2014年11月06日
立ち止まらず、振り返らず。
昨日の午後、僕は温泉取材から戻ると、すぐに桐生市(群馬県) へ向かいました。
敬愛する彫刻家、丸尾康弘さんの個展が今日(6日) までだったからです。
丸尾さんとの出会いは、25年前。
僕が、まだ駆け出しの雑誌記者をしていた時代に、取材でお会いしました。
年齢は僕のほうが、2歳年下です。
でも、家族構成も同じで、考え方も似通っていました。
ただ違ったのは、“生き方”。
※(丸尾さんとの出会いについては、当ブログの2013年4月6日 「山が私を呼んでいる」 を参照)
今回の会場は、桐生市の 「無鄰館(むりんかん)」。
ノコギリ屋根の工場跡に、芸術家たちが移り住んでいるアート・スペースです。
丸尾さんのアトリエも、この中にあります。
「どうも、ご無沙汰しています」
会場で、来場者と談話中の彼に、声をかけました。
トレードマークのジーンズにGジャン姿。
白毛交じりのアゴヒゲも、似合っています。
「ジュンちゃん、ありがとうね」
「顔が見たくて、来ました」
とは、僕の本音です。
丸尾さんの作品は、大きなものは等身大、小さいものは手のひらサイズの木彫りの人形(ひとがた) です。
凄いと思いますが、正直、僕には “芸術” が良く分からないのです。
でも、昔から丸尾さんの “生き方” には、あこがれ、刺激を受けてきました。
今回の個展のこと、次回の作品展のこと、現在の活動状況や家族のこと・・・
散々、話し込んだあと、僕は素直に思ったままを質問しました。
「丸尾さんって、いつも前を向いて生きてますよね?」
すると、
「・・・・・」
さー、どうかなっていう顔をしながら、右手でアゴのあたりをさすってみせました。
「立ち止まったり、振り返ったりは、しないのですか?」
そう、訊ねたときでした。
僕の質問が、終わらないうちに、
「それはないね!」
と、キッパリ言い放ちました。
その時の衝撃・・・
「いつも前を向いているか?」 の質問には言葉をあぐれていたのに、「立ち止まらないのか?」「振り返らないのか?」 の問いには、即答だったのです。
僕は、そこで大きなため息をついてしまいました。
強い!
この強さが、何十年とブレることなく、モノを創り続けている原動力なのだと……
来年は、また前橋で個展を開くといいます。
「必ず、行きます」
と約束をして、ノコギリ屋根をあとにしました。
Posted by 小暮 淳 at 20:48│Comments(0)
│つれづれ