温泉ライター、小暮淳の公式ブログです。雑誌や新聞では書けなかったこぼれ話や講演会、セミナーなどのイベント情報および日常をつれづれなるままに公表しています。
プロフィール
小暮 淳
小暮 淳
こぐれ じゅん



1958年、群馬県前橋市生まれ。

群馬県内のタウン誌、生活情報誌、フリーペーパー等の編集長を経て、現在はフリーライター。

温泉の魅力に取りつかれ、取材を続けながら群馬県内の温泉地をめぐる。特に一軒宿や小さな温泉地を中心に訪ね、新聞や雑誌にエッセーやコラムを執筆中。群馬の温泉のPRを兼ねて、セミナーや講演活動も行っている。

群馬県温泉アドバイザー「フォローアップ研修会」講師(平成19年度)。

長野県温泉協会「研修会」講師(平成20年度)

NHK文化センター前橋教室「野外温泉講座」講師(平成21年度~現在)
NHK-FM前橋放送局「群馬は温泉パラダイス」パーソナリティー(平成23年度)

前橋カルチャーセンター「小暮淳と行く 湯けむり散歩」講師(平成22、24年度)

群馬テレビ「ニュースジャスト6」コメンテーター(平成24年度~27年)
群馬テレビ「ぐんまトリビア図鑑」スーパーバイザー(平成27年度~現在)

NPO法人「湯治乃邑(くに)」代表理事
群馬のブログポータルサイト「グンブロ」顧問
みなかみ温泉大使
中之条町観光大使
老神温泉大使
伊香保温泉大使
四万温泉大使
ぐんまの地酒大使
群馬県立歴史博物館「友の会」運営委員



著書に『ぐんまの源泉一軒宿』 『群馬の小さな温泉』 『あなたにも教えたい 四万温泉』 『みなかみ18湯〔上〕』 『みなかみ18湯〔下〕』 『新ぐんまの源泉一軒宿』 『尾瀬の里湯~老神片品11温泉』 『西上州の薬湯』『金銀名湯 伊香保温泉』 『ぐんまの里山 てくてく歩き』 『上毛カルテ』(以上、上毛新聞社)、『ぐんま謎学の旅~民話と伝説の舞台』(ちいきしんぶん)、『ヨー!サイゴン』(でくの房)、絵本『誕生日の夜』(よろずかわら版)などがある。

2016年04月30日

坂東太郎って誰よ?


 群馬には、海はないけど川がある!

 そう、海なし県に生まれ育った僕らには、川が遊び場だったのだ。
 山の清流で泳いだり、里の小川で釣りをしたり、少年時代はいつも川で遊んでいた。
 なかでも県都に育った “前橋っ子” にとって、川といえば市内中央をとうとうと流れる大河、利根川こそが海に匹敵するウォータースポットでした。

 全長322キロメートル、全国2位。
 流域面積1万6840平方キロメートル、全国1位。
 まさに 『利根は坂東一の川』(上毛かるた) なのであります。

 「坂東」 とは、箱根の山の東の意味で 「関東」 のこと。
 その関東地方で一番大きい川であることから、利根川は別名 「坂東太郎」 とも呼ばれています。
 「太郎」 とは長男のことです。

 ということは、次男も三男もいるのか?
 はい、います。
 でも関東ではありません。

 九州の筑後川が 「筑紫次郎」、四国の吉野川が 「四国三郎」 の名で親しまれています。
 この三兄弟は、その流域面積の広さや景観の素晴らしさから 「日本三大河川」 と称されています。
 でも、長さだけで比べれば日本一は新潟県と長野県にまたがる信濃川(367km) が日本一。
 3位は北海道の石狩川(268km) です。
 こちらも利根川とともに 「日本三大河川」 に数えられています。


 さてさて、なんで今日はこんな話をしたのかというと、僕は昔から利根川に 「坂東太郎」 という人の名前が付いていることに “謎学” を感じていたのです。
 だって、「筑紫次郎」 と 「四国三郎」 は語呂合わせですからね。
 どーても、いいんです。
 元は 「坂東太郎」 ありきですからね。

 では、なんで人の名前なんだろうか?
 もしかしたら、昔々に利根川と深い関わりがあった人がいたんじゃなかろうか?
 って、謎を追いかけて、探しまくっていたのです。

 そ、そ、そしたらーーーーっ!
 いたんですよ!
 坂東太郎さんが!!!!


 ということで今日は、前橋市内を流れる利根川周辺を歩き回り、坂東太郎ゆかりの神社や伝説が残る場所を訪ねてきました。

 そ、そ、そしたら、なんと、太郎さんには弟(坂東次郎) もいたんです!
 ということは、筑紫次郎は弟ではなかった?(名字が違うから九州に養子に出された別の弟かもしれませんが)。

 おもしろいですね。
 伝説を訪ねる謎学の旅って! 
  


Posted by 小暮 淳 at 22:33Comments(0)謎学の旅

2016年04月28日

源泉パスポート


 「こんなクーポン、欲しかった!」
 きっと手にした人は誰もが、そう思うことでしょう。

 『ぐんまの源泉パスポート』(上毛新聞社、800円+税)


 今月発売された群馬県内の日帰り温泉入浴が割引されるクーポン冊子です。
 僕も、ちょこっとだけコラムの執筆でお手伝いしました。

 なにが画期的かって、100円のクーポン券が20枚も付いているんです。
 (8回行ったら元が取れます)
 しかも、掲載されている入浴施設および温泉旅館のどこで使ってもOKなんです。
 (利用できる施設は100ヶ所以上、2017年末まで有効)

 従来のクーポン券って、利用できる店や施設が指定されていましたよね。
 だから、たくさん付いていても結局、使う所は限られていて、それ以外のクーポン券はすべて残ってしまう……。
 なーんていう経験はありませんか?

