2023年03月13日
絹の国の人だもの
『繭と生糸は日本一』
ご存知、「上毛かるた」 の 「ま」 の読み札です。
現在でも繭の生産量は、群馬県が日本一だといいます。
でも若い人は、ピンとこないかもしれませんね。
僕が子どもの頃 (昭和30年代) は、まだ我が家の周りも一面の桑畑でした。
クラスの中にも何人か養蚕農家の子がいました。
どの子も蚕(かいこ)のことは、「おかいこさん」 とか 「おかいこさま」 と大切に呼んでいました。
蚕のことを 「おこさん」 と呼ぶ地方もあるんですね。
昨日、初めて知りました。
高崎市箕郷文化会館で上演された養蚕演劇 『蚕影様物語 (こかげさんものがたり)』 を観てきました。
舞台は明治期の相馬村 (旧箕郷町) の養蚕農家。
家族みんなで大切にお蚕を育てています。
しかし、ある日、突然、晴れていた空が急に暗くなり、雷鳴がとどろき、雹(ひょう)が降り積もり、あたり一帯は氷の海と化し、桑畑が大打撃を受けました。
桑の葉がないと、お蚕の飼育を続けることはできません。
村人たちは、涙ながらに生きたままのお蚕を土の中に埋め、その供養と、この時の惨状を後世に伝えるため 「蚕影碑」 を建てました。
物語は、この 「蚕影碑」 を元養蚕教師の夫婦が訪ねる現代のシーンから始まります。
脚本・演出の岡本優子さん (高崎市箕郷町在住) は、この物語の劇化について、こう語っています。
<私は養蚕農家に生まれ、子供の頃は蚕影碑の近くで育ちました。そして当時の大人から 「地の底で蠢くお蚕様の叫び声、そして必死に這い出して来ようとする、夥しい数のお蚕様の姿を想像してごらん」 と言われ、胸が苦しくなった思い出があります。(中略) 忘れてはいけない過去の歴史を演劇により未来へと語り継いでいきたい、という願いを込めて本日皆さまにお届けします> パンフレットより
まさに、知られざる養蚕国群馬の歴史を垣間見ました。
“絹の国” として発展した影には様々な困難と、それを乗り越えてきた農民の並々ならぬ苦労があったのです。
今回、なぜ僕は、この演劇を知り、観覧したのか?
それは、出演女優と知り合いだったからです。
その女優とは?
このブログにも、たびたび登場する紙芝居仲間の画家・須賀りすさんであります。
とにかく、彼女は多彩な才能の持ち主です。
本業は画家でありイラストレーターですが、アマチュアちんどん屋のメンバーでもあり、ラジオなどで小説の朗読もしています。
そんな彼女のもう一つの顔が、役者です。
今回も兄を落雷で亡くす、貧しい農家の娘役を見事に演じ切っていました。
素晴らしい!
次は、どんなジャンルに挑戦するのでしょうか?
2023年01月29日
吟遊詩人の夜
悪い魂なんてない
悪い考えがあるだけだ
弱い魂なんてない
弱い考えがあるだけだ
お前の魂は
何も諦めてなんかいない
そんな器用に出来てない
恐れるモノは何もない
いいから
泳ぎたいように 泳げ!
踊りたいように 踊れ!
ブギー!ブギー!ブギー!
“尊敬する人” には、まま出会うことがあります。
でも、“嫉妬する人” と会うことは、稀なことです。
尊敬は、芸術、芸能、文学、音楽に限らず、作品に触れたときに抱く感情です。
でも嫉妬は、その人の生きざまに触れたときに、湧き上がる情熱です。
昨晩、久しぶりに魂が震えました。
その人の名は、シンガーソングライターの西山正規さん。
友人に誘われて、前橋市の 「クールフール」 というライブハウスへ行ってきました。
ライブハウスへ行くなんて、何十年ぶりのことでした。
でも、そこは、まるで時が止まってしまっているかのよう。
薄暗く、大音響の中に立ち込める煙草の煙……
その秘密めいて、不良っぽい雰囲気が、一気に僕の五感をあの頃に引きずり込みました。
西山正規さんは、東京都出身。
歳は、たぶん50代の後半。
「一度、見てください」
見る? 聴くじゃなくて、見るなの?
友人に誘われた意味は、彼がステージに立った瞬時に分かりました。
絶叫とも、雄叫びともつかぬ奇声を上げると、エレキギターをかき鳴らしながら、激しく語り始めました。
♪ 悪い魂なんてない! 悪い考えがあるだけだ! ♪
独唱パンク?
時に彼は床に寝転がりながら、客席のイスに飛び乗りながら、ギターをかき鳴らし、叫び続けるのです。
その姿は、吟遊詩人のよう。
あ! あああああ……
胸が痛いのです。
彼の言葉が、防御する間もなく、とがったキリの先のように刺し込んできます。
え? なんだろう、この息苦しさは?
いつから僕は言葉を、こんなにもオブラートにくるんで生きるようになってしまったのだろうか?
時に彼は、放送コードに引っかかりそうな言葉を発します。
でもそれは、誰もが心に隠し持っている凶器なのです。
その凶器が、オブラートの被膜を少しずつ、はがしていくのです。
ライブ終了後、僕は年甲斐もなく、彼に嫉妬していました。
カッコイイとも違うし、あこがれとも違います。
理想でもないし、羨望でもありません。
ただ単に、彼の “生きざま” への素直な感情でした。
「カンパーイ!」
彼が僕のテーブルに来ました。
「アニキ、ありがとう!」
いつしか彼は、僕のことを、そう呼んでいました。
初対面なのにね。
ステージとのギャップに、ちょっぴり “萌え~” とした夜でした。
2023年01月24日
輝ける才能の片鱗
「月刊○○○の編集長をしていた小暮です」
「あーーッ! お久しぶりです」
イベント終了後に、僕は彼に声をかけました。
約20年ぶりの再会でした。
アーツ前橋 (前橋市) では現在、全国で開催中の萩原朔太郎の没後80年を記念した 「萩原朔太郎大全2022」 の関連企画として 『朔太郎と写真』 展が開催中です。
展覧会では、朔太郎が故郷、前橋を中心に撮影した風景写真に加えて、朔太郎が撮影した同じ場所で時代を超えて新たに撮影した萩原朔美氏の写真、朔太郎のポートレートをモチーフとする吉増剛造氏のポラロイド写真、朔太郎という詩人の痕跡をたどり、制作された木暮伸也氏の写真により構成、展示されています。
※(当ブログの2022年11月30日 「詩人の目 レンズの眼」 参照)
この企画展に関連したトークショーが前橋文学館 (前橋市) で開催さるというので、出席してきました。
『詩人と写真』 と銘打たれたトークショーの出演者は、下記の3人です。
萩原朔美 (映像作家、エッセイスト、多摩美術大学名誉教授、前橋文学館館長)
吉増剛造 (詩人、萩原朔太郎賞選考委員)
木暮伸也 (写真家)
僕が、このトークショーに出席しようと思ったのは、チラシの中に木暮 (きぐれ) 君の名前があったからです。
彼との出会いは、編集者とカメラマンとしてでした。
当時、僕は生活情報誌の編集長をしていました。
撮影現場にも、たびたび立ち会うことがあり、何人ものカメラマンとご一緒しました。
その中でも、異彩を放っていたのが木暮君でした。
確か、彼は僕より、ひと回りほど若かったと思います。
どこが他のカメラマンと、違っていたのか?
