温泉ライター、小暮淳の公式ブログです。雑誌や新聞では書けなかったこぼれ話や講演会、セミナーなどのイベント情報および日常をつれづれなるままに公表しています。
プロフィール
小暮 淳
小暮 淳
こぐれ じゅん



1958年、群馬県前橋市生まれ。

群馬県内のタウン誌、生活情報誌、フリーペーパー等の編集長を経て、現在はフリーライター。

温泉の魅力に取りつかれ、取材を続けながら群馬県内の温泉地をめぐる。特に一軒宿や小さな温泉地を中心に訪ね、新聞や雑誌にエッセーやコラムを執筆中。群馬の温泉のPRを兼ねて、セミナーや講演活動も行っている。

群馬県温泉アドバイザー「フォローアップ研修会」講師(平成19年度)。

長野県温泉協会「研修会」講師(平成20年度)

NHK文化センター前橋教室「野外温泉講座」講師(平成21年度~現在)
NHK-FM前橋放送局「群馬は温泉パラダイス」パーソナリティー(平成23年度)

前橋カルチャーセンター「小暮淳と行く 湯けむり散歩」講師(平成22、24年度)

群馬テレビ「ニュースジャスト6」コメンテーター(平成24年度~27年)
群馬テレビ「ぐんまトリビア図鑑」スーパーバイザー(平成27年度~現在)

NPO法人「湯治乃邑(くに)」代表理事
群馬のブログポータルサイト「グンブロ」顧問
みなかみ温泉大使
中之条町観光大使
老神温泉大使
伊香保温泉大使
四万温泉大使
ぐんまの地酒大使
群馬県立歴史博物館「友の会」運営委員



著書に『ぐんまの源泉一軒宿』 『群馬の小さな温泉』 『あなたにも教えたい 四万温泉』 『みなかみ18湯〔上〕』 『みなかみ18湯〔下〕』 『新ぐんまの源泉一軒宿』 『尾瀬の里湯~老神片品11温泉』 『西上州の薬湯』『金銀名湯 伊香保温泉』 『ぐんまの里山 てくてく歩き』 『上毛カルテ』(以上、上毛新聞社)、『ぐんま謎学の旅~民話と伝説の舞台』(ちいきしんぶん)、『ヨー!サイゴン』(でくの房)、絵本『誕生日の夜』(よろずかわら版)などがある。

2020年05月10日

一湯良談 (いっとうりょうだん) 其の七


 『師匠が愛した温泉宿』

 <人生なんて 知るもんか 勝手に生きりゃ それでいい>

 襖(ふすま) いっぱいに書かれたヤンチャな文字と、軽妙かつ辛辣(しんらつ) な言葉たちに、圧倒されてしまった。

 <酔うことよ 酒と煙草を止める奴ぁ 最も意志の弱い奴である>

 大広間に並ぶ8枚の襖に、これでもかと言わんばかりに次から次へと殴り書かれている。
 こんな破天荒なことをするのは誰かと思えば、書の主は、昨年の11月に他界した落語家の立川談志師匠だった。

 鎌田温泉(片品村) 「梅田屋旅館」 は明治44(1911)年創業。
 尾瀬や日光への行き帰りに投宿する街道筋の料理旅館として営業を続けてきた老舗だ。
 4代目女将の星野由紀枝さんによれば、一連の襖の文字は、落語が好きだった亡き主人が、高崎市で友人らと寄席を開いたとき、出演した談志師匠をお連れして酒を飲んだ夜に書かれたものだという。

 「でも師匠は、その次にお見えになったときに 『この間は酔っ払っていたから』 と、今度は隣の部屋に素面(しらふ) で書かれていかれました(笑)」
 そう言って開けた中広間には、さらに襖4枚ぶち抜きで書かれていた。

 <何ィ俺は素面だァ この野郎人生を何だと思ってやんでぇ 人生なんて全て成り行きだァな 決断なんて成り行きに押した印でしか過ぎない ウヒッィーーー>

 酔っていても、素面でも、変わらないところが師匠の凄いところだ。
 つくづく偉大な落語家が、また一人いなくなってしまったことに淋しさを感じる。
 こんな言葉も見つけた。

