2022年10月31日
北の町から届いた牧水の手紙
きっかけは、地元紙に載っていた記事でした。
≪町民団体が冊子作成≫
≪牧水歩いた みなかみ知って≫
歌人の若山牧水 (1885~1928) は、大正11(1922)年に群馬県みなかみ町を訪れています。
今年は、その訪問からちょうど100年後にあたります。
その記念もあり、牧水の短歌愛好家が集う 「みなかみ町牧水会」 が中心となって、牧水のたどった所を一冊にまとめたという記事でした。
冊子の題名は 『千日堂から牧水が眺めた・みなかみ みなかみ町名の由来』。
編集は、「みなかみ町まちづくり協議会 月夜野支部」 とあります。
だだし、“非売品” とのこと。
でも、欲しい!
旅と温泉と酒を愛した牧水のことを、もっと知りたい!
しかも、非売品となれば、何が何でも手に入れたい!
ということで、すぐに、みなかみ町観光協会に電話を入れました。
「みなかみ温泉大使の小暮です」
申し訳ないが、冊子を手に入れるために肩書を利用させていただきました。
「非売品とのことですが、なんとか手に入りませんかね?」
すると担当者は、こう言いました。
「編集の委員長が私の高校の恩師なんですよ。訊いてみます」
そして1か月後の先日、待望の冊子が届きました。
A5判、78ページの簡易冊子であります。
でも本文はカラーで、牧水の旅の様子が時系列に記されています。
みなかみ町は平成17(2005)に、月夜野町と水上町と新治村が合併して誕生しました。
ほとんどの人が、水上町をひらがな表記にしただけだと思い込んでいるようですが、違います。
若山牧水が大正11年の旅を記した 『みなかみ紀行』 に由来します。
本著は、そんな町の説明から始まります。
そして、沼津→東京→信州→嬬恋村→草津温泉→花敷温泉→沢渡温泉→中之条→渋川→沼田→法師温泉→笹の湯(現・猿ヶ京温泉)→湯宿温泉→沼田→老神温泉……
と、2週間にわたる旅の様子を古い町の写真を交えながら紹介しています。
出色は、なんといっても牧水が旅の最中に妻・喜志子さんに宛てた手紙の文面を 『みなかみ紀行』 の本文と交互に並べている構成にあります。
牧水はマメに手紙を出しており、日付と時刻まで記しています。
よくぞ、こんなにも手紙が残っていたと、感心します。
みなかみ町まちづくり協議会月夜野支部のみなさん、ありがとうございました。
心より感謝いたします。
今後ともよろしくお願いいたします。
僕も町の温泉大使として、牧水が愛した “みなかみ” の温泉を、全国に紹介していきます。
2022年10月30日
パチリ! 今日の朝日新聞
≪世相映す 「未確認生物」 解説≫
≪「見えない世界への共感力を」≫
今日(30日)の朝日新聞群馬版に、こんな見出しの記事が掲載されました。
記事には、写真が添付されています。
老若男女の集合写真です。
こんなキャプションが付いています。
<小泉信一編集委員 (後列右から3人目) を囲む総局記者サロンの参加者のみなさん>
この中に、僕も写っています。
昨日、朝日新聞社前橋総局で開催された、「総局記者サロン」 に参加してきました。
この催しは、現役の記者が講師となり読者と交流する集いで、今回は全国各地の 「未確認生物」 を取材してきた小泉編集委員が担当しました。
(小泉氏との出会いやプロフィール等は、当ブログの2022年10月8日 「『未確認生物』 を語る」 参照)
演題は 「未確認生物の精神史/彼らが生まれた時代背景」。
冒頭、プロジェクターで壁に映し出されたのは、昭和41(1966)に始まった特撮テレビ番組の 「ウルトラQ」。
続いて、さらに古い同29年に上映された映画 「ゴジラ」。
ほぼほぼ小泉氏は、僕と同年代なんですね。
“怪獣少年” だったわけです。
そんな時代背景を解説しつつ、彼は、新聞記者へのあこがれを語りました。
「『ウルトラQ』 に登場する新聞記者がカッコよかった。自分が興味を持ったネタを追って、ヘリコプターで現場に駆けつける」
怪獣少年は長じて、初志貫徹。
しかも、事件や事故を追う新聞記者ではなく、子どもの頃の好奇心そのままに 「未確認生物」 を追いかける大衆文化専門の記者になりました。
参加者に配られた資料の中に、小泉氏が手がけた 「未確認生物」 の記事の一覧がありました。
連載した記事のタイトルは、そのままズバリ! 「未確認生物をたどって」。
記事では、かつてテレビや新聞で話題になった未確認生物の数々を紹介しています。
たとえば、昭和52(1977)年4月、ニュージーランド沖で日本のトロール漁船の網に掛かった巨大生物らしい死骸。
長い首、太い胴、大きなヒレが、首長竜プレシオサウルスに似ていることから 「ニューネッシー」 と名付けられました。
その後も、ネッシーにあやかった未確認生物は続々出現。
釧路湖 (北海道) のクッシー、池田湖 (鹿児島県) のイッシーなどを追って、日本中を駆け回ります。
広島県のヒバゴン、岩手県のガタゴン、千葉県のマツドドン……
さらには、カッパや座敷わらしなどの伝説から口裂け女などの都市伝説まで。
彼の好奇心は止まりません。
「未確認生物の取材を通じて、時代や社会の背景に思いをめぐらし、自然への畏怖や恐れを含めて謙虚な気持ちを教えてもらった。『いるはずがない』 と切り捨てるのではなく、見えない世界への共感力を磨いてみてほしい」
(朝日新聞の記事より)
講話中、座敷わらしに触れた際には、県内の目撃情報のネタ元として、僕のことも紹介してくださいました。
小泉ちゃん、ありがとね!
彼の未確認生物への飽くなき追求は、まだまだ終わりを知りません。
近々、新刊も出版されるそうです。
行け行け! 小泉記者!
謎がキミを待っているぞ~‼
2022年10月29日
晴れ、ときどき朔太郎日和 ②
「ラッキー!」
思わず声に出していました。
たかが500円、されど500円。
小市民にとっては、大きな至福なのであります。
昨日、調べ事をしに県立図書館へ行ったついでに、前橋文学館まで足を延ばしました。
今年は詩人・萩原朔太郎の没後80年にあたり、朔太郎を介した企画展 「萩原朔太郎大全2022」 が全国52か所の文学館や美術館などで開催されています。
前橋文学館は、萩原朔太郎を常設展示する本家本元であります。
いわば、朔太郎ファンの聖地!
現在、前橋文学館では、3つの関連企画展を同時期開催しています。
①「萩原朔太郎研究会 歴代会長展」
②「ふだん着の詩集、よそゆきの詩集~萩原朔太郎著作展」
③「見よ、友情の翼、高く飛べるを アニメ 『啄木鳥探偵處』 展」
入館して、受付の前まで行くと、「本日は……」 と書かれたプレートが目に入りました。
一瞬、定休日? 臨時休業? と思いきや、「本日は入館無料」 と書かれているではありませんか!