僕は写真のことは詳しくないので、感覚的な違いを感じたとしか言えませんが、人物や商品を撮る目線が違っていたと思います。
クライアントの指示通りに、キレイに撮り、スムーズに仕上げるのが商業カメラマンとすれば、彼は常に、被写体を自分の中に取り込もうとしているように見えました。
当時、彼は美術学校を卒業して、現代アートの研究所に入所していました。
すでに、アーティストとして活動していたのです。
商業写真を撮っていたのは、生活のためでした。
あれから20年近い月日が経ちました。
ことあるごとに、彼の名前は見かけていましたが、なかなか会いに行くチャンスがありませんでした。
「これで、やっと会える!」
そう思い、会場へ足を運びました。
現在、彼の作品は、下記の2会場で鑑賞することができます。
ぜひ、お出かけください。
●アーツ前橋 「朔太郎と写真」 ~2023年3月5日(日)
●群馬県立近代美術館 「アートのための場所づくり」 ~4月9日(日)
2022年12月04日
温泉サミットを終えて
昨日と今日の2日間にわたり、群馬県みなかみ町で開催された 「第3回 ぐんま温泉サミット in つきよの」 が無事終了しました。
会場となった月夜野温泉 「みねの湯つきよの館」 には、県内外から12人の温泉ファンが集まりました。
遠く、長野県と神奈川県から参加された方もいました。
みなさんは、覚えていますか?
以前、東京へ向かう電車の中で、僕の読者だというご夫婦に声をかけられ、一緒に写真を撮ったという話を?
(当ブログの2022年10月15日 「フルネームで呼ばれて」 参照)
その、ご夫婦も参加されていました。
そして今回は、みなかみ町観光協会が、全面的に協力してくださいました。
会場の大広間には、観光協会のブースが設けられ、拙著 『みなかみ18湯』(上毛新聞社) の上・下巻が販売されました。
ということで、今回の僕の講演は 「令和版 みなかみ紀行」 と題して、今年来町100年を迎えた詩人・若山牧水の 『みなかみ紀行』 にあやかり、みなかみ町の全18ヵ所の温泉地の歴史や湯の特徴を取材時のエピソードをまじえながら話させていただきました。
講演の後、サミット (意見交換会) を行い、休憩 (入浴タイム) をはさみ、懇親会 (食事会) となりました。
旅館側の配慮で、二次会場を別に設けていただき、深夜2時過ぎまで熱い熱い温泉談議が続きました。
女将さん、スタッフの方々、観光協会の木村さん、大変お世話になりました。
着実に回を重ねるごとに群馬の温泉愛は深まり、「群馬といえば温泉」 から 「温泉といえば群馬」 への認知度が上がっています。
参加されたみなさん、大変お疲れさまでした。
そして、たくさんの温泉愛をありがとうございました。
来年もまた、群馬の温泉地でお会いしましょう!
2022年11月30日
詩人の目 レンズの眼
遊園地(るなぱあく)の午後なりき
楽隊は空に轟き
廻転木馬の目まぐるしく
艶(なま)めく紅のごむ風船
群集の上を飛び行けり。
(「遊園地にて」 より)
前橋市民にとって、「遊園地」 といえば、誰もが 「るなぱあく」 の思い出を語ることでしょう。
「るなぱあく」 は、今でこそ “日本一なつかしい遊園地” として全国に知られるようになりましたが、昔も今も変わらない小さな小さな遊園地なのです。
昭和29(1954)年11月、前橋市が周辺町村との合併を記念して、「前橋市中央児童遊園」 として開園しました。
だから僕ら (昭和30年代生まれ) は、「児童遊園」 と呼んでいました。
「前橋るなぱあく」 と改名されたのは平成18(2006)年のこと。
市民公募により命名されました。
でも、本当に一般公募だったのでしょうか?
少し疑問が残ります。
だって、「るなぱあく」 という名前は、萩原朔太郎の 「遊園地にて」 という詩に由来するからです。
朔太郎は、“遊園地” に、あえて 「るなぱあく」 とルビをふっているのです。
そのことを、どんだけの市民が知っていたでしょうか?
ルナ=月、パーク=公園ですから、直訳すれば “月の公園” です。
でも、ハイカラな朔太郎は、知っていたんですね。
世界には、「るなぱあく」 と呼ばれる移動式遊園地があることを!
やはり、かなりのセンスの持ち主だったのですね。
そんな郷土の詩人、萩原朔太郎の没後80年となる今年は、日本全国52ヵ所の文学館や美術館で 「萩原朔太郎大全2022」 と題した朔太郎をテーマにした企画展が開催されています。
このブログでも、たびたび紹介してきましたが、今日は現在開催中のちょっと変わった企画展を紹介します。
萩原朔太郎は、明治、大正、昭和を駆け抜けた 「日本近代詩の父」 と称される、日本を代表する詩人です。
でも、当時の詩人たちと比べ格段に飛びぬけていたのが、そのハイカラとセンスです。
マンドリンやギターなどの洋楽器に親しんだり、作曲なども手がけています。
そしてまた、カメラも朔太郎を象徴するアイテムの1つでした。
17歳の時に初めてカメラを手に入れて以来、生涯を通してカメラに親しみ、写真を撮り続けました。
アーツ前橋では、朔太郎が故郷、前橋を中心に撮影し続けた風景写真に加えて、朔太郎が撮影した同じ場所で時代を超えて新たに撮影した写真を比較しながら展示しています。
この写真を撮影したのは、朔太郎の孫である萩原朔美さん (前橋文学館・館長) であります。
この展示が、とにかく楽しい!
よくもまあ、大正時代~昭和初期の風景を探し当てたな~と、感心します。
大渡橋や馬場川などの今も現存する風景もありますが、空襲で焼かれる以前の市街地の同じ風景をも探し出しているところが、お見事です。
(朔美さんだけでなく、文学館のスタッフが総力を挙げて、当時の撮影場所を探したそうです)
この企画展は、前期と後期に分かれ、作品の入れ替えがあるところも魅力です。
ぜひ、2回足を運んでみてください。
朔太郎ファンはもちろんのこと、写真オタク、昭和レトロ好きも楽しめます。
萩原朔太郎大全2022
―朔太郎と写真―
●会期 前期=会期中~2023年1月10日(火)
後期=2023年1月12日(木)~3月5日(日)
●会場 アーツ前橋 1Fギャラリー
●開館 10時~18時
●休館 水曜日 (祝日の場合は翌日)
●観覧 無料
●問合 アーツ前橋 TEL.027-230-1144
群馬県前橋市千代田町5-1-16
2022年11月23日
海うさぎ、跳んだ!
