2020年07月02日
温泉考座 (4) 「湯のカルテ」
温泉場の浴室の脱衣所に、「温泉分析書」 が貼られていることをご存じですか?
これは国に登録された分析機関によって作成された “温泉のカルテ” です。
温泉マニアや温泉通は、よくチェックしているようです。
まず一番上に、分析依頼者の住所と名前が記載されています。
自家源泉を所有していれば、旅館や施設の経営者名であり、源泉が共同所有の場合は代表者名となります。
次に温泉地名、源泉名、湧出地が書かれています。
温泉地名は、たいてい源泉が湧出している地名が付けられています。
源泉名は、源泉所有者が付けた固有名詞です。
<例>
鹿沢温泉 「紅葉館」 (嬬恋村) の場合、温泉地名は地名の 「鹿沢」 ですが、浴槽に引かれた2つの源泉には 「雲井の湯」 「竜宮の湯」 と名付けられています。
分析依頼者の住所と湧出地の住所が同じか、番地違いぐらいなら、新鮮な温泉が浴槽まで届いていることが分かります。
また住所が離れていれば、その間の距離を配管で引き湯していることになります。
3番目に、調査・試験者の名前、試験年月日、湧出時の泉温、毎分の湧出量とその形態、温泉の色やにおい、PH値などのデータが記載されています。
しかし、このデータは、すべて湧出地点のものです。
浴槽の中の温泉は、温泉分析書の通りとは限りません。
そこで、浴槽の湯は、どうなのかを知る手がかりとなるのが、温泉分析書とは別に掲示が義務付けられている 「温泉利用状況」 です。
これは、加水、加温、循環・ろ過、入浴剤の有無、消毒剤の有無が記されていて、実際に入っている浴槽の温泉の状態を知ることができます。
しかし、加水による希釈割合や投入されている消毒剤の量までは書かれていません。
「スポイト温泉」 という言葉があります。
これは、温泉法では源泉を水道水で薄めてはいけないなどの規定がないため、極端な話、水道水で満たした浴槽に源泉をスポイトで一滴たらしただけで、温泉と称しているという意味です。
温泉ファンとしては、利用者により分かりやすい表示義務付けを切に望みます。
<2013年4月24日付>
Posted by 小暮 淳 at 11:46│Comments(0)
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