2020年08月21日
温泉考座 (20) 「裸の取材スタイル」
このカテゴリーでは、ブログ開設10周年を記念した特別企画の第3弾として、2013年4月~2015年3月まで朝日新聞群馬版に連載された 『小暮淳の温泉考座』(全84話) を不定期にて、紹介しています。
(一部、加筆訂正をしています)
私は新聞や雑誌の連載、著書も含めて、すべての温泉記事に、私自身が入浴している写真を掲載しています。
「オジサンの裸なんか見たくない」 「なんで女性のモデルを使わないのか?」 という声も聞くのですが、長年、このスタイルで取材を続けています。
それは、なぜか?
記事の臨場感を出すために、ほかなりません。
筆者自身が温泉に入っているという、文章と写真のドキュメント性を高めるために、必ずカメラマンと組んで取材に出かけます。
最近は、カメラマンと2人で取材を受けることに、驚かれる旅館もあります。
たいがいは記者が1人で来て、カメラマンも兼ねて取材をしていくからです。
「まだ来てくれるのはマシなほうです。電話で取材をして、旅館の外観と風呂の写真をメールで送ってくれ、というのがザラですよ」
という話を、よく聞きます。
このご時世ですから、どこの雑誌社もライターとカメラマンを取材に送り込む余裕がないのでしょう。
でも、それでは読者に真の情報は伝わりません。
旅館側が発信する、都合のいい情報に限られてしまいます。
私は今年(2013年)の3月まで2年間、朝日新聞群馬版 に 『湯守 (ゆもり) の女房』 という温泉記事を連載していました。
偶然にも他の新聞に、私が取材した同じ温泉宿が、同時期に掲載されたことがありました。
当然、朝日新聞の記事では、温泉に入った裸の私が写っています。
一方、他紙の記事は、旅館の外観と料理と無人の露天風呂が写っているだけです。
記事の内容も、宿の歴史と料理と主人のコメントを載せているだけで、温泉の泉質や浴感については触れていません。
温泉の記事を書くのに、なぜ温泉に入らないのでしょうか?
「そうなんですよ。取材に来て、話だけ聞いて、温泉に入らないで帰ってしまいました」
と、主人も残念そうでした。
この宿は、何よりも源泉かけ流しの風呂が自慢なのです。
温泉へ行って、温泉に入らないとは、なんてもったいない話でしょうか。
寿司屋へ行って、寿司を食べに帰ってしまうようなものです。
<2013年9月4日付>
Posted by 小暮 淳 at 10:50│Comments(0)
│温泉考座