2013年10月30日
白根温泉 「加羅倉館」④
まさに、今が旬!
「紅葉狩り」 のハイシーズンです。
金精峠を越えて日光中禅寺湖へ抜ける、通称 「日本ロマンチック街道」 の国道120号は、ただいま山が錦に燃え上がっています。
仕事でなければ、もっと楽しいのですが、仕事でも充分に堪能してきました。
「今年の色づきは、イマイチだね」
と、清流・大滝川に架かる赤い橋の上で、5代目主人の入澤眞一さんが出迎えてくれました。
「今朝、やっと霜が下りたんだもな。色づくには、遅いよね」
入澤さんに、初めてお会いしたのは、かれこれ10年ほど前。
「これは特別だよ。メニューにはないからね。たまたま今日、友人が撃ってきたんだよ」
と、夕食に出されたテンコ盛りの “鹿刺し” にビックリ仰天したものでした。
そういえば、国道の端に立つ看板が気になりました。
<鹿の飛び出し注意!>
「相変わらず、鹿が多いんですか?」
と問えば、
「ああ、ヤツラは突然、車道に飛び出してくるからね。危ねえったら、ありゃしねーよ」
そして、
「やっぱりさぁ~、いい湯ってーのは、口コミで広がるんだね。『人から聞いた』 ていう県外からの客が、だいぶ来るようになったからね」
と、いつものように湯の自慢話が始まりました。
とにかく入澤さんは、自分とこの湯が、大好きな人なんです。
18年前。
それまで水上温泉で働いていた入澤さんは、知人から加羅倉館の管理人を頼まれました。
当然ですが、奥さんは猛反対でした。
知り合いもいない、山奥の一軒宿ですからね。
でも入澤さんは、ここの湯に惚れ込んでしまったんです。
「とにかく 『湯がいい』 の一点張りで、押し切られてしまいました」
とは、女将となった奥さんの澄子さん。
まあ、僕は、入澤さんの気持ちが分かりますけどね。
だって、源泉が13本も湧いているんですよ。
しかも、すべて自然湧出!
とにかく、湯量豊富で高温度の温泉が、ジャンジャンと湯水のごとく湧き出しているのです。
ここでは、“源泉かけ流し” という表現は、当てはまりません。
だって、半分以上の湯が使いきれずに、目の前の川へ流れてしまっているのですから。
これこそが、“源泉たれ流し” であります。
その湯は、けれんみのない、直球ストレートの単純温泉。
まるで、湧き水のように澄んでいて、キラキラと光り輝いています。
僕は、「生一本の湯」 と呼んでいます。
それゆえ、入浴するときは、僕もいい加減な気持ちでは入れません。
ピーンと背筋が伸びてしまう、優等生と対話しているような真面目な浴感なのであります。
やや熱めですが、正統派の温泉好きには、おすすめの湯です。
Posted by 小暮 淳 at 18:25│Comments(0)
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