温泉ライター、小暮淳の公式ブログです。雑誌や新聞では書けなかったこぼれ話や講演会、セミナーなどのイベント情報および日常をつれづれなるままに公表しています。
プロフィール
小暮 淳
小暮 淳
こぐれ じゅん



1958年、群馬県前橋市生まれ。

群馬県内のタウン誌、生活情報誌、フリーペーパー等の編集長を経て、現在はフリーライター。

温泉の魅力に取りつかれ、取材を続けながら群馬県内の温泉地をめぐる。特に一軒宿や小さな温泉地を中心に訪ね、新聞や雑誌にエッセーやコラムを執筆中。群馬の温泉のPRを兼ねて、セミナーや講演活動も行っている。

群馬県温泉アドバイザー「フォローアップ研修会」講師(平成19年度)。

長野県温泉協会「研修会」講師(平成20年度)

NHK文化センター前橋教室「野外温泉講座」講師(平成21年度~現在)
NHK-FM前橋放送局「群馬は温泉パラダイス」パーソナリティー(平成23年度)

前橋カルチャーセンター「小暮淳と行く 湯けむり散歩」講師(平成22、24年度)

群馬テレビ「ニュースジャスト6」コメンテーター(平成24年度~27年)
群馬テレビ「ぐんまトリビア図鑑」スーパーバイザー(平成27年度~現在)

NPO法人「湯治乃邑(くに)」代表理事
群馬のブログポータルサイト「グンブロ」顧問
みなかみ温泉大使
中之条町観光大使
老神温泉大使
伊香保温泉大使
四万温泉大使
ぐんまの地酒大使
群馬県立歴史博物館「友の会」運営委員



著書に『ぐんまの源泉一軒宿』 『群馬の小さな温泉』 『あなたにも教えたい 四万温泉』 『みなかみ18湯〔上〕』 『みなかみ18湯〔下〕』 『新ぐんまの源泉一軒宿』 『尾瀬の里湯~老神片品11温泉』 『西上州の薬湯』『金銀名湯 伊香保温泉』 『ぐんまの里山 てくてく歩き』 『上毛カルテ』(以上、上毛新聞社)、『ぐんま謎学の旅~民話と伝説の舞台』(ちいきしんぶん)、『ヨー!サイゴン』(でくの房)、絵本『誕生日の夜』(よろずかわら版)などがある。

2024年05月22日

「三竦み」 の美学


 【三竦(すく)み】
 [ヘビはナメクジを、ナメクジはカエルを、カエルはヘビをと互いに恐れる所から] 三つのものが互いに牽制(ケンセイ)し合って、積極的に行動出来ないこと。 [三者の勢力が一線に並び甲乙がつけ難い意にも、また、一種の均衡がとれる意にも用いられる] 
 (新明解国語辞典より)


 いわゆるジャンケンの話です。
 グーはチョキに勝ち、チョキはパーに勝ち、パーはグーに勝つ。
 逆に、グーはパーに負け、パーはチョキに負け、チョキはグーに負ける。

 でも……

 みんな一緒に出したら、あいこでしょ。
 みんな、なかよし、あいこでしょ。


 そんな心温まる絵本が発売され、全国の 「ダイソー」 で販売が開始されました。
 昨年7月に亡くなった前橋市在住の絵本作家・野村たかあきさんの遺作です。
 生前、野村さんが承諾していた鈴木出版とダイソーとのコラボ絵本です。
 (2024年4月27日 「天国からの贈り物」 参照)

 通常、絵本は1,000~2,000円します。
 それがダイソーだから、なんと! 100円(税別)

 この価格ならば、迷うことなく手に取り、子どもに買ってあげることが出来ます。
 「たくさんの人に読んでほしい」
 野村さんのそんな思いが込められているのかもしれません。


 小さな絵本です。
 ほっこりする絵本です。
 みんながやさしくなれる絵本です。

 ぜひ、お近くのダイソーでお求めください。
 (扱っていない店舗もありますので、店員にお尋ねください)


 こどものくに 『あいこでしょ』
 すずき出版×ダイソー 100円(税別)
  


Posted by 小暮 淳 at 11:18Comments(0)読書一昧

2024年05月15日

文豪たちの酒宴


 <なんとも酒は、魔物である> 太宰治


 以前、自分は活字中毒患者であり、かつアルコール依存症予備軍であることを告白しました。
 (2024年5月2日 「中毒と依存症」 参照)

 ゆえに、この世で一番の至福は、この2つが同時に満たされた時。
 そう、酒を呑みながら本を読んでいる時にほかなりません。


 もし、その時読んでいる本が、“酒” の本ならば……
 さらなる極上のひと時となります。

 僕は 「ぐんまの地酒大使」 を委嘱されている都合上、酒の本は読みます。
 でも、それらは蔵元や醸造、銘柄に関する資料です。
 いうなれば、これは読書ではなく、仕事の一環であります。

 残念ながら、至福の境地には至りません。


 読み物としての “酒” はないものか?
 と探していたら、ありました!
 これぞ、極みであります。

 『文豪たちが書いた 酒の名作短編集』 彩図社文芸部 編 (彩図社)


 坂口安吾、夢野久作、小川未明、林芙美子、岡本かな子、芥川龍之介、福沢諭吉、宮沢賢治、太宰治……
 名だたる文豪たちの酒にまつわるエッセイや短編集が掲載されています。

 まあ、みなさん、よく呑みます。
 やはり文豪と呼ばれる人たちは、凡人とは酒の呑み方までもが一味も二味も違います。
 読んでいて、酒のみならではの文章に出合え、惚れ惚れとしました。


 太宰治のエッセイも2編、収録されています。
 とても興味深い話なので、一部を紹介します。

 <「新宿の秋田(※1)、ご存じでしょう! あそこでね、今夜、さいごのサーヴィスがあるそうです。まいりましょう」>
 <その前夜、東京に夜間の焼夷弾(しょういだん)の大空襲があって、丸山君(※2)は、忠臣蔵の討入のような、ものものしい刺子(さしこ)の火事場装束で、私を誘いに来た。ちょうどその時、伊馬春部(※3)君も、これが最後かも知れぬと拙宅へ鉄かぶとを背負って遊びにやって来ていて、私と伊馬君は、それは耳よりの話、といさみ立って丸山君のお伴をした。> (『酒の追憶』 より)

 ※1 新宿にある呑み屋
 ※2 丸山定夫 大正~昭和の俳優
 ※3 劇作家、放送作家


 いやいや、凄いでしょう!
 大空襲の翌日に、戦火をくぐりぬけて、酒を呑みに行くんです。
 その酒呑み根性が、文豪が文豪たるゆえんなんでしょうな。
 嫉妬しながら、酒のピッチを上げながら、読みふけってしまいました。

 他にも、福沢諭吉のらしからぬ酒のエピソード、宮沢賢治の摩訶不思議な酒の話など、珠玉の短編集です。
  


Posted by 小暮 淳 at 12:11Comments(0)読書一昧

2024年04月27日

天国からの贈り物


 《虎は死して皮を残し 人は死して名を残す》


 1通の四角い茶封筒が届きました。
 中には、小さな絵本が入っていました。

 『あいこでしょ』  野村たかあき/作・絵


 昨年7月に他界した絵本作家、野村たかあきさんの絵本でした。
 差出人は、野村さんの奥様です。
 こんな一文が、添えられていました。

 <生前、野村が承諾していた 「ダイソー✕鈴木出版」 とのコラボ絵本ができました。>


 その文面を読んだ瞬間に浮かんだ言葉が、冒頭のことわざでした。
 「作家は死しても、なお作品を残す」 のだと。
 さすがです!


