2013年08月25日
嬬恋温泉 「つまごい館」
「この本を持って来られる人が、結構いますよ」
と、ご主人の黒岩和(かのお) さん。
この本とは、2009年に出版した拙著 『ぐんまの源泉一軒宿』(上毛新聞社) です。
と、いうことは、ご主人にお会いするのは、4年ぶりということになります。
あの日と変らぬ、物腰の柔らかい、穏和な笑顔で迎えてくださいました。
和さんは、2代目。
温泉を掘り当てたのは、先代の富太郎さんでした。
戦後、富太郎さんは満州(中国東北部) から引き揚げ、白根鉱山で働いていました。
のちに掘削機械を引き取り、現在の場所に自ら温泉を掘ったのだといいます。
「父は風呂が大好きで、温泉の掘削には信念を持っていました。ここは川沿いだし、冬でも地面の温かい所がある。絶対に、湯が出るって」
昭和51(1976)年、念願の温泉宿を開業しました。
それまで嬬恋村の吾妻線沿線には、万座温泉と鹿沢温泉、新鹿沢温泉くらいしかありませんでしたから、日帰り入浴もできる身近な温泉として評判になり、連日、順番待ちをする行列ができるほどの盛況ぶりだったといいます。
「今ですか? 今は、夏しか日帰り入浴客は受け入れていません。それ以外の季節は、開けていても客はきませんから。だって、こんな山の中まで来なくても、今はどこにだって温泉施設があるじゃないですか」
それでも先代の遺志を継いで、温泉宿を続けているのは、本当の温泉好きが、やって来るからだと言います。
「うちは、湯の分かるリピーターでもっているんですよ」
と、目を細めながら、ゆっくりとお茶をすすります。
それと、ここは、鉄道マニアに愛されている宿なんですね。
JR吾妻線の終着駅 「大前」。
駅舎もない無人駅の駅前には、商店も民家もありません。
ホームの前に、「つまごい館」 が、ポツンと建っているだけ。
だもの、マニアには、たまらない宿です。
「最近は、温泉の記事も難しいでしょう? やたらに“ ○○に効く” とか “××が治る” って、言えないし、書けませんものね。でも、世の中には、藁(わら) にもすがる人たちがいて、やって来るんですよ」
という、ここの湯は、昔から飲むと胃腸病や糖尿病に効くといわれ、また、湯気を鼻から吸入すると喘息(ぜんそく) に効くといわれています。
薬事法に抵触するという理由から、温泉の効能についての表記には厳しい現代ですが、医薬品だって万人に絶対に効くとは限りません。
10人の人が入浴(飲泉) して、1人でも病気が治ったり、症状が軽くなったら、それは温泉の “湯力(ゆぢから)” だと僕は思います。
知る人ぞ知る温泉、温泉好きだけが知っている温泉。
群馬には、いい温泉が、たくさんありますね。
Posted by 小暮 淳 at 18:42│Comments(2)
│温泉地・旅館
この記事へのコメント
こんばんは。
2~3週間くらい前だったか、私の知り合いの温泉愛好家がつまごい館さんを訪れています。
以前、私が「ぐんまの源泉一軒宿」をおすすめし、即購入されたという経緯があるお方です。そのお方は日本全国の温泉地を巡っている人でありますが、群馬にはこんなに未湯(未踏)の温泉があったんだと感嘆していました。
草津や万座、川原湯は知っていても、温泉ファンでもなければなかなか辿りつけない良質な湯は魅力的であります。いつまでも守っていってほしいと思います。
また、温泉ライターここにありき!ですなあ。
いいお仕事してますねぇ、先生。
まだまだ残暑厳しい折、ご自愛くださいませ。
2~3週間くらい前だったか、私の知り合いの温泉愛好家がつまごい館さんを訪れています。
以前、私が「ぐんまの源泉一軒宿」をおすすめし、即購入されたという経緯があるお方です。そのお方は日本全国の温泉地を巡っている人でありますが、群馬にはこんなに未湯(未踏)の温泉があったんだと感嘆していました。
草津や万座、川原湯は知っていても、温泉ファンでもなければなかなか辿りつけない良質な湯は魅力的であります。いつまでも守っていってほしいと思います。
また、温泉ライターここにありき!ですなあ。
いいお仕事してますねぇ、先生。
まだまだ残暑厳しい折、ご自愛くださいませ。
Posted by G@さいたま at 2013年08月28日 00:50
G@さいたまさんへ
いつもご支援ありがとうございます。
G@さいたまさんに、そう言っていただくと、報われたような思いがします。
僕が群馬の温泉をくまなく巡って本にしようと思ったのは、群馬県は “温泉県” だと言っているわりには、有名温泉以外をまったく紹介していないという疑問に出合ったからです。
調べてみたら、あれよあれよ、こんなにもたくさんの温泉があるじゃありませんか!
と、いうことで、来春出版予定の本で、シリーズ6冊目を数えます。
これからも、応援してくださいね(ブタもおだてりゃ木に登ります)。
いつもご支援ありがとうございます。
G@さいたまさんに、そう言っていただくと、報われたような思いがします。
僕が群馬の温泉をくまなく巡って本にしようと思ったのは、群馬県は “温泉県” だと言っているわりには、有名温泉以外をまったく紹介していないという疑問に出合ったからです。
調べてみたら、あれよあれよ、こんなにもたくさんの温泉があるじゃありませんか!
と、いうことで、来春出版予定の本で、シリーズ6冊目を数えます。
これからも、応援してくださいね(ブタもおだてりゃ木に登ります)。
Posted by 小暮 at 2013年08月28日 09:56