 でも、このクーポン券は大丈夫!
 たとえば、自分の家から近い行きつけの入浴施設や、お気に入りの温泉宿で、20枚全部使ってもいいんです。
 なかには2枚利用(200円引き) や3枚利用(300円引き) ができる施設もあります。

 掲載されている施設は、利根地区、吾妻地区、中部地区、西部地区、東部地区に分けられていて、お目当ての温泉をすぐに見つけられます。
 しかも日帰り入浴施設に加え、有名温泉旅館や秘湯の一軒宿でも使えるところがニクイじゃありませんか!


 書店やコンビニ、入浴施設などで見かけたら、ぜひ、手に取って見てください。
 温泉好きなら間違いなく、「こんなクーポン、欲しかった!」 って思いますよ。
  


Posted by 小暮 淳 at 17:47Comments(2)温泉雑話

2016年04月27日

草津温泉 「御座之湯」


 「群馬県民は定期的に草津の湯の洗礼を受けるべきである」
 改めて、そう思ったのであります。


 僕は2009年4月からNHK文化センター前橋教室にて、野外温泉講座の講師をしています。
 全国でも温泉講座のあるカルチャースクールは大変珍しいとのことで、おかげさまで近年は県外からの受講生も増えています。
 この講座が、今月から8年目を迎えました。

 昨日、平成28年度第1回目の講座が開講され、草津温泉へ行ってきました。


 いやいや、本当に久しぶりの草津であります。
 すっかり湯畑周辺は整備され、きれいになっていました。
 僕が他の温泉に、うつつを抜かしている間に、草津温泉は進化していたのです。

 ということで、講座では3年前にオープンした入浴施設『御座之湯』 を訪ねました。
 「御座の湯」 とは、江戸~明治にかけて湯畑広場に実在した共同湯で、約100年の時を経て再建されたものです。
 源頼朝が腰かけた(お座りになった) 石があったことから、この名前が付いたといいます。
 建物は、明治期をイメージした木造建築にこだわり、杉板を使用した 「とんとん葺き」 の屋根を特徴とし、漆喰の壁からも当時のおもむきが漂います。

 現在、草津温泉には18ヶ所もの共同湯がありますが、手元の資料によれば、300年前の元禄時代は5ヵ所のみだったといいます。
 脚気の湯、鷲の湯、綿の湯、滝の湯、そして御座の湯です。


 天下の草津温泉ですが、さすがに平日の昼前は、空いていました。
 『御座之湯』 には、男女日替わりの 「石之湯」 と 「木之湯」 がありますが、どちらも貸切状態。
 2つに仕切られた浴槽には、湯畑源泉と万代鉱源泉という異なる源泉がかけ流されています。

 ちなみに草津温泉には大小約100の源泉がありますが、代表的なものは上記の2カ所の他に白旗源泉、地蔵源泉、西の河原源泉、煮川源泉などがあります。
 総湯量は毎分約36,000リットルと、自然湧出では日本一です。
 この湯量は、群馬県内の総湯量の4割に値します。
 やっぱ、草津を語らずして群馬の温泉は語れないのであります。


 「うーーーっ」
 受講生の誰もが、湯舟の中でうなります。
 ちょっと熱めに感じますが、それでも湯温は42~3℃です。

 どちらの源泉も全国トップクラスの酸性泉ですから、傷口やひげそりあとはヒリヒリとしみるし、うっかり顔を洗った際に目に入れば、痛いのなんの!

 「先生、こっちの源泉のほうが、酸っぱいですね」
 と受講生が指差したのは、万代鉱源泉でした。
 「ですね。レモン汁のようでしょう! 水虫なんて、一発で治りますよ」

 最近は、やたらと “美肌の湯” と呼ばれるアルカリ性のやさしい湯が好まれているようですが、たまにはガツンと肌に染み入る硬派な酸性の湯に浸かると、身も心も引き締まっていいものです。
 圧倒的な存在感を持つ草津の湯力に、改めて感服しました。


 草津の湯ですもの、長湯は禁物です。
 サッと浴して、サッと出て、サッと着替えて、みんなで湯畑広場へ!
 青空の下、手に手に缶ビールを掲げ、「カンパーイ!」

 今年度の講座が無事にスタートしました。
 受講生のみなさん、よろしくお願いいたします。
  


Posted by 小暮 淳 at 12:33Comments(2)温泉地・旅館

2016年04月25日

幸福を呼ぶ逆さ虹


 みなさんは、おとといの虹を見ました?


 「なんだ、あれ?」
 「虹だよね」
 「でも丸くないな」
 「もしかして、地震雲?」
 「天変地異の前ぶれじゃないの?」

 23日土曜日の午前11時30分頃です。
 僕は仲間と、長野県から群馬県へ向かってクルマを走らせていました。
 ちょうど峠にさしかかる時でした。
 上空に、摩訶不思議な虹を見つけました。

 青空を真っ二つに分ける一直線の虹です。


 そしたら今日の上毛新聞に、カラー写真で記事が掲載されていました。
 “虹まっすぐ 空に広がる”

 写真の投稿者は、群馬県富岡市の会社員。
 お隣の安中市の上空で一直線に広がる虹のような現象を見つけ、スマートフォンで撮影したといいます。

 気象庁によれば、これは大気中の氷粒に太陽光が屈折して起こる 「水平環(環水平アーク)」という気象現象だそうです。
 別の名を 「逆さ虹」。
 普通の虹が太陽を背にして発生するのと異なり、水平環は太陽と同じ向きに現れるとのこと。
 色の配列も、普通の虹は外(上)が赤、水平環は反り返った内(上)が赤です。