 こんなお話の絵本です。

 女の子がうまに言います。
 「うまさん、うまさん、おにごっこしましょ おにきめ じゃんけん…」
 「じゃんけん ぽん」

 女の子はパー、うまはグー。
 うまの負けです。
 でも、うまは 「おにをやるの いや」 だっていって、ぶたを連れてきました。

 「じゃんけん ぽん」
 うまはグー、ぶたはチョキ。
 「ぶたさんの まけ」
 そしたら、ぶたは 「おにやるの いやだよ」 って、にわとりを誘ってきました。

 いつまで経っても終わらない、堂々巡りの 「あいこでしょ」 が続きます。
 なんとも野村さんらしい、思いやりにあふれた絵本です。


 この絵本は、「月刊絵本」 (鈴木出版) の中で、特に評価の高い作品を選んでミニ版として大創出版より出版されました。
 発売は5月に入ってからで、全国の 「ダイソー」 で販売されます。

 ぜひ、最寄りの 「ダイソー」 にお立ち寄りの際は、手に取ってご覧ください。


 野村さん、ありがとうございます。
 天国からの贈り物、しっかりと受け取りましたよ!
  


Posted by 小暮 淳 at 12:10Comments(0)読書一昧

2024年04月25日

『みなかみ紀行』 がマンガになった!


 たびたびの牧水ネタで恐縮です。

 先日、郵便小包が届きました。
 送り主は、利根沼田若山牧水顕彰会。

 中身は、一冊の本でした。
 『マンガ 若山牧水 みなかみ紀行』


 「謹呈」 と記された一文が添えられていました。
 <今年は若山牧水の 「みなかみ紀行」 がマウンテン書房より出版されて丁度100周年になります。しいやみつのり先生からマンガ 「みなかみ紀行」 を是非世に出したいとのお話を戴き、直ちに役員に計り利根沼田若山牧水顕彰会として出版事業に取り組む事に致しました。(中略) 多くの方々に心温まるご支援を戴くことが出来、漸く無事に出版の運びとなりました。ここに謹んで御礼のご挨拶を申し上げます。>

 僕と顕彰会との出会いは一年前、老神温泉の 「大蛇まつり」 の会場でした。
 老神温泉は牧水ゆかりの地であること、そして僕が老神温泉大使をしていることから交流が始まりました。
 その後、僕は高崎市のフリーペーパー 「ちいきしんぶん」 にて、『令和版 みなかみ紀行 牧水が愛した群馬の地酒と温泉』 を連載開始。
 顕彰会と連絡を取りながら、取材を進めています。


 漫画家のしいやみつのり氏は、すでに 『マンガ 若山牧水 自然と旅と酒を愛した国民的歌人』(大正大学出版会) を著しているだけあり、実に細部にわたり、牧水のエピソードが盛り込まれています。
 文章には、すべてルビがふってあるので、子どもでも楽しく読めます。
 また、若山牧水という歌人を知る入門書としても、おすすめします。

 「短歌って苦手」 という人もいるかもしれませんね。
 僕も、その一人です。
 でも、若山牧水という人間の生き方を知り、魅力を知ると、短歌の面白さも分かってきますよ。

 ぜひ、一読をおすすめします。



 『みなかみ紀行』 出版100周年記念事業
 マンガ 若山牧水 みなかみ紀行
 ~旅と文学と水源を求めて!~

 漫画/しいやみつのり
 発行者/利根沼田若山牧水顕彰会  代表 永井一灯

 定価 [本体1,500円+税] 


 ※若山牧水ゆかりの群馬県内の観光協会、温泉協会にて販売中!
   


Posted by 小暮 淳 at 09:52Comments(2)読書一昧

2024年04月04日

「じゅん」 と 「じゅん」


 自分と名前が同じだからかもしれません。
 昔から、お2人には親近感を抱いていました。

 「いしかわじゅん」 氏と 「みうらじゅん」 氏。
 お2人は、ともに漫画家です。


 いしかわじゅん氏は、現在購読している新聞に4コマ漫画を連載中で、僕は毎朝、真っ先に目を通すファンです。
 特に、登場するネコの 「正ちゃん」 が超絶にカワイイのです。
 八割れ顔の正ちゃんに、メロメロになっています。

 みうらじゅん氏は、僕と同い年。
 同時代のサブカルチャーに、いそしんで育ったという共通点もあり、より親近感がわきます。
 漫画家としてだけでなく、イラストレーターやエッセイストとしてもマルチな活躍をしている方で、「マイブーム」 や 「ゆるキャラ」 などの新語を生み出した先駆者でもあります。


 そんな2人の、漫画家以外の共通点って、知ってますか?

 小説家です!


 お2人が小説を書かれていることは、知っていました。
 でも、読んだことはありませんでした。
 正直に申せば、あえて手に取って、読んでみようとは思わなかったからです。

 ががっ!
 日々徳を積んでいる僕は、最近、運気が急上昇中であります。
 人との出会い、物との出合いが、奇跡的な頻度で訪れています。


 まさに、お2人との本との出合いも、ミラクルでした。
 某月某日、某古書店でのこと。

 時間つぶしに、文庫本の棚を眺めていると……
 いきなり、平仮名7文字が目に飛び込んで来ました。
 “いしかわじゅん”

 「ほほう、これが噂の小説ね」
 と手に取りました。
 そして、しばらくすると、また、平仮名6文字の名前が!
 “みうらじゅん”

 「あらら、偶然なこともあるものだ。しかも同じ “じゅん” つながり」
 ついでに僕も “じゅん” ですから、これは何か天啓のようなものを感じました。

 ゆえに、即、購入!