えっ、どういうこと?
「無料なんですか?」
との問いに、受付嬢いわく、
「今日は、県民の日ですから」
おお~、そんなことは、すっかり忘れていました。
10月28日は群馬県民の日、なんですね。
そういえば昔、まだ子どもたちが幼かったころ、ディズニーランドへ行った記憶がよみがえって来ましたよ。
この日は、群馬県民だけ入場料が安かったんですよね。
だからディズニーランドの駐車場は、群馬ナンバーだらけでした。
タダで観れて、しかも企画展は3本立て!
真面目に暮らしていると、良いことがあるものです。
たっぷり1時間以上かけて、観覧してまいりました。
個人的に興味深かったのは、「ふだん着の詩集、よそゆきの詩集~萩原朔太郎書作展」。
朔太郎は自ら、自分の著書の装丁デザインを手がけていたのですね。
それらにまつわるエトセトラが、著書と言葉の展示にて知ることができました。
前橋文学館ならではの好企画だと思います。
天高く、感性が研ぎ澄まされる秋。
あなたは、何をしますか?
秋風に誘われて、文学館めぐりなんて、いかがですか?
前橋市制施行130周年記念
「萩原朔太郎研究会 歴代会長展」
●会期 開催中~2023年1月15日(日)
●時間 9時~17時
●会場 前橋文学館 2階展示室
●料金 一般500円 (高校生以下無料)
●休館 水曜日、11月24日(木)、年末年始
●問合 前橋文学館 TEL.027-235-8011
(前橋市千代田町3-12-10)
<同時期開催>
「ふだん着の詩集、よそゆきの詩集~萩原朔太郎著作展」
●会期 開催中~12月11日(日)
●会場 2階 常設展示室
「見よ、友情の翼、高く飛べるを アニメ 『啄木鳥探偵處』 展」
●会期 開催中~2023年1月22日(日)
●会場 3階 オープンギャラリー
2022年10月28日
3つの誓い
先日、干支でひと回り下の友人と、会食をしました。
ひと回り下ですから、彼は50代前半であります。
僕から見たら、若い!
でも世間から見たら、決して若くない!
さらに若者から見たら、完全にオッサンであります。
そんな彼の目下の悩みは、肉体の老化のようであります。
「ついに、僕にも “ハメマラの恐怖” がやって来ました」
と、嘆き悲しむのであります。
ハメマラとは?
このブログでも、たびたび触れているので、もうご存じの人が多いと思いますが、俗にいう男性の老化順序です。
40代に歯、50代に目、60代に男性器 (性欲) が衰えるといわれています。
が、これには個人差があるようです。
ちなみに僕は、“メマラハ” の順で、現在は歯の老化に悩んでいます。
「僕もなんです。目の次は、あっちですね。いま完全にダメです。どうしたらいいんですか?」
どうしらいいんですか?
と言われても、僕は医者じゃありませんし、克服した人生の先輩でもありません。
ただ肉体のおもむくままに、それを素直に受け入れて生きているだけですからね。
返答のしようがありません。
苦肉の果てに出た言葉は、
「もう、あっちは、いいじゃん。キミも肉体から精神の時代に入ったということよ」
そうなんです!
加齢にメリットがあるとすれば、それは “精神の充実” にほかなりません。
肉体、体力の衰えを補うべく、心は、より高みを目指すのです。
だから僕は彼に、言ってやりました。
「歳をとることは、悪いことばかりじゃないぞ!」
僕の場合、今思えば40~50代が、精神的に一番きつかった時期でした。
例えるならば、中古の軽トラックに重量オーバーの荷物を積んで、急坂を無理やり上ろうとしている感じ。
有り体に言えば、まったく余裕がなかったのです。
プラス、それに男としてのプライドまで積載しているのですから、ニッチモサッチモ動きません。
オーバーヒート状態が、長い間続きました。
それが還暦過ぎたら、どうしたことでしょう!
急に、軽くなったのです。
目の前の道も、平坦に見えるようになりました。
いい具合に気が抜けたのですね。
これは、人生のチャンス到来かも?
と僕は、それまでの人生を否定する 「3つの誓い」 を立てました。
①ムキにならない
②できる事だけする
③生き急がない
それまでの僕は、この誓いの真逆の生き方をしていたのです。
負けず嫌いで、すぐムキになって、大風呂敷を広げ、実力以上の事にも手を出して、先へ先へと生き急いでいました。
もう、や~めた!
と思えたのは、60年以上生きてからのことでした。
いま、やっと僕にも、平穏な人生が訪れました。
2022年10月27日
晴れ、ときどき朔太郎日和
昔、といっても半世紀以上も前のこと。
僕が通っていた前橋市立M小学校の裏庭の片隅に、詩人・萩原朔太郎の生家から移築された書斎部屋ありました。
※(現在は前橋文学館の向かいに移築されています)
なぜ、こんなところに、こんなものがあるのか?
当時の児童たちは、気に留めることもなく、そこにあることが当たり前のように眺めていました。
記憶に残っていることといえば、書斎部屋の前には大きなイチョウの木があり、秋になると掃除当番が落ち葉をかき集めたこと。
こんな時でもなければ、垣根に囲まれた敷地内に入ることなんて、なかったからです。
当時、先生たちから朔太郎が偉大な郷土の詩人であることは聞いていましたが、それを実感として知るのは、まだ先のことでした。
僕が朔太郎の詩に触れるようになったのは、高校生になってからでした。
ある日、兄の友人が、県外からわざわざ訪ねて来たのです。
目的は、詩人・萩原朔太郎が生まれ育った街、前橋を歩くためでした。
えっ、朔太郎って、そんなに有名なの?
それからは図書館に通い、むさぼるように詩集を読みふけた記憶があります。
今年は萩原朔太郎の没後80年にあたる年です。
現在、「萩原朔太郎大全2022」 と銘打った企画展が、全国52か所の文学館や美術館、大学施設などで開催されています。
もちろん生誕の地、前橋市が中心ですから群馬県内の多くの施設で、関連企画展が開催されています。
秋晴れの昨日、我が家から一番近い会場へ、自転車に乗って行って来ました。
群馬県立文書館です。
『前橋藩から朔太郎へ ~母方八木家と藩士諸家の文書展~』
さすが文書館です。
他の企画展とは、ちょっと切り口が違います。
かなりマニアックであります。
スポットを当てているのは、朔太郎の母、けいの実家、八木家。
八木家は、前橋藩主松平大和守家の家臣でした。
展示では、この八木家を中心に前橋藩士諸家に伝わった古文書などを通じて、朔太郎の故郷、前橋とその先祖の歴史、八木家と萩原家の密接な関係を紹介しています。
朔太郎ファン必見は、八木家の親族写真の中に、婿殿として映っている若き日の朔太郎の姿でしょうか!