 <俺の人生 梅田屋程度で 充分なのだ>

 一見、侮蔑(ぶべつ) しているような言葉だが、くり返し声に出して読んでみると、なんとも温かい師匠の梅田屋への愛情が伝わってくるのである。

 <2012年10月>
  


Posted by 小暮 淳 at 12:27Comments(0)一湯良談

2020年05月09日

原点回帰のすすめ


 「群馬の温泉の現状を、お話しいただけますか?」
 昨日、東京の新聞社から電話取材を受けました。

 ご存じのように、新型コロナウイルスの感染拡大の防止策として、このゴールデンウィーク中は国民への外出自粛と、店舗などへの休業要請が出されていました。
 ゴールデンウィークが明けた現在も、依然、収束の見通しがつかず、全都道府県を対象とした緊急事態宣言は今月末まで延長さけることになりましたが、一部の県では、休業要請の範囲が縮小されています。

 群馬県も、その1つです。

 だからといって、すぐに温泉地へ観光客がもどって来るわけではありません。
 依然、厳しい状態が続いています。


 以前、ブログにも書きましたが、今回の “自粛” は、東日本大震災時の自粛とは、質が異なります。
 前回は、個人による “贅沢” への自主自粛でした。
 ですからキャンセルは、客から宿への一方通行だったのです。

 ところが今回は、事情が違いました。
 休業要請による、宿から客へのキャンセルが発生したのです。
 せっかく入っている予約を、宿側が断わるという前代未聞の事態だったのです。
 ※(詳しくは当ブログの2020年4月27日 「今、できること~自粛とキャンセルの狭間で~」 参照)


 では今、県内の温泉地は、どのような状態なのでしょうか?
 電話取材の前に、いくつかの温泉地にリサーチをしました。

 「現在、確認中で、まだ正確な数字は分かりません」
 とするものの、いくつかの温泉地では、数軒の宿が営業を再開したとのことです。
 「大きな旅館やホテルは、今月いっぱい休業のところがほとんどです」
 「営業を再開したところは、すべて小さな旅館です」
 「日帰りの入浴のみ、人数限定で受け入れを始めたところもあります」


 要は、6日までは休業要請のため、余儀なく閉めていたいたが、7日以降の予約については、客からのキャンセルがない限り、受け入れるということのようです。
 しかし、緊急事態宣言は依然、発令中であります。
 都道府県をまたいでの移動は、自粛されています。

 群馬にとって温泉は、最大の観光資源であり、観光客の8割は県外客ですから、まだまだ先は見えない状態が続きます。


 そこで、僕は提案します!
 今こそ、“原点回帰” をする時だと!

 古来、日本人は、農業や漁業の閑散期を利用して、心と体のメンテナンスをしてきました。
 そうです、「湯治」 です。

 現在のように、飛行機や新幹線、高速道路などない時代のこと。
 先人たちは、近場の温泉場へと、足しげく通いました。
 春湯治、夏湯治、秋湯治、寒湯治……
 季節の節目や労働の合い間に、疲弊した体をリセットしていたのです。

 いわゆる、“未病” へのための温泉通いをしていました。
 免疫力を上げて、病気にならない強い体を作っていたのです。

 まさに今、我々に求められているのは、ウイルスに負けない健康な体力づくりではないでしょうか?


 遠くの温泉へ行くのは、旅行です。
 でも近場の温泉へ行くことは、湯治の一環だと思います。

 今は遠出をひかえ、全国の人が地元の温泉に目を向けていただけたらと思います。

 湯治文化の復活!
 原点回帰のすすめです。


 と、新聞取材には、お応えしました。
  


Posted by 小暮 淳 at 12:50Comments(2)温泉雑話

2020年05月08日

一湯良談 (いっとうりょうだん) 其の六


 『青い鳥が見つけた魔法の泉』

 バタ、バタ、バタバタバタバタ……
 突然、すさまじい疾風が舞い、あっという間に目の前の泉が、何十羽という青い鳥の群れに覆われた。

 東南アジアのごく限られた地域に分布する 「アオバト」 という渡り鳥だ。
 海水を飲むことで知られる鳥で、日本では北海道~四国、伊豆七島などで繁殖し、積雪のない温暖地で群れをなして冬を越す。
 ここ上野村に姿をみせるのは、5月~10月の半年間。
 海なし県にもかかわらず、塩分の濃い、海水に似た湧き水を飲みに、毎年約3,000羽がやって来る。