 いしかわじゅん・著 『吉祥寺探偵局』 (角川文庫)

 完全なるギャグ探偵小説。
 私立探偵の薬師丸金語楼と幼馴染の野間刑事のドタバタ劇です。
 2人の関係は、まるでルパンと銭形警部のよう。
 昭和に書かれた小説ですから、ギャグもコテコテの昭和。
 コンプライアンスなんていう意識がなかった時代ですから、暴言のオンパレード。
 それでも、なんとか探偵小説の体は保っているので、最後は必ず金語楼の推理が冴えます。


 みうらじゅん・著 『愛にこんがらがって』 (角川文庫)

 いやはや、彼は天才です。
 いや、基(もとい)!
 変態です。

 とにかく冒頭から、とんでもないストーリーが展開します。
 ミュージシャンの乾は、ライブが終わった後、突然、180cmはある身長の女に 「御主人様になってください」 と懇願されます。
 そして、その日から、御主人様と奴隷の関係が始まるのです。

 奇想天外なSM官能小説です。
 こちらもコンプライアンス的に、令和の現代では受け入れてもらえない作品かもしれませんね。
 でも、僕は好きです! (いい歳をして興奮しました)


 ということで、今日は大変貴重で珍しい本を2冊、ご紹介しました。
 勇気と好奇心のある方は、一読されたし!
 あなたの知らない未体験ゾーンへと、いざなってくれる迷著です。
   


Posted by 小暮 淳 at 11:44Comments(2)読書一昧

2024年04月02日

本業からの贈り物


 <先生に当日お約束させていただいたとおり、拙著の中から先生に一番ご覧いただきたい、『ランプ小屋の魔力』 という本をお送りさせていただきます。>

 昨日、郵便物 (スマートレター) が届きました。
 中には、書籍と一通の手紙。

 送り主は、過日の会合で知り合った作家でした。
 マニアックな本ばかり書いているため、それだけでは食えず、副業に医者をしているという一風変わった男です。
 (2024年3月31日 「うらやましき副業」 参照)


 “ランプ小屋” とは?

 彼の著書より引用すれば、
 ≪「ランプ小屋」 とは、鉄道で使用する油類を保管するための倉庫で、正式な名称は 「危険品庫」 といい、「油庫」 や 「灯室」 と呼ばれることもある。明治時代の鉄道黎明期には、まだ客車に電灯が装備されておらず、車内の照明はランプに頼っていた。そのランプの燃料である灯油の管理を行っていた建物であることから、「ランプ小屋」 の名称で呼ばれることが多くなった。≫
 とのことです。

 ん~、かなりマニアックな本です。
 鉄道マニアでも、「乗り鉄」 や 「撮り鉄」 ならば知っているけど、「小屋鉄」 がいることは知りませんでした。


 手紙の文面は、こう続きます。
 <もともとは高崎線の主要駅すべてに存在したはずのランプ小屋ですが、現在では新町駅にしか残存せず、県内でもわたらせ渓谷鐵道沿線にわずかに残るのみで、全国でも50ほどしか残っていません。明治~大正のロマンを感じる可愛らしい煉瓦造りの建築の魅力を、御高覧いただければ幸甚です。> 

 ほほう、ランプ小屋とは、そんなに貴重な存在なのですね。
 と、新町駅のページを開きました。

 赤茶色のレンガ倉庫の写真が、何点か載っています。
 確かに、どこかの駅で、こんな建物を見たことがあるような……
 でも、ふつうは気に掛けませんよね。


 でも、彼は違います。
 ≪高崎線の前身は日本鉄道で、新町駅のランプ小屋も同鉄道の建設区間に多い食パン型となっている。≫

 食パン型?

 本当だ!
 確かに倉庫の屋根が半円を描いていて、山型食パンのような形をしています。

 そう思って、他のページの他の駅のランプ小屋を見てみると……
 ほほう、なるほど!
 屋根や建物の形が違い、細かいところではレンガの積み方まで違うんですね。


 こりゃ~、ハマる人はいるかもしれませんね。
 しかも、一つ一つ訪ねるとすれば、「乗り鉄」 も 「撮り鉄」 も兼ね添えているわけです。

 ド素人ながら、なんとなく魅力が伝わってきました。
 今晩からグラスを片手に、 “一駅一ランプ小屋” の旅に出かけようと思います。

 笹田さん、素敵な本をありがとうございました。



 『ランプ小屋の魔力 鉄道プチ煉瓦建築がおもしろい!』 
 笹田 昌宏・著  イカロス出版  2,200円
   


Posted by 小暮 淳 at 11:32Comments(2)読書一昧

2024年03月30日

M嬢の新刊


 みなさんは、「M嬢」 を覚えていますか?

 昨年の5月、僕が東京を訪ねた際、2日間にわたりツアーコンダクターを買って出てくれた女性です。
 (2023年5月15日 「東京再会物語〈番外〉M嬢の誘惑」 参照)


 最初は彼女が僕の読者として出会い、今は僕が彼女の読者として交流が続いています。
 今月、そんな彼女の新刊が出版されました。

 『10代に届けたい5つの “授業”』 大月書店 (1,800円+税)


 今の学校に欠けている授業を、各分野のスペシャリストが授業風に、わかりやすく解説してくれる共著です。
 授業は、ジェンダー、貧困、不登校、障害、動物の5限に分かれています。
 彼女が受け持つのは、第5限の 「わたしたちは動物たちとどう生きるか」。

 彼女は作家でもあり、獣医でもあるのです。


 いやいや、とにかく目からウロコが落ちっぱなしの授業でした。
 化粧品の開発のための実験動物、劣悪な環境で飼育されている展示動物、ペットカフェなどの資本主義社会に翻弄される野生動物……
 そして、震災後、被災地に取り残されたペットや畜産動物の実情には、目を疑ってしまうような光景がありました。

 みんなみんな、知らないことばかり。


 本書は “10代に届けたい” というタイトルですが、大人にこそ読んでほしい一冊です。
 すべて昭和や平成では、避けてきた授業内容です。
 令和の今こそ、ちゃんと知って、正しく理解したい授業だと思います。

 興味を持った方は、ぜひ、お近くの書店またはネットで、お買い求めください。



 『10代に届けたい5つの “授業”』 大月書店 (1,800円+税)

 〈編著〉
 生田武志・山下耕平
 〈著者〉
 松岡千紘・吉野靫・貴戸理恵・野崎泰伸・なかのまきこ
  


Posted by 小暮 淳 at 10:20Comments(0)読書一昧

2024年03月04日

なぜ若者は海辺の床屋を訪れたのか?


