2020年12月02日
温泉考座 (50) 「発見伝説① 日本武尊」
このカテゴリーでは、ブログ開設10周年を記念した特別企画の第3弾として、2013年4月~2015年3月まで朝日新聞群馬版に連載された 『小暮淳の温泉考座』(全84話) を不定期にて、紹介しています。
(一部、加筆訂正をしています)
古湯と呼ばれる歴史ある温泉地には、必ず発見伝説が残されています。
大きく分けて、鳥や獣が見つけたとされる 「動物発見伝説」 と、歴上の偉人が見つけたと伝わる 「人物発見伝説」 があります。
人物発見伝説には 「御三家」 と呼ばれる人たちがいます。
地域によって異なりますが、群馬の御三家といえば日本武尊(やまとたけるのみこと)、弘法大師(空海)、源頼朝の3人が有名です。
日本武尊は古代伝説上の英雄ですが、群馬県民がこの人の名前を聞いて、真っ先に思い浮かべるのが日本百名山の一座、武尊山(ほたかさん) ではないでしょうか。
その武尊山には、こんな伝説があります。
日本武尊が東国征伐の折り、武尊山に登り、奥利根の山々の美しさを愛でたといいます。
ところが、この山を登ったことにより、極度の疲労を覚え、病を発してしまいました。
お供の者たちは手当てをしようとしましたが、深い山の中で手のほどこしようがありません。
途方に暮れていると、はるか下界の谷間より1羽の白いタカが空高く舞い上がり、天空で輪を描きました。
不思議に思って谷間をのぞき込むと、湯けむりが立ち昇っています。
「これも神明のご加護か!」
とお供たちは喜び、日本武尊をその霊泉まで案内しました。
そして、湯につかると日本武尊の病はただちに全快して、また旅を続けることができたと伝えられています。
この湯が昔から 「白鷹 (はくたか) の湯」 と呼ばれている宝川温泉 (みなかみ町) です。
一軒宿の 「汪泉閣 (おうせんかく) 」 には、今でも温泉発見の始祖として日本武尊が祀られ、かたわらには日本武尊を霊泉へと導いた白鷹の像が立っています。
源泉の総湯量が毎分約1,800リットルあり、総面積約470畳分の巨大な露天風呂は、すべて源泉かけ流しです。
近年は海外のガイドブックやネットでも紹介され、外国人が訪れる日本の人気スポットにもなっています。
まさに名実ともに天下一を誇る、群馬を代表する秘湯です。
<2014年5月21日付>
Posted by 小暮 淳 at 09:42│Comments(0)
│温泉考座