2018年05月22日
川原湯温泉 「丸木屋旅館」
昭和27年だったといいますから、66年の歳月が過ぎたことになります。
のどかな温泉街に、突然、ダム建設の計画が持ち上がった年です。
いまだに、ダムは完成していません。
国の方針も中止と再開をくり返し、温泉街をはじめ水没予定地区の住民は、賛成派と反対派に分かれ、確執と翻弄の中で闘い続けて来た66年間でした。
それでも終結の日が、いよいよ、あと2年と近づいています。
ダム堤は完成すれば、高さ116メートル、幅290メートル。
現在、24時間態勢で、コンクリート打設工事が進んでいます。
「旅館が移転したら、また取材してくださいね」
と9年前に言ってくださったのは、“旧七軒” と呼ばれる老舗旅館の主人でした。
その主人の旅館は、まだ新天地には移転していませんが、すでに5軒の宿が営業を再開しています。
今日、そのうちの1軒、「丸木屋旅館」 へ行って来ました。
NHK文化カルチャーの野外温泉講座です。
僕は9年前から、この講座の講師をしています。
開講した初年度に、講座では旧川原湯温泉を訪ねています。
「旧川原湯温泉に行ったことある人は、いますか?」
行きのバスの中で、受講生に声をかけると2名が手を挙げました。
顔を見れば、初回講座から受講している方でした。
「うわ~、なんだか温泉地という雰囲気じゃないですね」
バスを降りた受講生の第一声でした。
「ですね、まだ道路も工事中だし、宿も商店もまばらです。これからですよ」
僕は昨年、雑誌の取材で、川原湯温泉協会長の樋田省三さんにインタビューをしました。
彼いわく、「次世代を担う若い後継者たちが、帰って来ています。私たちは過去を引きずっていますが、彼らには未来しかない。新しい川原湯温泉に期待しています」
もちろん、僕も期待しています。
10年後、20年後の川原湯温泉を見てみたいものです。
現在の温泉街の入り口に建つ、「丸木屋旅館」。
黒を基調としたモダンな和風旅館です。
部屋は全6室、家族だけで商うアットホームな宿です。
なによりも、湯がいい!
旧温泉地からポンプアップされていますが、源泉の温度が約80度もあるため、加温する必要はありません。
この時季だと、ちょっと熱いくらいです。
でも、これが不思議なんです。
昔から川原湯の湯は、“熱いけれど涼しさを感じる” のであります。
ま、これは僕の大げさな表現なんですけどね。
入るときは確かに熱いのです。
でも肩まで浸かる頃には、もう熱さは感じません。
「あれ、ちょうどいい湯加減じゃない」
と、受講生たちも大変驚いていました。
湯上がりにいただいた料理は、フキとタケノコの煮物、ウドやコシアブラの天ぷらなど、山の幸たっぷりで、ついつい酒も進んでしまいます。
「先生、最高ですね!」
「でしょう、いいでしょう!」
みなさんも、新しくなった川原湯温泉へ、ぜひ足を運んでください。
今だと、「八ッ場(やんば)ダム現場見学ツアー」 を行っていますよ。
Posted by 小暮 淳 at 22:13│Comments(0)
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