に、『忠治外伝 末期の酒 「牡丹」 を探しに』 という記事を書きました。
 嘉永3(1850)年、国定忠治は関所破りの罪で幕府にとらえられ、大戸 (東吾妻町) の関所近くの処刑所にて磔(はりつけ)の刑に処せられました。
 その時、忠治が “末期の酒” に選んだのは 「牡丹(ぼたん)」 という酒だったことを記しました。

 2021年3月
 僕はスーパーバイザーを務める群馬テレビの番組で、自らがリポーターとなり 『伝説のお大尽 「加部安」 とは?』 という回を放送しました。
 忠治が “末期の酒” に選んだ 「牡丹」 という酒を造っていた蔵元が、「加部安」 という人物だったのです。

 この一連の流れに、たくさんの方々が興味を持ってくださいました。
 その一人が前橋在住のアマチュア落語家、都家前橋(みやこやぜんきょう)さんでした。
 創作落語 『末期の酒』 を作り上げました。
 その話題は、<国定忠治の最期の一献 落語に> と見出しを付けて、新聞でも報道されました。
 (2021年4月14日付 朝日新聞群馬版より)


 国定忠治は、群馬県民なら誰もが知る “郷土のヒーロー” です。
 もちろん、僕にとっても忠治はヒーローなのですが、必ずも万人にとってヒーローか?というと意見の分かれるところです。
 彼は、江戸時代の侠客(きょうかく)ですからね。
 “やくざ者” であることにも違いありません。

 はたして国定忠治は、ヒーローなのか? ダーティーなのか?

 昨日の朝日新聞に興味深い記事が掲載されました。
 執筆されたのは、たびたび僕の活動を取材し取り上げてくれている小泉信一記者であります。


 <国定忠治 ならず者か英雄か>
 <伊勢崎市、生誕200年の催し中止から11年>

 記事によれば平成22(2010)年5月、忠治生誕200年の記念イベント開催をめぐり、当時の市長が 「歴史的に評価が分かれている人物に税金をかけるのはいかがなものか」 と難色を示したため、イベントは中止となりました。

 忠治への評価への風当たりの強さは、戦後まもない頃にもありました。
 ご存じ、『上毛かるた』 です。
 初版を発行する際、県民から 「忠治を読み札に採用して欲しい」 との要望が寄せられましたが、「日本の封建制度を支えた侍ややくざは不可」 とするGHQ (連合国軍総司令部) の意向をくみ、採用されなかったいいます。

 それでも戦後、歌舞伎をはじめ講談や浪曲、映画と数えきれないほどの作品に忠治は登場します。
 やはり忠治には、根強いヒーローとしての人気があったのです。


 記事では最後に、対照的なヒーローとして清水次郎長にも触れています。
 故郷の静岡市は昨年、生誕200年を記念して動画を配信。
 任侠を 「chivalry(騎士道)」 と訳した英語字幕版まで制作し、「ジロチョー」 を世界に発信しています。

 はたして、この違いは?
 県民性の違いなのでしょうか?


 確かに忠治はダーティーではあるけれど、多くの貧しい人々を救っています。
 十分にヒーローだと思うんですけど。

 完全無欠の潔癖なヒーローより、アウトロー的要素を持ち合わせているほうが、カッコイイと思いません?
 みなさんは、どう思われますか?
   


Posted by 小暮 淳 at 11:40Comments(0)謎学の旅

2021年08月16日

怪談 「猫の怨念」 他一話


 今日8月16日は盆明け、送り火の日です。
 今頃、ご先祖様たちは、ナスの精霊牛に乗って、黄泉の国へ帰る準備をしていることでしょう。

 お盆最後の日ということなので、今年も恒例の怪談話をお届けします。
 身の毛もよだつ、恐ろしい生き物たちの話です。



 【亀の呪い】

 ある村のはずれに廃寺があり、境内の奥に小さな池がありました。
 この池には、何万年も生き続けているという大きな亀が棲んでいました。
 でも誰一人、この亀の姿を見た者はいませんでした。

 ある夕暮れ時のこと。
 一人の若者が、この廃寺の前を通りかかると、ガサゴソ、ガサゴソと草を踏みしめるような音が聞こえてきました。
 「もしかしたら伝説の亀が現れたのかも……」
 と若者は、恐る恐る池に近づきました。
 すると、池のほとりの草むらの中から長い鎌首を持ち上げた大きな亀が、こちらをにらめつけています。

 「で、で、出た~!」
 大声を上げた途端、若者は腰を抜かして、動けなくなってしまいました。
 「もうダメだ、おいらは、あの亀に食い殺されてしまう」
 と覚悟を決めて、念仏を唱え出しました。

