温泉ライター、小暮淳の公式ブログです。雑誌や新聞では書けなかったこぼれ話や講演会、セミナーなどのイベント情報および日常をつれづれなるままに公表しています。
プロフィール
小暮 淳
小暮 淳
こぐれ じゅん



1958年、群馬県前橋市生まれ。

群馬県内のタウン誌、生活情報誌、フリーペーパー等の編集長を経て、現在はフリーライター。

温泉の魅力に取りつかれ、取材を続けながら群馬県内の温泉地をめぐる。特に一軒宿や小さな温泉地を中心に訪ね、新聞や雑誌にエッセーやコラムを執筆中。群馬の温泉のPRを兼ねて、セミナーや講演活動も行っている。

群馬県温泉アドバイザー「フォローアップ研修会」講師(平成19年度)。

長野県温泉協会「研修会」講師(平成20年度)

NHK文化センター前橋教室「野外温泉講座」講師(平成21年度~現在)
NHK-FM前橋放送局「群馬は温泉パラダイス」パーソナリティー(平成23年度)

前橋カルチャーセンター「小暮淳と行く 湯けむり散歩」講師(平成22、24年度)

群馬テレビ「ニュースジャスト6」コメンテーター(平成24年度~27年)
群馬テレビ「ぐんまトリビア図鑑」スーパーバイザー(平成27年度~現在)

NPO法人「湯治乃邑(くに)」代表理事
群馬のブログポータルサイト「グンブロ」顧問
みなかみ温泉大使
中之条町観光大使
老神温泉大使
伊香保温泉大使
四万温泉大使
ぐんまの地酒大使
群馬県立歴史博物館「友の会」運営委員



著書に『ぐんまの源泉一軒宿』 『群馬の小さな温泉』 『あなたにも教えたい 四万温泉』 『みなかみ18湯〔上〕』 『みなかみ18湯〔下〕』 『新ぐんまの源泉一軒宿』 『尾瀬の里湯~老神片品11温泉』 『西上州の薬湯』『金銀名湯 伊香保温泉』 『ぐんまの里山 てくてく歩き』 『上毛カルテ』(以上、上毛新聞社)、『ぐんま謎学の旅~民話と伝説の舞台』(ちいきしんぶん)、『ヨー!サイゴン』(でくの房)、絵本『誕生日の夜』(よろずかわら版)などがある。

2020年08月10日

未来予想・夏


 「暑中お見舞い申し上げます」
 もとい!
 暦の上では、立秋を過ぎたので、
 「残暑お見舞い申し上げます」
 であります。

 今年は梅雨が長かったせいか、夏は始まったばかりの感があります。
 しかも、突然の猛暑!
 おまけに未曾有のコロナ禍で迎えた夏であります。

 今年の夏は、いつもの夏ではありません。


 先日、東京都の小池都知事は、都民に異例の要請を発表しました。
 この夏は、「特別な夏です」 と!

 ① 旅行や帰省を控えましょう。
 ② 夜間の会食は控えましょう。
 ③ 遠くへの外出は控えましょう。

 “今夏限定” との但し書き付きのようですが、はたして本当でしょうか?
 さっそく、「今年だけなら」 と盆休み中の自粛を始め、90%以上の都民は帰省を取りやめたようです。
 でも、これは、あくまでも今年が、“特別な夏” だからですよね。
 もし、このまま感染拡大が続けば、来年以降も同じ状態が続くわけです。

 そうなったら来夏以降は、“特別な夏” ではなく、“いつもの夏” になりかねません。


 ふと、僕の頭の中を、怖い妄想が横切りました。

 何十年か後の夏、テレビに平成時代の帰省ラッシュの映像が流れます。
 それを見ていた親子。
 子供が父親に言います。
 「うわ~、すごい人だね。みんな、どこへ行くの?」
 「ふるさとへ帰るんだよ」
 「どうして?」
 「お盆だからね」
 「でも、今は、そんなこと、しないじゃん。おじいちゃんとおばあちゃんとは、いつでもリモートで会えるもの」

