2013年09月05日
平治温泉 「逢友荘」
一般に、温泉地の名前は、源泉が湧出している場所の地名が付けられています。
草津温泉も伊香保温泉も水上温泉も四万温泉も、みんな地名です。
僕が知る限り、県内温泉地の9割以上が、地名を名づけています。
ですから、平治温泉は、非常に珍しい温泉地名だといえます。
だって、「平治さん」 という人の名前ですからね。
源泉が湧いている土地の所有者の名前とのことです。
平治温泉を訪ねるのは、約4年ぶりのこと。
とにかく、分かりづらい旅館です。
JR吾妻線の万座鹿沢駅から、吾妻川対岸に宿の大きな看板は見えるんですけどね。
“すっぽん料理 逢友荘” って・・・
迷わずにたどり着ければ、徒歩約6分の距離。
ところが、国道には一切の誘導看板はないし、迷路のようにクネクネと入り組んだ住宅地の路地を行きます。
「だって、ファンが看板は出すなっていうんだもん。なかなか、たどり着けないところがいいんじゃないの」
4年前に、そう言って豪快に笑った小貫勝緩さん。
お元気でしょうか?
「いや~、久しぶりだね! さあ、上がって、上がって」
と、相変わらず気さくなご主人と、女将の幸子さんに迎えられました。
そして、愛犬のシロ・・・
「あれ、シロですよね?」
と、僕にじゃれついてくる白いチワワを指差すと、
「シロはね、去年、死んじゃったのよ」
と、女将さんが淋しそうに答えました。
「でも、そっくりでしょ! 瓜二つだったので、また飼うことにしちゃった」
本当だ。そっくりです。
といっても、僕の記憶の中のシロと比べているのではありませんよ。
茶の間には、歴代の愛犬たちの写真が、壁に飾られているんです。
そのなかに、故・シロの遺影もありました。
「温泉好きって、多いんだね。この本を持って、訪ねてくる人が、けっこういるよ」
と、ご主人が手にしているのは、4年前に出版された拙著 『ぐんまの源泉一軒宿』(上毛新聞社) です。
そう言っていただけると、著者冥利に尽きるというもの。
うれしいですね。
「でも、オタクっぽい人もいるわね。泉質がどうのとか、効能がどうのとか、私なんかより、よっぽど、うちの湯について詳しいのよ。ありがたいことだけど」
と笑う女将さん。
「なんでも、泡の出る温泉っていうのは、珍しいんですってね」
そーなんですよ、女将さん!
とっても、珍しいんですよ。
炭酸泉は全国でも、全体の1%しかありませんからね。
とかなんとか話していたら、もう、居ても立ってもいられなくなってしまいました。
ごちそうを前に、おあずけを食らっている犬のように、僕はよだれが止まりません。
「とりあえず、風呂に入ってきま~す!」
と脱兎のごとく茶の間を飛び出して、浴室へ。
プ~ンと漂う、金気臭。
相変わらず、ザバーザバーと惜しみない量の湯が、浴槽からあふれ出ています。
そして、流れ出した湯の形に、洗い場のタイルが赤黒く変色しています。
「そうそう、これこれ、これですよ。平治の湯は・・・」
と、大好物にありついた犬のように、僕は湯にむしゃぶりついたのであります。
源泉の温度は、約41度。
浴槽にたどり着くまでに、1~2度下がっているだろうから、熱からず、ぬるからず、夏にはちょうどいい湯加減です。
そして、1分も経たないうちに、全身が泡の粒に包まれてしまいました。
「これこれ、これじゃなくっちゃ、平治の湯じゃないね」
と、1人湯舟の中で、至福の時間を味わったのであります。
群馬県は、全国でも泡の出る炭酸泉が多いほうだと思います。
その中でも、ここ平治温泉は、県内1、2を競うほど、泡のよく付く温泉ですぞ。
未体験の人は、ぜひ一度、お試しあれ!
Posted by 小暮 淳 at 21:09│Comments(0)
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