2020年10月27日
自爆テロと前三百貨店
新聞の片隅に、なんとも釈然としない記事を見つけました。
<転落巻き添え 女子学生死亡>
大阪市梅田の商業施設の屋上から飛び降りたと思われる男子高校生に直撃され、意識不明の重体だった女子大学生が死亡したというニュースです。
男子高校生は自殺で、女子大生は路上を歩いていただけのようです。
いわゆる自殺の巻き添え事故です。
僕は、この “巻き添え” が、どうしても腑に落ちません。
飛び降り自殺による巻き添え事故は、決して珍しいことではありませんが、二次災難は防げなかったのでしょうか?
このコロナ禍の中、自殺者が急増しています。
死にゆく者のモラルが問われる災難です。
あれは、半世紀以上前の記憶です。
昭和39(1964)年、僕が暮らす前橋市に県内初の本格的百貨店が誕生しました。
「前三」 です。
地下1階、地上6階建て。
当然、当時の中心市街地では、一番高い建物となりました。
小学生になりたての僕らにとってデパートは、まさに夢の国の御殿です。
屋上の遊園地で遊んだ帰りに、最上階の展望レストランで、ライスの上に国旗が立った 「お子様ランチ」 を食べるのが最高の贅沢でした。
デパートガールのきれいなお姉さんたちを見るのも、楽しみの一つ!
そのデパートガールの中に、近所のお姉さんを見つけた時の驚きといったらありません。
デパートガールは当時の花形職業でしたから、羨望のまなざしの中、「僕が知っているお姉さんだ!」 という誇らしい気持ちになりました。
そんな夢の世界が、急転直下、恐怖の現場に転じる出来事が起きました。
前三百貨店初の飛び降り自殺のニュースです。
昔も今も、死を求める人の思考は変わらないのですね。
県内一高い公共の建物ができれば、そこから飛び降りることを考える人が現れるものです。
実はこの時、僕のクラスメートが巻き添えに遭いました。
母親と買い物に来ていたM君です。
九死に一生、間一髪で彼は助かりましたが、ショックは大きかったようです。
「目の前に突然、人が降って来たんだ……」
その恐怖は、想像を絶します。
もし、あの時、彼を直撃していたら、今、彼は、この世にいないのです。
実は彼、校内一の頭脳明晰の持ち主だったのです。
その後の彼の人生は、まばゆい軌跡をたどります。
現在、某大学教授である彼は、さる分野では日本を代表する研究者であります。
時々、テレビのニュース番組などで顔を拝見するのですが、そのたびに僕は、半世紀以上前の前三百貨店での惨事を思い出すのです。
あのとき、あと数センチずれていたら、今の君はいないんだ……
自殺をするのは自由だ!
とは言えません。
できれば、思いとどまってほしい。
それでも死を選ぶのなら、せめて他人を巻き込むことだけはやめてほしい。
なぜなら、その行為は、自爆テロによる無差別殺人と、なんら変わらないから。
二度と、こんな事故が起こらないようにと冥福を祈るばかりであります。合掌
Posted by 小暮 淳 at 13:11│Comments(0)
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