 ところが、一向に亀は、こちらへやって来ません。

 ノッソ……ノッソ……

 それを見て、若者は言いました。

 「亀の歩みは “のろい”」



 【猫の怨念】

 大阪・道頓堀の一角に大きな屋敷がありました。
 夜、その屋敷の前を通ると、赤ん坊の泣き声が聞こえてくると噂になっていました。

 ある晩のこと、酔っぱらいが屋敷の前を通りかかりました。
 「オギャー、オギャー」
 屋敷の中から赤ん坊のような泣き声が聞こえてきます。
 「こんな夜中に、赤ん坊が一人で庭にいるわけがない。どれどれ、確かめてやろう」
 と酔っぱらいは、塀をよじ登りました。
 そして、塀の上から屋敷の中をのぞくと……

 一匹の黒猫が、こちらを見て、鳴いています。
 「オギャー、オギャー」
 酔っぱらいは言いました。

 「そこに猫が “おんねん”」


 おあとが、よろしいようで。
 チャンチャン!
   


Posted by 小暮 淳 at 11:38Comments(2)謎学の旅

2021年08月08日

第3の刺客


 「昭和6年9月に発生した西埼玉地震では、群馬県内でも甚大な被害が記録されていますね」
 「昭和20年2月、なぜかB29が2機も邑楽町に墜落しているんですよ」
 「サツマイモの発祥は、群馬県だったって知ってます?」


 群馬テレビの人気謎学番組 『ぐんま!トリビア図鑑』。
 僕は、この番組のスーパーバイザー (監修人) を務めています。
 今週、企画会議が開かれ、末席をけがしてまいりました。

 休憩なしの2時間半、今回も奇想天外なアッと驚くネタの数々が飛び出し、白熱した会議になりました。


 放送開始から丸6年、これまでに放送された番組は、250回を超えています。
 それでも毎回、会議でネタが枯渇することはありません。

 群馬に生まれ育って半世紀以上。
 長年、群馬県内のタウン誌、情報紙、フリーペーパーの編集人をしてきた僕でさえ、会議では 「へぇ~、知らなかった」 の連発です。
 群馬の “トリビア” は、無尽蔵に眠っているんですね。


 さて、スーパーバイザーとしての意見やコメントだけでなく、僕も毎回、取れたての生きのいいネタを提供しています。
 今回、僕が “まな板の上” にのせ、調理する食材は?

 ズバリ、疫病退散の刺客です!


 一向に新型コロナウイルス感染拡大の収束は見えません。
 あれだけ期待され、鳴り物入りで登場した 「アマビエ」 も力不足だったようです。
 2匹目のドジョウ、「ヨゲンノトリ」 にいたっては、見る影もありません。

 ならば、第3の刺客を送り込もう!
 ということになりました。

 では、その刺客とは?

 もう妖怪に頼るのは、やめました。
 実在した人物、しかも法力をもって疫病魔を退散させたという偉いお坊さんです。
 群県内には、ゆかりの寺がいくつもあります。


 「小暮さん、今回もレポーターをお願いしますね」
 とディレクター氏。
 「えっ、ネタの提供だけじゃないの?」
 「はい、ミステリーハンターとして出演していただきます」

 ということになりましたので、オンエアを楽しみにしていてください。
 放送日が決定しましたら、ご報告いたします。

 乞う、ご期待!
   


Posted by 小暮 淳 at 12:24Comments(0)謎学の旅

2021年07月27日

コーラが好きな座敷わらし


 今月13日に群馬テレビでオンエアされた 『ぐんま!トリビア図鑑』。
 「二つの秘密 河童と座敷童」 は、ご覧になりましたか?

 再放送を含め3回も放送されたこともあり、たくさんの方が観てくださったようです。
 大変反響がありました。
 「良くまとまっていた番組でした」
 「ナレーションが良かった」
 「ナビゲーターが板についてますね」
 「目撃例があるのが凄い」
 などなど、友人・知人・読者から多くのメールやコメントをいただきました。

 ありがとうございました。


 ディレクターの手腕でしょうね。
 15分という番組の中で、2つの妖怪伝説を紹介し、さらに体験者のコメントを入れ、共通項を見いだす。
 さすがです!