 不覚にも涙がこぼれてしまいました。
 小説を読んで泣けたのは、久ふりのことでした。


 小説を読むならば、長編と決めていました。
 なぜならば、むらっけの多い、飽きっぽい性格だからです。
 集中力が途切れると、他のことに興味が行ってしまうのです。

 だから短編集には、苦手意識がありました。


 荻原浩という作家が書く小説が好きでした。
 “でした” というのは、もう何年も読んでいなかったからです。

 1997年、『オロロ畑でつかまえて』 でデビュー。
 この作品で第10回小説すばる新人賞を受賞しました。
 この本を機にファンになり、『コールドゲーム』 『噂』 『あの日にドライブ』 などを立て続けに読んだ記憶があります。

 でも、なぜか、その後は読んでいません。
 だから2016年に 『海の見える理髪店』 で第155回直木賞を受賞したときも、本を手に取ることはありませんでした。
 短編だったからかもしれません。


 先日、時間つぶしに、ぷらりと入った古書店で、『海の見える理髪店』 を手に取りました。
 「読んでないけど、これ短編なんだよな……」
 なんて一人ごちながらも、気が付いたら他の数冊の本とともにレジに向かっていました。


 舞台は海辺の小さな町にある理髪店。
 ここに一人の若い男がやって来ます。
 「髪型はお任せします」

 老店主は、ハサミを動かしながらも問わず語りに、自分の人生を語り出します。
 家業の床屋を10歳で手伝い始めたこと。
 父親の死後、継いだ店は順調だったが、やがて傾き出し、酒におぼれていったこと。
 自暴自棄になり、妻に暴力を振り、離婚されたこと。


 なぜ、老店主は、若者にそんな話をするのか?
 なぜ、若者は遠く離れた海辺の町まで散髪にやって来たのか?

 ミステリアスなストーリー展開に、読み手は知らずのうちに謎解きを始めてしまいます。
 が!
 ラストで思いもよらぬ事実が明かされます。

 それを知った時、涙腺が一気に破壊されてしまいました。


 興味をいだいた方は、一読されたし。
  


Posted by 小暮 淳 at 12:03Comments(2)読書一昧

2024年01月12日

愛と性と生の物語


 食べ物に対して、その見た目や素材の味から 「食わず嫌い」 というのがあるように、本に対しても 「読まず嫌い」 があります。
 僕の場合、仕事として読む本は、すべて資料なので、好き嫌いに関係なく目を通していますが、やはり娯楽としての読書となると、好き嫌いがハッキリしてしまいます。

 小説は、時代劇やSF物が苦手です。
 翻訳物も登場人物のカタカナ名前が覚えられなくて、ついつい敬遠してしまいます。
 ビジネス書、実用書の類いも、滅多に手に取ることがありません。


 その本の存在は知っていました。
 一時、話題になり、漫画化やドラマ化されたことも知っています。
 でもね、やっぱりタイトルが……

 書店で見かけても、手に取ることさえためらってしまった記憶があります。


 こだま著 『夫のちんぽが入らない』 (講談社文庫)


 誰だって、手に取るのを戸惑いますよね。
 読むまでもなく “キワモノ” だと、はなから決めつけてしまっていました。
 ところが……

 先日、時間つぶしで入った古書店で、また、そのタイトルを見かけました。
 「ああ、キワモノね」
 と何気なく手に取り、ペラペラとめくり、解説文にチラチラと目を通すと、こんな言葉がありました。

 <いじらしいほど正直な愛と性の物語>


 ほほほう、ただのキワモノじゃないのね。
 感動の物語なんだ。
 でも、それにしてもタイトルがね。

 なんて思いながら 「あとがき」 を読み出した僕。
 そこには著者と編集者のやりとりが書かれていました。

 <さすがにこの題名で世に出すのは難しいだろうと思っていたが、編集者の高石智一さんに 「このタイトルがいいんです。最高のちんぽにしましょう」 と力強く言われた。>

 それにしても、なぜ、「ちんちん」 でも 「ちんこ」 でもなく、「ちんぽ」 なのでしょう?
 その辺についても、書かれていました。


 ということで、“読まず嫌い” を克服するために購入しました。
 そして読んで思ったことは、世の中には “普通” という呪いにかかった人たちが、なんて多いことか。
 “みんな違って、みんないい” のにね。

 人も本も、見た目やタイトルで判断してはいけないということです。
 これは、性と生をめぐる健気な夫婦の愛の物語です。
 そして、「なぜ入らないのか?」 という謎解きミステリーでもあります。
 まだの人は、ぜひ一読をおすすめします。


 ただし、本をレジに差し出す勇気のある人に限ります。
 あしからず。
   


Posted by 小暮 淳 at 12:33Comments(4)読書一昧

2023年11月26日

酒は友となる。


 春
 ──旅をしなさい。
 どこへむかってもいいから旅に出なさい。
 世界は君や、あなたが思っているほど退屈なところではない。


 「確か、あったはず……」
 その人の訃報を知ったとき、僕の足は自然と書庫へと向かっていました。
 「あった!」

 『大人の流儀』 (講談社)
 2011年に発行されたエッセイで、シリーズ累計140万部の大ベストセラー。

 著者は作家の伊集院静さん。
 73歳でした。


 あらためて一読しました。
 帯カバーには、こんなコピーが書かれています。

 ≪こんなとき、大人ならどう考え、どう振る舞うのだろう。
  「本物の大人」 になりたい
  あなたに捧げる、この一冊。≫


 購入したのは12年前です。
 僕は、50代前半。
 すでに数冊の本を書いていました。
 脇目もふらず一心不乱に、自分の信じる道を進んでいた時期、だと思っていました。
 “迷いのない時代” だったと……

 でも、こうして人生の指南書的な本を購入していたことに、今さらながら驚いています。


 帯カバーの写真は、腕を組んだ伊集院氏が読者をにらみつけています。
 還暦を過ぎたばかりの初老男。
 でもカッコイイ!
 モテるはずです。

 前妻は故・夏目雅子さん、再婚した妻は篠ひろ子さん。
 ともに美人な女優さんであります。
 (男として嫉妬します)


 本文は、4つの章に分かれています。
 最初のページをめくると、「春」 から始まります。

 ・大人が人を叱るときの心得
 ・不安が新しい出口を見つける
 ・旅先でしか見えないものがある
 ……

 記憶とは頼りになりませんね。
 12年前に読んだ内容は、すべて忘れていました。
 今読むと、とても新鮮でスラスラと読めてしまいます。
 「そうだ、そうだ」
 うなずく箇所が多いのは、僕も歳を重ねてきた証拠でしょうか?


 こんな一文をがありました。
 現在のSNS上の誹謗中傷の書き込みを予言しているような言葉です。

 <自分のことを棚に上げて、正義を振りかざす輩(やから)を嘘つきと呼ぶ。>

 心より拍手を送りました。


 ご冥福をお祈り申し上げます


 夏
 ──どんな生き方をしても
 人間には必ず苦悩が一、二度むこうからやってくる。
 そんな時、酒は友となる。
   


Posted by 小暮 淳 at 11:41Comments(0)読書一昧

2023年10月18日

消えたことば辞典


 めっきり秋めいてまいりました。

 秋といえば、スポーツの秋、食欲の秋、芸術の秋……
 やっぼり僕は、「読書の秋」 ですかね。
 ま、季節に関係なく仕事柄、一年中、本は読んでいますけど、秋の夜長の読書は格別です。

 暑くなく、寒くなく、心地よい風を感じながら虫の声をBGMにページをめくる……
 なんとも充実した、やすらぎのひと時であります。


 みなさんは、どんな本をお読みですか?
 小説、エッセイ、専門書、ビジネス書……
 僕は今、辞典にハマっています。

 えっ?
 辞典は “読む” ものじゃなくて、“引く” ものでしょって?
 ええ、僕の仕事部屋に並ぶ辞典・辞書の類いは、すべて調べ事を “引く” ためにあります。
 でも最近、夢中になって読んでいる辞典があるんです!

