2020年12月13日
温泉考座 (53) 「妊婦でも入浴OK!」
平成26(2014)年4月、環境省の有識者委員会で、入浴時の注意事項を定めた温泉法の基準見直し案が了承されれました。
これにより、温泉の入浴を避けるべき病気や症状を記載した 「禁忌症」 から “妊娠中” の文言が削除されました。
昭和57(1982)年に定められた、それまでの 「禁忌症」 には、次のような症状が記載されていました。
<急性疾患(特に熱のある場合)、活動性の結核、悪性腫瘍、重い心臓病、呼吸不全、肝不全、出血性疾患、高度の貧血、その他一般的に病勢進行中の疾患、妊娠中(特に初期と末期)>
挙げられている項目は、妊娠中を除けば一般に風呂に入るときに注意を要する病気の症状です。
なにも温泉に限ったことではありません。
ではなぜ、妊娠中のみが病気でもないのに記載されていたのでしょうか?
これが見直しの争点でした。
「根拠が不明」 との意見があり、専門家が改めて調査したところ、「温泉浴が流産や早産を招くといった医学論文や研究はなかった」 とのことでした。
私も以前から 「禁忌症」 の項目を見るたびに疑問に思っていました。
全国には妊婦の入浴や赤ちゃんの産湯に温泉を利用しているクリニックがあります。
我が家でも、妻が臨月の時に温泉へ連れて行きましたが、3人の子が自然分娩で生まれています。
禁忌症から “妊娠中” の文言が消えることで、妊婦も安心して温泉に行けるようになれば、温泉地にとっても朗報です。
見直しでは、「適応症」 にも新たな項目が追加されました。
適応症とは、効能があるといわれる病状のことで、一般には神経痛や筋肉痛、関節痛、五十肩、冷え性などの慢性病の類いが記載されています。
禁忌症同様、温泉の成分による効用というより、体を温めることによる “温浴効果” がほとんどです。
新たに加わったのは、睡眠障害、うつ症状、自律神経不安定性などです。
ストレスの多い現代社会を反映しています。
<2014年6月11日付>
Posted by 小暮 淳 at 11:14│Comments(0)
│温泉考座