いゃ~、かなりのイケメンであります。
しかも、ちょっと斜に構えていて、婿とは思えない存在感があります。
やはり他の人とは、オーラが違います!
朔太郎ファンのみならず、歴史ファンにも楽しめる企画展です。
お近くまでお越しの際は、ぜひ、お立ち寄りください。
開館40周年記念 令和4年度 テーマ展示
「前橋藩から朔太郎へ」
~母方八木家と藩士諸家の文書展~
●会期 開催中~2022年12月25日(日)
●会場 群馬県立文書館 1階展示室
●開館 午前9時~午後5時
●休館 月曜日、祝日、月末
●入館 無料
●問合 群馬県立文書館 TEL.027-221-2346
(前橋市文京町3-27-26)
2022年10月26日
「末期の酒」 in 笠懸野
長いメールが届きました。
こんな書き出しで始まっていました。
<来週火曜日、笠懸野文化ホールで講演と落語をやることになっておりまして、先方のご指定で 『末期の酒』 をやることになっております。>
「末期の酒」 とは?
一昨年9月、僕は高崎市のフリーペーパー 「ちいきしんぶん」 に、≪忠治外伝 末期の酒 「牡丹」 を探しに≫ という記事を書きました。
嘉永3(1850)年に国定忠治が関所破りの罪で、大戸 (群馬県東吾妻町) の処刑場で磔(はりつけ)の刑に処せられた際、“末期の酒” に選んだのが 「牡丹」 という酒だったという内容でした。
この記事が発端となり、忠治ファンや地酒マニアの間で、ちょっとしたムーブメントが起き始めました。
昨年3月、群馬テレビ 「ぐんま!トリビア図鑑」 で、『伝説のお大尽 「加部安」 とは?』 を放送。
番組では、僕がリポーターとなり、当時 「牡丹」 を醸造していた 「加部安」 こと加部安左衛門の酒蔵跡を訪ねました。
この番組の冒頭とエンディングに流れたのが、落語の 『末期の酒』 でした。
『末期の酒』 は、前橋市在住のアマチュア落語家、都家前橋(みやこや・ぜんきょう) さんの創作落語です。
前橋さんと僕は、呑み屋の常連同士。
「ちいきしんぶん」 の記事を見せたところ、いたく感動して、この話を落語にしてくださったのでした。
さて、群馬テレビで放送されると、「末期の酒」 は、各方面で反響がありました。
たとえば朝日新聞は、≪国定忠治の最期の一献 落語に≫ と見出しを付けて、大々的に報道。
これに触発され、がぜん奮起したのが、都家前橋さんであります。
「番組で放送されたのは、ほんのさわりの部分だけ。ちゃんとした落語に仕上げたい」
と一念発起!
『末期の酒 ~牢番編~』 を完成させ、昨年9月よりYouTubeにて配信が始まりました。
実は都家前橋さんの本業は、大学教授。
彼が、たびたび講演会に呼ばれ、本業と趣味を合体させた “健康と笑い” について話をしていることは、僕も知っていました。
ただ、いつもは講演の後には、お得意の古典落語を披露していたようです。
それが、YouTubeでしか披露していない創作落語の 『末期の酒』 を演じてほしいというリクエストがあったものですから、彼は発案者であり、ネタ元である僕に一報をくださったのです。
本来なら笠懸公民館 (みどり市) 主催による 「高齢者大学」 という企画なので、一般聴講は募集していないのですが、特別に “関係者” という枠で招待してくださいました。
笠懸野文化ホールは、プロの歌手がコンサートをやるような大きな会場です。
前半の40分、彼は大学教授として、真面目に健康についての講義をされました。
休憩をはさみ、舞台上には高座が現れ、お囃子も高らかに、いよいよ都家前橋の登場です。
すぐに落語が始まるのか?と思いきや、さにあらん。
当然、落語には “まくら” が付き物であります。
その、まくらが、驚いた!
前橋さんときたら、高座に上がるやいなや、こう言ったのです。
「今日、この会場に、温泉ライターの小暮淳さんが見えているはずなんですがね~。どこにいますか?」
驚くやら恥ずかしいやら、でも反射的に 「ハーイ!」 と、手を挙げてしまいました。
その後、前橋さんは、僕との出合い、記事との出合い、そして作品ができるまでを語り、落語 『末期の酒』 へと入っていきました。
前橋さんの話芸は、絶品であります。
まさに、“玄人はだし” とは、この人のためにあるような言葉。
『末期の酒』 も、聴くたびにバージョンアップしていて、何度聴いても飽きが来ません。
国定忠治が、この世の最後に呑んだ酒の話です。
いつしか、群馬の古典落語になってほしい作品であります。
※落語 『末期の酒~牢番編~』 は、YouTube 「都家前橋」 にて検索!
2022年10月24日
A町の未来
隔世の感があります。
田畑は消え、音もにおいも変わりました。
僕が現在暮らしているのは、前橋市南部のA町。
27年前に、それまで暮らしていた中心市街地から引っ越してきました。
理由は、子育て環境です。
当時は、田畑が一面に広がる田園地帯。
家の周りには、牛舎や豚舎、鶏舎が残り、市内でありながらのどかな田舎を感じる環境だったのです。
本音を言えば、その分、土地の価格が安かったからなのですが、子どもたちをのびのびと育てる環境としては、申し分ありませんでした。
あれから27年。
子どもたちも育ち、社会人となり、家を出て行きました。
それと比例するように、我が家周辺の環境も様変わりしました。
いつのまにか、牛舎も豚舎も鶏舎もありません。
田畑だったところは分譲宅地となり、若い世代の新しい住民たち増えました。
「まさか、うちのムラにカフェができるとはなぁ~」
町内の行事で顔を合わせた長老が言いました。
(古くからの住民は、町のことを今でも “ムラ” といいます)
「あの一画だけ、田園調布だからな」
と言って、みんなで笑いました。
それほど様変わりしてしまったのです。
ここ数年は、ますます都市化に拍車がかかっています。
一番の原因は、数年前に移転して来た大型総合病院の存在です。
これにより周辺の田畑は消え、道路が整備され、次々とコンビニやスーパーが現れました。
渋滞緩和のためでしょうか?
その後も、周辺では幹線道路の拡張工事が続いていました。
そして、ついに先日!