 実は、たった15分の番組を製作するのに、ロケには2日間の時間を費やしています。
 廻したカメラは約8時間にも及びます。
 ということは、番組に採用されなかったシーンが、何倍もあるということです。

 たとえば番組内で紹介した民話、影絵 『カッパのくすり』 も語り部が語る 『座敷わらしの家』 も、カメラは全編収録していますが、実際に使われたシーンは数分です。
 当然ですが、僕がお会いしたカッパを捕まえたお婆の子孫や座敷わらしと暮らした夫婦の末裔の方々へのインタビューも、ほとんどがカットされています。

 残念ではありますが、番組では、これが限界です。
 でも、とっても貴重なインタビューなので、ぜひテレビ局には貴重な資料として保管していただきたいと思います。


 さて、撮影の合間での雑談でのことです。
 スタッフ一同、背筋がゾーッとした話がありました。

 座敷わらしが現れることで有名な旅館の主人と話していた時のことです。
 すでに、この旅館には3人の座敷わらしが棲みついていることが分かっています。
 年長の男の子と年少の男の子、そして年端のいかぬ女の子です。

 でも3人は、“きょうだい” ではありません。
 なんで、そんなことが分かるのかって?
 はい、すべて宿泊客の証言であります。

 目撃例は多数あり、なかには会話をした客もいるとのこと。
 それらの目撃談により、女の子の名前は 「リンちゃん」 ということも分かっています。
 リンちゃんのお気に入りは、クマのぬいぐるみです。

 ロビー脇の畳の部屋には、宿泊客らが置いていったおもちゃやお菓子が山のように積まれています。
 その中央に置かれているのが、クマのぬいぐるみです。
 僕は、その中に違和感のあるモノを見つけました。

 缶コーラです。

 「座敷わらしが、コーラなんて飲むんですかね?」
 素朴な疑問に対して、主人から驚くべき事実が語られました。

 「ええ、2人の男の子のうち、どちらかの子が、コーラが好きらしいんですよ」


 この旅館には、浴場へ向かう長い廊下の途中に、飲料の自動販売機があります。
 深夜、この販売機にコインを入れようとすると……

 《 ボ ク ハ コ ー ラ ガ イ イ 》

 という男の子の声が聞こえたといいます。
 それも複数の客が聞いたことから、いつしか畳の部屋には、おもちゃやお菓子にまざって、コーラが置かれるようになったといいます。


 あったこったか なかったこったか
 (あった事だか 無かった事だか)
 あったこったと話すから
 (あった事として話すから)
 あったこったと きかっさい
 (あった事だと思って 聞きなさい)
 <猿ヶ京温泉 「民話と紙芝居の家」 語り部口上より>
 
   


Posted by 小暮 淳 at 13:06Comments(0)謎学の旅

2021年07月19日

酒井正保先生のこと


 <きっかけは13年前に、さかのぼる。当時、私は群馬県内で無料配布されていた生活情報誌の編集人をしていて、毎月、一号一話、編集後記の代わりにコラムを連載していた。タイトルは 『編集長がゆく』。県内で起きている不思議な現象や奇妙な習慣、荒唐無稽な伝説を追って、その謎を解き明かす旅に出ていた。>
 『ぐんま謎学の旅 民話と伝説の舞台』(ちいきしんぶん) 「まえがき」 より

 このコラムを執筆するにあたり、参考にさせていただいた文献が、民俗研究家・酒井正保先生の著書の数々でした。
 酒井先生の著書との出合いは、さらに十数年前にさかのぼります。


 <民話や伝説に興味を抱くようになったのは、フリーランスのライターになってまもなくの頃。編集を手がけた 『前橋めっけ ~ぼくら、ふるさと探検隊~』(前橋法人会) という小冊子との出合いでした。前橋市に生まれ育ちながら、見るのも聞くのも初めての摩訶不思議な風習や慣習が残されていることを知りました。しかも、それらは何百年も前から伝わる民話や伝説に端を発しているものが多いのです。>
 『ぐんま謎学の旅 民話と伝説の舞台』(ちいきしんぶん) 「あとがき」 より

 群馬県前橋市という一地方都市限定の “謎学本” の編集を任されたのです。
 「あとがき」 にも書きましたが、この土地に生まれ育ちながらも正直、民話や伝説には無縁の生活をしていました。
 そんな手探りでの取材活動の折に出合ったのが酒井先生の著書でした。

 『前橋昔がたり』 (朝日印刷)
 『前橋とその周辺の民話』 (朝日印刷)

 前橋市在住の酒井先生ならではの緻密な取材で集められた、実にコアでマニアックな本でした。
 もう僕は夢中になって、先生の他の本も読み漁りました。
 そして、「いずれ先生のように、地元に根付いた民話や伝説をテーマに本を書いてみたい」 と思うようになったのであります。


 僕は一度だけ、先生にお会いしたことがあります。
 といっても、講演会という一方的な場での面識ですが……
 当時、すでに先生は80歳を過ぎていましたが、その雄弁に語る民話や伝説の奥深さに、グイグイと引き込まれたことを覚えています。
 (当ブログの2011年2月26日 「民話に魅せられて」 参照)


 そんな先生が、今年も新著を出版したという新聞広告を目にしたので、速攻、購入しました。
 『心に残る上州の伝承民話を訪ねて』 (上毛新聞社)

 昨年も 『上州の方言と妖怪の民俗を訪ねて』 (上毛新聞社) を出版していますから、2年続けてということになります。
 確か先生は、90歳を過ぎられているはずです。
 いったい、そのバイタリティーは、どこから湧いてくるのでしょうか?

