2018年10月03日
霧積温泉 「金湯館」⑧
「群馬県で一番の秘湯は、どこですか?」
と問われれば、僕は迷わず霧積温泉と答えます。
今日は1年ぶりに雑誌の取材で、霧積温泉の一軒宿 「金湯館」 に行って来ました。
金湯館の創業は、明治17年(1884)。
当時は5、6軒の旅館がありました。
さらに周辺には、別荘が約50棟も立ち並ぶ避暑地だったのです。
ところが明治43年(1910)、未曾有の悲劇が温泉地を襲いました。
この年の大洪水で、山津波が一帯を襲い、金湯館ただ一軒が難を逃れました。
昭和30年代になり、1キロ下がった場所で親族が旅館を開業しましたが、平成23年に廃業。
金湯館は、また一軒宿になってしまいました。
「お世話になります」
「こちらこそ、ありがとうございます」
道路のドン詰まり、鼻曲山登山口の駐車場まで、4代目主人の佐藤淳さんが4駆車で迎えにきてくれました。
時間に余裕のある時は、ここから 「ホイホイ坂」 と呼ばれる山道を約30分かけて歩いて登るのですが、今日は日帰り取材です。
わがままを言って、車で迎えに来てもらいました。
だって、ここから先の車道は、一般車両は通行止めの林道です。
急峻なうえ、ガードレールも無く、対向車とのすれ違いもままなりません。
これも、“取材” という特権なのです。
「小暮さんの本、全部売れちゃった。また、送っといて!」
と、開口一番。
玄関で、いつも元気な3代目女将の佐藤みどりさんが出迎えてくれました。
御年、81歳!
まだまだ現役女将です。
宿では、霧積温泉が舞台の森村誠一の小説 『人間の証明』(角川文庫) と、拙著 『新ぐんまの源泉一軒宿』(上毛新聞社) が販売されています。
「どちらも、良く売れるのよ」
なんて女将に言われて、ベストセラー作家と肩を並べたようで、気分は有頂天!
そのままのテンションで、浴室まで直行!
さっそく湯を浴むことに。
ぬる湯ファン垂涎(すいぜん) の、絶妙な39℃!
相変わらず絹のような、肌にまとわりつく、なまめかしい湯であります。
しかも、あっという間に全身泡だらけ!
アソコの毛といわず、全身の体毛が “真っ白毛” です。
それを手で払えば、名物 “サンゴの産卵” のはじまり、はじまり~!!
一斉に、泡の粒が舞い上がります。
湯上がりには、これまた山の幸たっぷりの名物 「山菜そば」 をすすりながら、女将の話す昔話に耳を傾けていたのであります。
ご主人との馴れ初めなんて、1度や2度、取材に訪れた新米記者には絶対に聞き出せない、なかなかのレア話ですぞ!
温泉宿は、通えば通うほどに、奥が深くなっていくのであります。
Posted by 小暮 淳 at 22:02│Comments(0)
│温泉地・旅館