2018年04月18日
「F」 と 「H」
小説を読んでいたら、無性に酒が飲みたくなりました。
でも時刻は、まだ午後の3時。
早く、時間よ経て!
ページをめくる手が、アル中患者のようにふるえます。
午後4時。
あと1時間。
そわそわしながら、ページをめくります。
ノドは、カラカラです。
えい、もう我慢がならぬ。
いざ、出陣じゃーーー !!!
ということで、僕は脱兎のごとく家を飛び出して、「H」 へと向かったのでした。
「H」 とは、ご存じ、我らのたまり場、酒処 「H」 であります。
一番乗りを目指したのに、カウンターには、すでに先客がいます。
さすが、のん兵衛の世界にも、上がいるものです。
で、僕が読んでいた小説とは、
栗山圭介著 『居酒屋 ふじ』(講談社文庫)
であります。
役者志望の主人公が、オーディションに落ち、ふらりと入った小さな居酒屋。
そこには、強烈な人生を生き抜いてきた80歳の名物 “おやじ” がいました。
常連客は、すべて “おやじ” のファンたち。
いつしか主人公も、通い出すのですが……
実は、この店、東京に実在するする店なんですね。
有名人が通う店としても知られ、テレビドラマ化もされました。
<名物らしき鯨の尾の身とふじ豆腐とちりめんキャベツを注文した。>
主人公は、初めて店に入った日に、この3品を注文します。
よっぽど美味しかったようで、毎回、この3品をたのみます。
<「鯨の尾の身」 は、尾びれの付け根の部分で、ほとんどが赤みの鯨肉の中で唯一の霜降り。この薄切りされた尾の身に、にんにくとしょうがをのせて、しょう油でいただいた。>
<「ふじ豆腐」 は、ぷるんぷるんの豆腐の上に、ほぐされたたらこが山のように盛られていて、そのまろやかな塩加減が豆腐のぷるふる感とマッチして、つい一気食いしてしまった。>
そんな小説を読んでいたら、居ても立ってもいられませんって。
「ママ、とりあえず生ちょうだい!」
お通しは、ほうれん草のおひたし。
ポン酢がけで、いただきました。
「ク~、しみるねぇ~」
「ジュンちゃん、まだビールでいいの?」
「あと1杯、ちょうだい。その後は、芋焼酎かな」
最後は、日本酒でしめるつもりです。
「H」 には、メニューは一切ありません。
すべて、ママのおまかせコース料理です。
それも、客一人ひとりの飲み方と腹具合に合わせて、1品ずつ出してくれます。
きのこ豆腐、鶏の手羽揚げ、鯛の粕漬け焼き……
どれも手の込んだ、ママの創作料理です。
「H」 だって、「居酒屋 ふじ」 に、負けてなんかいないぞ!
小説に嫉妬して、ムキになって飲みに出た夜でした。
Posted by 小暮 淳 at 14:14│Comments(0)
│酔眼日記