 出現する条件は、晴れ空や薄曇りの日で、太陽から約46度の離れたところに現れるため、太陽高度が高く、低空に雲がない時でないと見られない珍しい現象のようです。


 さっそく新聞記事のことを同乗していたデザイナー氏に知らせると、すぐにメールの返信がありました。
 <天変地異の類いでなく、良かったですね>
 そして、
 <.直に遭遇できたわけですから、我々にとって吉兆と捉えましょう!>
 と、前向きなコメントが添えられていました。

 ですね。
 これは何かの吉兆に違いありません。
 印刷会社へ新刊の色校正に行った帰りに見た虹です。

 もしかしたら “重版出来” かもしれませんぞ!
   


Posted by 小暮 淳 at 13:39Comments(2)つれづれ

2016年04月23日

美酒爛漫 in 松本


 ついに、来たーーーーーッ!!!!!
 年に一度の “松本詣で”。

 この日のために1年間、頑張っているのです。


 僕のライフワークとなっている温泉シリーズ本。
 これらの本は、長野県松本市の印刷会社で刷られています。
 なので印刷前の最終チェック(色校正) をするために、毎回、松本へ詣でるわけです。

 ということで今年も昨日、担当編集者とディレクターとデザイナーと共に、松本市へ行ってきました。
 ま、実のところ著者は、行かなくっても事は済むんですけどね。
 でも、年に一度の恒例イベントですから。
 やっぱり、制作完了の感動を共有するためには、著者も立ち会ったほうがよろしいわけであります。


 会議室のテーブルに広げられた大きな色校正紙。 
 すでに印刷にかけられる状態で、ページが面付けされています。

 ディレクターが、1ページ1ページ写真の色具合を見ていきます。
 デザイナーが、修正箇所が正しく直されているかチェックします。
 そして最後に担当編集者が確認をして、印刷担当者に指示をします。

 えっ、僕ですか?
 僕は、そんな皆さんの熱心な仕事ぶりを眺めながら、コーヒーを飲んでいます。
 いえいえ、時々、覗き込んだり、著者確認を求められる箇所があれば僕だって、ちゃんとチェックをしますよ。

 たっぷり2時間をかけて、最終チェック完了!
 ここから先は、印刷会社の仕事です。
 すべてを担当者に託して、僕らは会社を出ました。


 まずは予約しておいた、駅前のホテルへ直行!
 チェックインを済ませると、もう我慢ができません。
 街へ繰り出す前に、とりあえずホテルの一室に集まり、仮祝いを済ませることに。

 「1年間お疲れさまでした。では、カンパーイ!」
  編集担当者の発声で、全員が缶ビールのタブを引き、一気に飲み干します。
 「きーーーい、うまい! この1杯のために1年間生きてきました」
 と言えば、
 「1杯じゃ、済まないでしょう。さあ、出かけますか!」
 印刷担当者の案内で、暮れなずむ松本の繁華街へ。


 「ご苦労さまでした。また1年間、頑張りましょう! カンパイ!」
 本祝いは、ディレクターの音頭で始まりました。

 「8冊目ですものね。スゴイことです。来年も出されるんでしょ?」
 印刷担当者の問いに、
 「もちろんですよ!」
 と、ごきげんの僕。

 ディレクターもデザイナーも編集担当者も、みんな大きな仕事をやりとげた満足感にあふれた、いい顔をしています。

 生ビールは1杯で切り上げ、早々に地酒を注文。
 名物の馬刺しや山賊焼き(鶏肉料理) を肴に、夜が更けるまで美酒に酔いしれたのであります。

 来年も絶対に、松本に来るぞーーーっ!


 ※温泉シリーズ第8弾の新刊は5月10日発売予定です。
  


Posted by 小暮 淳 at 20:38Comments(0)著書関連

2016年04月21日

2度目の春に


 “温泉宿 ←→ 介護・障害者施設”
 “「湯治場」 再生へタッグ”
 “ライターの小暮さんら”
 “NPO設立で活用法を提案”

 これは2014年12月11日の上毛新聞に掲載された記事の見出しです。
 5段ぶち抜きの破格のサイズで、大々的に報道されました。

 記事は、こんな書き出しで始まっています。
 <経営不振や後継者不足により年々姿を消している本県の温泉地を守ろうと、前橋市の温泉ライター、小暮淳さんら有志がNPO法人 「湯治乃邑(とうじのくに)」 の設立に向けて準備を進めている。>

 そうなんです。
 まだこの時は申請中であって、“準備を進めている” 段階でのスクープ記事だったのであります。
 正式に認証を受けたのは翌2015年1月でした。


 あれから2度目の春を迎えました。
 その後は大手新聞社や他のメディアにも取り上げられ、鳴り物入りでの旗揚げとなりましたが、現状は遅々として改善されていません。
 賛同して支援してくださる人たちが多いだけに、発起人であり、理事長である僕の力不足を感じています。

 現在、会員スタッフは10人。
 毎月第3水曜日に役員会議を開いています。
 昨日も高崎市内の仮会議室に集まりました。

 抱えている案件の進捗状況と、来月行われる総会の準備内容が報告されました。
 案件は3つ。
 1件は、小さな温泉郷の湯治場再生プロジェクトで、近在住民とのコンタクトを取りながら町おこしに参加しています。
 1件は、廃業して10年以上経つ温泉宿の復活事業で、オーナーの希望に添いながら行政や他のNPO団体に協力をお願いしているところです。

 残る1件は、「温泉コミュニティー計画」 です。
 これは使われていない源泉を会員制の共同浴場として開放して、高齢者や障害者に利用してもらおうという、当法人の根幹を成す事業であります。
 現在、いくつかの候補地が上がっています。


 NPOという運営団体のため、専従スタッフはいません。
 会員全員が本業を持ちながらの手弁当活動であります。
 原動力は、情熱のみ!