 そこまでは、ありそうな会話だと思いながら妄想していました。
 でも、次の会話を妄想したとき、思わず全身に鳥肌が立ってしまいました。

 「ねえ、パパ、なんで、みんなマスクをしていないの?」


 どうか一日も早い、ワクチンの開発を望みます。
    


Posted by 小暮 淳 at 10:16Comments(0)つれづれ

2020年08月09日

温泉考座 (17) 「プチ湯治のすすめ」


 その昔、「温泉へ行く」 と言えば、、それは湯治に行くことでした。
 1週間以上も温泉地に逗留 (とうりゅう) して、ゆっくりと時間をかけて心と体のリフレッシュをしていました。

 私は湯治文化の復活を願っている者の一人ですが、何かと忙しい現代人には、物理的に難しいようです。
 ほとんどの人が、1泊2日という温泉旅行をしているのが現状です。

 しかし1泊2日では、初日も2日目も移動日となるため、どうしても日頃の疲れを取り除くことができません。
 そのため、「温泉旅行へ行って来ると、かえって疲れてしまう」 という人が少なくありません。
 これでは本末転倒です。
 何のために温泉へ行ったのか分かりません。
 せめて、もう1泊あれば、真ん中の日が移動のない保養日となり、従来の湯治に似た体験ができるはずです。

 そこで私は、温泉旅館の経営者たちに、現代人でもできる 「プチ湯治プラン」 を提案しています。
 これはサラリーマンやOLを対象に、週末の3日間を温泉旅館で過ごしてもらうプランです。
 まず金曜日の退社後に温泉旅館へ向かいます。
 残業などの事情も考慮して、初日は夕食を付けません。
 遅いチェックインでも可能にします。

 翌日の土曜日が “湯治日” となります。
 朝食と昼食と夕食が付き、温泉に入りながら、のんびりと一日を過ごしてもらいます。
 当然、湯治体験をするわけですから、食事は豪華である必要はありません。
 かえって健康を考えた質素な料理のほうが、喜ばれるでしょう。

 そして3日目の日曜日も朝、昼、夜と3回の食事を付けます。
 この3日目に夕食を付けるところが、ミソです。
 ゆっくり温泉に入り、夕食をとってから帰路に着く。
 家に帰ったら、寝るだけでいいのです。
 もちろん2日目と最終日の昼食はオプションにして、温泉街を散策したり、周辺の観光をしながら外食をしてもらうことも可能です。

 これならば忙しい現代人でも、手軽に湯治気分が味わえるのではないでしょうか。


 <2013年7月31日>
  


Posted by 小暮 淳 at 11:33Comments(0)温泉考座

2020年08月08日

そして明日からも ~20才の頃のように~


 ♪ わたしは今日まで生きてきました
    時には誰かの力を借りて
    時には誰かにしがみついて
    わたしは今日まで生きてきました
    そして今 わたしは思っています
    明日からもこうして生きて行くだろうと
     <吉田拓郎 「今日までそして明日から」 より>    


 今日、62回目の誕生日を無事に迎えることができました。
 あっという間の62年間のようにも思えますが、振り返れば、そこには長い長い轍 (わだち) が見えます。
 所々、途切れていたり、絡み合ったり、太くなったり細くなったり、それでも、なんとか今日まで、たどり着くことができました。


 先日、定期健診を受けました。
 健診後、主治医が言いました。

 「お孫さんが、いらっしゃるんでしたっけ?」
 「ええ、2人」
 「じゃあ、私と同じだ」
 確か、主治医は僕より、2~3歳年上だったはずです。

 少し間が空いて、
 「もう少し、生きましょう」
 「えっ、……ええ」
 「65歳までは生きましょうね。私は、もうすぐですが」
 「65歳?」
 「はい、そこまでは自己責任です」
 「では、そこから先は?」
 「もらった人生ですよ」
 「もらった人生?」
 「感謝しながら生きましょう」