 「ほれ、この水を飲めば、絶対に二日酔いしないよ」
 初めて野栗沢(のぐりざわ)温泉の一軒宿、「すりばち荘」 に泊まった晩に、主人の黒沢武久さんから源泉が入ったコップを手渡された。

 野栗沢の人たちは、昔から巨石の間から湧き出る泉を飲みに青い鳥がやって来ることを知っていた。
 産後の肥立ちが悪い婦人に、この鳥の肉を食べさせると、見る見るうちに体力が回復したという。
 また、この泉の水を飲みながら農作業をすると、疲れを知らずに仕事がはかどるので、大変珍重されてきた。

 昭和58(1983)年、黒沢さんが泉の水をパイプで引いてきて、旅館を開業した。
 温められた湯はやわらかく、肌に張りつくような浴感で、長湯をしても不思議とのぼせない。
 浸かれば浸かるほど、どんどん体が楽になっていくのが分かる。
 ヒノキ風呂の隣に、小さな源泉の浴槽がある。
 温度は夏でも冷たい約18度。
 意を決して肩まで沈むと、足の先から手の先までピリピリと、ほてり出した。


 「オレは毎日入っているから、風邪を引いたことがないね」
 と自慢する魔法の水には、乾燥肌やアトピー性皮膚炎の症状が良くなったとの感謝の便りが、全国から寄せられている。
 今でも地元の人たちは、やけどや切り傷は、この水を患部に浸して治すという。

 「うどん粉でねって、ガーゼに塗って、貼ってみな。ウルシのかぶれだって、虫刺されだって、一発で治っちまうから」
 そう言って、主人は得意気に笑った。

 <2012年9月>
  


Posted by 小暮 淳 at 11:16Comments(0)一湯良談

2020年05月07日

求む! ヘイサラパサラ


 もう、うんざりです。
 どこもかしこも、コロナ、コロナ、コロナ一色です。

 テレビをつけれは、ニュースやワイドショーは、すべてコロナ関連。
 ドラマやバラエティーにいたっては、再放送や過去の総集編ばかり。
 どうにか自分だけでも別世界に行こうと、部屋を無音にして、ひたすら読書にいそしんだりしているのですが、それも限界があります。

 ついつい、アルコールに手が伸びてしまい、のんべんだらりと、見たくもないテレビをつけっ放しにしてしまいます。


 がっ! 突然、僕の視界に、とんでもない映像が飛び込んで来ました。
 先日、放送されたテレビ東京の 『開運!なんでも鑑定団』 です。
 この番組も例外なく、過去の番組を再編集した名場面特集でした。
 テーマは、「珍品」。

 そして、出てきたお宝は、白い石のような物体です。
 あれ、もしかして、これは?
 解説のテロップには、「馬糞石」 と表示されました。

 ばふんせき?

 ということは、馬の体内から排泄された石のことであります。
 おいおい、だったら、“ヘイサラパサラ” じゃねーのか?
 でも、番組内では一貫して 「馬糞石」 で通しています。

 しかーーーーしッ!!!!
 僕は見てしまったのです。
 一瞬でしたが、江戸時代から伝わるお宝が納められていたという木箱に書かれていた文字を!

 見まごうことなく、そこには、ハッキリと墨字で 「ヘイサラパサラ」 と書かれていました。


 ヘイサラパサラとは、“第3のケサランパサラン” とも呼ばれる、ケサパサ界の珍品中の珍品であります。
 語源はポルトガル語で、「馬の結石」 のこと。
 しかし、数万頭に1つの割合でしか排泄されないため、昔の人は 「馬宝石」 とも呼んでいました。
 ※(詳しくは、当ブログの2020年2月4日 「謎の生物 ヘイサラパサラ」、2020年5月4日 「ケサ男とパサ子」 などを参照)


 で、鑑定額は?