 そう思ったら、がぜん、僕にも勇気と希望が湧いてきました。
 だって、先生の歳まで、まだ30年もあるのですから!

 まだ書ける、まだまだ書ける!


 酒井先生、いつまでもお元気で、まだ眠っている民話や伝説を掘り起こしてください。
 次回の新著を楽しみにしております。
   


Posted by 小暮 淳 at 11:12Comments(0)謎学の旅

2021年06月27日

さよなら、チェーン・レター


 昨日は、フォークロア (噂話や都市伝説) の話をしました。
 令和の現代は、ネット社会が、そのメイン舞台となっているようですが、僕が子どもの頃 (昭和の時代) は、アナログのフォークロアが飛び交っていました。

 その中でも、最も子どもたちを震撼させ、マスコミにも取り上げられ、社会問題にもなった出来事があります。
 「不幸の手紙」 です。

 いわゆるチェーン・レター (連鎖手紙) と呼ばれる不特定多数へ送り付ける迷惑ハガキのことです。


 ある日突然、自分を名指しで届く、不吉な手紙。
 文面は、このようなものでした。

 <これは※(1) から始まり、私のところ来た 「不幸の手紙」 です。あなたのところで止めると、必ず不幸が訪れます。※(2) の人は止めたので、※(3)年後に死にました。あなたも※(4) 時間以内に文章を変えずに※(5) 人の人に、この手紙を出してください。私は※(6) 番目です。>

 ※(1) 国名が書かれている。
 ※(2) ここにも外国の地名や日本国内の都市名が書かれている。
 ※(3) 1~5年後と、まちまち。
 ※(4) 24時間~数日の猶予があり。
 ※(5) 7~8人くらいから数十人のことも。
 ※(6) 何千、何万桁の数字が書かれている。


 そして文章の隣には、何十人という人の名前が書かれていて、
 <一番下にあなたの名前を書き、一番上の人の名前を消してください。>
 との注意書きがあるため、“誰から” 送られて来たのかは一目瞭然です。

 たいがいは、クラスメートからでした。


 僕のところにも数回、届いた記憶がありますが、一度も出したことはありませんでした。
 というのも、このテの物をオヤジが大変嫌っていたからです。

 「おい、ジュン、お前宛に、こういうハガキが来ているけど、捨てるぞ!」
 と、毎回、オヤジにブロックされていました。
 「そんなことしたらダメだよ。死んじゃうんだよ!」
 と言えば、
 「バカ、これは悪質ないたずらなんだ」
 と、僕の目の前で、破り捨てるのでありました。


 あれから半世紀。
 「不幸の手紙」 のウワサは、まったく聞きませんが、完全に消滅したのでしょうか?
 それとも変異ウイルスのように進化を遂げ、ネット社会の中で根深く生き残っているのでしょうか?

 もしかしたら一銭にもならない “いたずら” は鳴りを潜め、お金になる “サギ商法” として姿を変えているのかもしれませんね。
  


Posted by 小暮 淳 at 11:31Comments(0)謎学の旅

2021年06月26日

フォークロアの後始末


 < 「心霊スポット」 として動画投稿サイト 「ユーチューブ」 で配信し、無断立ち入りなどを助長させてしまったことを悔やむユーチューバーの前橋市の I さん (34) と伊勢崎市のHさん (36) は23日、M市のH神社で賛同した有志らと共に境内の草刈りに取り組んだ。>
 (2021年6月24日付 上毛新聞より ※名詞は頭文字にしました)


 昔、といっても半世紀も前のことです。
 僕が小学生の頃、「お化け屋敷」 の探検ごっこが流行りました。
 「お化け屋敷」 といっても遊園地やテーマパークにあるアトラクションではありません。

 いわゆる “廃墟” のことです。


 小学生だから行動範囲は広くありません。
 市内一部の学区内での “廃墟探し” です。
 廃墟があれば、それは必ず=幽霊の出る場所、となります。
 そして、好奇心旺盛なヤンチャ坊主たちは、こぞって探検に出かけるわけです。

 僕が暮らす市内中心部の町内にも、有名な廃墟がありました。
 正しくは、ただの “空き家” なんですけどね。
 あるとき、先陣を切って探検した悪ガキたちから報告がありました。

 「あの家はな、殺人事件があったんだ。その証拠をオレたちは、見つけた!」
 悪ガキのボスが言うことには、今でも敷地内に “血の付いた刃物” と “人の骨” があるというのです。

 当然、「ウソだ!」 「いや、オレたちは見た!」 と論争になり、最後は、「だったら案内するから放課後、一緒に行こう!」 ということになりました。
 そして僕ら普通 (?) のガキたちは、恐る恐る悪ガキたちの後をついて行ったのでした。