「東京で観た、あの絵が、もう一度、身近なところで観られる……」
と聞いて、群馬県庁昭和庁舎へ行って来ました。
須賀りすさんといえば、このブログでは 「神社かみしばい」 でお馴染みですが、僕と彼女の付き合いは、かれこれ20年以上になります。
紙芝居の共作だけではなく、過去には僕が原作の絵本の挿画も描いています。
でも、あまり世間には、彼女の素顔は知られていないようですね。
イラストレーターとして、数々の作品を世に残しています。
「ぐんまこどものくに児童会館」 のキャラクターや 『ココロの絵本』 (大月書店) の装幀・挿画。
また、企業や団体のポスターやカレンダーも数多く手がけていて、2003年には 「四万温泉観光ポスター」 (原画担当) で、群馬県知事賞を受賞しています。
プライベートでは、朗読会を開いたり、アマチュアちんどん倶楽部の座員やアマチュア劇団員としても活躍したりと、多彩な顔を持っている人ですが、僕は一貫して彼女のことは “画家” として見ています。
先月、東京・六本木の国立新美術館で観た 『水のまつり』 (50号変形) と題したアクリル画は、圧巻でした。
(当ブログの2022年10月19日 「アートの秋を彩る女性たち」 参照)
テーマは 「海うさぎ」
たぶん、そう呼ぶのだと思います。
以前、何かの本で読んだことがありました。
瀬戸内海だか、どこかの地方では、白波が立つ海面のことを 「うさぎが跳ぶ」 というらしいのです。
『水のまつり』 は、青く輝く大海原を何匹ものうさぎの群れが、まるでトビウオのように舞っています。
近寄って見ると、その緻密で繊細な筆運びに驚かされます。
「よくもこんな細かい筆致で、こんなにもダイナミックな絵に仕上げたものだ」
と、改めて感嘆しました。
展示会では、県内のアマチュア作家の作品が出展されていますが、須賀りすさんは特別ゲストとして、『水のまつり』 一点のみ出展しています。
入場無料ですので、お時間のある人は覗いてみてください。
「ひとつの輝きへ→」
●会期 開催中~2022年11月29日(火)
●会場 群馬県庁昭和庁舎 2階 第一展示室
(群馬県前橋市大手町1-1-1)
●時間 10時~17時 (最終日は13時まで)
●閲覧 無料
●主催 国際芸術振興協会 TEL.027-384-8740
2022年11月10日
ミルコト+ミエナイコト=サワルコト
会場に一歩足を踏み入れて、驚いた!
目の前の観客がしゃがみ込んで、床に展示されている作品を素手で触っているのです。
一般の展示会では、あり得ないことです。
<作品には手を触れないでください>
そう注意書きが貼られているのが常です。
でも、ここは違いました。
「ああ、そういうことなのか……」
最初に感じた違和感は、すぐに心地よい手の感触ともに消えて行きました。
一風変わった彫刻展が開催されているというので、行ってきました。
『ミルコト ミエナイコト サワルコト』
この展示会を企画したのは、一般社団法人 「メノキ」 。
代表理事の三輪途道(みわ・みちよ)さんは、群馬県下仁田町在住の彫刻家です。
三輪さんが視力を失い出したのは15年前のこと。
網膜色素変性症という目の難病を発症しました。
時間経過の中で少しずつ視力を失い、昨年暮れには、ほぼ見えなくなったといいます。
彫刻家が視力を失うことは、致命的なはずです。
でも三輪さんは作品を作り続けています。
<『表現する』 という立ち位置になんら変わりはありません。加えて、見えなくなってから 『見えてきたこと』 もたくさんありました。>
と、今回の展示会にコメントを寄せています。
彫刻展は2期構成で、前期は 「三輪途道 個展」 で、すでに終了しました。
現在は、三輪さんの活動に賛同する仲間の作家たちによる 「グループ展」 が開催中です。
このグルーブ展には、当ブログでも紙芝居 『焼きまんじゅうろう 旅すがた』 でお馴染みの絵本作家・野村たかあきさんの作品も出展されています。
野村さんは、絵本作家でもありますが、木彫家であります。
ぜひ、この機会に、見て、触れて、“ミエナイコト” を感じてみてください。
素晴らしい展示会だと、僕は思いました。
『ミルコト ミエナイコト サワルコト』
後期 グループ展
●会期 開催中~2022年12月3日(土)
●開館 午前9時30分~午後5時
●休館 日曜・祝日
●会場 株式会社ヤマト 本社1階 ギャラリーホール
(群馬県前橋市古市町118)
●観覧 無料
●問合 株式会社ヤマト TEL.027-290-1800
<出展作家>
三輪途道、齋木三男、林耕史、野村たかあき、丸尾康弘、カナイサワコ、群馬大学教育学部美術専攻彫刻研究室学生 (敬称略)
2022年10月30日
パチリ! 今日の朝日新聞
≪世相映す 「未確認生物」 解説≫
≪「見えない世界への共感力を」≫
今日(30日)の朝日新聞群馬版に、こんな見出しの記事が掲載されました。
記事には、写真が添付されています。
老若男女の集合写真です。
こんなキャプションが付いています。
<小泉信一編集委員 (後列右から3人目) を囲む総局記者サロンの参加者のみなさん>
この中に、僕も写っています。
昨日、朝日新聞社前橋総局で開催された、「総局記者サロン」 に参加してきました。
この催しは、現役の記者が講師となり読者と交流する集いで、今回は全国各地の 「未確認生物」 を取材してきた小泉編集委員が担当しました。
(小泉氏との出会いやプロフィール等は、当ブログの2022年10月8日 「『未確認生物』 を語る」 参照)
演題は 「未確認生物の精神史/彼らが生まれた時代背景」。
冒頭、プロジェクターで壁に映し出されたのは、昭和41(1966)に始まった特撮テレビ番組の 「ウルトラQ」。
続いて、さらに古い同29年に上映された映画 「ゴジラ」。
ほぼほぼ小泉氏は、僕と同年代なんですね。
“怪獣少年” だったわけです。
そんな時代背景を解説しつつ、彼は、新聞記者へのあこがれを語りました。
「『ウルトラQ』 に登場する新聞記者がカッコよかった。自分が興味を持ったネタを追って、ヘリコプターで現場に駆けつける」
怪獣少年は長じて、初志貫徹。
しかも、事件や事故を追う新聞記者ではなく、子どもの頃の好奇心そのままに 「未確認生物」 を追いかける大衆文化専門の記者になりました。
参加者に配られた資料の中に、小泉氏が手がけた 「未確認生物」 の記事の一覧がありました。
連載した記事のタイトルは、そのままズバリ! 「未確認生物をたどって」。
記事では、かつてテレビや新聞で話題になった未確認生物の数々を紹介しています。
たとえば、昭和52(1977)年4月、ニュージーランド沖で日本のトロール漁船の網に掛かった巨大生物らしい死骸。
長い首、太い胴、大きなヒレが、首長竜プレシオサウルスに似ていることから 「ニューネッシー」 と名付けられました。
その後も、ネッシーにあやかった未確認生物は続々出現。
釧路湖 (北海道) のクッシー、池田湖 (鹿児島県) のイッシーなどを追って、日本中を駆け回ります。
広島県のヒバゴン、岩手県のガタゴン、千葉県のマツドドン……
さらには、カッパや座敷わらしなどの伝説から口裂け女などの都市伝説まで。
彼の好奇心は止まりません。
「未確認生物の取材を通じて、時代や社会の背景に思いをめぐらし、自然への畏怖や恐れを含めて謙虚な気持ちを教えてもらった。『いるはずがない』 と切り捨てるのではなく、見えない世界への共感力を磨いてみてほしい」
(朝日新聞の記事より)
講話中、座敷わらしに触れた際には、県内の目撃情報のネタ元として、僕のことも紹介してくださいました。
小泉ちゃん、ありがとね!
