2020年12月07日
温泉考座 (52) 「発見伝説➂ 源頼朝」
群馬の温泉発見人 「御三家」 、残る一人は鎌倉幕府の初代将軍、源頼朝です。
全国の温泉地に発見伝説がありますが、なんといっても県内では草津温泉が有名です。
建久4(1193)年、鎌倉幕府が開かれた翌年のこと。
幕府の力を知らしめるために東国各地で狩りを行った頼朝は、浅間山麓での狩りの途中に、草津温泉の入り口にある白根大明神まで馬を乗り入れました。
この時、谷底に白煙が立ち昇っているのを発見したと伝わります。
これが 「白旗の湯」 です。
草津温泉へ行ったことのある人でも、白旗源泉の湧出地に気づく人は少ないようです。
草津のシンボル 「湯畑」 の西側に、もう一つ小さな湯畑があります。
木の囲いに覆われているので見過ごしがちですが、毎分約1,500リットルの湧出量を誇る草津を代表する源泉の一つです。
囲いの中には小さな石祠があり、頼朝公が祀られています。
ちなみに 「白旗」 とは、源氏を象徴する白い旗から名付けられました。
同時期に頼朝は、中之条町の沢渡温泉にも訪れていると伝わっています。
伝説によれば、酸性度の強い草津の湯で湯ただれをおこした頼朝が、沢渡の湯に入ると荒れた肌がきれいになったことから、草津の 「なおし湯」 とも 「ながし湯」 とも呼ばれるようになったといいます。
弱アルカリ性のやわらかい湯は 「一浴玉の肌」 といわれ、群馬を代表する “美人の湯” として親しまれています。
温泉街の中心、共同浴場に隣接する老舗旅館 「龍鳴館」 の浴室には、頼朝が入浴の際に腰掛けたといわれる 「源頼朝公の腰掛け石」 が残されています。
一見、何の変哲もない普通の石に見えますが、所々に傷があります。
これは昭和10(1935)年の水害による山津波と、同20年の山火事から温泉街を全焼した大火の被害を受けた跡だといいます。
信じるか信じないかは別として、800年以上も湧き続ける湯につかりながら石を眺めていると、いやが応でも壮大な歴史のロマンに思いがはせるというものです。
<2014年6月4日付>
Posted by 小暮 淳 at 11:23│Comments(0)
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