2018年02月12日
小さな手と手
♪ ひとりの小さな手 何もできないけど
それでもみんなの手と手を合わせれば
何かできる何かできる ♪
オヤジは93歳、体は健康ですが認知症が進んでいます。
オフクロは90歳、頭はハッキリしていますが、脳梗塞と脳出血を繰り返して、寝たきりの生活をしています。
平日は東京からアニキが実家に来て、デイサービスやショートステイの面倒を看ています。
そんな兄の負担を少しでも軽くしてあげたくて、週末は、僕の家でオヤジを引き取って面倒を看ています。
そんな兄弟二人三脚の介護生活が、もう10年近くも続いています。
「ほら、じいさんを連れてきたよ」
このところ日曜日は、僕がオヤジを連れて、オフクロが入院している病院を訪ねています。
今年になってオフクロの老衰が進み、ついに自宅介護が不可能になってしまいました。
※(入院までのいきさつについては、当ブログの2018年1月29日「トンカツと温かい手」参照)
「どこ、どこにいるの?」
あんだけ、「もう、おとうさんは連れてこなくていい」なんて強がっていたのにね。
やっぱり、会いたいんですよ。
だって、こんなにも、うれしそうなんだから。
「ほら、じいさん、手を出して」
「誰だい?」
「H(オフクロの名前) だよ」
「Hって、俺の女房かい?」
「そうだよ」
「なんで、こんなところにいるんだい?」
「……、寝ているんだよ」
「そうかい、寝ているんかい」
前回、オヤジはオフクロの名前を言っても分かりませんでした。
オフクロだけではありません。
僕のことだって、アニキのことだって分からないのです。
でもね、たまーーーーに、何かの拍子で、脳の回線がつながることがあって、一瞬だけど記憶がよみがえるときがあるのです。
「ばあちゃん、良かったね。ばあちゃんのこと分かるってさ」
寝ているオフクロの右の目尻から、一筋の涙が流れ落ちるのが見えました。
そして、左手を差し伸べています。
「ほら、じいさん。Hの手だよ」
僕はオヤジの手を取り、オフクロの手に重ねてやりました。
オヤジの体重は現在、40キロです。
オフクロにいたって、28キロしかありません。
しわくちゃでガリガリの手が、さらに小さな手をつかみます。
「痛いですよ、おとうさん」
なぜか、それを見ていた僕の頭の中に、急にあるメロディーが流れ出しました。
その昔、フォーク歌手の本田路津子が歌った 『一人の手』 という歌です。
小さな手と手が重なり合って、何ができるのでしょうか?
何もできなくてもいいから、今、この時が止まってくれたらと、思わずにはいられませんでした。
Posted by 小暮 淳 at 13:06│Comments(0)
│つれづれ