2011年05月07日
負け惜しみの美学
「人生は、食えないくらいが、いいんですよね」
最近、知人に会うと、そう言われることが増えました。
みなさん、このブログを読んでくださっているんですね。
このブログで、たびたび出てくる友人の名言です。
“食えない” というハングリーな状態が、良い仕事をするという意味です。
人間、食えてしまうと、それで終わってしまうということなんですね。
で、僕のまわりには、こんな状態の人ばっかりが集まっています。
「プロK」こと、プロのクリエイティブ集団「プロジェクトK」の例会は、いつもいつも “ビンボウ自慢” のオンパレードです。
いかに、貧乏が素晴らしいか!
いかに、金がないほうが、金持ちより偉いか!
そんなことを根拠もなく、自慢しているのです。
いわば、負け惜しみです。
でも以前、こんなことがありました。
かれこれ、10年くらい前だったと思います。
今はもうない、地元のミニコミ誌で、対談をしたことがありました。
お相手は、絵本作家の野村たかあきさんです。
対談のテーマは、「貧乏力」。
貧乏力を身に付けて、たくましく生きよう!
フリーで生きるっていうことは、露地栽培の野菜と同じよ。
ビニールハウス育ちの野菜とは、味が違うんじゃい!
み・た・い・な、見方によっては、世の中を斜めから見て、真面目に働いている人たちを小バカにしているような内容の対談だったのですよ。
ちょっと、おふざけのノリも入っていたと思います。
と、と、ところがーーーーーー!!!!!!
世間というのは、面白いものです。
誰が読んでいるか、分かったもんじゃありません。
突然、発行元へラジオ局から電話がありました。
それも、天下の文化放送であります。
「貧乏力、面白いですね。放送で、紹介させていただきます」
な、な、なんですとーーーー!!!!!
しかも番組のパーソナリティーは、あの野村邦丸であります。
もちろん、当日はラジオの前で、正座して聞きましたよ。
「この小暮さんという方、娘さんに紙粘土を買ってやるお金がないからって、紙粘土を作ってやったんですって。紙粘土で何かを作ってきなさいという宿題だったのに、紙粘土そのものを作っていっちゃった! 恐るべし、貧乏力ですね」
と邦丸さん。
さらに……
「俺たちは、『金がないんじゃなくて、金はないんだ』 ですって! 分かりますか? 金 “が” じゃくて、金 “は” ないんですよ。 “が” と “は” の違いなんですけどね。素晴らしい! 金 “は” ないけど、他のモノはあるんですよ。これは意味が深いですね」
とかなんとか、対談の中のエピソードを交えて、延々と語ってくださいました。
ついには、貧乏が「美学」になってしまったんです。
あれから10年……
いまだに、“負け惜しみの美学” は健在です。
Posted by 小暮 淳 at 21:13│Comments(0)
│つれづれ