彼の未確認生物への飽くなき追求は、まだまだ終わりを知りません。
近々、新刊も出版されるそうです。
行け行け! 小泉記者!
謎がキミを待っているぞ~‼
2022年10月29日
晴れ、ときどき朔太郎日和 ②
「ラッキー!」
思わず声に出していました。
たかが500円、されど500円。
小市民にとっては、大きな至福なのであります。
昨日、調べ事をしに県立図書館へ行ったついでに、前橋文学館まで足を延ばしました。
今年は詩人・萩原朔太郎の没後80年にあたり、朔太郎を介した企画展 「萩原朔太郎大全2022」 が全国52か所の文学館や美術館などで開催されています。
前橋文学館は、萩原朔太郎を常設展示する本家本元であります。
いわば、朔太郎ファンの聖地!
現在、前橋文学館では、3つの関連企画展を同時期開催しています。
①「萩原朔太郎研究会 歴代会長展」
②「ふだん着の詩集、よそゆきの詩集~萩原朔太郎著作展」
③「見よ、友情の翼、高く飛べるを アニメ 『啄木鳥探偵處』 展」
入館して、受付の前まで行くと、「本日は……」 と書かれたプレートが目に入りました。
一瞬、定休日? 臨時休業? と思いきや、「本日は入館無料」 と書かれているではありませんか!
えっ、どういうこと?
「無料なんですか?」
との問いに、受付嬢いわく、
「今日は、県民の日ですから」
おお~、そんなことは、すっかり忘れていました。
10月28日は群馬県民の日、なんですね。
そういえば昔、まだ子どもたちが幼かったころ、ディズニーランドへ行った記憶がよみがえって来ましたよ。
この日は、群馬県民だけ入場料が安かったんですよね。
だからディズニーランドの駐車場は、群馬ナンバーだらけでした。
タダで観れて、しかも企画展は3本立て!
真面目に暮らしていると、良いことがあるものです。
たっぷり1時間以上かけて、観覧してまいりました。
個人的に興味深かったのは、「ふだん着の詩集、よそゆきの詩集~萩原朔太郎書作展」。
朔太郎は自ら、自分の著書の装丁デザインを手がけていたのですね。
それらにまつわるエトセトラが、著書と言葉の展示にて知ることができました。
前橋文学館ならではの好企画だと思います。
天高く、感性が研ぎ澄まされる秋。
あなたは、何をしますか?
秋風に誘われて、文学館めぐりなんて、いかがですか?
前橋市制施行130周年記念
「萩原朔太郎研究会 歴代会長展」
●会期 開催中~2023年1月15日(日)
●時間 9時~17時
●会場 前橋文学館 2階展示室
●料金 一般500円 (高校生以下無料)
●休館 水曜日、11月24日(木)、年末年始
●問合 前橋文学館 TEL.027-235-8011
(前橋市千代田町3-12-10)
<同時期開催>
「ふだん着の詩集、よそゆきの詩集~萩原朔太郎著作展」
●会期 開催中~12月11日(日)
●会場 2階 常設展示室
「見よ、友情の翼、高く飛べるを アニメ 『啄木鳥探偵處』 展」
●会期 開催中~2023年1月22日(日)
●会場 3階 オープンギャラリー
2022年10月27日
晴れ、ときどき朔太郎日和
昔、といっても半世紀以上も前のこと。
僕が通っていた前橋市立M小学校の裏庭の片隅に、詩人・萩原朔太郎の生家から移築された書斎部屋ありました。
※(現在は前橋文学館の向かいに移築されています)
なぜ、こんなところに、こんなものがあるのか?
当時の児童たちは、気に留めることもなく、そこにあることが当たり前のように眺めていました。
記憶に残っていることといえば、書斎部屋の前には大きなイチョウの木があり、秋になると掃除当番が落ち葉をかき集めたこと。
こんな時でもなければ、垣根に囲まれた敷地内に入ることなんて、なかったからです。
当時、先生たちから朔太郎が偉大な郷土の詩人であることは聞いていましたが、それを実感として知るのは、まだ先のことでした。
僕が朔太郎の詩に触れるようになったのは、高校生になってからでした。
ある日、兄の友人が、県外からわざわざ訪ねて来たのです。
目的は、詩人・萩原朔太郎が生まれ育った街、前橋を歩くためでした。
えっ、朔太郎って、そんなに有名なの?
それからは図書館に通い、むさぼるように詩集を読みふけた記憶があります。
今年は萩原朔太郎の没後80年にあたる年です。
現在、「萩原朔太郎大全2022」 と銘打った企画展が、全国52か所の文学館や美術館、大学施設などで開催されています。
もちろん生誕の地、前橋市が中心ですから群馬県内の多くの施設で、関連企画展が開催されています。
秋晴れの昨日、我が家から一番近い会場へ、自転車に乗って行って来ました。
群馬県立文書館です。
『前橋藩から朔太郎へ ~母方八木家と藩士諸家の文書展~』
さすが文書館です。
他の企画展とは、ちょっと切り口が違います。
かなりマニアックであります。
スポットを当てているのは、朔太郎の母、けいの実家、八木家。
八木家は、前橋藩主松平大和守家の家臣でした。
展示では、この八木家を中心に前橋藩士諸家に伝わった古文書などを通じて、朔太郎の故郷、前橋とその先祖の歴史、八木家と萩原家の密接な関係を紹介しています。
朔太郎ファン必見は、八木家の親族写真の中に、婿殿として映っている若き日の朔太郎の姿でしょうか!
いゃ~、かなりのイケメンであります。
しかも、ちょっと斜に構えていて、婿とは思えない存在感があります。
やはり他の人とは、オーラが違います!
朔太郎ファンのみならず、歴史ファンにも楽しめる企画展です。
お近くまでお越しの際は、ぜひ、お立ち寄りください。
開館40周年記念 令和4年度 テーマ展示
「前橋藩から朔太郎へ」
~母方八木家と藩士諸家の文書展~
●会期 開催中~2022年12月25日(日)
●会場 群馬県立文書館 1階展示室
●開館 午前9時~午後5時
●休館 月曜日、祝日、月末
●入館 無料
●問合 群馬県立文書館 TEL.027-221-2346
(前橋市文京町3-27-26)
2022年10月26日
「末期の酒」 in 笠懸野
長いメールが届きました。
こんな書き出しで始まっていました。
<来週火曜日、笠懸野文化ホールで講演と落語をやることになっておりまして、先方のご指定で 『末期の酒』 をやることになっております。>
「末期の酒」 とは?