 まだ何も形にはなっていませんが、2度目の春を迎えて、スタッフに情熱だけは失せてないことを確認しました。
 これからも、みなさんの 「湯治乃邑」 へのご理解とご支援をお願いいたします。
    


Posted by 小暮 淳 at 12:54Comments(0)湯治乃邑

2016年04月18日

天の神よ 地の神よ


 ♪ はるかかなた 天明の世に
   怒れる山よ
   空を焦がし 野を焼き尽くす
   炎の嵐
   天変地異 逃げ惑う民
   降り積もる 灰の原に
   神が授けた 命の泉
   湯いずる国 湯源郷 ♪
    ( 『湯源郷』 by Jun Kogure )


 またしても大震災が日本列島を襲いました。
 “天災は忘れた頃にやって来る” ものなのでしょうか?
 いえいえ、私たち日本人は、決して忘れてなんかいません。

 日本は世界一の地震国です。
 そして地震の恐さを、どこの国の人たちよりも身をもって知っています。
 それでも、やはり、突然の惨事に、私たちは茫然自失するしかありません。

 毎日毎日、テレビに映し出される倒壊した家屋や土砂崩れの映像に、息を呑むばかりです。
 自然の猛威の前では、私たち人間は何もあらがうことができないのです。

 そしてまた、たくさんの尊い命が失われました。


 僕は今でも忘れられません。
 5年前、東日本大震災の津波で、家族を亡くした漁師の言葉が……。
 「それでも海を憎いとは思えない。なぜなら海は、私たちに有り余る多くの恵みを与えてくれるから」

 冒頭に記した歌詞は、僕がライフワークのようにして歌詞を継ぎ足しながら歌い続けている歌の5番です。
 群馬県内の “いで湯伝説” を掘り起こし、後世に残そうとメロディーにのせて歌っています。

 温泉は、地の神様からの贈り物です。
 だからといって神様は、人間に徳だけを与えてくれているわけではありません。

 天明3年(1783)、浅間山の大噴火により多くの人命や家屋、広大な農地を失いました。
 火山灰が降り積もり、泉口をふさいでしまったため、その圧力により新しく噴出したのが磯部温泉(群馬県安中市) の源泉だったといわれています。
 まさに 「災い」 と 「恵み」 は表裏一体なのであります。


 天の神よ、地の神よ。
 この国に、ご加護をお願いいたします。
  


Posted by 小暮 淳 at 13:26Comments(2)つれづれ

2016年04月17日

湯酒屋 安兵衛、ここにあり。


 “一湯一酒”
 いい湯場には、いい酒場がある。


 群馬は広いな大きいな~♪
 前橋市内は、とっくに葉桜だというのに、北の町では今が見頃!
 満開です。

 別に花見に出かけたわけではありません。
 だからといって、仕事でもありません。
 去る2月に、月夜野温泉(群馬県利根郡みなかみ町) でバンドのライブがありまして、遅ればせながら打ち上げをやることになりまして、「どうせやるなら温泉でやりましょう!」 「だったら水上温泉で」 「となれば安兵衛でしょう!」 と相成りまして、桜舞う温泉街に、スーパーローカルオヤジバンド 『KUWAバン』 の面々が集まったのであります。


 夕刻、宿に着いたら、まずは缶ビール1本(500mlですが) をキューッと飲み干して、ひと風呂浴びて、いざ出陣!
 目指すは、温泉街の路地の裏の奥。
 「安兵衛」 は知る人ぞ知る、でも水上の人でも滅多に知らない、小さなの居酒屋であります。

 いえ、違います!
 温泉地にある居酒屋のことを僕は、「湯酒屋」 と呼びます。
 ※(命名については、2012年12月12日 「一湯一酒 湯酒屋 安兵衛」 参照)


 「カンパーイ!」
 ライブの労をねぎらって、高々とオヤジたちの声が狭い店内に響き渡ります。
 “狭い” といっても、ハンパな狭さじゃありませんよ。
 カウンターのみで、7人も入ったら、奥の人はトイレにも行けなくなる狭さです。
 もちろん、この日は貸切。

 「まるで新宿のゴールデン街にいるみたいです」
 と興奮しきりなのは、今回が安兵衛デビューの和太鼓奏者のK君。
 想像以上の昭和カオス感に、感動を隠せない様子です。

 野菜の煮物、ウドの和え物、フキ味噌と、ママ手料理の旬の肴が次々とカウンターに並びます。
 アルコールも、ビール → 芋焼酎 → 日本酒と、あてに合わせてチェンジアップ!