 壊れた垣根をくぐり抜け、草ぼうぼうの庭に入ります。
 家の中には、カギがかかっていて入ることはできません。

 「どこに凶器があるんだよ?」
 「人の骨なんて、ないじゃないか?」

 僕らの問いにボスは、薄気味悪い笑みを浮かべて、こう言いました。
 「ほれ、お前たちの足元だよ!」

 そう言われて、下を見る僕たち。
 朽ちた縁側の下に、刃物と骨のようなものが見えました。

 その刹那、一同は 「ワァーーーー!!!!」 と大声を上げて、一目散に垣根をくぐり、廃墟を飛び出しました。


 でもね、実は僕だけ、とっても冷静だったのです。
 「おーい、ジュン! 早く来いよ、幽霊に呪い殺されるぞ!」
 との友人の声を聞きながらも、その場にしゃがみ込んで、じっくりと観察を始めました。

 その結果、“血の付いた刃物” は、茶色くサビついた包丁だったんですね。、
 “人の骨” らしきものも、小さい骨ばかりで、たぶん野良猫か何かの死骸のようでした。


 ということで、今思えば、これらの騒動は、すべてフォークロア (都市伝説) だったのです。
 いわゆる、口伝えで広まった “ウワサ” なのであります。

 でも、僕らの 「お化け屋敷」 というフォークロアは、半世紀も前ということもあり、町内から外へ広まることはありませんでした。
 でも今は、違います。

 SNSというツールを使い、ネットで一瞬にして広まってしまいます。
 「あれは、ウソでした」
 と訂正しても、後の祭りです。


 <2人は仲間と共に制作した動画をユーチューブで配信している。心霊スポットを紹介する企画で2年前に同神社を訪れた。その後、別の配信で同神社が荒らされ、壁や窓の破損や落書きの被害に遭っていることを知り、心を痛めた。> 


 彼らが流したフォークロアとは?

 ●この神社を訪れ、ビデオを撮影をしたカップルが、帰り道に交通事故で死んだ。
 ●そのビデオを遺族が再生したら、老婆の霊が映り込んでいた。
 ●そして老婆は、神社の元管理人で、やはり交通事故死している。

 そんな、まことしやかなウワサを配信していたようです。


 草刈り清掃は、そんな彼らの罪滅ぼしなのでしょうか?
 ウソを流布した代償は、決して軽くないはずですが……

 新聞記事によると、ユーチューバーの I さんは、今回の草刈り活動について、こうコメントしています。
 「どんな場所にも管理者や近隣住民がいるということを知らせたい。活動を広めることで、一人一人の意識を変えていけたら」

 十分に反省しているようなので、少し安心しました。
   


Posted by 小暮 淳 at 12:00Comments(0)謎学の旅

2021年06月09日

まだ龍を見ていない


 きっかけは、4年前の取材でした。
 当時、僕は高崎市のフリーペーパー 「ちいきしんぶん」(ライフケア群栄) に、『ぶらり水紀行』 という旅エッセーを連載していました。
 ※(一部は上毛新聞社刊 『ぐんまの里山 てくてく歩き』 に収録)

 その日、訪れたのは上野村の野栗沢川にある 「龍神の滝」。
 大蛇が棲みついていたという伝説があり、昔は村人が近寄らなかったという滝です。
 落差は約20メートル。
 3段に分かれて落ちる様は、確かに龍が天へ向かって飛び立とうとしている姿にも似ています。


 「小暮さんは、龍を見たことがありますか?」
 滝の前で、突然、同行のカメラマン氏に訊かれました。
 「りゅう?」
 「ええ、龍を見た人は幸運をつかむといわれています」

 彼の話によれば、財界や芸能界で活躍する有名人の中には、龍を見てから成功した人が少なくないといいます。
 「龍ね、本当にいるのかね?」
 「ええ、いるのなら、ぜひ、見てみたいものですね」


 その時、僕は一冊の本を思い出しました。
 木村秋則・著 『すべては宇宙の采配』(東邦出版)

 そうです!
 木村さんは、いっとき話題となった “奇跡のりんご農家” と呼ばれた人です。
 絶対に不可能と言われた無農薬、無肥料でのりんごの栽培に成功したニュースは、当時、テレビのワイドショーに取り上げられ、木村さんのキャラもユニークだったため、引っ張りだこだったことを思い出します。

 あの時、りんごとともに話題になったのが、“龍の目撃” でした。
 木村さんは高校2年生の時と30数年後の2度、龍を見たことが著書には書かれています。
 そして、「龍を見た人は幸運をつかむ」 という言い伝え通り、過去に誰もなしえなかった “奇跡のりんご” の栽培に成功したのです。