 そして主治医は、最後に、こんなことを言いました。
 「今までの人生、悔いはないんでしょう?」
 「……、さあ、どうかなぁ~」
 「好き勝手に生きて来たんでしょう?」
 「ええ、まあ、やりたいことは、やって来たとは思いますけど……」
 そう言うと、
 「幸せな人だ。だったら、いいじゃないですか!」
 と、大げさに笑ったのでした。


 なんだか、急に肩の力抜けたようで、気が楽になりました。
 とりあえず、65歳までは生きてみたいと思います。


 ♪ 若いからとか 大人だからとか
    理由になるけど 今さら面倒で
    今の自分をやさしく見つめたい
    20才の頃も きっとそうだった

    あいつは変わった 時代も変わったと
    話している奴 臆病なんだよ
    自分の心を確かにしておこう
    20才の頃も きっとそうだった
     <吉田拓郎 「誕生日」 より>
   


Posted by 小暮 淳 at 11:17Comments(4)つれづれ

2020年08月07日

不機嫌な大人たち


 やっぱり、そうなりましたか!
 イヤ~な予感が、していたんですよ。

 7月1日からスタートしたレジ袋の有料化です。


 以前、「キレる中高年」 (2018年2月14日) というタイトルのブログを書き、反響をいただきました。
 いわゆる 「カスハラ」(カスタマーハラスメント) といわれる悪質クレームの話です。
 カスタマーとは、消費者・利用者・顧客のこと。
 
 「オレは客だぞ!」
 という、お金を支払う側と受け取る側という主従関係を悪用した “仮想支配” によるハラスメントが、世の中に横行していて、その加害者のほとんどが中高年の男性ということでした。
 (なんで中高年の男性はキレやすいか?については、前述のブログを参照ください)


 で、レジ袋の有料化であります。
 案の定、不機嫌な大人たちの格好のクレーム対象にされてしまいました。
 そして、その矛先は、コンビニです。

 コンビニには、スーパーのようなサッカー台 (袋詰めコーナー) がありません。
 しかも実施以前は、店員が袋詰めをしてくれていました。
 ということは、あの狭いカウンターで、客が持参したエコバックに客自身が袋詰めすることになります。

 もう、それだけでトラブルの多発は予測されます。
 人呼んで、「レジハラ」 (レジハラスメント) の発生です。

 因縁 (クレーム) のつけどころは、大きく分けて3つ。
 ① 有料化に怒る!
 「昨日まではタダだったのに」 と、サービスの低下に我慢がならいようです。
 ② レジの遅さに怒る!
 客自身が袋詰めをするため、前の客のモタモタが許せないようです。
 ➂ 聞き直す店員に怒る!
 「袋はどういたしますか?」 の店員の問いに、小声だったり、あいまいな返事をしたため、聞き直されて、キレるようです。


 では、どんな人が、レジハラを起こしやすいのでしょうか?

 コンビニでは、年齢・性別の統計を取りました。
 すると、やっぱり!
 1番多かったのは50代、ついで40代、60代と、完全に中高年が占めています。
 そして、性別は男性。

 またしても “不機嫌な大人たち” は、「オジサン」 だったのです。


 僕も、そのオジサンの代表です。
 だから今の世の中、オジサンに厳しく、生きにくいことも分かります。
 でも、マナーやルールは守りましょうよ!

 戦前と戦後でモノの価値が変わったように、きっと、コロナ前とコロナ後でも変わります。
 もう、“お客様は神様” ではないのです。

 さあ、女性や若者に嫌われる前に、変わりましょう!
  