 そして宴もたけなわ、ほろ酔い気分になったころ、いよいよ真打ち登場です。
 「よっ、待ってました! やすべ揚げ!」

 「こここれが、ウワサの “やすべ揚げ” ですか! やっと合えました!」
 と、またしても感極まるK君。

 “やすべ揚げ” とは、紅しょうがを一口サイズに揚げた天ぷらで、安兵衛の常連にならないと食せない幻の名物なのであります。
 もちろん、命名は僕であります。
 ※(2013年7月11日 「名物 やすべ揚げ」 参照)

 飲むほどに、酔うほどに、夜が深まってゆくのでありました。


 いい湯、いい酒、いい友あり。
 そして湯酒屋 安兵衛、ここにあり。
   


Posted by 小暮 淳 at 13:17Comments(2)酔眼日記

2016年04月15日

ムヒカ語録


 <人間の不幸は過去を後悔し、未来を心配することから来ている>

 この言葉を覚えていますか?
 ベストセラー 『嫌われる勇気』 の著者で、哲学者の岸見一郎氏の言った言葉です。
 ※( 2016年3月27日 「理想の生き方」 参照)


 同じことを言った人がいました。
 先日、来日したウルグアイ前大統領のホセ・ムヒカ氏です。

 <幸せになるには将来を恐れないこと>

 氏は “世界一貧しい大統領” なんて呼ばれていますが、このことについても講演で、こんな風に語っていました。

 「私は決して貧しくない。質素を好むだけだ」 と。


 今回の来日のテーマは、「日本人は本当に幸せですか?」。
 その問いかけは、消費することにより経済大国となったアジアの小さな国に、今、大きな疑問を投げかけています。

 「この社会を形づくる市場経済というものからは倫理、とくに哲学が分離してしまった。市場によって、私たちは組織だった社会に生きるようになったが、それは人々に浪費を強いるシステムでもある。何かを買うために生きる。浪費し、消費することが不可欠な社会になってしまった」

 そして、こう釘を刺します。
 「お金で物を買っていると思うだろうが、実は自分の人生の一定の時間と引き換えているのだ」

 さらに、こうも言い切ります。
 「お金のために自分の人生をぶち壊していいのか!」


 氏は講演の最後に、日本の若者にメッセージを告げました。
 「 “貧乏とは、多くの物を必要とすること” という言葉を覚えておいてほしい」

 質素を好み、多くの物を必要としない氏は、実は “世界一豊かな大統領” だったのです。
  


Posted by 小暮 淳 at 10:30Comments(0)つれづれ

2016年04月13日

重版祈願


 好きな女優の一人に、黒木華(はる) さんがいます。
 デビューしたての頃は、とっても地味な存在でしたが、その演技力の高さからメキメキと実力を上げて、今では主要な映画やドラマに欠かせない若手女優であります。

 映画 『舟を編む』 や 『小さいおうち』 などの出演で知られるようになりましたが、僕が “黒木華” という名前を覚えたのは、『天皇の料理番』 というテレビドラマでした。
 主人公を陰で支える妻の役でしたが、そのなんとも言えない柔らかさ! 清楚で可憐な雰囲気に魅了され、一気にファンになりました。
 今どきの若い女優にはない、独得の落ち着いた存在感があります。
 「なんて昭和っぽい娘なんだろう」
 それが、僕の第一印象でした。

 きっと、僕世代から上の男性には、絶大な人気があると思います。
 「息子の嫁にしたい」 そんな感覚なんでしょうね。


 今週から彼女の初主演ドラマが始まりました。
 『重版出来!(じゅうはんしゅったい)』 TBS系
 出版社で働く体育会系の新人編集者役です。
 今までにない、コミカルでパワフルな天真爛漫な役所は、彼女の演技の幅を広げ、新たなファンをつかんだと思います。
 もちろん、僕もますます好きになり、毎週火曜日の夜10時が楽しみになりました。


 さてさて、タイトルの 『重版出来!』 ですが、完全なる業界用語であります。
 「重版」 とは書籍など出版物の刷り版を重ねることで、増刷のこと。
 「出来」 とは、その製品ができあがることです。
 まあ、編集や出版に関わっている人間にとっては、出世よりも昇給よりも、魂を揺さぶられる特別な “祝い事” なのであります。

 そりゃ、そうですよね。
 汗水たらして、産む苦しみの後に世に出した作品が、一過性のもとして消えることなく、継続して世に残り続けるのですから、これ以上の喜びはありません。
 本音を言えば、初版よりも “重版出来” のほうが喜びは大きいのであります。

 かく言う僕も、業界のはしくれにいます。
 文筆業を生業にしている者として、重版はこの上ない喜びであり、勲章のようなもの。
 もしくは、一度その感動を味わったら中毒から抜け出せない禁断の蜜の味なのであります。

 そんな禁断の蜜の味を、おかげさまで僕も何度か体験しています。
 拙著の 『ぐんまの源泉一軒宿』 で3回(4刷)、『ぐんまの里山てくてく歩き』 で1回(2刷) の増刷がありました。
 やはり出版社から、その知らせを受けた時は、飛び上がるほど嬉しいものです。

 ここ数年、増刷の話はありませんが、そろそろあの蜜の味が恋しくなっています。
 来月には、新刊が出版されます。
 久しぶりに感動を味わいたいものです。
   


Posted by 小暮 淳 at 20:53Comments(0)著書関連

2016年04月12日

カエルの遺伝子


 「みんな、心しておきなよ。ジュンはオヤジに、そっくりだからな。こうなるぞ!」
 今年の正月の一族団らんの席で、アニキが僕の子どもたちに向かって言った言葉です。
 認知症が進むオヤジのボケ具合に、孫たちが笑ったときでした。

 それから1ヶ月ほど経った、ある休日の午後。
 2階の自室で仕事をしていると、階下のリビングがさわがしい。
 どうやら長女が孫を連れて遊びに来たようです。
 僕は仕事の手を止めて、孫の顔を見に降りていきました。


 長女 「伯父さん、言ってたよね。お父さんもおじいちゃんみたいになるって」
 次女 「あー、やだやだ。あたし、看ないからね」
 長女 「なに言ってるのよ。あんたが一番長く、この家にいるんだからね」
 次女 「あたし、高校出たら、さっさとこの家出るから」
 長女 「あんたが、一番おとうさんと仲いいじゃない!」
 次女 「おねえちゃん、長女なんだからね。おねえちゃんが看るのが筋じゃない?」
 長女 「だったらR(長男) でしょう。長男なんだから! ね、Rが看るよね?」
 長男 「・・・」

 廊下で、そこまで立ち聞きをして、僕は咳払いをしながらリビングに入りました。
 知ってか知らずか、一堂、爆笑!