一昨年9月、僕は高崎市のフリーペーパー 「ちいきしんぶん」 に、≪忠治外伝 末期の酒 「牡丹」 を探しに≫ という記事を書きました。
嘉永3(1850)年に国定忠治が関所破りの罪で、大戸 (群馬県東吾妻町) の処刑場で磔(はりつけ)の刑に処せられた際、“末期の酒” に選んだのが 「牡丹」 という酒だったという内容でした。
この記事が発端となり、忠治ファンや地酒マニアの間で、ちょっとしたムーブメントが起き始めました。
昨年3月、群馬テレビ 「ぐんま!トリビア図鑑」 で、『伝説のお大尽 「加部安」 とは?』 を放送。
番組では、僕がリポーターとなり、当時 「牡丹」 を醸造していた 「加部安」 こと加部安左衛門の酒蔵跡を訪ねました。
この番組の冒頭とエンディングに流れたのが、落語の 『末期の酒』 でした。
『末期の酒』 は、前橋市在住のアマチュア落語家、都家前橋(みやこや・ぜんきょう) さんの創作落語です。
前橋さんと僕は、呑み屋の常連同士。
「ちいきしんぶん」 の記事を見せたところ、いたく感動して、この話を落語にしてくださったのでした。
さて、群馬テレビで放送されると、「末期の酒」 は、各方面で反響がありました。
たとえば朝日新聞は、≪国定忠治の最期の一献 落語に≫ と見出しを付けて、大々的に報道。
これに触発され、がぜん奮起したのが、都家前橋さんであります。
「番組で放送されたのは、ほんのさわりの部分だけ。ちゃんとした落語に仕上げたい」
と一念発起!
『末期の酒 ~牢番編~』 を完成させ、昨年9月よりYouTubeにて配信が始まりました。
実は都家前橋さんの本業は、大学教授。
彼が、たびたび講演会に呼ばれ、本業と趣味を合体させた “健康と笑い” について話をしていることは、僕も知っていました。
ただ、いつもは講演の後には、お得意の古典落語を披露していたようです。
それが、YouTubeでしか披露していない創作落語の 『末期の酒』 を演じてほしいというリクエストがあったものですから、彼は発案者であり、ネタ元である僕に一報をくださったのです。
本来なら笠懸公民館 (みどり市) 主催による 「高齢者大学」 という企画なので、一般聴講は募集していないのですが、特別に “関係者” という枠で招待してくださいました。
笠懸野文化ホールは、プロの歌手がコンサートをやるような大きな会場です。
前半の40分、彼は大学教授として、真面目に健康についての講義をされました。
休憩をはさみ、舞台上には高座が現れ、お囃子も高らかに、いよいよ都家前橋の登場です。
すぐに落語が始まるのか?と思いきや、さにあらん。
当然、落語には “まくら” が付き物であります。
その、まくらが、驚いた!
前橋さんときたら、高座に上がるやいなや、こう言ったのです。
「今日、この会場に、温泉ライターの小暮淳さんが見えているはずなんですがね~。どこにいますか?」
驚くやら恥ずかしいやら、でも反射的に 「ハーイ!」 と、手を挙げてしまいました。
その後、前橋さんは、僕との出合い、記事との出合い、そして作品ができるまでを語り、落語 『末期の酒』 へと入っていきました。
前橋さんの話芸は、絶品であります。
まさに、“玄人はだし” とは、この人のためにあるような言葉。
『末期の酒』 も、聴くたびにバージョンアップしていて、何度聴いても飽きが来ません。
国定忠治が、この世の最後に呑んだ酒の話です。
いつしか、群馬の古典落語になってほしい作品であります。
※落語 『末期の酒~牢番編~』 は、YouTube 「都家前橋」 にて検索!
2022年10月21日
朔太郎と群馬の五詩人
わが故郷に帰れる日
汽車は烈風の中を突き行けり。
ひとり車窓に目醒(ざ)むけば
汽車は闇に吠え叫び
火焔(ほのほ)は平野を明るくせり。
まだ上州の山は見えずや。
10代後半から20代にかけて、僕は東京で暮らしていました。
ただひたすらに、夢を叶えたくて、大都会で生きていました。
年に数度の里帰り。
「友人に会うため」 との言い訳を胸に、列車に乗りました。
「まだ、あきらめたわけではない」
そう自分に言い聞かせながら、流れる車窓の景色を眺めていた記憶がよみがえります。
そんな時、スラスラと口を突いて出たのが、萩原朔太郎の詩の一節でした。
「氷島」 という詩集に収録された 『帰郷』 という詩です。
詩自体は、もっと長いのですが、冒頭の6行が好きで、暗記していました。
上野駅から高崎線に乗り、熊谷あたりを過ぎると、心が躍り始めます。
ビルから民家へ、田畑が広がり、やがて遠方に赤城山が見えてくるのです。
この詩には、こんな副題が付いています。
<昭和四年の冬、妻と離別し二児を抱いて故郷に帰る>
上州の山は、朔太郎を温かく迎えてくれたのだろうか?
群馬県民にとって、萩原朔太郎は郷土の偉人です。
さらに僕ら前橋市民にとっては、自慢のヒーローなのです。
中心市街地にある生家跡地の前に立つと、北原白秋や室生犀星、若山牧水といった文人たちが訪れ、この周辺を闊歩していた様子が目に浮かび、ワクワク感が止みません。
やっぱり朔太郎は、誇れる郷土の詩人なのです。
今年は、萩原朔太郎没後80年。
全国の文学館で 「萩原朔太郎大全2022」 と銘打った記念企画展が開催されています。
これに賛同し、群馬県立土屋文明記念文学館でも関連企画展 『私の同郷の善き詩人』 が、現在開催中です。
萩原朔太郎と同時代を生きた群馬の五詩人。
山村暮鳥、大手拓次、高橋元吉、萩原恭次郎、伊藤信吉。
企画展では、朔太郎と彼らとの間で築かれた詩をめぐる深い交流の様子がわかる書簡や寄稿が、展示されています。
圧巻は壁一面に貼られた、時系列に比較された6人の年譜。
何年に生まれ、何年に亡くなったのか。
いつ、誰と誰が、出会ったのか。
そのとき、世の中では、どんな出来事が起きていたのか。
この年譜を見ているだけでも、たっぷり30分は要しました。
芸術の秋もいいけど、文学の秋も、いいもんです。
郷土の詩人たちに、ぜひ、会いに行ってください。
第117回企画展
『私の同郷の善き詩人』
●会期/会期中~2022年12月18日(日)
●時間/9時30分~17時 (12月4日は15時まで)
●休館/火曜日
●料金/一般500円、大高生250円
●問合/群馬県立土屋文明記念文学館 (高崎市保渡田町2000)
TEL.027-373-7721
2022年10月19日
アートの秋を彩る女性たち
今日は、2人の “女友だち” を紹介します。
ともに、アーティストです。
まず一人は、このブログでもお馴染みの 「須賀りす」 さん。
毎月、「神社かみしばい」 で、ご一緒している画家さんです。
(「神社かみしばい」 については当ブログのカテゴリーを参照)
彼女との付き合いは20年以上になりますが、実に多芸な女性です。
イラストレーターとしても書籍等の装丁画を描かれていますし、群馬県内のご当地キャラクターなども手がけています。
また、アマチュアのちんどん屋や劇団のメンバーとしても興行をしたり、本の朗読会なども開いています。
僕とは過去に、『誕生日の夜』(よろずかわら版) という絵本の挿画、そして紙芝居 『いせさき宮子の浦島太郎』 の作画でコンビを組みました。
そんな彼女の作品が、東京・六本木の 「国立新美術館」 に出展されているというので、先週、見に行って来ました。
大きな美術館の3階、「第56回 一期展」 という会場でした。
約280点も展示されている会場ですが、彼女の作品は、すぐに分かりました。
『水のまつり』 と題した50号(変形)にもおよぶアクリル画の大作です。
大海原に渦巻く潮騒の上を、真っ白なウサギたちが跳びかうダイナミックな作品。
その画風は唯一無二で、遠くからでも、すぐに彼女の絵だと分かりました。
ただただ、感動!