Posted by 小暮 淳 at 10:06Comments(0)つれづれ

2020年08月06日

温泉考座 (16) 「4つある三美人湯」


 「美人の湯」 と称する温泉を見かけます。
 何をもって、そう定義しているのかは、はなはだ疑問ですが、湯上りに肌がツルツル、スベスベになる温泉のことを言っているようです。

 泉質で言えば、水素イオン濃度が高く、トロンとした浴感が特徴のアルカリ性単純温泉、古い角質をやわらかくして肌の汚れを落とす作用のある炭酸水素塩泉、血液に酸素を送り込む作用があり高い保湿効果を持つ硫酸塩泉、皮膚に薄い膜を作り紫外線から肌を守る硫黄泉などが、多いように思われます。

 「日本三美人湯」 と呼ばれている温泉があるのを知っていますか?
 和歌山県の龍神温泉、島根県の湯の川温泉、そして群馬県の川中温泉 (東吾妻町) です。
 唯一、川中温泉の 「かど半旅館」 だけが一軒宿です。

 誰が、いつ、そう名付けたのかは不明ですが、大正時代に発行された 『温泉案内』 (鉄道省編) の効能一覧に “肌を白くする湯” として、この3つの温泉地が登場しています。
 日本人にとって美人とは、昔から美白の肌のことを呼んでいたことが分かります。

 ちなみに3つの温泉に共通する美肌作用の条件は、弱アルカリ性でナトリウム・カルシウムイオンを含んでいること。
 アルカリ環境の中で皮脂 (肌の表面にある脂) は、ナトリウムイオンと結びつくと石けんのような洗浄効果をもたらし、カルシウムイオンに置き換わるとベビーパウダーのような作用があるといいます。
 とりわけ川中温泉はカルシウムイオンの量が多く、湯上りのスベスベ感は、群を抜くといわれています。

 実は 『温泉案内』 には美肌の湯として、もう一つ、温泉地名が挙げられています。
 それは、群馬県の松の湯温泉 「松渓館」 (東吾妻町)。
 吾妻川支流の雁ケ沢 (がんがざわ) 沿いにある一軒宿です。
 上流にある川中温泉と泉質は同じ、カルシウム-硫酸塩温泉。
 30度台のぬる湯で、昔から皮膚病に特効があるといわれている湯治宿です。

 「日本三美人湯」 は、4つあること。
 そのうち2つが群馬県にあることを、ぜひ覚えておいてください。


 <2013年7月24日付>
  


Posted by 小暮 淳 at 10:03Comments(0)温泉考座

2020年08月05日

仙人、現る。


 昨日の午後のこと。
 エアコンをギンギンにきかせた2階の仕事部屋で、アイスコーヒーを飲みながら読書をしているときでした。
 突然、階下から子供の声がしました。
 続いて、かん高い女たちの笑い声……

 家内は仕事でいないはずです。
 ということは、察するに声の主は、嫁いでいる長女と同居している次女、それと長女が連れて来た小学生の孫のようです。

 久しく、我が家にはなかった賑やかさに、読書の手を止めて、階下へ降りて行きました。


 長女 「ギェッ! おとう、どうしの?」
 僕 「なにが?」
 長女 「仙人が現れたのかと思った」
 僕 「ああ、これか? コロナのせいだよ」
 長女 「訳わかんない。説明になってないし」

 以前にも書いたと思いますが、このコロナ禍で、僕は仕事が、まったくなくなってしまいました。
 よって、人に会わない → 毎日、ヒゲを剃るのが面倒 → 生え放題となっています。

 僕 「自分の親をつかまえて、“仙人” はないだろう?」
 長女 「おまけに着ているTシャツ、ジョン・レノンだし! あぶない人だよ」
 僕 「でも、S (次女) は毎日会っているけど、何もいわないぞ」
 次女 「言わないんじゃなくて、言えなかったの! ショックが大き過ぎて」


 そこへ、孫が登場。
 孫 「ジイジ、遊ぼう」
 僕が振り返ると、
 孫 「うわーーーっ! ヤバイ!」
 僕 「ヤバイか?」
 孫 「白髪もヤバイけど、ヒゲは、もっとヤバイ」

