2011年12月28日
きっかけは小説だった
「小暮さんは、小説は書かないのですか?」
という質問を、時々されます。
ん~、・・・
と、いつも返事に困ってしまいます。
書かないのではなく、書けないのが正直な答えであります。
が、「書いたことがないのか?」 と問われれば、
これが、あるのです。
とっても恥ずかしい話ですが、カッコつけて、虚栄を張っていた時期があったのですよ。
今から4半世紀くらい昔の話です。
結婚していましたが、無職でした。
理由は、“やりたい仕事がない” という、なんとも無責任な理由からでした。
対世間的には、「主夫」 ということにしておいたのですが、
実は本人は真剣に、小説を書いていたのであります。
来る日も来る日も、仕事へ出かける家人を見送ってから、原稿用紙に向かって、
ウンウンとうなって、悶々とした日々を送っていました。
ある日のこと、そんな僕を見かねた家人から、1枚の新聞切り抜きを手渡されました。
“編集者 求む!”
という求人広告でした。
「どうせ、『働いて』 って言っても、『好きじゃない仕事はしない』 とかなんとか言って、絶対に勤めには行かないんでしょう? だったら、これなんかどう? 文章書きたいんでしょ? あなたに、うってつけの仕事だと思うけど……」
「面接するだけだよ。勤めるかどうかは、オレが面接して決めるから」
「何を偉そうなことを言っているのよ! あんたって人は、まったく自分を何様だと思ってるの!」
まっ、そんな夫婦のやり取りがあったわけです。
ところが、面接の当日。
奇跡が起きたのです。
その日の某新聞に、なななんと!
僕の小説が、入選で掲載されたのです。
そーじゃなくても、生意気な僕ですが、新聞に小説が載った日には、鼻がますますピノキオになって、それはそれは、面接に来たとは思えない態度で、面接を受けに行ったのであります。
当然、本人は、就職する気なんて微塵もなかったのですが、家人との約束の手前、とりあえず面接だけ受けて、後で 「落とされた」 と言えばいいくらいに考えていたのです。
「で、小暮君は、履歴書に小説を書くって書いてあるけど、どんな小説を書くの?」
と、当時の編集長に訊かれて、
「あの~、ここって○○新聞ありますか?」
と、態度のデカイ僕。
スタッフの女の子が、新聞を持って来ました。
「この新聞が、今の私の質問と関係があるのかな?」
と言われ、おもむろに新聞を開いて見せました。
「こんな小説、書いてます!」
カッコイイーーーーっ!
と、その時は、そんな自分に酔っていたのですよ。
なにせ、まだ20代の若造ですからね。
と、編集長は、僕の小説を読み出して、しばらくすると、こう言いました。
「文章がうまいのは、分かったよ。でも、これはフィクションだ。雑誌は、ノンフィクションなんだよ。君に、書けるかな?」
と言われ、
バカにされたと思って、カーーッと頭に血が上った僕は、
「もちろん、書けますよ。簡単っす!」
と、返事をしてしまったのです。
いやいや、今となれば、世の中を何も知らない青二才のたわごとであります。
本当に、お恥ずかしい。
でも、その甲斐あって、その後僕は、その編集の世界で、もまれもまれて、今日まで生きながらえてきたのです。
今となれば、あんなにも生意気だった青二才に、手取り足取り、編集のイロハを教えてくださったK編集長には、ただただ感謝しております。
あの時は、本当に失礼しました。
そして、ありがとうございます。
そんないきさつがあり、僕は2度と小説を書かなくなってしまったのです。
Posted by 小暮 淳 at 22:06│Comments(2)
│執筆余談
この記事へのコメント
出会いってホント分からないものですね。私も旦那と出合ってなければこの職業にはついてませんでした。現在は出合うお客様、うちに勤めて下さる従業員さんに感謝です。
なかなかコメントできないので、まとめて…。
赤城山はいつも伊勢崎・駒形線から車を走らせ眺めてます!私は薄っすら雪化粧をした赤城を見るとクグロフというマリーアントワ―ネットの愛したお菓子に見えますよ。自宅からはここ何年か前から 巨大なボーリングのピンが立ってしまいちょっとガッカリ。H川沿い近くに住んでます。
夢…。夢ではなく小さな目標ですが、今年叶いました。しかも任期最後にして舞台に立ちました!その光景をいつも、頭の中でシュミレーションしながら携わったので、嬉しかったです。でも、誰にも言えません。ワンステップ超えましたので次の夢の実現へ発進!
上毛新聞の「視点」柏原さんの記事読みました!すごい!小暮さんのタイミングと宣伝したい方の気持ちがピッタリ!実は9月にビエンナーレに行って散策をして参りました。私も今度は、小暮さんの本を持参して宿泊をしたいと…。
なかなかコメントできないので、まとめて…。
赤城山はいつも伊勢崎・駒形線から車を走らせ眺めてます!私は薄っすら雪化粧をした赤城を見るとクグロフというマリーアントワ―ネットの愛したお菓子に見えますよ。自宅からはここ何年か前から 巨大なボーリングのピンが立ってしまいちょっとガッカリ。H川沿い近くに住んでます。
夢…。夢ではなく小さな目標ですが、今年叶いました。しかも任期最後にして舞台に立ちました!その光景をいつも、頭の中でシュミレーションしながら携わったので、嬉しかったです。でも、誰にも言えません。ワンステップ超えましたので次の夢の実現へ発進!
上毛新聞の「視点」柏原さんの記事読みました!すごい!小暮さんのタイミングと宣伝したい方の気持ちがピッタリ!実は9月にビエンナーレに行って散策をして参りました。私も今度は、小暮さんの本を持参して宿泊をしたいと…。
Posted by 繭リン at 2011年12月29日 13:24
繭リンさんへ
繭リンさんちと、僕のうちは、近いですね。
隣町では、ないでしょうか?
僕の家から見えるボーリングのピンは、小さく見えますけど・・・。
柏原会長の記事、読みましたよ。
うれしいですね。
なんだか、四万温泉と相思相愛になれたようで。
繭リンさんちと、僕のうちは、近いですね。
隣町では、ないでしょうか?
僕の家から見えるボーリングのピンは、小さく見えますけど・・・。
柏原会長の記事、読みましたよ。
うれしいですね。
なんだか、四万温泉と相思相愛になれたようで。
Posted by 小暮 at 2011年12月29日 19:53