どうして、あんな華奢な小さな体で、こんなにも大きな絵が描けるのだろうか?
この画力は、いったい、どこから湧き上がってくるのだろうか?
つくづく、「画家って凄い!」 と感服しました。
もう一人は、これまた20年来の友人である 「飯塚裕子」 さん。
僕は長年、親しみを込めて 「ゆうちゃん」 と呼んでいます。
彼女の本業はイラストレーターですが、近年はクレイアート作家としても人気を集めています。
「クレイアート」 とは、粘土細工のことです。
僕は、ゆうちゃんが作るクレイアートが好きで、過去には、著書の表紙画の作成をお願いしました。
『ぐんまの里山 てくてく歩き』(上毛新聞社)
この時は、半立体の粘土細工で、リュックを背負った僕をユーモアたっぷりに仕上げてくれました。
そんな、ゆうちゃんのグループ展が開催中だというので、昨日、行って来ました。
「ぐんま ものづくりの集い 2022」
●会期/~10月20日(木) 10:00~17:00 ※最終日は15:00まで
●会場/前橋市芸術文化れんが蔵 (前橋市三河町1-16-27)
陶芸や竹細工、漆芸、草木染め、創作こけしなど、13人の作家の作品が展示・販売されていました。
ゆうちゃんのブースは、入口を入った受付の隣。
七福神やキャラクターなどの、ゆうちゃんらしい可愛い粘土細工が並んでいました。
ところが、今回は、ちょっと雰囲気が違います。
北斎の絵や仏像、曼荼羅のような重厚な作品も出展されていました。
聞けば、県内の寺院よりクレイアートによる作画の依頼があったのだといいます。
「ゆうちゃん、やったね! これは後世に残る仕事だよ」
「ありがとうございます。私も、そう思います。あきらめずに続けていて良かった!」
気が付くと2人は、握手をして喜び合っていました。
本当に、うれしい!
互いに苦労を知っているだけに、“残る仕事” の意味が痛いほど分かり合えるのです。
良かったね、ゆうちゃん!
秋深し 隣は何を する人ぞ
いかがですか?
芸術の秋に触れ、何かモノづくりを始めてみませんか?
僕も大いに刺激を受けました。
まずは、画用紙と絵の具を買ってこようと思います。
(三日坊主に終わらないと、いいのですが……)
2022年10月08日
「未確認生物」 を語る
彼と初めて会ったのは、昨年の春でした。
行きつけの呑み屋のママから、一本のメールが届きました。
<ジュンちゃんに会いたいというお客さんがいるんだけど>
後日、ママから聞いた話は、こうでした。
その日、ぷらりと初めて見る客が一人で入って来て、カウンターの中央に座りました。
この店はカウンター席しかなく、しかもメニュー表も一切ない、イチゲンには入りづらい店なので、ママも最初は警戒しながら応対をしていといいます。
やがて客は、カウンター奥の壁に飾られていた本に気づきました。
この店には、常連である僕の著書が数冊、置かれています。
「その本、見せていただいてもいいですか?」
客が指さしたのは、温泉関係の本ではありませんでした。
『ぐんま謎学の旅 民話と伝説の舞台』 (ちいきしんぶん)
手渡すと、真剣に読み出す客。
しばらくして顔を上げると、おもむろにママに向かって言いました。
「この小暮さんという方と連絡は取れますか? お会いしたいのですが」
これが僕と彼の出会いでした。
彼は、その年の春、前橋市に赴任して来たばかりの新聞記者でした。
赴任初日、前橋の街を探索中、のん兵衛の嗅覚で、一軒の店ののれんをくぐりました。
それが、酒処 「H」 でした。
のん兵衛の嗅覚に加え、記者の好奇心と探求心が僕の本を見つけ出し、さらに行動力が加わり、その翌日には、僕を同じ店に呼び出してしまったということです。
記者の名前は、小泉信一。
朝日新聞の編集委員であります。
担当は大衆文化や芸能。
なかでもカッパやツチノコなどの “未確認生物” や、口裂け女などの “都市伝説” を大真面目に取材しているユニークな記者でもあります。
ゆえに初対面にして、意気投合。
それからは、ことあるごとに酒を交わし、紙芝居や落語などの僕の活動を記事に書いてくれるようになりました。
そんな小泉記者が、このたび、「未確認生物の精神史」 と題して、講義をいたします。
経験豊富な新聞記者だからこそ知り得る、噂の真実や取材の裏話など、面白い解説が聴けると思います。
興味のある方は、ぜひ、ご応募ください。
第2回 総局記者サロン
「未確認生物の精神史」
●日時 2022年10月29日(土) 14時~
●会場 朝日新聞前橋総局4階 会議室
●参加 無料 (定員15人)
●応募 住所、氏名、電話番号を明記の上、メール (maebashi@asahi.com)
または、ハガキ (〒371-0026 前橋市大手町2の4の9 朝日新聞前橋総
局 「記者サロン」 係)
●締切 10月14日(金) 必着。抽選の上、当選者には電話、またはメールで連
絡。
【小泉信一(こいずみ・しんいち) プロフィール】
朝日新聞編集委員 (大衆文化・芸能担当)
1961年生まれ、88年朝日新聞入社。
東京本社社会部などを経て現職。
「下町記者」 として街の隅々を歩いてルポした 『東京下町』 のほか、『寅さんの伝言』 『裏昭和史探険』 など、著書多数。
2021年4月から前橋総局員兼務。
2022年09月25日
絵本 『くじらのなみだ』 トークショー開催
≪絵本 「くじらのなみだ」 出版≫
≪命の大切さ感じて≫
一昨日、地元の新聞にカラー写真を添えた記事が、大きく掲載されました。
<前橋市の絵本作家、野村たかあきさん(72)と県立女子大非常勤講師の小野浩さん(68)=福島県いわき市=が、捕鯨をテーマにした絵本 「くじらのなみだ」 を出版した。>
絵本は、生活のために子クジラを捕まえた主人公の少年が、浜にやって来た母クジラから子どもを守ろうとする思いを聞いて、命をいただくことに感謝する物語。
舞台は江戸時代。
実際に、いわき市で行われていた捕鯨を基に、親が子を思う愛情の深さや、海や命の大切さを描いています。
絵本の表紙帯には、こんなコピーが書かれています。
「生きるために殺すのか?」
「おれたち人間は生きるために鯨をとるんだ」
そして、裏表紙には、こんな言葉が……
「その海はだれのもの」
●でくのぼうの創作絵本 『くじらのなみだ』
A4変形判28ページ 1,650円 (税込)
現在、同書の原画展が前橋市敷島町の 「フリッツ・アートセンター」 で開催中です。
昨日、作者2人による第1回目のトークショー (座談会) があり、聴講してきました。
2人の出会いから絵本の制作秘話まで、たっぷり1時間以上にわたる聞きごたえのある内容でした。