 2人の会話を聞いていた長女が、僕にとどめのセリフを浴びせかけました。
 「白髪を受け入れるんだって、だいぶ時間がかかったんだからね。最近、慣れてきたと思ってたら今度は、ヒゲですか? まっ、一緒に暮らしているわけじゃないから、いいけど。おかあは、何も言わないの?」

 はい、そもそも家内は僕に興味がありませんから何も言いません。
 それよりも僕は、ただ、ありのままでいたいと思っているだけなんです。
 でも、我が子孫たちには理解してもらえないようです。


 そこへ遅れて、長女の旦那が登場。
 婿 「あっ……」
 僕 「お義父さんさ、これから、どんどん壊れるから。ヨロシク!」
 すると婿は、そっと親指を立てて、ひと言、
 「いいっすね」
 と、ほほ笑んでくれました。

 どうも味方は、婿だけのようです。
 やっぱ、血のつながっていない他人って、いいな~!
   


Posted by 小暮 淳 at 11:29Comments(0)つれづれ

2020年08月04日

笹を刈る


 昭和15 (1940) 年4月、作家の井伏鱒二は、太宰治ら数名と四万温泉 (中之条町) に来遊しています。
 この時のエピソードが、僕は大好きです。

 <太宰君は人に恥をかかせないように気をくばる人であった。いつか伊馬君の案内で太宰君と一緒に四万温泉に行き、宿の裏で私は熊笹の竹の子がたくさん生えているのをみて、それを採り集めた。そのころ私は根曲竹と熊笹の竹の子の区別を知らなかったので、太宰君に 「この竹の子は、津軽で食べている竹の子だね」 と云って採集を手伝ってもらった。太宰君は大儀そうに手伝ったくれた。>
 (井伏鱒二 『太宰治のこと』 より)

 この時、泊まった宿は 「四萬舘」 で、僕もたびたび取材等でお世話になっているが、確かに宿の周辺には、今も熊笹の群生が見られます。
 太宰は熊笹を見て、すぐに食用ではないと気づいたはずです。
 それでも師匠に逆らわず、嫌な顔をせずに手伝ったのですね。

 そして、このエピソードには、後日談がありました。
 結局、井伏鱒二は、この竹の子を家まで持ち帰り、料理して食べてしまったといいます。

 師弟関係にある2人ならではの互いを気遣う、なんとも、ほほえましいエピソードであります。


 唐突に、なんで、こんな話をしたかというと、昨日、笹を刈ったのであります。

 我が家には、猫の額ほどの庭があります。
 いえいえ、庭など呼べる代物ではなく、玄関前の駐車場です。
 ですから、ほとんどはコンクリート舗装されているのですが、小さな花壇が2つあります。
 その花壇が、チューリップが枯れた以降、ほったらかしになっていて、梅雨の長雨にさらされて、草ぼうぼうの状態でした。
 
 梅雨が明けたこともあり、一念発起し、草むしりを実行しました。

 小さな小さな花壇ですから、ものの1時間で終わりました。
 それでも、汗びっしょり!
 熱中症にならぬよう、水分補給の休憩をしているときです。
 前々から気になっていたことに、改めて気づいてしまいました。

 「あの笹、どうにかならないの?」
 再三、家人に言われていた言葉が、よみがえります。

 駐車場と道路のわずかな間、コンクリートから土が露出している部分に、いつの間にか笹が生え出し、あれよあれよのうちに小さな竹林のように群生してしまったのです。
 「いつか、そのうち」 「いつか、そのうち」
 と言いながら、気が付いたら笹は、身の丈を越えていました。

 「よし!」
 思い立ったら吉日とばかりに、鎌を持ち出して、悪戦苦闘をすること2時間!
 軽いめまいを感じながらも、休憩と水分補給を繰り返し、ついに根絶しました。


 で、その笹刈り作業中、ずーーーっと考えていたのが、井伏鱒二と太宰治のエピソードでした。

 さらに文学ファンには、つとに有名な話があります。
 滞在中に撮られた一枚の写真です。
 その写真には、井伏鱒二と太宰治の入浴シーンが写されています。
 井伏は肩まで湯舟に沈んでいますが、太宰は立ち上がり、左手で股間を手ぬぐいで隠しながら、右手で頭をかいています。