 「龍神の滝」 から4年……

 僕は、すっかり龍の存在を忘れていました。
 ところが!
 また取材の途中で、龍の話題が出たのです。

 読者のみなさんは、覚えていますか?
 先日、テレビのロケハンで “座敷わらし” の出る宿を訪れた話を?
 ※(当ブログ2021年6月1日 「霊道を走る座敷わらし」 参照)

 あのとき、宿の主人から霊の通り道である 「霊道」 の話を聞きました。
 そして、“座敷わらし” は必ず霊道上の部屋に現れることを。
 実は、その時、こんな話も聞いたんです。

 「霊道の上は、そのまま “龍道” でもあるんです」
 「りゅうどう?」
 「ええ、龍の通り道です」


 なるほど!
 霊に道があるように、龍にも道がある。
 ということは、目撃例を集めれば、そこに “龍道” が存在するということですね。

 手がかりとしては、やはり滝や神社など “龍神伝説” のある場所が、目撃例も多そうです。
 必ず、龍の通り道を探してみせますぞ!

 謎学の旅は、つづく……
  


Posted by 小暮 淳 at 13:00Comments(0)謎学の旅

2021年06月01日

霊道を走る座敷わらし


 「この廊下が、“霊道” にあたるらしいんです」
 「れいどう?」
 「ええ、霊の通り道ですよ」

 ご主人によれば、この真っすぐのびる廊下の延長線上での目撃例が多いとのこと。
 実際に、ご主人も一度だけ、不思議な影を見たといいます。

 「深夜、フロントで仕事の整理をしていた時でした。正面に見える、この廊下を白い子どものような影が走り抜けたんです。その日の宿泊客は、外国人のカップルだけ。子どもはいませんでした」


 この宿には、こんな言い伝えがあります。

 その昔、旅の夫婦が大きな家に、一夜の宿を借りてから、そこに男の子が現れるようになったそうです。
 奥さんが、その男の子と遊んであげると、その男の子は 「奥の座敷の床下を掘ってください」 と言ったそうです。
 言われたとおりに掘ってみると、なんとそこには大判小判の入った金瓶が埋まっていました。
 その後、旅の夫婦は、その家で暮らすようになり、「座敷わらし」 に似た可愛い男の子をもうけ、末永く幸せにくらしたそうです。
 (民話 『座敷わらしの家』 より)

 「その夫婦が、私どもの先祖だといわれています」
 そう言って、ご主人は “霊道” にかかる部屋を一つ一つ、案内してくれました。


 3つの部屋は、すべて角部屋です。
 しかも、すべて敷地の入り口に立つ、立派な門を見下ろせる位置にありました。

 「霊道は、あの門を抜けて、国道へ向かっています」


 案内が終わり、ロビーにもどると、畳敷きの小上がりの奥に、たくさんのおもちゃがあることに気づきました。
 ミニカー、人形、紙風船、けん玉……

 「すべて、お客様が置いて行かれた物です」
 「男の子のおもちゃと女の子のおもちゃがありますね?」
 「ええ、お客様の話によると、男の子が2人、女の子が1人いるみたいですね」
 「3人兄妹なんですか?」
 「いえ、違うみたいですよ。年齢もバラバラのようですが、3人とも着物姿というのだけは共通しています」

 そう言うと、ご主人は、おもちゃの山の中で、ひと際目立つピンクのクマのぬいぐるみを指さしました。

 「これが、“りんちゃん” のお気に入りらしいですね」
 「りんちゃん?」
 「ええ、女の子の名前ですよ」
 「どなたか、名前を聞いたんですか?」
 「どうなんですかね……お客様が、そう呼んでいたものですから」


 昨日は、群馬テレビ 『ぐんま!トリビア図鑑』 のロケハンで、S温泉に行って来ました。
 「ロケハン」 とはロケーションハンティングのことで、撮影に入る前の下見のことです。
 僕は番組のスーパーバイザー (監修) をしていますが、ときどき、“ミステリーハンター” という肩書で、番組にも登場します。

 いよいよ次回 (7月13日放送) は、「座敷わらし」 を追います。
 乞う、ご期待!
    