第2回目のトークショーが、10月8日(土) 13時30分~予定されています。
入場無料。
問い合わせは、フリッツ・アートセンターまで。
『くじらのなみだ』
野村たかあき 絵本原画展
●会期 会期中~10月16日(日)
●会場 フリッツ・アートセンター (前橋市敷島町)
●入館 無料
●休館 火曜日
●時間 11:00~18:00
●問合 TEL.027-235-8989 (同センター)
2022年09月10日
絵本 『くじらのなみだ』 原画展
前橋市在住の絵本作家・野村たかあき先生。
といえば、このブログにも、たびたび登場していただいている僕の “心の師匠” であります。
最近では、毎月1回、伊勢崎神社 (伊勢崎市) で開催している 「神社かみしばい」 に賛同してくださり、オリジナル紙芝居の 『焼きまんじゅうろう 旅すがた』 を描き下ろしてくださいました。
この紙芝居はシリーズ化され、第1巻の 「おきりとおこみの巻」 に続いて、第2巻 「宿場につめてぇ風が吹く」 が現在、口演中です。
また第2巻は 「焼きまんじゅうろう旅姿~玉村宿の決闘」 とタイトルを変え、前橋市在住のアマチュア落語家・都家前橋(みやこや・ぜんきょう) さんにより、創作落語にもなりました。
そんな多忙な最中、野村先生が新作の絵本を出版されました。
『くじらのなみだ』 (でくの房刊)
作・小野 浩 絵・野村たかあき
福島県いわき市で行われていた鯨漁を通して、人と生き物のつながり、親子の絆を描いた作品です。
作者の小野さんは、いわき市在住。
古式捕鯨の研究者であり、現在は群馬県立女子大学の非常勤講師もされています。
野村先生の作品は版画が多いのですが、今回の絵本は、すべて黒色鉛筆と墨で描かれています。
ぜひ、この機会に、迫力ある原画の数々をご覧ください。
『くじらのなみだ』
野村たかあき 絵本原画展
●会期 会期中~10月16日(日)
●会場 フリッツ・アートセンター (前橋市敷島町)
●入館 無料
●休館 火曜日
●時間 11:00~18:00
●問合 TEL.027-235-8989 (同センター)
2022年06月05日
狭き笑いの強運者たち
笑った、笑った、笑った!
そして、プロの卓逸された話芸に魅せられました。
昨日は、群馬県立土屋文明記念文学館で開催された落語会に行って来ました。
出演は、あの春風亭一之輔師匠であります。
前々からファンで、一度、拝聴してみたいと思っていた憧れの落語家さんの一人です。
こんなチャンスはない!
絶対に行きたい!
聴きた~い!
と懇願していると、願いとは叶うものなのですね。
ただし、現在開催中の企画展 『落語と文学』 のスペシャルイベントのため、定員は限定100名!
そこへ1,200名以上の申し込みがあったといいます。
さすが東西きっての人気を誇る一之輔師匠です。
倍率12倍という狭き門をくぐりぬけた幸運な観客たち。
に、まぎれて、僕も何食わぬ顔で、ちょこんと会場の席に座っていたのであります。
開演5分前、主催者が現れ、開口一番、こう言いました。
「おめでとうございます!」
ドッと笑いが起こりました。
まずは、“狭き笑い” を手に入れた観客へ祝いの言葉を述べるなんて、ちょっと粋です。
よっ、、待ってました!
いよいよ、一之輔師匠の登場です。
枕の第一声は?
「こんなところで運を使い果たしちまって、いいんですか?」
またもや笑いが巻き起こりました。
演目は2つ。
古典落語の 『加賀の千代』 と 『青菜』。
どちらも軽妙な語りと演技に、会場は抱腹絶倒の嵐。
次から次へと笑いが止まりません。
円熟味が増してきたというんですかね。
『加賀の千代』 も 『青菜』 も二つ目の頃とは、まるで別物でした。
創作の部分も増えていて、笑いのツボが盛りだくさんでした。
いや~、大満足の1時間でした。
で、12倍のチケットが当たったのかって?
ええ、あの、その……
僕に、そんな強運はありませんって!
僕が持っているのは、今日まで調子に乗って生きて来た処世術だけです。
ズバリ、コネです。
今回の企画展に、落語絵本を出展しているのが前橋市在住の絵本作家・野村たかあき先生であります。
野村先生は、「神社かみしばい」 を口演している僕らに、『焼きまんじゅうろう 旅すがた』 という創作紙芝居を描き下ろしてくださいました。
さらに企画展では、この紙芝居を原作とした創作落語 『焼きまんじゅうろう旅姿~玉村宿の決闘』 を、これまた前橋市在住のアマチュア落語家・都家前橋(みやこやぜんきょう)さんが、披露してくださいました。
前橋さんは、僕の呑み仲間なのであります。
ということで、文学館とは太~いパイプができていたため、“関係者” という枠での入場となりました。
持つべきものは、心の師匠と呑み仲間であります。
お二方、ありがとうございました。
企画展は現在、開催中です。
ぜひ、お出かけください。
第115回企画展 『落語と文学』
●会期/開催中~6月12日(日)
●時間/9時30分~17時
●休館/火曜日 (5月9日休館)
●料金/一般410円、大高生200円
●問合/群馬県立土屋文明記念文学館 (高崎市保渡田町2000)
TEL.027-373-7721
2022年05月20日
YouTubeに 「焼きまんじゅうろう」 参上!
♪ ハァ~ 背なで転がす 空っ風
焼きまんじゅうろう 旅すがた
あまから みそだれ 一刀流
ハァ~ 今宵 三日月 出てござる
悪を憎んで 手加減無用
あまから剣法 みそだれ返し ♪
(作詞/野村たかあき 作曲/小暮淳 『焼きまんじゅうろう 旅すがた』 より)
平成20(2008)年、夏。
「焼きまんじゅうろう」 は、前橋市内の盆踊り会場に初登場しました。
生みの親は、前橋市在住の絵本作家・野村たかあき先生。
その年の春に、キャラクター画とともに上記の作詞を手渡されました。
「これに曲を付けて、ジュンちゃんのバンドで歌ってよ」
そして誕生したのが 「焼きまんじゅうろう」 のテーマソング、『焼きまんじゅうろう 旅すがた』 であります。
歌と演奏は、「じゅん&クァ・パラダイス」。
その年の夏から毎年のように県内の祭やイベントに呼ばれ、群馬のソールフード 「焼きまんじゅう」 の応援歌として歌い続けてきました。
またCDも制作され、ラジオやテレビなど各メディアで放送されました。
そして、昨年。
「焼きまんじゅうろう」 は、野村先生の直筆による書き下ろし紙芝居となり、伊勢崎神社の境内にて街頭紙芝居として口演さています。
すると、さらに “まんじゅうろう愛” に火が付きました。
ついに、「焼きまんじゅうろう」 は落語になりました!
