2014年07月03日
老神温泉 「東秀館」
「直系の経営では、うちが一番古い宿になってしまいましたね」
と、4代目館主の小林利之さん。
東秀館の創業は、明治27(1894)年。
今年で、ちょうど120周年を迎えます。
主人の言うように、老神温泉には明治時代に創業した老舗旅館が4軒ありました。
が、すでに2軒が廃業し、1軒は経営が交代しています。
直系の一族が現在でも経営している温泉旅館としては、老神温泉で唯一、最古の宿といえます。
今から120年前。
片品川対岸の 「穴原」 という集落が、大火に見舞われ、壊滅の危機に瀕してしまいました。
「どうにか、この村を残したい」 「元の村のように再建したい」 と、まわりの集落に助けを求めたところ、「大原」 に住む小林さんの曽祖父が、穴原が所有していた源泉を買い上げて、村の危機を救ったといいます。
そのため、ここ東秀館だけは、昭和のはじめまで 「穴原温泉」 と呼ばれていました。
※(老神温泉に合併した経緯については、当ブログの2014年6月12 「老神温泉 伍楼閣」 を参照)
という、歴史的背景もあり、片品川対岸に湧く温泉は、泉質もちょっと変わっています。
分析書による泉質表記ではアルカリ性単純温泉になっていますが、昭和初期までの成分表には硫化水素泉と書かれています。
いわゆる、単純硫黄泉です。なのにアルカリ性!
驚くのは泉質だけではありません。
温泉の成分が固まり、湯舟に膜が張るという珍しい現象が起きます。
以前、僕は赤城温泉で、カルシウム成分が凝固する 「石灰華」 という膜を見たことがありますが、ここのは、また別物。
半透明で、ナタデココのように弾力があるといいます。
「指で押し切ろうとしても、なかなか切れないですよ」 と主人。
24時間以上、人の入浴がなく、湯面が空気にさらされていると起きるという現象のため、残念ながら今回僕は、見ることができませんでした。
それでも、なんともいえぬ硫黄の香りと、白い湯花の漂う湯の中、極上の湯浴みを満喫してきました。
光の加減でしょうか? ほんのりと緑がかった湯でしたね。
ご主人、これからも歴史ある湯と宿の歴史を、守り続けてくださいね。
素晴らしい湯と、楽しい話をありがとうございました。
ぜひ、また寄らせてもらいます。
Posted by 小暮 淳 at 18:37│Comments(0)
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