2020年12月26日
歌は世につれ昭和は遠くなりにけり
♪ 北の酒場通りには 長い髪の女が似合う ♪
筒美京平さんという偉大な作曲家を失ったばかりなのに、この年の瀬になり、続けざまに昭和を彩った巨星たちが、旅立ってしまいました。
作詞作曲家の中村泰士さん、享年81歳。
作詞家で作家のなかにし礼さん、享年82歳。
中村泰士さんといえば、僕らの世代は 『スター誕生』 の審査員だった姿を思い浮かべます。
合格ラインに届かなかった中森明菜さんに、たった一人満点を付けたというエピソードは有名です。
「彼女は絶対にスターになる」 という先見の明があった人でした。
代表作には、ちあきなおみ 「喝采」 や 桜田淳子 「わたしの青い鳥」、細川たかし 「心のこり」、五木ひろし 「そして…めぐり逢い」 など、どの曲も耳に残っている昭和の名曲ぞろいです。
なかにし礼さんといえば、北原ミレイ 「石狩挽歌」 や黒沢年男 「時には娼婦のように」 など、独特の世界観でエロスを描いた作詞家です。
個人的には、松本隆さんと並ぶ大好きな昭和の作詞家であります。
また後年は、作家としての才能が開き、平成12(2000)年には、「長崎ぶらぶら節」 で直木賞を受賞しています。
これまた個人的ではありますが、僕は、それ以前に書かれた自伝的な 「兄弟」 という小説が好きでした。
読むと分かるのですが、過酷な海に生きる男たちの描写は、そのまま 「石狩挽歌」 の歌詞を彷彿させます。
その世界観は唯一無二で、なかにしさんしか描けない魅力に満ちています。
そんな同時代を綺羅星のごとく駆け抜けた2人が手がけた名曲に、「北酒場」 があります。
作詞/なかにし礼、作曲/中村泰士、歌/細川たかし
コロナ禍で自粛が叫ばれている今年の年末年始ですが、きっと、どこかの街のスナックや居酒屋で、人知れずマイクを握り、自慢の喉を披露している “昭和大好きオヤジ” がいることでしょうね。
歌は世につれ、世は歌につれ。
そして、また2つ、昭和が遠くなったと感じた訃報でした。
♪ 北の酒場通りには 女を酔わせる恋がある ♪
Posted by 小暮 淳 at 12:21│Comments(0)
│つれづれ