こんな見出しを付けた記事が、新聞紙上に大きく掲載されました。
≪Fスーパー、Yデンキなど8店舗≫
≪前橋・AにSC≫
≪28日から順次開店≫
Aとは、僕の暮らすA町のことです。
そして、SCとは、ショッピングセンターのことです。
何もなかった町は、いま大騒ぎです。
もし、愛犬のマロが生きていたら、なんて言うんでしょうかね。
「ご主人様、ここは本当にA町なんですか? 散歩コースを変えましょう」
と、大きな道路と大きな建物に、おじけづくと思います。
いよいよ今週末、オープンです。
この町には似合わない喧騒が、やって来ます。
でも町民は内心、よろこんでいると思いますよ。
「便利になった」 と……
田舎者ですからね。
2022年10月23日
ぐんま湯けむり浪漫 (24) 赤城温泉
このカテゴリーでは、2017年5月~2020年4月まで 「グラフぐんま」 (企画/群馬県 編集・発行/上毛新聞社) に連載された 『温泉ライター小暮淳の ぐんま湯けむり浪漫』 (全27話) を不定期にて掲載しています。
※名称、肩書等は連載当時のまま。一部、加筆訂正をしています。
赤城温泉 (前橋市)
千年の時を経て湧く薬湯
赤城山の南麓、標高約900メートル。
荒砥川の上流の山深いところに湧くいで湯で、昔から 「上州の薬湯」 として知られていた。
旧宮城村大字苗ヶ島湯之沢にあることから、古くは 「湯之沢温泉」 といい、赤城山麓では、ただ一つの温泉だった。
現在、3軒の温泉宿が渓谷に寄り添うようにたたずむ。
湯の起源は古く、古墳時代との説もあり、すでに奈良時代の書物には 「赤城に霊泉あり、傷病の禽獣集まる」 と記されている。
また裏山の薬師堂近くの洞窟に、応仁元(1467)年の作である石像 「湯の沢薬師地蔵」 (前橋市指定文化財) が残っていることから、少なくとも室町時代には温泉が存在したことになる。
赤城山は、かつてより山岳宗教の霊山であったため、修験者が傷を癒やすために湯に入ったのが、温泉の始まりともいわれている。
修験者が里に下りて、その効能を人々に伝えたことにより 「上州の薬湯」 として広く知れ渡れることになったようだ。
かの新田義貞や国定忠治も湯につかり、心身の傷を癒やしたとも伝わる。
江戸時代に入り、元禄元(1688)年には前橋藩主によって湯権が認められ、温泉宿の営業が始まった。
数軒の湯小屋と宿屋のほか、湯治客のための雑貨屋や仕出し屋、豆腐屋などもあり、赤城神社に詣でた参拝客が足を延ばすなど、盛時には日に数百人の湯客でにぎわっていたという。
ところが江戸から明治時代にかけて、たびたび火災に見舞われ、そのたびに著しく衰退し、再建の歴史をくり返してきた。
幾多の困難を乗り越えながらも、何百年と守り継がれてきたことが、名湯と呼ばれる証しである。
浴槽に漂う白い石灰華
悠久の時を超えて湧き続ける湯は、茶褐色をしたにごり湯。
時間の経過とともに、さまざまな変化を見せる不思議な湯だ。
湧出時は無色透明だが、鉄分をはじめカルシウム、ナトリウム、マグネシウムなどを多く含むため、空気に触れると沈殿物を生成し、茶褐色のにごり湯となる。
濃厚な湯の色もさることながら、湯が注ぎ込まれる湯口や浴槽の縁、洗い場の床の変形にも驚かされる。
黄土色の析出物が堆積して、まるで鍾乳石のように幾何学模様を描いている。
また露天風呂では、さらに不思議な光景を見ることができる。
より外気に触れるせいだろうか、温泉のカルシウム成分が白く固まり、無数の突起物を持つ析出物が、浴槽の縁に張り付いて、あたかもサンゴ礁のようだ。
そして、この湯は温泉ファンの間では、「石灰華(せっかいか)」 と呼ばれる現象が起こることでも有名。
時間の経過とともに温泉の中の炭酸カルシウムが主成分となり、湯葉のような白い膜が湯面を覆う。
なんとも神秘的な光景である。
「温泉の成分が濃いため、排水管に析出物がたまり、すぐに詰まってしまいます」
と話す赤城温泉ホテルの10代目主人で、赤城温泉観光協同組合長の東宮秀樹さん。
それゆえ年2回、パイプを取り外し、中に付着した温泉成分の結晶を削り取る作業が欠かせないという。
にごり湯ならではの湯守(ゆもり)の苦労がある。
いにしえの旅人たちも、この濃厚なにごり湯につかっていたかと思うと、壮大な歴史のロマンを感じる。
<2019年12月号>
2022年10月22日
公募開始! 「温泉サミット」
≪温泉ファン集い≫
≪講演や情報交換≫
≪12月、みなかみ≫
驚きました!
昨日(21日)の上毛新聞に、記事が載りました。
今年で第3回を迎える 「ぐんま温泉サミット」 の告知記事です。
何に、驚いたのか?
過去2回のサミットは、事後記事でした。
開催当日、記者が会場に来て、取材をして、後日、新聞に掲載されました。
ところが今回は、早くも事前記事が掲載されたのです。
それだけ、認知されたということでしょうか?
これまでのSNSのみでの告知だった 「温泉サミット」 が、ついに一般公募となりました!
常任講師としては、ちょっぴり緊張いたします。
マイナーからメジャーへ?
いえいえ、今まで通り、粛々と群馬の温泉の魅力を伝えていきたいと思います。
初参加の方、大歓迎!
お待ちしております。
第3回 ぐんま温泉サミット IN つきよの
●日時 2022年12月3日(土)~4日(日)
●会場 月夜野温泉 「みねの湯つきよの館」
群馬県利根郡みなかみ町後閑1739-1
●受付 11:00~ (昼食は各自)
●定員 宿泊 25名 日帰り 10名 ※先着順
●会費 ①1泊2食 12,000円 (全国宿泊キャンペーン対象)
②日帰り(夕食付) 5,000円
③日帰り(入浴付) 2,500円
●締切 2022年11月20日(日)
●問合・申込
群馬温泉サミット事務局 (関口) TEL.080-1023-9558 FAX.0270-50-1182
mail kcc@eos.ocn.ne.jp Facebook関口のメッセンジャーにて受付
※「みねの湯つきよの館」では受け付けていません。
〖スケジュール〗
13:00~ 開催あいさつ&旅館女将あいさつ
13:30~ 講演会 (講師/小暮淳 演題/「令和版 みなかみ紀行」)
15:00~ 座談会 (サミット)
16:00~ 自由時間&入浴タイム
17:30~ 食事会 (交流会)
20:00 終了
翌日 朝食後 解散
2022年10月21日
朔太郎と群馬の五詩人
わが故郷に帰れる日
汽車は烈風の中を突き行けり。
ひとり車窓に目醒(ざ)むけば
汽車は闇に吠え叫び
火焔(ほのほ)は平野を明るくせり。
まだ上州の山は見えずや。
10代後半から20代にかけて、僕は東京で暮らしていました。
ただひたすらに、夢を叶えたくて、大都会で生きていました。
年に数度の里帰り。
「友人に会うため」 との言い訳を胸に、列車に乗りました。
「まだ、あきらめたわけではない」
そう自分に言い聞かせながら、流れる車窓の景色を眺めていた記憶がよみがえります。
そんな時、スラスラと口を突いて出たのが、萩原朔太郎の詩の一節でした。
「氷島」 という詩集に収録された 『帰郷』 という詩です。
詩自体は、もっと長いのですが、冒頭の6行が好きで、暗記していました。
上野駅から高崎線に乗り、熊谷あたりを過ぎると、心が躍り始めます。
ビルから民家へ、田畑が広がり、やがて遠方に赤城山が見えてくるのです。
この詩には、こんな副題が付いています。
<昭和四年の冬、妻と離別し二児を抱いて故郷に帰る>
上州の山は、朔太郎を温かく迎えてくれたのだろうか?