 この写真が公開されると、太宰の逆鱗に触れました。
 太宰の下腹部に盲腸の傷痕が写っていたからです (陰毛も少し写っています)。
 太宰は、この傷痕をとても気にしていたため、写真を撮った伊馬春部にフィルムの処分を求めたといいます。

 ちなみに太宰は、この滞在の後、四万温泉を舞台にした 『風の便り』 という小説を執筆しています。
  


Posted by 小暮 淳 at 11:15Comments(0)温泉雑話

2020年08月03日

温泉考座 (15) 「花袋の愛した温泉」


 自然主義の小説家として知られる明治の文豪、田山花袋は、『蒲団』 や 『田舎教師』 など代表となる小説を発表し、作家としての地位を確立した後も、全国各地の温泉をめぐり、多くの紀行文を残しています。
 特に大正時代に発表した 『温泉めぐり』 は、花袋のベストセラーとして、現在でも温泉ファンたちに読み継がれています。

 花袋の生まれた故郷、群馬県館林市にある館林市田山花袋記念文学館で、2011年7~10月に特別展 「温泉ソムリエ・田山花袋~群馬の温泉編」 が開催されました。
 この開催に合わせて講演会が開かれ、私が 「花袋の愛した群馬の温泉」 というテーマで、花袋の紀行文で紹介された群馬の温泉について、話をさせていただきました。

 まず驚かされるのは、花袋の行動範囲の広さと、そのバイタリティー。
 県内だけでも16ヶ所の温泉地を訪ねています。
 今から約100年も前のこと。
 鉄道や道路の交通が不便な時代に、手甲 (てっこう) に脚絆 (きゃはん)、草鞋 (わらじ) といういでたちで、日に十里も歩く温泉めぐりの旅をしています。

 <私は信州の渋温泉から、上下八里の険しい草津峠を越して、白根の噴火口を見て、草津に一泊して、そしてそのあくる日は、伊香保まで十五、六里の山路を突破しようというのであった。> ( 『温泉めぐり』 より)

 草津温泉に1泊した花袋は、午前4時に起きて湯につかり、大きな握り飯を3つ作ってもらい、草津温泉を後にします。
 旧六合 (くに) 村へ下り、暮坂 (くれさか) 峠を越え、沢渡 (さわたり) 温泉に立ち寄り、中之条町からは吾妻川を渡しで越え、その日の午後4時には伊香保温泉に到着しています。
 花袋自身も同書の中で、<今ではとてもあんな芸当は打ちたくても打てなくなった。旅は若い時だとつくづく思わずにはいられまい> と語っているものの、現代人には到底まねできない健脚ぶりです。

 旅好きで温泉好きだった花袋は、温泉ライターの先駆者だったと言えます。
 そんな大先輩の名を借りた講演会で温泉の話ができたことは、私にとって温泉ライター冥利に尽きる経験でした。


 <2013年7月17日付>
  


Posted by 小暮 淳 at 10:13Comments(0)温泉考座

2020年08月02日

夏だ! 氷菓だ! ガリガリ君……梨!


 夏が来たーーーーッ!

 関東地方も、やっと梅雨が明けました。
 今年の梅雨は長かったですね。
 8月に入ってからの梅雨明けは、13年ぶりとのことです。

 待ちに待った夏です。
 コロナ禍で、どこへ出かけられなくても、夏は夏です。
 “夏” という言葉を聞いただけで、なんだか、ワクワクしてきます。

 あれ、でも、なんでワクワクするんだろう?