 「おじいさま、こんにちは!」
 ふざけて、あいさつをする孫に、またもや座は大笑い。
 僕の目尻も下がりっぱなしです。


 まっ、いっか……。
 さっきの話は、聞かなかったことにしましょう。

 でも、そんなことを子どもたちに話される年齢になったということです。
 ああ、恐ろしや!

 “子は親の背中を見て育つ” といいます。
 おい、子どもたち!
 今の俺の背中を、よーく見ておけよ!
   


Posted by 小暮 淳 at 18:30Comments(2)つれづれ

2016年04月11日

鷹 or 蛙


 お久しぶりでした。
 3日ぶりです。
 長いブログ人生で、中2日空くということは滅多にありません。
 パソコンが壊れたとか、病気をしたとか、よっぽど両親の介護に振り回されていたかです。

 正解は、両親の介護であります。
 先週から実家に泊まり込んでいまして、日頃の疲れも出たのでしょう。
 就寝時間の早い年寄りと一緒にいたら、ついつい、こっちまで眠くなってしまい、毎日10時間の爆睡をしていました。
 おかげで今は、体調がすこぶる良いのであります。


 そんな折、息子がハワイから帰って来ました。

 「ハワイ!? なんでまた?」
 「会社で行ってくる」
 「会社って、仕事か?」
 「いや、……ああ、仕事かなぁ~。でも遊びだけど」
 「えっ、なんだよそれ?」

 一週間前の日曜日。
 玄関に息子の大きなキャリーバッグが置かれているのに気づいたのです。

 「いつ行くの?」
 「明日」
 「どれくらい行ってるの?」
 「1週間」
 「いっしゅうかん!」

 話を聞けば、なんでも息子が勤める会社の昨年度の営業成績が良かったとかで、全社員にご褒美としてハワイ旅行がプレゼントされたといいます。
 でも息子は、まだ社会人一年生ですぞ!
 そんなペーペーにも1週間もの南国バカンスを、ポ~ンとくれてしまう企業って、どんなところなんでしょうか?
 組織嫌いで、アウトローな貧乏人生しか歩んでこなかった父には、まったく理解ができません。

 確かに、息子が勤めている会社は大企業ですが、この不景気なご時世でも金のあるところにはあるものだと、ついつい卑屈になってしまったのでした。


 思えば1年半前、息子が大学4年生の夏のこと。
 あくせく就職活動をしている彼を見て、ついつい余計な助言をしてしまったのであります。

 「なに、就職活動なんてしちゃってるの?」
 「当然」
 「別に人生急ぐ必要ないんじゃないの? 1~2年はフリーターでもしながら、やりたいことを見つけたら?」
 と言った時です。
 会話を聞いていた家人が、血相を変えて飛んできて、
 「バカなことを言わないでよ! お父さんとは違うんだから!」
 とピシャリとやられました。

 ん? 俺とは違うだ?
 なんだよ、それ? 要は 「トンビがタカの子を産んだ」 とでも言いたいのか!
 でも、分からんぞ!
 俺の子だからな。おまけに、あのオヤジの血も引いている。

 所詮、「カエルの子はカエル」 かもしれん!
 いつなんどき、父や祖父のようにドロップアウトするかも分からないのである。

 彼の人生は、まだ始まったばかりなのだ。
    


Posted by 小暮 淳 at 12:07Comments(3)つれづれ

2016年04月08日

てるてる坊主の恩返し


 ♪ てるてる坊主 てる坊主
    あした天気にしておくれ
    いつか夢の空のよに
    晴れたら金の鈴あげよ ♪


 06:00
 「おい、坊主!」
 「あっ…」 
 「あっ、じゃねーよ! 外を見てみろ! 雨だぞ、雨!」
 「す、すみません。うっかり、夕べは眠ってしまいました」
 「なんだ!? オメエ、ちゃんと仕事しないと首チョン切るぞ!」
 「 そ、それだけは、ご勘弁を」
 「だったら今からでも晴れにしてくれよ」
 「そ、そんなぁ~。天気予報は雨なんですからね」
 「だから、こうやってオメエに頼んでいるんじゃねーかよ!」

 僕はおとといの晩、40数年ぶりに 「てるてる坊主」 を作り、仕事場の窓辺に吊るしました。
 昨日の天気予報は全国的に雨。それも暴風雨が吹き荒れ “春の嵐” になるといいます。
 しかし、群馬県地方は雨の降り出しは遅く、昼からの予報。
 ならば1本電車を早めて、昼までに登頂することにしました。

 なのに予想はハズレ、朝から雨でした。


 08:30
 JR高崎駅からS線に乗って、A駅に下車。
 依然、雨は降り続いています。
 駅から登山口までは、約6km。
 乗り合いバスも出ていますが、1日にたったの2本です。
 仕方なく、雨の中を傘を差して歩くことにしました。

 「わざわざ雨の日に登山を決行しなくてもいいのに」と思われるかもしれませんが、締め切りは待ってくれません。
 僕とカメラマンのスケジュールが合う日が、昨日しかなかったのです。
 ※(詳しくは2016年3月25日 「帰ってきたサトヤマン」 参照)


