2020年07月09日
温泉考座 (7) 「本物と出合う喜び」
「かけ流し」 と 「源泉かけ流し」。
同義語のように使われていますが、本来はまったく別の温泉です。
「かけ流し」 とは、湯が浴槽に注がれながら、あふれ出ている “状態” のことで、使用されている温泉の質は問われていません。
加水や加温、循環装置の併用、塩素消毒をしていても、湯を注ぎ込みながら浴槽から湯があふれ出ていれば、「かけ流し」 です。
これならば、湧出量の少ない温泉でも可能なわけです。
現在、「かけ流し」 とうたっている温泉の8割が、この方式です。
正式には、「半循環式」 「放流一部循環式」 「放流循環併用式」 などと表示しなければならない利用形態です。
これに対し 「源泉かけ流し」 は、かけ流している状態に加え、注ぎ込まれている湯の “質” が問われてきます。
加水をせず、加温もせず (加温を認めている場合もいます)、そのまま浴槽に注ぎ込んでいる方式のことです。
正式には 「完全放流式」 と表記されます。
当然、循環の併用も、塩素消毒もしてはいけません。
さらに厳密に言えば、タンクに源泉をためてもいけません。
空気に触れ、時間の経過とともに、湯が劣化するからです。
ですから 「源泉かけ流し」」 とは、湧出した源泉をノンストップで浴槽まで引き込み、浴槽の中で湯をとどめずに、常にオーバーフローさせている温泉にのみに与えられる名誉ある称号なのです。
湯量が豊富で、温度が高い源泉が湧き、それらの管理ができる腕のいい湯守(ゆもり) のいる宿や施設にしか存在しない、希少な温泉と言えるでしょう。
そういった本当の意味での 「源泉かけ流し」 は、全国でも1割未満しか存在しないと言われています。
しかし、意味を知らずに 「源泉かけ流し」 という言葉だけが独り歩きしてしまっているのが現状です。
ともすれば、宿や施設の経営者すら知らずに使っている場合があります。
言葉に惑わされずに、自分の目と知識で探しあててみてください。
本物の 「源泉かけ流し」 に出合えたときの喜びは、格別です。
温泉好きにとって、これ以上の至福はありません。
<2013年5月15日付>
Posted by 小暮 淳 at 11:37│Comments(0)
│温泉考座