2012年09月21日
谷川温泉 「金盛館 せゝらぎ」
僕は、温泉を専門に取材するライターとして活動するようになったのは、まだ10数年ですが、この業界で仕事をするようになってからは、25年になります。
この業界とは、雑誌の編集です。
主に群馬県内のタウン誌や情報誌の編集が多かったので、県内の温泉地、それも有名な旅館は、だいたい1度や2度は取材に伺っています。
でもね、取材とは、重ねれば重ねるほど、発見も多く、いい記事が書けるものなんですよ。
昨晩、お邪魔した谷川温泉の「金盛館 せゝらぎ」も、以前に雑誌の仕事で伺ったことがあります。
その時は、4代目女将の須藤美由貴さんからお話を聞きましたが、まあ、1時間程度だったと思います。
また、ご主人の温(みつる)さんは、現在、僕がお世話になっている、みなかみ町観光協会の代表理事でもありますから、会議などの席でもたびたびお会いしている方であります。
でも、 じっくり泊まって、じっくり酒を酌み交わして、じっくり取材をするのは、今回が初めてだったのです。
もう、スケジュールが決まったときから、楽しみで、楽しみで、「あれも聞こう、これも聞こう」 とワクワクしながら昨日という日を待ちわびていたのであります。
で、僕の開口一番の質問は、ズバリ!
「大正7年に、若山牧水が訪れていますよね?」
そう、牧水は、かの 「みなかみ紀行」の旅をした大正11年より4年も前に、谷川温泉を訪れているのです。
大正7年11月12日、上野駅を発った牧水は、その夜は伊香保温泉の 「千明仁泉亭」 に泊まり、翌日から3日間は水上温泉の「藤屋旅館」(現在廃業)で過ごし、16日から18日までは谷川温泉の 「金盛館」 に滞在しています。
「はい、初代の頃だと聞いています。その時に詠んだ歌が、こちらです」
と女将が指さす先に、直筆の書を拡大した写真が展示されていました。
『わがゆくは山の窪なるひとつ路 冬日光りて氷りたる路』
ん~、歌の良し悪しは分かりませんが、その文字が牧水の直筆だと知れば、感動もひとしおであります。
まあ、大正2(1923)年創業の老舗旅館(それ以前も「金盛館」はあったが、経営者が違ったという)ですから、聞く話、見るものすべてに興味津々なのですが、なんといっても、ここの自慢は “湯” です!
何が自慢かって、その湯量です。
自家源泉と共同源泉を合わせて、4ヵ所の源泉から引き込む湯量は、なんと合計毎分600リットル!
それも、約33度~58度の異なる温度の源泉を混合することにより、四季を通じて適温を設定することができるのです。
加水せず、加温せず、こうして適温を保てるのも、すべて恵まれた温泉があればこそのもの。
さっそく、まずは撮影を兼ねて、谷川(渓流の名前です)のほとりに造られた名物の混浴露天風呂へ。
他のお客さんの夕食時間を狙って、誰もいない露天風呂でパチリ!
それにしても野趣に富んだ、ワイルドな露天風呂であります。
河川敷の中ということもあり、周りは自然林に囲まれています。
ときどき、カモシカもやって来るとのことです。
再度、内風呂に入り直してから、食事処へ。
カメラマン氏と夕食を食べているところへ、ご主人が登場です。
「利き酒セットというのがあるんですが、一緒にやりませんか?」
も~、バカバカバカバカーーーーっ!
そんな楽しいことは、するに決まってるじゃありませんか~!
ということで、ぐい飲みを手に、群馬や新潟の地酒を片っ端からやっつけることにしたのであります。
「カンパーイ!」
もちろんお酒だけではなく、温泉話もヒートアップしたことは、言うまでもありませんって。
泊まって、飲んで、主人と語り合う、これが “小暮流温泉取材” のやり方なのであります。
Posted by 小暮 淳 at 19:07│Comments(0)
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