2019年08月04日
前橋の死神とHの仲間たち
『令和元年還暦蛟龍落語会』 なる素人落語会が、群馬県生涯学習センターで開演されたので、にぎやかしに行ってきました。
「蛟龍(こうりょう)」 とは、水中に隠れ、雲や雨にあうと天に昇るという竜に似た想像上の動物。
英雄が機会を得て、大業を成し遂げるたとえに用いられます。
この日、出演した3人の素人落語家たちは、県立前橋高校の卒業生で、同級生。
同校の文化祭 「蛟龍祭」 から命名したといいます。
そして、今回の会場となった群馬県生涯学習センターの敷地は、かつて彼らが通っていた母校の校舎があったところです。
共に切磋琢磨し、夢を見ていた若き日から42年の歳月を経ての凱旋落語会となりました。
当日配られたパンフレットに、こんな一文がありました。
<還暦を迎える年になりまして、演者三人、高校時代の気持ちに立ち返り、若き日の情熱を思い返し、今日の落語会にこぎつけた次第であります。素人ではありますが、その心持ちはプロにも勝るとも劣らないと思っております。>
同年輩の “夢みるジジイ” としては、最後の言葉が、グッと胸に迫ります。
<素人ではありますが……>
きっと、高校卒業後の42年間には、三人三様の悲喜こもごも、紆余曲折の人生があったに違いありません。
夢を追って、夢をあきらめて、それでもはいつくばって、夢のカケラを拾い集めて、こうして形にしたのです。
「カズオちゃんが、また落語会やるんだって」
「へー、大したもんだね」
「みんなで、行ってやんべぇ」
ご存じ、我らのたまり場、酒処 「H」 での、数ヶ月前の会話です。
カズオちゃんは常連客の一人で、職業は大学の教員です。
でも風貌や、ふだんの話し方からして、根っからの “噺家さん” なのであります。
僕も以前、彼の落語を聴きに行ったことがありますが、その話術は絶品でした。
玄人はだし、そのものです。
それゆえ、彼が拾い集めようとしている夢のカケラの数が計り知れます。
都家前橋 (みやこや・ぜんきょう)
これが彼の芸名です。
今回も演目は、彼が得意とする古典落語と創作をミックスしたセミ・オリジナル。
「死神(の手帖)」 は、60分を越える超大作であります。
満員御礼の観客からの拍手に迎えられて、高座に上りました。
「よっ、カズオ! いや、ぜんきょう!」
会場を見渡せば、知った顔、顔、顔……
Hの常連客が、大勢駆けつけています。
持つべきものは、飲み仲間です。
外は36℃の猛暑日。
でも、ひんやりとしたホラー話に、ひと時の涼をいただきました。
カズオちゃん、ありがとう!
Posted by 小暮 淳 at 11:57│Comments(0)
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