2019年04月20日
尻焼温泉 「白根の見える丘」③
<厨房をのぞくと女将のひろ子さんが、名物の手作り豆腐を作っていた。ご主人が4時間かけて汲んできた名水に地元大豆をつけること15~16時間。粉砕して、灰汁(あく)を取りながら、かき混ぜること25分。すべての作業を一人でこなしている。1丁に使う大豆の量は、ふつうの大豆の3倍。だから豆の味が濃厚だ。これを岩塩とオリーブオイルでいただく。>
『群馬の小さな温泉』(上毛新聞社) より
昨晩、何気なくテレビを観ていたら突然、知った顔が出てきたので驚きました。
取材で何度もお世話になったことのある尻焼温泉(群馬県中之条町) 「白根の見える丘」 のご主人の中村善弘さんと、女将のひろ子さんです。
テレビ東京の 「たけしの日本のミカタ」 という番組で、“秘湯の宿のマル秘名水豆腐” と題して、宿で出される絶品豆腐の特集を組んでいました。
僕が冒頭の著書を出版したのが2010年9月です。
あれから9年……
ついに、“あの味” が全国に知られることになったんですね。
僕は、この豆腐をひと口食べた時から、ファンになってしまいました。
「この味を、もっと多くの人に知って欲しい!」 と思い、翌年、追加取材をして、さらに詳しく新聞の連載記事で紹介しました。
<豆腐作りは、子育てが終わった10年ほど前、先代女将の義母から教わった。「かつては六合(旧六合村) の女はみな豆腐が作れた。だから抵抗はなかった」 とひろ子さん。
水は、善弘さんが往復4時間かけてくんできた東吾妻町の名水 「箱島湧水」。大豆は赤城山麓の前橋市粕川町産など。市販豆腐の約3倍の大豆を使う。
約15時間、湧水につけた大豆を機械で粉砕し、約25分間、灰汁を取りながら大鍋でかき混ぜる。布でしぼり、にがりを投入して待つこと約20分。固まり出した豆乳を型に入れ、重しをして約45分。やっと1日限定12丁の木綿豆腐ができあがった。>
朝日新聞 『湯守の女房』(2011年10月26日付) より
僕は泊まると必ず、この豆腐を肴に、ご主人がくんできた名水で割ったウィスキーをいただきました。
そして、元バンドマンだったご主人と、ギターをかき鳴らし、歌い、朝まで飲み明かしました。
ここ数年は、ご無沙汰していますが、テレビで拝見する限り、お二人とも元気なご様子。
久しぶりに、あの濃厚な豆腐の味が、恋しくなりました。
もちろん、ウィスキーの味も。
Posted by 小暮 淳 at 19:09│Comments(0)
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