 『三省堂国語辞典から 消えたことば辞典』 三省堂 (1900円+税)


 これが面白い!
 いわゆる使われなくなった死語や廃語が、あいうえお順に並べられているのですが、その理由まで書かれています。

 たとえば死語では、「歌本」 「赤電話」 「芋版」 など、昭和の時代にはあったけれど、現代では見かけないレトロな品名が多く掲載されています。
「一番館」 (最初に封切りをする映画館) や 「ゲルピン」 (お金がない状態)、「メリケン」 (アメリカン) などの懐かしい言葉もあります。


 興味深かったのは、差別語・性俗語が多いこと。
 「裏日本」 「女だてら」 「女の腐ったよう」 など、現代ではNG!
 「愛液」 「視姦」 「オナペット」 「千人斬り」 などのワードも、むべなるかな。

 言葉は、生き物です。
 時代とともに生まれ、そして役目を終えれば死んでいきます。


 ただし、この本は、あくまでも 「三省堂国語辞典」 から消えた言葉であり、他の辞典・辞書には現在も掲載されている言葉もあります。
 そのうえで、興味を持った人は、書店で手に取ってみてください。

 「えっ、こんな言葉、知らない!」
 という驚きが満載の一冊です。

 秋の夜長の酒の友に、どうぞ!
  


Posted by 小暮 淳 at 11:35Comments(0)読書一昧

2023年09月07日

トットちゃんが帰ってくる!


 誰にでも1冊や2冊、心に残る本があると思います。
 人生を変えた衝撃の本、友人や恋人と共感した思い出の本、生きる勇気をもらった本……

 僕にも読んで感動した本なら何冊もあります。
 でも、この本だけは別格!
 忘れられない思い出の1冊となりました。


 あれは42年前のこと。
 僕は夢を追いかけて、東京で暮らしていました。
 もちろん、夢では食べていけないので、平日の昼間はアルバイトをしていました。

 書店員です。
 といっても私鉄沿線にポツンと店舗を構える小さな小さな家族経営の街の本屋さんでした。


 ある日の終業時、社長に呼ばれました。
 「明日、小暮君は店に来なくていいから」
 「えっ!?」

 一瞬僕は、バイトを首なったのかと思いました。
 でも社長は 「明日から」 とは言わず、「明日は」 と言ったのです。

 「その代わり、朝一で講談社に行ってくれ」
 そう言って、現金の入った封筒を渡されました。

 いわゆる “直買い” という本の入手手段の命令が下ったのでした。


 本の名前は、黒柳徹子・著 『窓ぎわのトットちゃん』。
 その年、発売されるや空前のベストセラーになり、社会現象にもなりました。

 僕が勤める小さな街の本屋にも、毎日のように注文が入りました。
 でも一向に、本は店に届きません。
 これが当時の出版業界の常だったのです。
 大手の大型書店には配本されても、名もない力もない小さな書店には、なかなか配本されなかったのです。

 それでも読者は待ってくれません。
 「いったい、いつになったら本が届くの!」
 「よその店で買っちゃうよ!」
 お得意さんからも毎日のように催促電話が入りました。

 業を煮やした社長がたどり着いた苦肉の策が、現金による直買いだったのでした。


 翌日、またその翌日、またまた翌日……
 電車と地下鉄を乗り継いで、僕は講談社本社へと日参しました。

 というものの、朝一番で並んだところで、直買いできるのは2、3冊なのです。
 到底、注文数には及びません。

 「ごくろうさん。悪いけど明日も並んでくれるかい」
 その時の困り果てている社長の顔は、42年経った今でも、ありありと浮かびます。


 来月、42年ぶりに、トットちゃんが帰ってくるといいます。
 『続・窓ぎわのトットちゃん』

 物語は前作のその後、学校が空襲で焼け、満員列車で東北に向かったトットちゃんの疎開先での生活が描かれるといいます。
 またブームが再燃するのでしょうか?


 でも僕は、もう、今は書店員ではありません。
 それでも、きっと本屋さんで見かけたら42年前のあの騒動を思い出して、そっと手に取ってしまうんでしょうね。

 年内にはアニメ映画も公開されるとのこと。
 ますますの黒柳さんのご活躍を祈念いたします。
   


Posted by 小暮 淳 at 10:15Comments(2)読書一昧

2023年05月31日

バックパッカーのバイブル


 ちょうど30年前の今頃。
 インド北部の小さな町の安宿の小汚いベッドの上で、僕は一日中、日本から持ってきた文庫本を読んでいました。

 『バーボン・ストリート』 (新潮文庫)

 著者は、作家の沢木耕太郎氏です。
 そして彼は、僕をインドへと導いてくれた人でもありました。


 『深夜特急』
 その書名を聞いて、胸の奥がジーンと熱くなる人も多いと思います。
 1986~94年に出版 (全6巻) された旅文学の傑作といわれる紀行エッセイです。

 沢木氏が、まだルポライターだった頃。
 ある日突然、仕事を投げ出し、机の中の小銭までももかき集めて旅に出ます。
 香港に渡り、陸路で2万キロをバスを乗り継ぎ、ロンドンを目指す長い長い旅。


 当時、何者になるかもわからず、フリーターをしていた20代の僕は、この壮絶なロマンあふれる旅にあこがれ、むさぼるように読みました。
 あの頃は、そんな若者がウジャウジャいました。

 そんな僕らにとって 『深夜特急』 は、“バックパッカーのバイブル” とまで言われました。


 出版から約40年が経った今。
 当時の僕らと同じく 『深夜特急』 にあこがれて、旅に出た男がいました。
 俳優の斎藤工さんです。
 自らが監督を務めて映画も撮る、個性あふれる色気のある魅力的な俳優さんです。
 そんな彼が現在、毎晩、ラジオで 『深夜特急』 の朗読をしています。

 毎晩のことのなので、聴き逃してしまう日もありますが、僕は今、この番組を聴きながらウイスキーを呑むのが日課となりました。
 えっ、日本酒じゃないのかって?

 やっぱ、『深夜特急』 には洋酒が合うんですよ!


 青春時代にバックパッカーにあこがれた人も、そうでなかった人も、そして今まさにあこがれている若者も、まだ聴いてない人は、深夜に音の旅に出かけてみてください。

 さあ、今夜も深夜特急は発車しますよ!



  『朗読・斎藤工 深夜特急 オン・ザ・ロード』
 TBSラジオ 毎週月~金 23:30~23:55放送
 ※4~9月、全6巻朗読中!
   