 11:00
 A市とT市の境にそびえるS山に登頂。
 雨は、いよいよ本降りに。
 それでも山頂広場を覆いつくす満開の桜の森に感激しました。


 14:00
 下山後、2時間歩いてJ線T駅へ。
 雨は、だんだん小降りとなり、傘を差さない人の姿もちらほら。
 駅前の食堂で、遅い昼食をとることに。

 「カンパーイ!」
 キーンと冷えたビールで、下山祝いをしました。


 17:30
 無事、帰宅。
 すでに雨は上がり、西の空に晴れ間が見えます。

 「ね、晴れたでしょ!」
 「晴れたでしょ、じゃねーよ。遅過ぎるだろう!」
 「でも天気予報では、夜まで強風と横殴りの雨が降るわけだったんですよ」
 「じゃあ、なにかい? 午後になって雨がやんだのは坊主の手柄だとでもいうのかい?」
 「はい、そうですとも。あれから後悔して、一心に念じておりました」
 「本当かなぁ~?」
 「本当ですとも。だってご主人様は、ワタシの首をハネなかったじゃありませんか」
 「まあな…」
 「だから、そのやさしさへの恩返しです」


 ♪ てるてる坊主 てる坊主
    あした天気にしておくれ
    わたしの願いを聞いたなら
    甘いお酒をたんと飲ましょ ♪
   


Posted by 小暮 淳 at 12:41Comments(0)取材百景

2016年04月06日

表紙会議


 前回、本の出版は 「登山」 に似ていると書きました。
 そして、最後の原稿 「あとがき」 を残すだけとなり、現在、八合目まで登ったところだと。

 おかげさまで、ついに昨晩、その最後の原稿を書き上げ、ようやく山頂に立つことができました。
 ところが山頂の絶景を楽しむのも束の間、早くも下山のしたくにかかることになりました。


 登山とは、ピークを制覇することではありません。
 無事に下山をして、家までたどり着いてこそ、その登山は成功したと言えるのです。
 本の出版も同じこと。
 原稿を書き上げただけでは、いつまで経っても本は出版されません。

 デザインされ、校正され、印刷され、製本されて、初めて販売されるわけです。
 この工程を僕は、「登山」 に対して 「下山」 に例えています。


 で早くも、表紙会議が開かれました。
 表紙会議とは、デザイナー、ディレクター、編集者、そして著者が一堂に会して、本のタイトルおよび装丁を決定する会議です。

 すでにタイトルは決まっていますから、その字体をどうするか? 文字の大きさや色、位置などを徹底的に話し合います。
 そして、何よりも肝心要なのが、表紙の写真とデザインです。

 すでにデザイナーより持ち込まれた表紙のサンプルが数点、会議室のテーブルに並べられています。
 実は僕も、この時初めて、写真を見ました。
 もちろん、どこの温泉で撮影されたかは事前に知らされていましたが、その出来栄えは、想像以上の迫力で感動しました。

 「おおおー、いいですね! ヤツもやるなぁ~」
 と僕が感嘆の声を上げれば、
 「ええ、今回は彼も粘りに粘ってくれましたからね」
 とディレクターも満足そうであります。


 今回、表紙写真を撮ってくれたのは、カメラマンの酒井寛氏です。
 最後に彼と組んだのは2013年に出版した 『みなかみ18湯〔下〕』(上毛新聞社) ですから、3年ぶりの同級生コンビとなります。
 そうなんです!
 僕と彼は、小学校~中学校の同級生であり、現在は同じバンドのメンバーでもあります。

 ま、そんなツーカーの仲ではありますが、それでも期待以上の出来栄えに、僕も大満足であります。


 さてさて、登山は上りよりも下りのほうが危険が伴います。
 上りは勢いで駆け上がってしまいましたが、下りは慎重に、かつ丁寧に下りなくてはなりません。

 そして下山口までたどり着き、振り返ったときに見上げる山の大きさに、そこはかとなく達成感と充足感を感じるものなのです。

 残り1ヶ月半……。
 ゆっくりと下り始めます。
   


Posted by 小暮 淳 at 13:24Comments(0)著書関連

2016年04月04日

八合目の風景


 僕は2009年9月に 『ぐんまの源泉一軒宿』(上毛新聞社) を出版してから、毎年1冊のペースで温泉本を上梓しています。
 おかげさまで、今年も5月に出版することになりました。
 シリーズ8冊目となります。

 以前にも書いたと思いますが、僕はよく本の制作を “登山” に例えます。
 家を出てから登山口にたどり着くまでが、企画段階。
 取材の開始が、いよいよ山登りのはじまりです。

 文字通り、山あり谷ありで、息を切らして立ち止まったり、道に迷って引き返したり、1年間という長い制作期間には自分の思い通りにならないことも多々あります。
 しかもライターの悲しい性で、取材をしたら必ず、その後に “原稿書き” という地味な作業が待っているのです。

 「いいなぁ~、仕事で温泉に入れて、おいしい料理まで食べられて。おまけに酒も飲むんでしょう」
 なーんて、よく言われますが、確かにその時だけは、ライターという特権をフル活用させていただいていますけどね。
 でも、それだけで終えてしまったら、ただの無銭飲食ですからね。
 きっちり、原稿も書くわけであります。

 その作業は、取材という華やかな “動” の作業とは対照的で、実に忍耐を要する “静” なる作業なのであります。


 昨年の5月から制作にかかり、11ヶ月が経ちました。
 先月、すべての取材を終え、昨日までにすべての原稿を書き上げました。
 たった1本の原稿を残して・・・

 残りの1本とは、「あとがき」 です。


 山頂へは、もうひと頑張り!
 ちょうど八合目あたりに居ます。

 山頂からの景色は、それは格別ですが、八合目からの眺めもなかなかなものであります。
 「よく、ここまで登ってきたな」 と1年間を振り返りつつ、「あと一歩だぞ!」 と気合を入れ直しているところです。