 な、な、な、なーーーんと! さんびゃくまん!!!!
 300万円ですぞ!

 僕は思わず、呑んでいた日本酒のグラスを落としてしまいそうになりました。
 いくらなんでも、予想をはるかに超えた驚きのプライスであります。


 ということで、改めて、ヘイサラパサラの情報を募ります。
 価値が分かってしまった今、うかつに 「譲ってください」 とは言えませんが、もし、お持ちの方がおられましたら、どんな情報でもかまいませんので、ご連絡ください。
 匿名でも結構です。

 また、「見たことがある」 「持っている人を知っている」 という間接的な情報でも大歓迎です。
 よろしくお願いいたします。

 求む! ヘイサラパサラ

 

  


Posted by 小暮 淳 at 12:27Comments(0)謎学の旅

2020年05月06日

一湯良談 (いっとうりょうだん) 其の五 


 このカテゴリーでは、ブログ開設10周年を記念した特別企画第2弾として、2012年4月~2014年2月まで 「ちいきしんぶん」(ライフケア群栄) にて連載されたコラム 『小暮淳の一湯良談』(全22話) を不定期にて紹介しています。
 温泉地 (一湯) にまつわるエピソード (良談) をお楽しみください。


 『願いを叶えてくれる氏神様』

 初めて奥嬬恋温泉(嬬恋村) の一軒宿、「干川(ほしかわ)旅館」 に泊まった晩のこと。
 3代目女将の干川陽子さんから摩訶不思議な話を聞いた。

 同館では毎年、繁忙期になるとアルバイトを募集している。
 例年は断わるほどの募集があるのに、なぜかその年に限って一人の応募もなかった。
 困り果てた女将は、昔から頼りにしている信州のとある寺の僧侶に相談した。
 すると僧侶は、旅館の近くにある小さな神社の名を告げたという。
 さっそく女将は、僧侶に言われたとおりに酒と米を持って神社を詣で、願をかけた。
 すると翌日、一本の電話が鳴った。
 アルバイトを希望する若い女性からだった。

 「ビックリしました。でも昔から地元では、願い事が叶う氏神様として評判の神社なんですよ」
 と話してくれた。


 翌朝、さっそく私は同行のカメラマンとともに、神社を訪ねた。
 実は、近々、彼が手術を受けることになっていたのだ。
 それも、かなりの確率で後遺症が残るといわれている難しい手術だった。
 女将に教わったとおりの供物をして、2人で一心に手術の成功を祈った。

 後日、手術は無事に成功した。
 それも一切の後遺症を残さずに。
 実は知らないところで、奇跡が起きていたのである。
 手術直前になり、急きょ、ゴッドハンドといわれる名医が執刀をしてくれることになったのだった。


 私は以前、この話を雑誌に書いたことがあった。
 すると女将から電話があり、
 「神社が大変なことになっています。連日、大勢の人がやって来るので、役場の職員が出て、交通整理をしています」
 と大変な驚きようだった。

 でも女将は、こんなことも言った。
 「おかげさまで、旅館の宿泊者が増えました。先日は 『あの神社にお参りをしたら、子どもの病気が治ったので、今日はお礼を言いに来ました』 と、また家族で泊まられたお客様がいたんですよ。本当に願い事を叶えてくれる神様なんですね」。

 今でも願をかけにやって来る宿泊者が、後を絶たないという。

 <2012年8月>
  


Posted by 小暮 淳 at 11:22Comments(0)一湯良談

2020年05月05日

それ、密です!


 みなさーん、歩いてますか?
 僕はかれこれ1ヶ月間、ほぼ毎日、歩いています。
 (時々、自転車で長距離を走ります)

 このところ日中は、夏日越えが続いています。
 ので、ウォーキングは、日がかげった夕方にしています。

 で、ある異変に気づきました!
 1ヶ月前には、見られなかった現象です。


 ① ウォーキング人口が確実に増えています
 川沿いの遊歩道などでは、ジャージにマスク姿の人たちが、行き交っています。
 黙々と一人で歩いている人もいれば、夫婦や家族もいます。
 以前は、こんなにも人と、すれ違いませんでした。
 みんな、コロナ自粛で、ストレスが溜まり出しているようです。