Posted by 小暮 淳 at 11:25Comments(0)読書一昧

2023年04月04日

オオカミの血筋を引く犬


 僕の場合、話題作や探している資料でない限りは、本は、ほぼほぼ衝動買いです。

 まず、タイトルが気になったら、手に取ります。
 帯のコピーを見て、興味を抱いたら裏表紙の解説やあらすじに目を通します。
 初めて知る作家名なら、プロフィールを読みます。

 そして、
 「うん、読んでみよう」
 と思った本を購入します。


 ところが最近、タイトルだけで買ってしまった本があります。

 太田博・著 『狼犬 「十石犬」 懐想』 (上毛新聞社)


 僕が、オオカミ好きだから?
 いえいえ、それだけじゃありません。
 「十石犬」 です。

 本書では 「じっこくけん」 とルビがふられていましたが、僕は 「じっこくいぬ」 と教わりました。
 誰に教わったのか?
 “その人” の名が、たびたび本書には登場します。


 著者の太田博さんは、元朝日新聞社の記者です。
 最初の赴任地が群馬県庁所在地、前橋支局でした。
 その時、取材先の上野村で古老から、「オオカミの血筋を引くイヌがいる」 という話を聞きます。

 本書は、当時の記憶をたどって、定年退職後に再度、上野村に入り、取材した記録です。


 実は僕、太田さんより前に、“その人” に会っています。
 その人の名は、「十石犬保存会」 会長の今井興雄(おきお)さんです。

 今から17年前、僕は友人の犬好きカメラマンと共に、上野村を訪ねました。
 もちろん、今井さんに会うためです。
 なぜなら、噂を聞いたからです。

 <柴犬のルーツともいえる土着犬の血筋を受け継ぐ犬が、今も上野村にいる>

 その犬の名が、十石犬。


 十石犬は、昭和30年代に絶滅したと思われいた幻の日本犬です。
 中型犬で、毛色は柴色と黒色の2色。
 人間には従順だが、クマやイノシシなどの獲物には勇猛果敢に立ち向かう気迫があり、古くからマタギ犬 (猟犬) として使われていました。

 昭和の初め、群馬県上野村と長野県佐久町の県境にある十石峠付近で、「すごい犬を見た!」 という噂が広まり、いつしか、この犬のことを 「十石犬」 と呼ぶようになったといいます。
 一説には、山犬 (オオカミ) の血筋を引いているともいわれています。

 ※(十石犬については、当ブログの2010年11月9日、12日の 「十石犬を追え!」 上・下を参照)


 本書は、学術的な専門書ではなく、犬好きが書いたエッセイに仕上がっています。
 十石犬への入門編とも言える、読みやすい本です。

 “幻の日本犬” に興味を持った人は、書店で手に取ってみてください。
   


Posted by 小暮 淳 at 12:29Comments(2)読書一昧

2023年03月31日

島が増えた!?


 目の前に、一冊の分厚い本があります。

 『日本の島ガイド SHIMADAS(シマダス)』
 編集・発行/財団法人 日本離島センター
 (2004年9月30日発行)

 厚さにして約5㎝もある辞典です。


 なぜ、こんな本を僕が持っているのか?
 それは20年前に、さかのぼります。

 僕は2年間、取材で愛知県知多半島沖の離島に通いました。
 それをきっかけに、日本の離島に興味を持ったからです。
 ※(当ブログのカテゴリー 「島人たちの唄」 参照)


 この本の中に、「島の数」 という項目があります。

 これによると、<『昭和62年版海上保安庁の現況』 において同庁は6,852島と発表した。> とあります。
 このときの同庁の数え方は、関係する最大縮尺海図と2.5万分の1陸図を用い、
 ①周囲が0.1㎞以上のもの。
 ②何らかの形で本土とつながっている島について、それが橋、防波堤のように細い構造物でつながっている場合は島とし、それより広くつながっていて本土と一体化しているようなものは除外し、
 ③埋立地は除外、
 とあります。


 発表から36年後の今年、驚くべきニュースが飛び込んできました!

 「正確性に欠ける」 と国会で指摘され、電子地図や航空写真を使って数え直してみたところ、なななんと! 日本には島が14,125島あったといいます。
 間違った数が、長年放置されていたという事実が、暴露されました。

 6,852と14,125では、2倍の誤差があったということです。
 “正確さに欠ける” にも、ほどがある数です。


 目に見えるものですら人間は把握できないのですから、地底や海底、はたまた宇宙なんて、分からないことだらけなんでしょうね。

 せめて僕は、群馬県内の数にだけはこだわって、取材を続けたいと思います。
  


Posted by 小暮 淳 at 12:17Comments(0)読書一昧

2022年12月17日

祝出版! 『群馬を書く』


 ブログにも時々登場する僕の呑み友達で、新聞記者の小泉信一氏が、このたび新刊本を出版されました。

 『絶滅危惧種記者 群馬を書く』 (コトノハ株式会社) 1.500円+税


 本の帯には、こんな言葉が躍っています。

 ≪定年間際の異動命令。――偶然か、必然か? 現場至上主義をつらぬく、人呼んで 「絶滅危惧種記者」 が30年ぶりに赴いた先は、記者駆け出しの地・群馬だった!≫
 ≪街角の光景や人情の機微―― 「ハーナビ(鼻ナビ)」 をたよりに歩き、聞き、書き留めたガイドブックには載らない、魂の群馬本≫
 ≪社内の派閥から一線を画し、「街ダネ」 にこだわり続けたベテラン記者が綴る群馬イムズ!≫
 ≪鎌田慧氏特別寄稿≫


 小泉氏は現在、朝日新聞編集委員 (大衆文化担当) 兼 前橋総局員。

 昭和36(1961)年、神奈川県川崎市生まれ。
 列島放浪後の昭和63(1988)年、朝日新聞入社。
 初任地の前橋をスタートに全国の支局で記者として活躍の後、東京社会部の大衆文化担当記者を経て、編集委員になりました。
 令和3(2021)年4月から前橋総局員を兼務しています。

 僕との出会いは、まさに昨年の4月。
 彼が前橋に赴任して来て、すぐのことでした。
 彼の嗅覚 (小泉氏いわく、「ハーナビ」) が酒処 「H」 を探し出し、そこで僕の著書と出合ったことから始まりました。
 ※(出会いについては、当ブログの202210月8日 「未確認生物を語る」 参照)


 以来、僕と彼はネタを提供しあい、同じライターとして刺激し合っています。
 ので、彼の新聞記事には、たびたび僕が登場します。

 新刊本の 『絶滅危惧種記者 群馬を書く』 は、昨年4月以降の新聞に掲載された記事を収録したものです。
 よって、僕のことも書かれています。
 いったい何回登場するのかと数えてみると……