 毎年、夏が来ると 、あの、うだるような暑さに閉口してしまい、「早く秋が来ないかな」 と、まるで鬼の過ぎるのを待つみたいに、ジーーーッとしているのに。
 正直言って、今の日本の夏は “キライ” です。

 かなり矛盾していますが、それでも夏が近づくと、ワクワクしてしまいます。
 たぶん、“記憶の中の夏” が、僕をそうさせているのでしょうね。

 遠い遠い、夏休みの記憶です。
 (楽しかったものな~……)


 そんな折、知人から1通のメールが届きました。
 内容は、県のキャンペーンを利用して、温泉旅館に宿泊してきたという報告だったのですが、PS (追伸) の1行が僕のハートをとらえました。

 <ブログ毎日拝読しています。ガリガリ君梨味も食べました>

 き、き、来たーーーーーっ!!!!
 夏の風物詩 「ガリガリ君」、しかも梨味です。

 この人、すごい!
 この1行だけで、熱心なブログの読者だってわかります。
 だってだって、僕が、ガリガリ君の梨味にハマっているっていう記事は、2年前に一度書いただけなんですよ。
 それなのに、覚えていて、しかも、さっそく今年も食べたなんて!
 (当ブログの2018年9月11日 「ナシと共に去りぬ」 参照)


 ということで、僕もさっそくコンビニに駆け込んで、今年初の 「ガリガリ君 梨」 を食べました。
 この季節しか食べられない夏季限定のレア物です。

 やはり、うまい!
 この味です。
 まるで、冷やした生の梨を食しているかのようなジューシー感が、たまりません!

 なぜ、こんなに、うまいのか?
 他のガリガリ君と、どこが違うのか?
 調べてみると、決定的な違いがありました。

 <通常のガリガリ君のカキ氷と比較して、細かい氷の割合を多くすることで、本物の梨 (生果) を食べているようなシャリシャリした食感が楽しめる>
 とのことでした。
 ただし、そのぶん、通常のガリガリ君より溶けるスピードが早いので、袋を開けたら、一気に食べてくださいね。


 未体験の人は、ぜひ、今年の夏は “味体験” を!
   


Posted by 小暮 淳 at 12:33Comments(0)つれづれ

2020年08月01日

死を問うキリコ


 <今度はだれを殺した?>
 < 「安楽死」 といってくれ>
 (ブラック・ジャック 『死への一時間』 より)


 読者のみなさんは、覚えているでしょうか?
 以前、医学の道を志した友人の話を書いたことを。
 そのきっかけとなったのが、手塚治虫の漫画 「ブラック・ジャック」 でした。
 (2019年12月8日 「B・J & Y」 参照)

 ところが今、彼とは真逆の人生をたどった “医師” のニュースが、世間を騒がしています。
 難病の筋萎縮性側索硬化症 (ALS) の女性患者に頼まれて、薬物投与で殺害したとして逮捕された2人の医師です。
 命を救うはずの医師が、なぜ金銭で嘱託殺人を請け請け負ってしまったのか?

 容疑者の一人は過去に、こんな言葉を発信していました。
 「ドクター・キリコになりたい」

 ドクター・キリコとは、漫画 「ブラック・ジャック」 に登場するライバルで、患者の安楽死を金で請け負う医師です。


 <おい! いいかげんにおまえさんのかってな判断で 病人を殺すのはやめろ>
 <おまえも商売 こっちも これが商売だからね>
 (中略)
 <おれはな 苦しんで もがいて そして死にきれない患者を楽にしてやってるんだぜ むしろ感謝されているんだぜ>

 まさに、容疑者はドクター・キリコにあこがれ、手口を真似ています。


 対するブラック・ジャックは、キリコの安楽死を阻止しようと懸命に、医学の限りをつくします。
 しかしキリコは漫画の中では、ブラック・ジャックに問われ、こんなことも言っています。

 <殺すのと助けるのと気分はどっちがいい?>
 <ふざけるな おれも医者のはしくれだ いのちが助かるにこしたことはないさ>


 医者のはしくれにもおよばない、ただの殺人であります。
  


Posted by 小暮 淳 at 13:02Comments(2)つれづれ