2020年01月06日
源泉ひとりじめ(1) 箪笥の回廊を抜けると、そこに江戸の顔があった。
来月、ブログ開設10周年を迎えます。
これを記念して、ブログのタイトルにもなった 『源泉ひとりじめ』 を不定期連載いたします。
このエッセイは、2004年4月~2006年9月(全30回) にわたり 「月刊ぷらざ」(ぷらざマガジン社) に連載されたものです。
※地名や名称等は掲載当時のまま表記し、その後、変更があったものには訂正を加えました。尚、休業もしくは、すでに廃業している宿もあります。
癒しの一軒宿(1) 源泉ひとりじめ
薬師温泉 「旅籠」 吾妻町(現・東吾妻町)
温泉大国、日本には約3,000もの温泉地(宿泊施設のある温泉) があり、群馬県内だけでも約100を数える。
では私たち日本人が温泉に求めるものとは?
昨今の加熱する温泉ブームのなか、本当の贅沢を探して旅に出るとすれば、きっとそれは 「一源泉一軒宿」 の旅に違いない。
かやぶきの門をくぐり、まず驚かされるのが時代箪笥(たんす) や古民具、骨董品が惜しげもなく続く 「時の回廊」 だ。
ここから時間旅行が始まり、旅人はまさに江戸時代の旅籠(はたご) にたどり着いた気分になる。
館内には、オーナーが全国より集めに集めた400竿の箪笥を含め、1,000を超える調度品が配されているという。
敷地内に移築されている伝統民家の数からして、そのこだわりには感服させられる。
部屋で旅装を解き、内風呂へ。
チョロチョロと注ぐ源泉の湯量は決して多くはないが、肌を包み込む湯の感触には、上品なやさしさがある。
何よりも浴槽に体を沈めたときの、ザザザーッと音を立ててこぼれだす湯の音に、完全かけ流しのホンモノ温泉に浸かっていることへの、この上もない贅沢を感じる。
まさに源泉ひとりじめの瞬間を味わった。
夕餉(ゆうげ) は、かやぶき民家で囲炉裏を囲みながら、川魚や地鶏をあぶる。
何も奇をてらうことはなく、豪華である必要もない。
一軒宿ならではの、もてなしがご馳走である。
●源泉名:薬師の湯
●湧出量:16.9ℓ/分(自然湧出)
●泉温:42.7℃
●泉質:ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩温泉
<2004年4月>
Posted by 小暮 淳 at 11:33│Comments(0)
│源泉ひとりじめ