 ② バーベキュー家族の増加
 住宅地を歩いていると、どこからともなく、いい匂いが漂って来ます。
 匂いの発生源をたどると、庭先でのバーベキューです。
 それも、1軒や2軒ではありません。
 まるで、示し合わせたように、あそこの家でも、こっちの家でも……

 のぞいて見ると、だいたいは、小さい子どもがいる家です。
 なかには、テントを張って、キャンプ気分を楽しんでいる家もあります。
 お父さんは、決って缶ビールを呑んでいます。

 ゴールデンウィーク中ですものね。
 “緊急事態宣言” 発令中の、ささやかなレジャーなのかもしれませんね。


 ③ 路上宴会が急増中!
 これには、驚きました。
 今、町中で、異変が起きています。

 以前、僕は、このブログで 『気をつけよう!散歩途中のコンビニエンス』 と題して、散歩途中にコンビニに寄って、ついつい缶ビールを買って呑んでしまうことを書きました。
 もちろん、ほめられたことではありません。
 ので、公園や遊歩道のベンチに座って、こっそりと “ひとり呑み” をしています。

 が、ががががががーーーーーッ!!!!!

 ところが今、とんでもない現象が起きているのです!
 集団の路上宴会です。

 あっ、ここでも、あそこでも!

 たぶん、毎日、同じ時間に散歩をしているうちに、“散友” ができてしまったんでしょうね。
 最初は2人、でも、そのうち3人、4人と集まって、酒とつまみを持ち寄って、公園や路上のベンチで宴会を始めてしまったようです。
 昨日、目撃したグループは、高齢者の男女5人組でした。

 僕は半分、うらやましがりながら、遠くの木陰で、ひとり呑みしていました。

 でも、それって、“密” ですからね!
 屋外だから密閉ではありませんが、完全なる 「密集」 と 「密接」 であります。
 だから、言ってやりましよ。
 「はい、そこ、密です! すぐに解散しなさい!」
 と、心の中で……


 あと1ヶ月も自粛が続くと、きっともっと “闇呑み” をする人たちが増えるんでしょうね。
  


Posted by 小暮 淳 at 12:35Comments(2)つれづれ

2020年05月04日

ケサ男とパサ子


 愛犬のマロが死んで、半年以上が経ちました。
 いまだ僕の心には、ポッカリと大きな穴が空いたままです。
 「ああ、こんなとき、マロがいてくれたらなぁ……」
 ことあるごとに、そう思ってしまいます。

 まして今は、コロナ自粛により、家に居ることの多い毎日です。
 「もし、マロが、あと一年長く生きていてくれたら……」
 家の中で、一緒にテレビを観たり、音楽を聴いたり、昼寝をしたのに。
 散歩だって、ただ黙々と歩くだけではなく、途中で出会う “犬友仲間” とのオシャベリを楽しめたのに。

 いくら無いものねだりをしてみたところで、マロが帰って来るわけではありません。
 しかたなく、“ひとり遊び” の毎日を続けていました。
 が!
 待てよ!
 我が家には、最強のペットがいるではありませんかーーーーっ!!!!

 そうです! あの伝説のナゾの生物 「ケサランパサラン」 です。
 以前このブログで、子どもの頃に遭遇して以来、生き別れになっていたケセランパセランの情報を求めたところ、心ある方から 「うちで繁殖したから差し上げます」 と連絡があり、2匹いただいたのであります。
 ※(ケサランパサランが我が家に来た経緯については、当ブログの2020年3月31日 「ようこそ!ケサパサ」 を参照)


 ケサランパサラン (ケセランパセランともいう) とは?
 江戸時代以降の民間伝承の謎の生物とされる物体で、外観はタンポポの綿毛やウサギの尻尾のようなフワフワした白い毛玉に覆われている。
 持ち主に幸運をもたらすとの言い伝えがあり、出合うと幸せになるという。
 西洋では 「エンゼル・ヘア」 などとも呼ばれている。

 東北地方の方言で 「ケサラーパサラ」 という言葉があり、“毛玉” を意味する。
 また広辞苑には 「ヘイサラ・パサラ」 というポルトガル語より転じた言葉が載っていて、これは <牛や馬の腹の中から出る結石のこと> とあり、<解毒剤に用いられた> とある。