Posted by 小暮 淳 at 11:07Comments(0)謎学の旅

2021年05月25日

今さら 「UFOが実在する」 と言われても


 ちょうど一週間前だったでしょうか?
 新聞の片隅に小さく、こんな記事が出ていました。

 <米国防総省で未確認飛行物体 (UFO) に関する情報を収集して分析するプロジェクトの責任者だった元当局者が、米CBSテレビの番組で 「UFOは実在する」 と明言した。>

 この記事を読んだ僕の第一声は、「なんで、今さら」 でした。
 そんなこと、誰もが知っていることだし、今まで隠していたと思っていたこと自体がナンセンスです。


 あれは、物心ついたころ。
 幼稚園でのこと。
 数人の園児たちと砂場で遊んでいる時でした。
 上空を、白い光の玉が編隊を成して、飛行して行きました。

 “ボス” と呼ばれるリーダー格の園児が、空を指さして、こう言いました。
 「あれが “空飛ぶ円盤” だよ。中には、たくさんの動物たちが乗っているんだ」

 園児たちは、騒ぎ出しました。
 「なんで?」
 「どうして、動物が乗っているの?」
 「連れ去らわれちゃったの?」

 ボスは言いました。
 「人間から動物たちを守るために、宇宙人が助けに来ているのさ」


 以来、僕はこの歳まで、ボスの言葉を信じています。
 いや、大人になればなるほど、ボスの言葉の真実味は増してきました。

 だから僕は幼稚園の頃から、“人間だけが特別” という考え方を持っていません。


 ということで、不思議なことが大好きで、別名 「ミステリーハンター」 を名乗る僕ですが、UFOには、まったく興味がありません。
 理由は、前述したように “実在” することが前提の “未確認” だからです。

 地球だけに生物が、しかも人間のような高度な知能を持った生物が、地球以外にはいないなんて、どうして言えるのでしょうか?
 たとえ太陽系に存在しなくても、地球人の人知を超えた知能と技術を持った生物が、この広い宇宙には必ずいるのですから、なんで今さら偉そうに 「実在する」 と発表するのでしょうか?


 もし僕が宇宙人なら、こう言ってやります。
 「ワレワレハ ナンマンネンモ ムカシカラ コノホシ二 キテイルノニ ナゼ チキュウジンハ ワレワレノ ソンザイヲ ミトメナイノダ? オロカナ イキモノダ」
  


Posted by 小暮 淳 at 11:43Comments(0)謎学の旅

2021年05月21日

妖精多発地帯


 「二度あることは三度ある」 と言いますが、3度あったことが、さらに4度ありました。

 たびたび、このブログで報告している “妖精の目撃” です。
 昨晩、またしても 「発光飛行生物」 が現れました!


 4度目の目撃の報告の前に、軽く過去3回をおさらいしたいと思います。
 ●1回目=10年以上前の冬の夜に、自転車に乗りながら目撃。
   (2010年11月16日 「妖精目撃」 参照)
 ●2回目=3年前の夏の夜に、自宅の庭で目撃。
   (2018年8月15日 「妖精ふたたび」 参照)
 ●3回目=今年の春の夜に、自宅仕事部屋から目撃。
   (2021年4月23日 「三度目の妖精」 参照)

 以上の3例を今までに報告しました。
 そして前回、目撃した “妖精” の類似点と相違点について、以下のように分析しました。

 ●類似点=大きさ、スピード、高度
 ●相違点=目撃した季節

 そして今回、新たな違いを発見しました!


 2021年5月20日午後10時20分。
 空気の入れ替えのため、自宅仕事場 (2階) の窓を開け放したところ、眼下を右から左へ向かって、白く発光する飛行体が、流れるように通過して行きました。

 時間と状況は、3回目の目撃とほぼ同じ条件でした。
 飛行体の大きさも高度も、ほぼ同じです。
 が! 決定的に違っていることが2つありました。

 まず、天候です。
 昨晩は、雨が降っていました。
 その雨の中を光りながら飛んでいたのです。

 そして、スピードです。
 前3回は、「スーーーーッ」 と、やや早歩きぐらいのスピードでしたが、今回の “妖精” は雨のため家路(?)を急いでいたのかもしれません。
 「ビューーーーッ」 とツバメのようなスピードで、通過して行きました。


 僕が目撃した “妖精” は、1匹なのでしょうか?
 それとも何匹もいるのでしょうか?

 いずれにしても、すべての目撃場所が、我が家周辺なのであります。
 どこかに “巣” があるのでしょうか?


 この生物に心当たりがある方は、ご一報ください。
  


Posted by 小暮 淳 at 11:08Comments(0)謎学の旅

2021年05月12日

怪談 「迷い道」


 昨日、僕はブログに “霊感はない” と書きました。

 その後、よくよく思い出してみると、僕自身が体験したことではないのですが、とっても不思議な出来事の “証人” になったことがありました。
 それは昔々のこと。
 今から45年も前の暑い夏の夜のことでした。


 高校3年生の夏休み。
 それまでに誕生日を迎えたクラスメートたちは、我先にと、こぞって自動車の運転免許を取りました。
 仲間内で一番先に免許を取得したS君から電話があったのは、8月の夜のことでした。

 「オヤジが車貸してくれるってさ。今からジュンちへ行くから、ドライブしようぜ!」

 時計を見ると、7時を少し回った頃でした。
 S君の家は、前橋市に隣接するO町。
 県道で一本、車なら30~40分の距離です。


 ところが8時になっても、8時半になっても彼は来ません。
 9時を過ぎた時、しびれを切らした僕は、S君の家に電話を入れました。
 すると母親が出て、
 「あれ、小暮君ちへ行くって言って、出て行ったけど」

 「それは、何時頃ですか?」
 「うーん……、小暮君に電話したんじゃないの? あの後、すぐに出かけたわよ」


 いや~な予感がします。
 事故に遭ったんじゃないだろうか?