群馬県民にとって、萩原朔太郎は郷土の偉人です。
さらに僕ら前橋市民にとっては、自慢のヒーローなのです。
中心市街地にある生家跡地の前に立つと、北原白秋や室生犀星、若山牧水といった文人たちが訪れ、この周辺を闊歩していた様子が目に浮かび、ワクワク感が止みません。
やっぱり朔太郎は、誇れる郷土の詩人なのです。
今年は、萩原朔太郎没後80年。
全国の文学館で 「萩原朔太郎大全2022」 と銘打った記念企画展が開催されています。
これに賛同し、群馬県立土屋文明記念文学館でも関連企画展 『私の同郷の善き詩人』 が、現在開催中です。
萩原朔太郎と同時代を生きた群馬の五詩人。
山村暮鳥、大手拓次、高橋元吉、萩原恭次郎、伊藤信吉。
企画展では、朔太郎と彼らとの間で築かれた詩をめぐる深い交流の様子がわかる書簡や寄稿が、展示されています。
圧巻は壁一面に貼られた、時系列に比較された6人の年譜。
何年に生まれ、何年に亡くなったのか。
いつ、誰と誰が、出会ったのか。
そのとき、世の中では、どんな出来事が起きていたのか。
この年譜を見ているだけでも、たっぷり30分は要しました。
芸術の秋もいいけど、文学の秋も、いいもんです。
郷土の詩人たちに、ぜひ、会いに行ってください。
第117回企画展
『私の同郷の善き詩人』
●会期/会期中~2022年12月18日(日)
●時間/9時30分~17時 (12月4日は15時まで)
●休館/火曜日
●料金/一般500円、大高生250円
●問合/群馬県立土屋文明記念文学館 (高崎市保渡田町2000)
TEL.027-373-7721
2022年10月19日
アートの秋を彩る女性たち
今日は、2人の “女友だち” を紹介します。
ともに、アーティストです。
まず一人は、このブログでもお馴染みの 「須賀りす」 さん。
毎月、「神社かみしばい」 で、ご一緒している画家さんです。
(「神社かみしばい」 については当ブログのカテゴリーを参照)
彼女との付き合いは20年以上になりますが、実に多芸な女性です。
イラストレーターとしても書籍等の装丁画を描かれていますし、群馬県内のご当地キャラクターなども手がけています。
また、アマチュアのちんどん屋や劇団のメンバーとしても興行をしたり、本の朗読会なども開いています。
僕とは過去に、『誕生日の夜』(よろずかわら版) という絵本の挿画、そして紙芝居 『いせさき宮子の浦島太郎』 の作画でコンビを組みました。
そんな彼女の作品が、東京・六本木の 「国立新美術館」 に出展されているというので、先週、見に行って来ました。
大きな美術館の3階、「第56回 一期展」 という会場でした。
約280点も展示されている会場ですが、彼女の作品は、すぐに分かりました。
『水のまつり』 と題した50号(変形)にもおよぶアクリル画の大作です。
大海原に渦巻く潮騒の上を、真っ白なウサギたちが跳びかうダイナミックな作品。
その画風は唯一無二で、遠くからでも、すぐに彼女の絵だと分かりました。
ただただ、感動!
どうして、あんな華奢な小さな体で、こんなにも大きな絵が描けるのだろうか?
この画力は、いったい、どこから湧き上がってくるのだろうか?
つくづく、「画家って凄い!」 と感服しました。
もう一人は、これまた20年来の友人である 「飯塚裕子」 さん。
僕は長年、親しみを込めて 「ゆうちゃん」 と呼んでいます。
彼女の本業はイラストレーターですが、近年はクレイアート作家としても人気を集めています。
「クレイアート」 とは、粘土細工のことです。
僕は、ゆうちゃんが作るクレイアートが好きで、過去には、著書の表紙画の作成をお願いしました。
『ぐんまの里山 てくてく歩き』(上毛新聞社)
この時は、半立体の粘土細工で、リュックを背負った僕をユーモアたっぷりに仕上げてくれました。
そんな、ゆうちゃんのグループ展が開催中だというので、昨日、行って来ました。
「ぐんま ものづくりの集い 2022」
●会期/~10月20日(木) 10:00~17:00 ※最終日は15:00まで
●会場/前橋市芸術文化れんが蔵 (前橋市三河町1-16-27)
陶芸や竹細工、漆芸、草木染め、創作こけしなど、13人の作家の作品が展示・販売されていました。
ゆうちゃんのブースは、入口を入った受付の隣。
七福神やキャラクターなどの、ゆうちゃんらしい可愛い粘土細工が並んでいました。
ところが、今回は、ちょっと雰囲気が違います。
北斎の絵や仏像、曼荼羅のような重厚な作品も出展されていました。
聞けば、県内の寺院よりクレイアートによる作画の依頼があったのだといいます。
「ゆうちゃん、やったね! これは後世に残る仕事だよ」
「ありがとうございます。私も、そう思います。あきらめずに続けていて良かった!」
気が付くと2人は、握手をして喜び合っていました。
本当に、うれしい!
互いに苦労を知っているだけに、“残る仕事” の意味が痛いほど分かり合えるのです。
良かったね、ゆうちゃん!
秋深し 隣は何を する人ぞ
いかがですか?
芸術の秋に触れ、何かモノづくりを始めてみませんか?
僕も大いに刺激を受けました。
まずは、画用紙と絵の具を買ってこようと思います。
(三日坊主に終わらないと、いいのですが……)
2022年10月17日
ぐんま湯けむり浪漫 (23) 相間川温泉
このカテゴリーでは、2017年5月~2020年4月まで 「グラフぐんま」 (企画/群馬県 編集・発行/上毛新聞社) に連載された 『温泉ライター小暮淳の ぐんま湯けむり浪漫』 (全27話) を不定期にて掲載しています。
※名称、肩書等は連載当時のまま。一部、加筆訂正をしています。
相間川温泉 (高崎市)
七色に変化する虹色の湯
榛名山の西麓を流れる相間川(あいまがわ)の奥地。
旧倉渕村が都市生活者のために遊休農地を整備して貸し出している市民農園 「クラインガルテン」 が広がる。
クラインガルテンとは、ドイツ語で 「小さな庭」 の意味。
本場ドイツにならい都市農村交流を目的として、平成4(1992)年に日本で初めてオープンした本格的農園である。
約1万3000坪の敷地内には農園のほか、ログハウスやバーベキュー場、体育館など、スポーツやアウトドアを滞在しながら楽しめる施設が併設されている。
温泉が湧いたのは平成7(1995)年3月のこと。
源泉の温度は約62度と高温で、湧出量も毎分約200リットルと豊富だった。
何よりも関係者を驚かせたのは、温泉の色だった。
湧出時は無色透明だが、時間の経過とともに赤褐色に変わり、レンガの粉のような析出物が大量に沈殿した。
鉄分を多く含んでいる証拠だった。
さらに高濃度の塩分を含み、大量の油分も含んでいた。
油分は太古の地層から抽出されたもの。
地下に閉じ込められていた海水内の微生物が、地熱と地圧により変化したものと考えられている。
原油が生成される原理と同じとのこと。
湯からは、ほのかに石油のようなにおいが漂う。
時に、この油分が湯面に膜を作る。
日光に照らされると七色に変化することから、温泉ファンの間では 「虹色の湯」 とも呼ばれている。
長湯禁物!湯あたり注意!!