 ということで、ケサランパサランは大きく分けて3種類あります。
 ●タンポポの綿毛のような植物性ケサランパサラン
 ●ウサギの尻尾のような 「毛ん玉」 と呼ばれる動物性ケサランパサラン
 ●ポルトガル語が語源とされる 「馬ん玉」(牛馬の排泄物) とも呼ばれるヘイサラパサラ


 で、我が家にやって来たのは最もポピュラーな植物性のケサランパサランです。
 大きいほうは約3cm、小さいほうは約2cm。
 ともにビンの中で、無数の細い枝毛を伸ばして、宙に浮いた状態で仲良く暮らしています。

 どちらもオスかメスかは分からないのですが、勝手に僕は、大きいほうに 「ケサ男」、小さいほうに 「パサ子」 と名前を付けて呼んでいます。

 今のところ2匹は、交尾をした様子もなく、数は増えていません。
 でも、大量の繁殖に成功して、コロナ禍が終息したら 「幸運を招くエンゼル・ヘア」 として売り出し、ひと儲けしてやろうと、ひそかにたくらんでいます。

 ヒ、ヒ、ヒ、ヒ、ヒ……(ほくそ笑み)
   


Posted by 小暮 淳 at 12:48Comments(0)謎学の旅

2020年05月03日

一湯良談 (いっとうりょうだん) 其の四


 『薬師像が見守る女将の奮闘』

 倉渕温泉(高崎市) の一軒宿、「長寿の湯」。
 渓流をはさんだ宿の対岸に、大きな源泉櫓(やぐら) が立っている。
 櫓の下にはお堂があり、薬師如来像が祀られている。
 約300年前、霊験著しい湯の御利益に対して、旅人たちが感謝を込めて安置した 「湯前(ゆぜん)薬師」 だといわれている。

 「雪解けが早い場所がある。薬師像もあり、地元では昔から “たまご湯” と呼ばれる幻の名湯が湧いていたと伝わる。ここは絶対に温泉が出る」
 と、東京でボーリング会社を営む川崎秀夫さんは丸3年間通い続けて、温泉の掘削に成功した。
 しかし平成3(1991)年に念願の温泉旅館をオープンしたものの、経営を他人に任せていたため乱脈経営が発覚。
 さらにバブルが崩壊し、あわや廃業という窮地に追い込まれてしまった。

 「私がやるしかなかったのよ。だって温泉旅館は、おとうさんの夢なんだもの。絶対に手放すわけにはいかなかった」
 と女将の節子さんは、東京に夫と子どもたちを残して、湯と宿を守るために単身で群馬にやって来た。
 平成15年の秋のことだった。

 最初は、「東京の奥様に何ができる」 と周りからは陰口をたたかれた。
 それでも夫の夢のために孤軍奮闘しながらも、「頑張るしかなかった」 と言う。
 営業の形態を、それまでの宿泊メインから女将の郷里である山梨県で見かける日帰り入浴客も受け入れるスタイルに移行し、積極的に湯の良さをアピールした。
 その甲斐もあり、口コミで噂を聞いたリピーターが増えた。
 いつしか 「女将さんのやっていることが評判を呼ぶよ」 と、地元の人たちも応援するようになった。

 「結局さ、私は群馬の人たちに助けられて生きているんだよね。群馬の人は口が悪いけど、そのぶん腹を割って付き合うと、とことん面倒見がいいんだよね。今じゃ、すっかり私も上州人になっちゃった。ハッハハハ」
 と、豪快に苦労を笑い飛ばす。

 渓流を望む露天風呂からは、源泉櫓とお堂が見える。
 お堂の中では薬師様が、今も昔と変わらずに旅人の安全と健康を見守っている。
 もちろん、見知らぬ土地で奮闘を続ける女将の姿も見守っているに違いない。

