2014年03月23日
未来墓参
今日もまた、オフクロが 「墓参りに連れてってほしい」 と言いました。
実は僕、先週から実家に泊まり込んで、両親の面倒を看ています。
いつもはアニキが滞在して、身の回りの世話をしてくれているのですが、しばらくの間、家族のいる東京へ帰ることになりました。
「すまんが、ちょうど彼岸中なんだよ。大変だろうが、オヤジとオフクロを墓参りに連れてってやってくれ」
というのが、アニキから僕への伝言でした。
「ああ、いいよ」 と軽々しく返事をしてしまいましたが、それは、1日で済むものだと思っていたからです。
まさか、父方の本家と母方の本家の墓以外に、まだ墓参りがあるとは思っていませんでした。
「お前が連れてってくれないんなら、あきらめるけどさ。どうしても、気になってしょうがないんだよ。マーちゃんが、私たちが来るのを待っているような気がしてね」
マーちゃんとは、8年前になくなったオヤジの弟です。
オヤジの弟なんですが、オフクロとは同じ歳だったので、生前は、とても親しくしていました。
「カヨちゃんも、同じ墓地だしね。連れてってくれないかね?」
カヨちゃんは、オヤジの甥っ子の奥さん。
僕にとっては、いとこの嫁さんです。
数年前、病気のため58歳の若さで他界しました。
と、いうことで今日の午前中、僕は、足の不自由なオフクロと、頭の不自由なオヤジを車に乗せて、前橋北部にある市営墓地へと向かいました。
風のない、おだやかな日和。
赤城山南面に広がる墓地は、明るくて開放的で、墓地というよりは公園のようです。
ところが広過ぎて、なかなか目当ての墓所にたどり着きません。
もちろん、オヤジに訊いても、
「ここは、どこだい?」
と、すでに、実の弟が、ここに眠っていることすら忘れています。
僕は今回、初めての墓参です。
頼みの綱は、オフクロの記憶のみ・・・
「確か、道の左に下りる階段があったよ」
なーんて、言われても、 道の左にも右にも階段だらけです。
それでも1時間近く苑内を車で走り回り、なんとか、2つの墓所にたどり着きました。
「どうせなら、近々2人が入る墓も、見て帰ろうよ」
と、イヤミを言う僕。
実は、すでにオヤジとオフクロが入る予定の墓も、この墓地の中に造ってあるのです。
すると、オヤジがこんなことを言いました。
「○○(僕の息子) が小さかった時、連れてきたことがあったな。『死んだら、おじいちゃんは、この中に入るんだよ』 って言ったら、『いやだ、いやだ』 って泣いたんだ。孫っていうのは、可愛いもんだって思ったよ」
“墓を造ると長生きをする” といいますが、まさに、その通りです。
オヤジが自分の墓を造ったのは60歳のとき。30年も前のことです。
両隣の墓石には、花が手向けられています。
ポツンと1基だけ、花も線香も卒塔婆もない、殺風景な墓石に、ただ 「小暮家」 とだけ刻まれています。
30年間、入る人のいない墓です。
もちろん、誰も入っていないのですから、花も線香も手向けません。
手を合わせることもなく、ただただ、僕は墓石だけを眺めていました。
いつかは、ここで、手を合わせる日が来る・・・
それは、遠い未来じゃない。
「腹が減った」 とオヤジ。
「そうだね、早く帰って、昼飯にしような」
僕は車のエンジンをかけて、ゆっくりと坂道を下り出しました。
Posted by 小暮 淳 at 21:09│Comments(0)
│つれづれ