2014年06月29日
老神温泉 「紫翠亭」
四万温泉の 「柏屋旅館」、湯宿温泉の 「旅館みやま荘」、そして老神温泉の 「紫翠亭」。
さて、これらの旅館に共通することは?
国道120号から 「老神温泉郷」 の誘導看板に導かれて、温泉街へ。
最初に見えてくる白亜の旅館が 「紫翠亭(しすいてい)」 です。
そう、答えは、温泉街で一番最初に旅人を出迎えてくれる宿です。
僕は、ここからの風景が大好きなんです。
片品渓谷を抱きかかえるようにそびえる大楊山を借景にして、自然の中に調和した和の外観が、とても美しいのです。
エントランスで立ち止まり、振り返ると、今度は花畑や田畑が眼前に広がります。
なんとも、のどかな山里の風景です。
実は、この目の前の畑は、紫翠亭の自家農園。
キュウリやトマト、ナス、トウモロコシといった旬の野菜が栽培されています。
「朝摘みした新鮮な野菜を、その日の食卓にお出ししています」
と、顧問の桑原道良さん。
桑原さん?
桑原姓は、老神温泉に多い名字です。
もしやと思い訊ねると、案の定、地元の人でした。
しかも、先日訪ねた 「東明館」 の元ご主人でした。
紫翠亭は、平成7年に明治時代から続く老舗旅館 「山口屋」 の姉妹館としてオープンしました。
ところが同23年3月の東日本大震災の後に、経営者が交代。
現在の経営は、水上温泉に系列宿を持つ松乃井グループです。
東明館が 「ぎょうざの満洲」 に経営が交代したのが、その前年です。
桑原さんの人生は、老神温泉とともに生きるようにできているのですね。
老神温泉を知り尽くした生き字引のような桑原さんの話は、いつまでも聞いていたくなる含蓄のある内容でした。
露天風呂に浸かり、渓谷を渡る初夏の風に吹かれてきました。
“温泉は生きている” とは、今春出版した拙著 『新 ぐんまの源泉一軒宿』 の 「あとがき」 に書いた言葉です。
でも、生きているのは温泉だけではありません。
温泉宿も温泉街も生きているのですね。
つくづく今、そう感じています。
Posted by 小暮 淳 at 17:28│Comments(0)
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