今月3日。
群馬県立土屋文明記念文学館で開催中の企画展 『落語と文学』 のスペシャルイベントとして、前橋市在住のアマチュア落語家、都家前橋(みやこや・ぜんきょう)氏による創作落語 「焼きまんじゅうろう旅姿~玉村宿の決闘」 が初披露されました。
すると、100席の定員に対して260人の応募という大人気に!
文学館側の配慮により急きょ、同15日に追加公演が開催されました。
この度は、たくさんの人に 「焼きまんじゅうろう」 の落語を聴いていただきありがとうございました。
関係者の一人として、厚く御礼申し上げます。
そして、惜しくも2回の抽選にはずれてしまい、いまだに落語を聴いていない方へ。
朗報です!
YouTubeでの配信が始まりました。
しかも、初披露版と追加公演版の2作がアップされました。
この機会に、ぜひ、ご覧ください。
【検索】 都家前橋 玉村宿の決闘
2022年05月04日
目に染みたか! 身に染みたか! 心に染みたか!
驚きの2.6倍!
何のことかって?
昨日、群馬県立土屋文明記念文学館で開催された創作落語披露会の抽選倍率です。
すでに、このブログでも締め切り日を待たずに応募が定員を超えたことを報告しましたが、その倍率が2.6倍だったということです。
※(当ブログの2022年4月17日 「おかげさまで定員を超えました!」 参照)
定員100名の募集に対して、260名の応募がありました。
よって、160名の方が抽選にもれてしまいました。
これに対して、演者の都家前橋 (みやこや・ぜんきょう) 氏は、「一人でも多くの人に新作落語を聴いてほしい」 と会場側に直談判し、追加披露会が今月15日に行われることになりました。
でも、これまた定員は100名です。
誠に残念ながら、残り60名の方は会場に来れません。
申し訳ありませんが、後日のYouTube配信をお待ちください。
さてさて、では、なぜ、こんなにも注目されたのでしょうか?
現在、県立土屋文明記念文学館では、企画展 『落語と文学』 が開催中です。
会期中、4回の落語会が開催されます。
うち3回は、プロの落語家さんです。
が、一日だけ、アマチュアの落語家の出演が決まっていました。
それも創作落語で新作という条件付き。
その白羽の矢が当たったのが、前橋市在住の噺家、都家前橋氏だったのです。
前橋氏と僕は、すでに昨年 『末期の酒』 という創作落語を発表しています。
そこで今回は、同じく前橋市在住の絵本作家、野村たかあき先生の創作紙芝居 『焼きまんじゅうろう 旅すがた』 を落語にして披露することになりました。
すると!
話題騒然!
“焼きまんじゅうがヒーローに!”
“群馬のニューヒーロー誕生!”
と新聞各紙が書き立てたのであります。
そして迎えた当日、満席の会場には新聞・テレビの取材陣の姿もあり、大盛況に終わりました。
演題は 『焼きまんじゅうろう旅姿~玉村宿の決闘』。
ご存じ、渡世人の焼きまんじゅうろうが、悪党たちをバッタバッタと倒していきます。
必殺技は、「あまから剣法みそだれ返し」。
そして、決めゼリフは、そう、あの名言です。
「目に染みたか! 身に染みたか! 心に染みたか!」
紙芝居なら10分弱の話ですが、前橋氏は40分の大作に仕上げました。
お見事!
ぜひ、YouTubeでの公開を楽しみにお待ちください。
第115回企画展 『落語と文学』
●会期/2022年4月16日(土)~6月12日(日)
●時間/9時30分~17時
●休館/火曜日 (5月9日休館)
●料金/一般410円、大高生200円
●問合/群馬県立土屋文明記念文学館 (高崎市保渡田町2000)
TEL.027-373-7721
2022年04月17日
おかげさまで定員を超えました!
現在、群馬県立土屋文明記念文学館 (高崎市) で開催中の企画展 『落語と文学』。
その開催期間中に特別企画として 「落語会」 が開催されます。
出演は今や名実ともに大人気の春風亭一之輔、地元群馬出身の立川がじら、柳家小もん他。
その “他” の枠で登場するのが、我らが酒処 「H」 のスター! 都家前橋 (みやこや・ぜんきょう) であります。
彼は昨年、僕の提案により国定忠治が処刑前夜に呑んだとされる幻の酒 「牡丹」 をテーマにした創作落語 『末期の酒』 を披露して話題となりました。
(現在もYouTubeにて公開中)
そんな彼の新作落語が披露されることは、以前、このブログでも紹介しました。
(2022年3月22日 「創作落語 『焼きまんじゅうろう』 本邦初演!」 参照)
開催は5月3日(火・祝)、定員は100名。
申し込みの締め切りは、4月18日必着!
でしたが、なななんと! その締め切りを待たずして、すでに定員の100名を超えました! (凄い)
ということで、抽選となります。
ご応募された方、ありがとうございます。
当選者にはイベントの1週間前を目安に通知が送られます。
楽しみにお待ちください。
群馬のニューヒーロー 「焼きまんじゅうろう」 の誕生は、14年前になります。
前橋市在住の絵本作家、野村たかあき先生と僕の雑談の中で生まれました。
まず手始めに、先生が作詞、僕が作曲を担当して、テーマソングの 『焼きまんじゅうろう 旅すがた』 を制作。
すぐにレコーディングをして、CDを販売。
県内のイベント会場で歌ったり、ラジオ局にゲスト出演して、歌のPRを続けてきました。
翌年、 「焼きまんじゅうろう」 は、『日本全国ご当地キャラクター図鑑2』(新紀元社) にも群馬代表として、前橋市の 「ころとん」 とともに掲載されました。
その後、紙芝居になり、このたび、満を持して創作落語としてお披露目されることになりました。
タイトルは 「焼きまんじゅうろう旅姿~玉村宿の決闘」。
乞う、ご期待!
※今回の企画展 『落語と文学』 では、原作者の野村たかあき作 「らくごえほん」 シリーズの原画が展示中です。
(「しにがみさん」、「しばはま」、「ねこのさら」、「そこつ長屋」 ほか)
ぜひ期間中に、ご覧ください。
第115回企画展 『落語と文学』
●会期/2022年4月16日(土)~6月12日(日)
●時間/9時30分~17時
●休館/火曜日 (ただし5月3日は開館、5月9日休館)
●料金/一般410円、大高生200円
●問合/群馬県立土屋文明記念文学館 (高崎市保渡田町2000)
TEL.027-373-7721