宿泊棟を併設した 「ふれあい館」 は、登山客やアウトドアを楽しむファミリー層に人気が高い。
平成8(1996)年のオープン時は、口コミでうわさが広がり、山道が渋滞して交通整理が必要なほどだったという。
その “うわさ” とは、湯の色とにおいだった。
同12(2000)年には、旧倉渕村の福祉センターとして日帰り入浴施設 「せせらぎの湯」 がオープン。
合併後の現在でも市内者割引があるため、利用客の9割を高崎市民が占めている。
憩いの場として、平日でも朝からにぎわっている。
「ふれあい館」 副支配人の秋山博さんは話す。
「温泉法で10年に一度の分析検査が定められていますが、10年前の検査より成分が全体的に濃くなっています」
濃いにごり湯のため、足元が見えない。
恐る恐る、ゆっくりと湯底を足で確かめながら入った。
うわさどおり、においも金気臭にまざって油臭がする。
かなり個性的な湯であることが分かる。
体の位置を変えようと、手をついた瞬間だった。
フワリと尻が浮いてしまった。
それほどに塩分が濃い、塩辛い湯である。
浴室には、こんな貼り紙がされている。
≪カップラーメン お湯を注いで3分 相間川の温泉(おゆ) 入っても7分! これ以上は、のびるだけ≫
塩分と鉄分の多い温泉は、実際の温度よりも体感温度が低く感じられるといわれている。
そのため、ついつい長湯をしてしまい、のぼせてしまう客が多いのだそうだ。
入浴の際は、くれぐれも湯あたりには注意をしていただきたい。
<2019年10・11号>
2022年10月16日
気になる川柳
『一列に 頭(こうべ)を垂れる スマホかな』
先月今月と、県外へ出かけることがあり、電車に長時間乗ることが増えました。
僕は長年のクセで、電車に乗る前には必ず、新聞を買います。
たとえ満員電車の中でも、他人の迷惑にならぬよう上手に折りたたみながら、紙面の隅々まで読むことができる技を身に着けています。
先日、ほぼほぼ満席状態の車内で、座って新聞を読んでいた時のことです。
紙面の片隅、読者投稿による 「川柳コーナー」 に、目が留まりました。
まったくもって、いま、この電車内の状況が詠まれていました。
その一句が、冒頭の川柳です。
向かいのベンチシートに座る老若男女すべてが、コウベを垂れて、一心にスマホの画面を見入っています。
車内全体を見渡しても、新聞や本を読んでいる人は、僕以外にはいません。
なかにはスマホをいじらずに、目をつむっている人もいますが、やはり、コウベを垂れていました。
ふと、こんな川柳を思い浮かべました。
『スマホ無きゃ 君ら一体 何してる?』
僕は依然、スマホを持たない生活を続けています。
ケータイはガラケーのままですが、何一つ不自由を感じていません。
電話とメールが使えれば、大抵の用は事足ります。
そこで、スマホを持っている人たちに、質問です。
みなさん、何をしているのですか?
覗き込んではいませんが、たまたま左隣の男子学生のスマホの画面が見えたので、チラ見させていただきました。
とんでもないスピードで、親指が動いていました。
ゲームをしているのですね。
右隣は中年の女性です。
画面は、よく見えませんでしたが、人差し指が画面の上を行ったり来たり、忙しく動いています。
何かを検索しているのでしょうか?
それともラインとか、ツイッター?
その日、僕は2時間の乗車を終え、目的地の駅に下車しました。
駅構内の移動中、まわりの人たちはホームでもエスカレーターでも、常にスマホを見ています。
危険です!
いえ、異常です!
手ぶらの僕だけが、まるで異星人のような不思議な感覚に陥りました。
そして、いつか新聞で拾った、こんな川柳を思い浮かべました。
『もういっそ スマホ身体に 埋めちゃえば』
2022年10月15日
フルネームで呼ばれて
今週、野暮用があり、久しぶりに東京へ行って来ました。
基本、僕は県内移動の場合はクルマを使用し、県外は電車を利用しています。
(もちろん、県内でも飲酒を伴う場合は電車で行きます)
電車が高崎駅を通過したあたりだったでしょうか。
通勤時間帯は過ぎていたため、車内は比較的空いていました。
僕は、ボックス席に座っていました。
すると、隣のボックス席にいた中年カップルの女性の方が、ツカツカと僕の席にやって来て、言いました。
「小暮淳さんでしょうか?」
突然、“コグレジュン” とフルネームで呼ばれて、一瞬、返事に困ってしまいました。
だって、もし、知り合いや面識のある人ならば、「小暮さんですよね?」 と名字だけで声をかけるはずです。
フルネームで呼ばれることって、極まれな場面に限ります。
たとえば病院や薬局の待合室や役所、銀行などのロビーです。
先日済ませた、運転免許の更新をする交通センターでもフルネームで呼び出されました。
でも、ここは電車の中です。
フルネームとは、いかに?
「はい、そうですが……」
と恐る恐る応えると、
「やっぱり、そうでしたか! そうじゃないかと思って」
「はっ?」
「あのう……、一緒に写真を撮っていただいても、よろしいですか?」
な~んだ、謎が解けました。
彼女は僕の読者様だったのです。
快諾すると、連れの男性もやって来ました。
話を聞くと2人は夫婦で、僕の本を参考にしながら、温泉めぐりを楽しんでいるのだといいます。
「ハイ、チーズ!」
奥様とご主人、交互に写真を撮りました。
「ありがとうございました。いい記念になりました」
そう2人に礼を言われ、僕は自分の席にもどりました。
さぞかし、まわりの乗客は驚いたでしょうね。
「あいつ、誰なんだ?」
「あんな芸能人いたか?」
ってね。
それにしても、よく僕だって分かりましたよね。
メディアの露出は、そんなに多くないし、マスクもしていたし、不思議でなりません。
それなのに勇気を出して声をかけてくださったご夫妻との出会いに、感謝いたします。
ぜひ、講演やセミナーにも、お越しください。
その際は 「電車の中で会った者です」 と、声をかけてくださいね。
2022年10月14日
シリーズ第2回は 「いで湯発見伝説」
8月に放送された群馬テレビ 『ぐんま!トリビア図鑑』 の 「温泉王国ぐんま」 は、ご覧になりましたか?