 5月の中旬、ゴールデンウィーク過ぎには書店に新刊が並ぶ予定です。
 読者のみなさま、もうしばらくお待ちください。
   


Posted by 小暮 淳 at 18:41Comments(2)著書関連

2016年04月03日

見えないサクラ


 ♪ 桜吹雪が散っています 心の画面いっぱいに ♪


 どこもサクラが満開です。
 大きなショッピングモールや川の土手、小さな児童公園まで、わざわざ遠回りしてまで通ります。
 なんで、こんなにもサクラって、いとおしくって、出合うたびに心ときめいてしまうのでしょうか。

 ということで、オヤジにもこのサクラを見せてやることにしました。
 「オヤジ、どこにいる?」
 「2階のこたつに居ると思うけど」
 実家の1階のリビングの隅、カーテンで仕切ったベッドの中からオフクロが答えます。

 「なにか用かい?」
 「散歩に連れてってやろうと思って。サクラがきれいだから」
 「ああ、いいね。私が行けないからさ、お父さんを連れてってあげておくれよ」
 脳梗塞を患って以降、オフクロは車イス生活なので、ほとんど外出をしません。


 実家の近くには、市内でも有名な由緒ある大きな寺院があります。
 その寺の参道には桜並木があり、この時季は写真を撮りにアマチュアカメラマンが訪れるほどの名所となります。
 僕も子どもの頃には、この桜の下で記念写真を撮りました。

 オヤジは91歳。
 足腰はしっかりしていますが、数年前から認知症が進んでいます。
 また目と耳はほとんど、見えず、聞こえません。

 もちろん徘徊の恐れがあるので、一人での散歩は禁止です。
 必ず、僕かアニキが付き添います。


 今日は日曜日とあって、いつもより参道は花見客で混んでいました。
 小さな子どもを連れた家族、老夫婦。
 寺で法要があったのでしょうか、礼服姿の人が桜の木の下を行き来しています。

 「ほら、じいさん、サクラが満開だよ」
 するとオヤジは、首をキョロキョロと動かしています。
 「どこを見ているんだい、上だよ、上!」

 「サクラはどこだい?」
 「満開なのに、見えないのかい?」
 「ああ、見えない。黒い木の幹のようなものは見えるけど……」

 その時、風が吹いて、ひとひら、ふたひら、花びらが舞い落ちてきました。
 オヤジの肩先にも、まとわり付きます。
 ふと、オヤジを見ると、上を向いて目をつむっているではありませんか。

 「じいさん、何しているんだい?」
 「思い出しているんだよ」
 「えっ……」

 僕は一瞬、体が凍りついたように動くことができませんでした。
 杖を突いて立ち止まり、空を仰ぎながら目を閉じているオヤジの姿が、サクラのようにいとおしくたまりません。

 毎年春になると、3人の孫を連れて、ここへサクラを見に来たときのことを思い出しているのでしょう。

 「サクラ、見えたかい?」
 「ああ」
 「きれいだね」
 「きれいだ」

 来年もまた、連れて来てあげようと思います。


 ♪ 桜吹雪が散っています 心の画面いっぱいに
   卒業式で泣く人が この頃ちょっと少しね
   淋しい顔であなたが言った
   友だちでいようよ
   友だちでいましょう
   心くだける時は何度も そのひと言が支えてくれた
   友だちでいようよ ♪
   ( 『花吹雪』 詞:松本隆 曲:吉田拓郎 唄:太田裕美)
   


Posted by 小暮 淳 at 18:15Comments(5)つれづれ

2016年04月01日

だまされないぞ!


 “New Year 駅伝 2017 は四万温泉で開催決定!”
 “毎年、群馬県で行われているニューイヤー駅伝が四万温泉の周回コースで開催されることになりました。”

 ナヌ?
 そんなバカな!

 と一瞬、思いましたが、すぐにピンときましたよ。
 キーワードは、「四万温泉」 です。
 そして、わざとらしい写真!

 5人の男女が、そろいのTシャツを着て、四万川に架かる橋の上を走っています。
 背景には、見覚えある旅館の外観が……。
 なによりも、最後尾を走る男性は、どう見ても、その旅館のご主人であります。

 もう、今年はだまされないぞ!


 今日の午前中に届いた、エイプリルフールカード。
 差出人は、四万温泉(群馬県中之条町) の「柏屋旅館」です。
 こんな茶目っ気たっぷりのウソを懲りもせず、毎年送ってくるのは、3代目主人の柏原益夫さんしかいませんって!
 でもね、以前は、まんまと引っかかって、度肝を抜かれたこともあったのですよ。
 ※(当ブログの2013年4月1日 『幻の 「シマシカ」 発見?』 参照)

 写真には、こんなキャプションも。
 <Team Kashiwaya も初出場を狙ってトレーニングを開始しました。応援をよろしくお願いします!>

 そしてハガキをひっくり返せば、
 <エイプリルフールですが、これは本当!!>
 と吹き出しがあり、
 <春の四万温泉は、ランニングやアウトドアに最高です!>
 <いつも元気いっぱい! 笑顔のスタッフがおもてなし!!>
 とあります。

 良くできたDMですね。
 なんだかウキウキしてきて、四万温泉に出かけたくなりますもの。
 さすが、柏屋さんです。


 四万温泉のみなさん、いつもお世話になっています。
 今年の夏も、またライブに呼んでくださいね!
   


Posted by 小暮 淳 at 16:39Comments(0)温泉雑話