 おったまげ~!
 なんと、「小暮淳」 という名前が、本の中に8回も出てくるじゃありませんか~!
 (自分の著書だって、表紙と奥付にしか名前は記載されないのに)
 ちなみに、以下の収録記事に僕が登場します。

 ●P11  “神社紙芝居” コロナ禍の子ら励ます
 ●P59  猿ヶ京温泉 「わらしの宿 生寿苑」、記者再訪
 ●P69  伊勢崎に浦島太郎伝説
 ●P76  温泉の宝庫、地味でも極楽~
 ●P78  強烈な薬効、江戸城に運び有名に
 ●P109  国定忠治の最期の一献、落語に
 ●P122  拙者、焼きまんじゅうろうでござる
 ●P153  忠治の故郷は、粉もん天国


 興味を抱いた方は、ぜひ、手に取ってみてください。
 県内の書店にて、絶賛発売中です。
   


Posted by 小暮 淳 at 11:47Comments(3)読書一昧

2022年11月16日

娘の気持ち


 <父はお酒を飲むと、まるでたあいない子供になってしまう。そして酔っくると、次第にお酒をびしゃびしゃお膳にこぼしはじめ、それにつれてお菜を、膝の上から畳の上一面にこぼすのだった。だから父の立ったあとは、まるで赤ン坊が食べ散らかしたようなのであった。>
 (『父・萩原朔太郎』 「晩酌」 より)


 遅ればせながら、萩原葉子さんの 『父・萩原朔太郎』 を読みました。

 初刊は昭和34(1959)年。
 その後、各社から新版や文庫本も刊行されていますが、なぜか手にする機会を逸して、今日まで来てしまいました。

 今回、読むきっかけとなったのは、2つ。
 1つは、今年没後80年となった前橋市出身の詩人、萩原朔太郎 (1886~1942) をテーマとする共同企画展 「萩原朔太郎大全2022」 が全国の文学館などで開かれていること。
 群馬県内でも10施設が参加、同時開催をしているため、ひまを見つけては足を運ぶようになったためです。

 もう1つは今年、小学館の 「P+D BOOKS」 という安価なブックレーベルから同書が発刊されたこと。
 「P+D」 とは、ペーパーバックとデジタルの略称で、現在、入手困難になっている作品を、B6判のペーパーバック書籍と電子書籍で、同時かつ同価格で発売・発信しています。

 ペーパーバックはブックカバーのない、ソフトカバー本なので、持ち運びも便利で、気軽に読めるところが気に入っています。


 萩原朔太郎については、さまざまな著書が刊行されているので、詩人としての作品や識者が評している人となりには触れることはできますが、“家庭人” としての朔太郎を知るには、やはり家族目線が一番リアルです。
 しかも “娘” となれば、親きょうだい、妻から目線とは、かなり異なるのではないでしょうか?

 同書には、こんなシーンが出てきます。
 <父はある日私を見ると、ちょっと笑いながら 「喫茶店に行ったことあるか?」 と聞いた。
  私は、喫茶店もバーも祖母のいうように、みんなこわい女のいるところだと思っていた。私が、ないというと、
  「じゃ連れて行ってやろう」 といった。耳の悪い祖母は、へんなときによく聞こえるもので、隣の部屋からあわてて出てくると、
 「女学生に喫茶店なんてところはもってのほかだよ」 と父に怒っていった。>


 それでも2人は、夕方になり、カフェへ出かけて行きます。
 <ボックスの向こう側にソフト (帽子) を脱いで坐った父は、まがわるそうに、たばこばかりのんでいた。私もどこを見てよいのか困った。こういう所で父と二人きりになるのが、妙にきまりわるくて嫌だった。>

 そして、僕も何十年も前の、ある日のことを思い出していました。
 長女と出かけたコンサートの帰り道。
 コーヒーショップに入った夕暮れの風景を……

 どんな会話をしたのだろうか?
 たぶんコンサートの感想を話し合ったのだと思いますが、今は何一つ思い出せません。


 娘とは、父親にとっては不思議な存在です。
 息子とは男同士という共通点があるので、言葉を交わさなくても分かり合えることがあります。
 でも娘は、違います。

 小さいときは、自分の子どもだという意識があるのですが、思春期を迎えると、もうダメです。
 父は、父として接しられなくなる瞬間が訪れるのです。
 我が子であり、我が子ではないような。
 娘であり、娘ではないような。

 時には、恋人を見るような面映ゆい想いを抱くこともありました。


 葉子さんの描写を通して、僕は、すでに巣立ってしまった娘たちの言動や行動を懐古しながら読み終えました。


 はたして、僕の娘たちは、父をどのように見ていたのでしょうか?
 また今は、どのように見ているのでしょうか?

 訊いてみたいような、怖いような……
 でも訊いてみたいような……


 複雑な読後感を味わいました。
   


Posted by 小暮 淳 at 13:15Comments(0)読書一昧

2022年10月31日

北の町から届いた牧水の手紙


 きっかけは、地元紙に載っていた記事でした。

 ≪町民団体が冊子作成≫
 ≪牧水歩いた みなかみ知って≫


 歌人の若山牧水 (1885~1928) は、大正11(1922)年に群馬県みなかみ町を訪れています。
 今年は、その訪問からちょうど100年後にあたります。
 その記念もあり、牧水の短歌愛好家が集う 「みなかみ町牧水会」 が中心となって、牧水のたどった所を一冊にまとめたという記事でした。

 冊子の題名は 『千日堂から牧水が眺めた・みなかみ みなかみ町名の由来』。
 編集は、「みなかみ町まちづくり協議会 月夜野支部」 とあります。

 だだし、“非売品” とのこと。


 でも、欲しい!
 旅と温泉と酒を愛した牧水のことを、もっと知りたい!
 しかも、非売品となれば、何が何でも手に入れたい!

 ということで、すぐに、みなかみ町観光協会に電話を入れました。
 「みなかみ温泉大使の小暮です」
 申し訳ないが、冊子を手に入れるために肩書を利用させていただきました。
 「非売品とのことですが、なんとか手に入りませんかね?」
 すると担当者は、こう言いました。

 「編集の委員長が私の高校の恩師なんですよ。訊いてみます」


 そして1か月後の先日、待望の冊子が届きました。
 A5判、78ページの簡易冊子であります。
 でも本文はカラーで、牧水の旅の様子が時系列に記されています。

 みなかみ町は平成17(2005)に、月夜野町と水上町と新治村が合併して誕生しました。
 ほとんどの人が、水上町をひらがな表記にしただけだと思い込んでいるようですが、違います。
 若山牧水が大正11年の旅を記した 『みなかみ紀行』 に由来します。

 本著は、そんな町の説明から始まります。
 そして、沼津→東京→信州→嬬恋村→草津温泉→花敷温泉→沢渡温泉→中之条→渋川→沼田→法師温泉→笹の湯(現・猿ヶ京温泉)→湯宿温泉→沼田→老神温泉……
 と、2週間にわたる旅の様子を古い町の写真を交えながら紹介しています。