いよいよ、シリーズ第2回の制作が始まりました!
『ぐんま!トリビア図鑑』 は2015年4月にスタートしたドキュメンタリー番組です。
知っているようで知らない群馬県内の歴史や文化、民俗などを隅々まで取材してリポートしています。
僕は、この番組のスーパーバイザー (監修人) をしています。
そして時々、番組にもリポーターとして出演しています。
が!
番組開始から今年まで、リポーターとして登場した回は、すべて民話や伝説、謎学など “ミステリーハンター” としての出演でした。
苦節7年!
やっと今年、本業である “温泉ライター” としての出演が叶いました。
それが、今年8月に放送された 「温泉王国ぐんま」 シリーズです。
第1回では、「泉質が変わった温泉」 と題して、西上州の倉渕川浦温泉(高崎市)と相間川温泉(同)を紹介しました。
すると!
大変反響があり、担当ディレクターから第2話の制作依頼がありました。
ということで!
さっそく昨日は朝からロケハンに行って来ました。
「ロケハン」 とは、業界用語で 「ロケーションハンティング」 の略です。
ロケーション=撮影、本番
ハンティング=取材、下見
ということで、ディレクターと放送作家と僕の3人は、県北の温泉地へと向かいました。
今回のテーマは、摩訶不思議な温泉の開湯伝説です。
温泉王国の群馬には、温泉地の数だけ、伝説や歴史、文化があります。
この番組では毎回、テーマと切り口を変えながら、温泉の魅力をリポートしたいと思います。
第2回 「いで湯発見伝説」 の放送日は、12月初旬予定。
追って、撮影等の進捗状況を報告いたします。
乞う、ご期待!
2022年10月11日
そろそろ人捨離
「断捨離を始めたんだ」
「ダンシャリ? また、なんで?」
「いや、これと言った理由はないんだけどさ。もう使わないモノって、けっこうあるじゃん」
「あるけど、面倒臭いな」
「ネットで売れるんだよ」
「売れるの?」
「ああ、バッグとか財布とか……」
僕は毎月一回、神社の境内で同級生が口演する 「街頭紙芝居」 のお手伝いをしています。
(当ブログのカテゴリー 「神社かみしばい」 参照)
10時、11時、12時、13時と、日に4回の口演を行っているのですが、必ずしも毎回、来客があるとは限りません。
観客ゼロの回は、紙芝居師の同級生と木陰のベンチに腰かけて、あれやこれやと、つれづれなるままに雑談を楽しんでいます。
先日の話題は、最近、彼が始めた 「断捨離」 でした。
定年退職まで真面目に勤め上げた彼は、現役時代は有名企業のエリート営業マンでした。
だからでしょうね、けっこうブランド物を身に着けていたようです。
それらが、ごっそりと押し入れから出てきたのだといいます。
「いい小遣いになるんだぜ」
と、家は片付くし、一石二鳥の断捨離に、ご満悦の様子。
「ジュンは断捨離、しないの?」
「俺の場合、ガラクタしかないからさ。モノの処分は、後回しだな。とりあえず、人捨離から始めているよ」
「ジンシャリ? なんだ、それ?」
「ヒトの整理だよ」
60年以上生きていると、膨大な数のヒトと出会ってきました。
疎遠になってしまったヒトもいますが、ダラダラ、ズルズルと切れずに付き合いが続いているヒトもいます。
ふと、残りの人生を考えると、「あまり無駄な時間はないな」 と思うのであります。
若い時は、「何でも見てやろう」 「たくさんの人と出会いたい」 と思っていましたが、そろそろ “人生の断捨離” をする時期に来たようです。
友人知人、仕事……
交友関係の総決算です。
残りの人生に必要なヒトを人選しながら付き合っていくことに決めました。
「それ、いいな! 俺も始めよう」
「人間関係が楽になるぞ。変な気を遣わずに済む」
「だな、人捨離、賛成!」
「おっ、こんな時間だ。客が来るぞ!」
「おお、とりあえず、俺たちは互いに人捨離の対象じゃないということで」
「もちろん、よろしく!」
ところで、断捨離同様、人捨離で処分した “ヒト” は、ネットで販売できるのでしょうか?
2022年10月10日
正解は 「鹿沢温泉」 でした!
みなさんは、覚えていますか?
以前、テレビ局のディレクターから番組の制作協力を受けた話を?
(当ブログの2022年9月3日 「3つの条件」 参照)
その際、取材対象となる温泉旅館の条件をいくつか出されましたが、それらをクリアしている宿を僕は提示しました。
そして撮影開始、編集を経て、先日、オンエアされました。
放送されたのは10月6日午後6時30分からのNHK総合テレビ 「ほっとぐんま630」 (群馬県内)。
「いいお湯みつけました」 のコーナーでした。
そこで紹介されたのは、鹿沢温泉 「紅葉館」。
いかがでしたか?
みなさんの推理は、当たりましたか?
番組では、“湯” の魅力を直球で紹介してくれました。
湯量があるのに、なぜ浴槽が小さいのか?
なぜ、湯が熱いのか?