 携帯電話のない時代です。
 こちらからは連絡ができません。
 もし、何らかのトラブルがあり、来れなくなったのであれば、公衆電話からかけてくるはずです。
 それができないということは、大きな事故に巻き込まれたのかもしれません。


 「どうしたの?」
 電話の前でオロオロしている僕を見て、オフクロが声をかけてきました。
 「S君が、来ないんだよ」
 「S君って、O町の?」
 「ああ、もう2時間以上も経っているんだ。ヘンだよね?」
 「どこかに寄り道しているんじゃないの?」
 「それはありえないよ。すぐ行くって言ってたもの……」


 ついに、時計の針は10時を過ぎてしまいました。

 これは絶対、何か遭った。
 彼の両親に、知らせなくっちゃ!
 と電話の受話器に手をかけた時でした。

 「外に誰か来たみたいよ。S君じゃないの?」
 オフクロの声を聞いて、玄関へ走り、ドアを開けると……


 「よっ、おまたせ!」  
 S君が、いつものはにかんだような笑顔で立っていました。
 「おまたせじゃねーよ! いったい、どんだけ待たせるんだよ! 心配かけるなよ!」

 友人を罵倒する僕の前で、当の本人は、キョトンとした顔をしています。
 その顔は、「何のことを言われているのか分からない」 と言いたげです。


 「どこ寄り道してたんだよ?」
 「寄り道?」
 「そーだよ、今、何時だと思っているんだ?」

 彼は、左手を上げて、腕時計を見ました。
 「まだ、8時を過ぎたところだけど……」
 と言った後、見る見るうちに顔色が変わっていきました。

 「何が8時だよ! 10時を過ぎているんだぞ!」

 彼の唇が、震え出しました。

 「そ、そんな……。オレの時計、狂っているのかな?」
 「狂ってなんか、ねーよ! ほら、見てみろ」
 と僕は、玄関の柱時計を指さしました。


 「2時間も余分に、どこをほっつき回っていたんだよ?」
 「……」
 「本当のことを言えよ」
 「……」

 少しの沈黙の後、S君は言いました。
 「オレ、2時間も、どこに居たんだろう? 電話を切った後、まっすぐ来たのに……」


 信じるか、信じないかは、あなた次第です。

   


Posted by 小暮 淳 at 11:24Comments(0)謎学の旅

2021年05月11日

身近な恐怖


 「霊感って、ありますか?」
 「いや、まったく」
 「ご興味は?」
 「不思議なことは好きですけど」
 「今度、この方の怪談会に行こうと思うんですけど、ご一緒しません?」

 と言われ、知人女性から一冊の本を手渡されました。
 戸神重明/編著 『高崎怪談会 東国百鬼譚』 (竹書房)

 なんでも高崎市出身在住の作家さんで、地元の怪談話を集めた本を書いたり、怖い話の朗読をする 「怪談会」 なるイベントも開いている方らしいのです。


 家に帰り、借りて来た本をペラリとめくって、驚きました。
 というのも、いきなり第1話の冒頭は、こんな文章から始まっていたのです。

 <群馬県前橋市に住む小暮さんは、……>

 おいおい、これ、俺のことじゃねーの!?
 なんて、突っ込みを入れながら一気に読んでしまいました。


 それくらいに丸々一冊、“群馬一色” で、地名や施設名など知っている場所ばかりが登場します。
 そこで、ハッとしました。
 そうか! 知っている “場所” だから怖いんだ!

 もしこれが○○県××市だったら 「作り話かもしれない」 と思うし、土地勘のない聞きなれない地名では、他人事に感じるかもしれません。
 でも、知っている場所、住んでいる地区となると、「もしかしたら自分も遭遇するかも」 という臨場感が増します。
 現に僕は本を読みながら、「この公園って、あそこじゃねーの?」 「おいおい、その公衆電話、使ったことあるぞ!」 なんて、知らず知らずのうちに突っ込みを入れてましたものね。


 なんで、この作家は群馬限定に、こだわっているんだろう?
 って思っていましたが、
 “怪談は身近なモノほど怖い”
 からなんですね。

 どうか、我が家と我が家のまわりには、現れませんように……
  


Posted by 小暮 淳 at 11:19Comments(0)謎学の旅