2020年12月14日
十人一色の風景
見慣れた風景が、ある日突然、異様な光景に映ることってありませんか?
今年は例年に比べると、電車に乗る機会が多い年でした。
車内では、老若男女が 「3密」 を避けながら、思い思いの移動時間を楽しんでいます。
今の時代を反映して、8割以上の人がスマホの画面を見入っています。
残りの2割未満は、友人同士の会話か居眠りです。
まれに読書をしている人もいますが、1車両に一人いるかいないかです。
スマホを持たない僕は、もちろん2割未満組です。
しかも新聞派という、典型的な昭和のオヤジです。
その異様な光景に遭遇したのは先週、出張取材で電車を利用したときでした。
時間は、通勤や通学が過ぎ去った昼近い午前中。
コロナ禍の時世です。
ほぼ満席でしたが、ソーシャルディスタンスを保って、ほどよく間隔を空けながら乗客は座席に座っています。
立っている人は、僕だけでした。
いつもと変わらぬ光景です。
誰もが、うつむきながら一心にスマホの画面を見つめています。
が、その光景に背筋が寒くなるような感覚を覚えました。
見慣れた風景の中に、ある違和感を感じたからです。
それは、車内の乗客全員が同じ姿だったのです。
なんと、100%のスマホ閲覧率!
老いも若きも、男も女も、もくもくと人差し指を動かしています。
「怖!」
これが正直な僕の感想でした。
きっとコロナ禍が、拍車をかけているんでしょうね。
「3密」 を避けるあまり、“お一人様時間” が増えています。
それにしても100%とは驚きました。
その光景は、まるでエイリアンに操られた地球人に見えます。
「おい、大丈夫か? しっかりしろ!」
そう声をかけ、マインドコントロールの呪縛を解いてあげたい気持ちにさえなりました。
これが僕らが昭和の時代に夢見ていた未来なのでしょうか?
手塚治虫でさえ、描けなかった世界かもしれません。
十人一色の風景
僕は電車のドアに背をもたれながら、異星人のように立ちつくしていました。
Posted by 小暮 淳 at 11:50│Comments(0)
│つれづれ