 出色は、なんといっても牧水が旅の最中に妻・喜志子さんに宛てた手紙の文面を 『みなかみ紀行』 の本文と交互に並べている構成にあります。
 牧水はマメに手紙を出しており、日付と時刻まで記しています。

 よくぞ、こんなにも手紙が残っていたと、感心します。


 みなかみ町まちづくり協議会月夜野支部のみなさん、ありがとうございました。
 心より感謝いたします。
 今後ともよろしくお願いいたします。

 僕も町の温泉大使として、牧水が愛した “みなかみ” の温泉を、全国に紹介していきます。
   


Posted by 小暮 淳 at 12:03Comments(2)読書一昧

2022年09月05日

永遠の夏休み ~stand by me~


 夏になると、読みたくなる小説があります。

 毎年、ふっと思い出し、書庫に駆け込み、ひと通り探してみるのですが、見当たりません。
 「確か、あったはずなのに……」
 そう、一人ごちながら、あきらめてしまうのが常でした。


 でも、今年は違いました。
 「絶対、あるはず!」
 と信念をもって、徹底的に探しました。

 でも、見当たりません。
 ここまで探して見つからないと、例年のように、あきらめられません。
 「見つからないということは、ないんだ!」
 と、探すことをあきらめた僕は、書店に直行しました。
 そして、数十年ぶりに、本と再会しました。


 湯本香樹実・著 『夏の庭 ─ The Friends ─ 』 (新潮文庫)


 物語は、小学6年生の仲良し3人組男子の、ひと夏の経験です。
 1人が、祖母の葬式に参列してきた話をするシーンから始まります。
 「人は死ぬと焼かれるんだ」 「一時間後には骨になるんだ」 「その骨を、みんなでお箸でつまんで、骨壺に入れるんだ」

 2人は、本物の 『死んだ人』 を見たことのある友人に羨望を抱き、嫉妬します。
 そして、それが、夏休み最大の課題となりました。

 人は死んだら、どうなるのか?
 この目で、見てみたい。

 ある日、3人は、近所の婦人たちが話していたうわさ話で盛り上がります。
 「あそこのおじいさん、もうじき死ぬんじゃないかって言ってた」

 だったら、そのおじいさんの死ぬ瞬間を見てやろう!

 そして、3人のひと夏の冒険が始まります。
 まさに、日本版 「スタンド・バイ・ミー」 なのであります。


 この小説が書かれたのは、平成4(1992)年ですから、僕は、すでに大人でした。
 なのに、強烈な印象を残しているのは、完全に忘れてしまっていた小学生時代の瑞々しい感性が、読後によみがえって来たからであります。
 “夏休み” という甘酸っぱい響きと、“冒険” という心くすぐる体験。
 そこに、“死” という未知への恐怖が加わり、少年たちの夏は、一気に盛り上がります。

 同時に、僕の中に眠っていた少年も目覚め、彼らと一緒に、ひと夏の冒険をするのでした。

 「これで、今年の夏休みも終わったな」
 それが、今回の読後の感想であります。


 ちなみに本作品は、平成5(1993)年に日本児童文学者協会新人賞、児童文芸新人賞を受賞。
 また映画・舞台化もされ、世界10ヵ国以上で翻訳され、同9(1997)年にボストン・グローブ=ホーン・ブック賞、ミルドレッド・バチェルダー賞に輝いています。

 ご興味を抱いた方には、一読をおすすめします。
 ひと足遅れの夏休みを体験をしてみては、いかがですか?
   


Posted by 小暮 淳 at 13:02Comments(0)読書一昧

2022年08月29日

自問坂と無言館


 今、僕の机の上には、一冊の新書本が置かれています。

 『無言館ノート ──戦没画学生へのレクイエム』


 表紙をめくると、達筆な筆文字で、こう書かれています。
 <小暮淳へ>
 <二〇〇一、七、一九>
 <窪島誠一郎>

 先日、日本テレビ系のチャリティー番組 「24時間テレビ」 内で放送された、劇団ひとり監督・脚本によるスペシャルドラマ 『無言館』 の主人公となった館長の著書であります。


 「確か、本があったはずだ」
 と、テレビを観終わった直後に、書架より探し出してきました。

 いったい、いつ、どこで、この本にサインを書いてもらったんだろう?
 記憶を呼び起こしました。


 2001年といえば、僕は新しい雑誌の編集室を立ち上げた時期です。

 そして、本の奥付を見ると、<2001年7月22日 発行> とあります。
 ということは、発行より前に、本にサインをしていただいたということになります。

 そんなことって、あるでしょうか?


 さらに記憶をたどると、当時の交友関係が浮かび上がって来ました。

 窪島氏は 「無言館」 の設立前から、長野県上田市で 「信濃デッサン館」(現・残照館) の館長を務めていました。
 こちらの美術館では、若くして逝った夭折画家の作品を展示していました。
 窪島氏が最も力を入れていた画家に、村山槐多 (享年22歳) がいます。
 同館では毎年命日に、「槐多忌」 という追悼イベントを開催していました。

 「淳ちゃんも一緒に行かないか?」
 そう当時、付き合いのあった芸術家から誘われた記憶があります。


 たぶん、それは2001年より前のことです。
 当時、窪島氏からは、「今度、戦没画学生の作品を集めた慰霊美術館を設立する」 という話を聞いた覚えがありますから。
 そして平成9(1997)年5月、「信濃デッサン館」 の分館として、「無言館」 がオープンしました。


 僕の記憶が正しければ、場所は、高崎市のとある居酒屋。
 呼ばれたのは、僕と彫刻家と版画家と新聞記者の4人でした。
 窪島氏は、出版間近の著書を持って、わざわざ上田市から、やって来られたのでした。

 どのようないきさつで、このような会が開かれたのか?
 なぜ、はすっぱな僕が、この席に呼ばれたのか?
 今となっては、不明です。

 その時、窪島氏から手渡されたのが、この本でした。


 「無言館」 設立から今年で、25年。
 オープン以来、仕事やプライベートで何度か、足を運んでいます。
 訪ねるたびに、画学生らの無念の声が聞こえ、胸が締め付けられます。

 僕は毎回、駐車場から美術館までの坂道で息を切らします。
 ちょっとキツメのダラダラ坂が、足にこたえます。

 窪島氏は、この坂に 「自問坂」 と名付けています。
 「戦争や平和以上に、自分はどうあるべきかを考える場所」
 との思いが込められているとのことです。


 まだ 「無言館」 へ行かれていない人へ
 ぜひ、一度は足を運んでみてください。

 戦争とか平和を考えるだけでなく、窪島氏の言うとおり、“自分” を見つめ直す場所であるからです。
   


Posted by 小暮 淳 at 11:43Comments(0)読書一昧