2021年02月08日
温泉考座 (67) 「にごり湯いろいろ」
成分の濃い 「にごり湯」 は、それ自体が全国でも約10%しかなく希少ですが、色や匂い、味、肌触りなど五感で楽しめるところが人気の秘密のようです。
温泉をにごらせる成分は様々で、代表的なものに硫黄分、鉄分、モール質があります。
温泉に含まれる主な硫黄分、硫化水素イオンと遊離硫化水素のうち、遊離硫化水素が乳白色に色づくといわれています。
湧出時は無色透明で、空気に触れて酸化すると硫黄の微粒子ができ、にごり出します。
群馬県内では草津温泉 (草津町) や万座温泉 (嬬恋村) が有名ですが、みなかみ町の高原千葉村温泉も乳白色ににごる硫黄泉としてマニアに知られています。
ただ、草津や万座の湯が酸性なのに対し、高原千葉村の湯はアルカリ性で、硫化水素イオンを含むため、季節や天候、光の加減によっては緑色に見えることもあります。
鉄分を含む温泉は濃度が低いと緑色、高いと黄土色や茶褐色、さらに高濃度になると赤褐色になります。
県内では伊香保温泉 (渋川市) や赤城温泉 (前橋市)、梨木温泉 (桐生市) などが代表的ですが、私の記憶の限りでは相間川温泉 (高崎市) の湯が一番濃いレンガ色でした。
また相間川の湯は高濃度の塩分を含むため、湯舟で体が不安定に浮き上がり、難儀をするほどでした。
3つ目のモール質は県内では見かけない温泉です。
他のにごり湯は湧出後に色づきますが、モール質の温泉は地層の中の腐植質が温泉水に混ざった状態で湧出します。
ですから湯口から注がれる時、すでに色が付いています。
ほうじ茶色、紅茶色、コーヒー色、真っ黒と色は様々です。
モール質ではありませんが、県内には黒く湯がにごる温泉があります。
応徳温泉 (中之条町) や奥嬬恋温泉 (嬬恋村) の湯は、煤(すす)のような湯の花が沈殿します。
この湯の花が入浴すると舞い上がり、湯が墨のように黒くにごることがあります。
モール質などの例外を除き、湧き立ての新鮮な温泉は無色透明です。
にごり湯とは、湯が空気に触れて酸化したために起こる劣化現象です。
新鮮なのが一番ですが、湯の色や匂いを楽しむのも温泉の魅力といえます。
<2014年10月29日付>
Posted by 小暮 淳 at 16:51│Comments(0)
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