 <2012年7月>
  


Posted by 小暮 淳 at 12:30Comments(0)一湯良談

2020年05月02日

命日墓参


 かーちゃん、来たよ!
 3月のオヤジとの合同一周忌以来だから、1ヶ月半ぶりだね。
 あの時は、孫もひ孫もいて賑やかだったけど、今日はオレ、一人で来たよ。
 墓石がキレイだし、花もみずみずしいところを見ると、すでにアニキが来たんだね。

 オヤジとは、生前のように、ケンカしながらも仲良くやってるかい?
 そうそう、昨年の秋にさ、二人を追うようにマロが、そっちへ行ったんだけど、会えたかな?
 かーちゃんたら、見舞いに行くと、いっつも 「はい、これでマロに美味しいものでも買ってやっておくれ」 なんて言って、千円札をくれたよね。
 マロったら、いつもは百円ショップのドッグフードばかり食べさせられていたから、その日のおやつは、目を丸くして食べていたよ。
 「今日は、大奥様に会ってこられたのですね」 って。
 だから、きっと今頃は、かーちゃんにベッタリで、毎日、高価なおやつを、ねだっているんじゃないかな。

 かーちゃんはさ、東京オリンピックの開催を楽しみにしていたよね。
 「2020年のオリンピックを見てから死ぬんだ」 って……
 でもね、そのオリンピックが来年に延期になってしまったんだよ!
 実はね、いま世の中は大変なことになっているんだ。
 新型コロナウイルスっていう疫病が蔓延しててさ、日本だけでなく世界中が感染防止のために、外出を自粛されているんだよ。

 えっ? うん、ここは大丈夫!
 広い霊園だし、しかも、ほら、見回してごらんよ。
 オレしかいないだろう!
 今日は彼岸でも盆でもないし、墓参りする人なんて、たぶんアニキとオレぐらいだよ。

 でもね、もしかすると、この後、M(長女)夫婦が来るかもしれないよ。
 あの娘は、おじいちゃんとおばあちゃん子だったからね。
 オヤジの命日にも、オレには内緒で、こっそり墓参りに来て、オヤジの好きだった焼酎のワンカップを置いてったみたいだもの。


 ああ、そうだね、今日は、とってもいい天気だよ。
 今年はじめての “夏日” になるらしい。

 早いもんだね。
 かーちゃんが逝って、2度目の夏が来るんだね。
 そろそろ行くけどさ、そこでオヤジと一緒に、みんなを見守っててくれよな!
 マロのことも、よろしく頼むよ!

 じゃあ、またね。



 昨日は、令和元年を3時間43分だけ生きたオフクロの命日でした。
   


Posted by 小暮 淳 at 12:33Comments(0)つれづれ

2020年05月01日

呑んで御利益 「アマビエラベル」


 今日は、「ぐんまの地酒大使」 からのお知らせです。

 のん兵衛のみなさーん、朗報ですよ!
 大好きな日本酒を呑むだけで、新型コロナウイルスの疫病退散に御利益があるという、一石二鳥の特効薬(酒) が発売されました。

 その名は、「本醸造 アマビエラベル」。
 発売したのは、群馬の名酒 「船尾瀧」 で知られる柴崎酒造 (群馬県北群馬郡吉岡町) であります。

 ラベルには、今話題のあの、江戸時代に疫病から人々を救ったと伝わる妖怪アマビエ様が描かれています。
 長い髪、菱型の目、尖ったくちばし、魚のようなウロコに覆われた下半身、三本の足……
 そして、大きく 「疫病退散」 の文字。
 ※(このラベルは水沢観音で祈願されています)


 これは、のん兵衛には、たまりません!
 もう、自粛中だからといって、家族に気兼ねして、コソコソと酒を呑むことはありません。
 堂々と、乾杯の代わりに 「疫病退散!」 と言って呑み干しましょう!
 きっと家族だって、「おとうさん、ありがとう!」 「がんばって!」 「やっぱり、頼りになるわ~」 と一目置かれること必至です。

 さあ、みなさん、ご一緒に、新型コロナウイルス感染の早期終息を願って、乾杯しましょう!


 ●船尾瀧 本造り アマビエラベル
 300ml (税込470円) 720ml (税込822円)
 県内の酒販店および一部のスーパーにて販売中。
  


Posted by 小暮 淳 at 10:23Comments(0)大使通信