それらの答えは、先祖からの言い伝えでした。
「湯に手を加えるな」
真面目な湯守のいる昔ながらの温泉宿であります。
☆ここで訂正があります☆
以前、明日10月11日(火) のNHK総合 「ひるまえほっと」 (関東一都六県) でもオンエアされるとの告知をしましたが、テレビ局の都合により放送日は未定となりました。
お詫び申し上げます。
さて僕は、もう1軒の宿を提示しています。
ディレクターによれば、すでに取材アポは取れているとのこと。
撮影日は未定。
詳細が分かり次第、ご報告いたします。
もう一つの答え合わせを、お待ちください。
2022年10月08日
「未確認生物」 を語る
彼と初めて会ったのは、昨年の春でした。
行きつけの呑み屋のママから、一本のメールが届きました。
<ジュンちゃんに会いたいというお客さんがいるんだけど>
後日、ママから聞いた話は、こうでした。
その日、ぷらりと初めて見る客が一人で入って来て、カウンターの中央に座りました。
この店はカウンター席しかなく、しかもメニュー表も一切ない、イチゲンには入りづらい店なので、ママも最初は警戒しながら応対をしていといいます。
やがて客は、カウンター奥の壁に飾られていた本に気づきました。
この店には、常連である僕の著書が数冊、置かれています。
「その本、見せていただいてもいいですか?」
客が指さしたのは、温泉関係の本ではありませんでした。
『ぐんま謎学の旅 民話と伝説の舞台』 (ちいきしんぶん)
手渡すと、真剣に読み出す客。
しばらくして顔を上げると、おもむろにママに向かって言いました。
「この小暮さんという方と連絡は取れますか? お会いしたいのですが」
これが僕と彼の出会いでした。
彼は、その年の春、前橋市に赴任して来たばかりの新聞記者でした。
赴任初日、前橋の街を探索中、のん兵衛の嗅覚で、一軒の店ののれんをくぐりました。
それが、酒処 「H」 でした。
のん兵衛の嗅覚に加え、記者の好奇心と探求心が僕の本を見つけ出し、さらに行動力が加わり、その翌日には、僕を同じ店に呼び出してしまったということです。
記者の名前は、小泉信一。
朝日新聞の編集委員であります。
担当は大衆文化や芸能。
なかでもカッパやツチノコなどの “未確認生物” や、口裂け女などの “都市伝説” を大真面目に取材しているユニークな記者でもあります。
ゆえに初対面にして、意気投合。
それからは、ことあるごとに酒を交わし、紙芝居や落語などの僕の活動を記事に書いてくれるようになりました。
そんな小泉記者が、このたび、「未確認生物の精神史」 と題して、講義をいたします。
経験豊富な新聞記者だからこそ知り得る、噂の真実や取材の裏話など、面白い解説が聴けると思います。
興味のある方は、ぜひ、ご応募ください。
第2回 総局記者サロン
「未確認生物の精神史」
●日時 2022年10月29日(土) 14時~
●会場 朝日新聞前橋総局4階 会議室
●参加 無料 (定員15人)
●応募 住所、氏名、電話番号を明記の上、メール (maebashi@asahi.com)
または、ハガキ (〒371-0026 前橋市大手町2の4の9 朝日新聞前橋総
局 「記者サロン」 係)
●締切 10月14日(金) 必着。抽選の上、当選者には電話、またはメールで連
絡。
【小泉信一(こいずみ・しんいち) プロフィール】
朝日新聞編集委員 (大衆文化・芸能担当)
1961年生まれ、88年朝日新聞入社。
東京本社社会部などを経て現職。
「下町記者」 として街の隅々を歩いてルポした 『東京下町』 のほか、『寅さんの伝言』 『裏昭和史探険』 など、著書多数。
2021年4月から前橋総局員兼務。
2022年10月07日
ついに、オンパラ解禁!
♪ あの娘の魅力に 水上(皆カミング)
俺にぁ高嶺の 花敷(はなしき) よ
無理を承知で 老(追い)神すれば
私ゃ人妻 猿(去る)ヶ京
GOGO温泉パラダイス YUYU湯の国ぐんま県
GOGO温泉パラダイス YUYU湯の国ぐんま県 ♪
かれこれ10年以上前から僕は、この唄を歌っています。
『GOGО温泉パラダイス ~湯の国群馬県篇』
通称、「オンパラ」 です。
作詞と作曲は僕で、私的オヤジバンド 「じゅん&クァパラダイス」 が演奏をしています。
CDも制作して、テレビやラジオで流してもらっています。
なぜ、こんな唄を作ったのか?
それは、ただひたすらに群馬への “温泉愛” からであります。
県内各所から 「温泉大使」 の役職を委嘱されている身としては、群馬の温泉のPRに何か貢献できないものかと、1番から6番までの歌詞に県内27温泉地名をダジャレで入れました。
おかげで、バンドでのライブ以外でも群馬の温泉応援ソングとして、さまざまな場面で歌わせていただいてきました。
が!
突然のコロナ禍により、イベントや一切のパフォーマンスが中止となってしまいました。
たとえば、講演会。
コロナ禍でも人数制限をした、アクリル板越しでのマスク着用による講演は開催されたものの、唄を歌うことは、なかなか許可が下りませんでした。
というのも僕は、群馬県内での講演会では必ず最後に、この唄を歌っていたのです。
でも、ついに解禁の時が来ました!
昨日、2年10ヶ月ぶりに、ステージで思いっきり熱唱してきました。
会場は、中之条町の 「ツインプラザ」。
中之条町立中央公民館主催による 「中之条大学」 の講師として、講義をしてきました。
ところが偶然にも、公民館の館長が僕の古い音楽仲間で、しかも! 「オンパラ」 をレコーディングした際にミキサーを担当してくれた人だったのです。
ということは?
「ジュンさん、もちろん、歌ってくださいよ!」
ということで、講演の最後にカラオケに合わせて、思う存分に歌わせていただきました。
あー、気持ち良かった!
やっぱ、講演の締めくくりは、この唄を歌わなくっちゃ、終わった気がしませんって!
館長はじめ職員のみなさん、ありがとうございました。
これより、「オンパラ」 を解禁いたします!
講演等の主催者のみなさんへ
今後は依頼される際に、「オンパラ」 歌唱の是非をお聞かせください。
よろしくお願いいたします。
2022年10月05日
「神社かみしばい」 10月口演
やっと朝晩が涼しくなり、秋のさわやかな空気を感じるようになりました。
寒くなく、熱くなく、天高く、絶好の “街頭紙芝居日和” の到来です!
早いもので、僕が街頭紙芝居のお手伝いをするようになって、2年目の秋を迎えました。
初回が2021年1月ですから、今月で22回目の口演となります。
高校時代の同級生から 「地元を舞台にした民話の紙芝居を作りたい」 と相談されたのが始まりでした。
以来、彼の故郷、伊勢崎市での月一口演が、いつしか僕のライフワークになりました。
会場のセッティングや観客への飴玉配り、後片付け……
その合間に、自分の著書などを販売しています。
この口演を通じて、学んだことがあります。
それは、「子どもの笑顔は地域の宝だ!」 ということ。
知っていたようで、実は気づいていなかったことだと知らされました。
口演主の石原之壽(いしはらのことぶき) 君は、現在、茨城県土浦市に住んでいます。
地元では、ちんどん屋の興行のかたわら、「つちうら駄菓子屋楽校」 の校長も務め、地域の子どもたちに昭和の遊びを教えています。
そんな、子どもが大好きな彼が演じる街頭紙芝居は、毎回、子どもたちの笑い声が絶えません。
何より僕が驚いたのは、彼は紙芝居を演じるだけでなく、子どもたちに紙芝居を作らせてしまうこと。
「おっちゃん、はい、これ」
「わたしも作って来たよ」
と、常連になった子どもたちは、自分で考えた創作紙芝居やクイズを画用紙に描いて、持ってくるのです。
「よーし、今日は○○ちゃんが作ってくれた紙芝居をやりましょう!」
「これは、××くんが作ったクイズです。分かるかな~?」
その光景を、僕は毎回、感心しながら見ています。
彼は、「子どもと友だちになれるんだ」 と。
【子どもたちの笑顔と元気は宝】
そう唱え続ける同級生の活動のお手伝いを、今後も微力ながら続けていきたいと思います。
「神社かみしばい」 10月口演
●日時 2022年10月8日(土)、9日(日)
10時、11時、12時、13時
※屋外開催 (悪天候時は室内)
●会場 伊勢崎神社 境内 (群馬県伊勢崎市本町21-1)
●入場 投げ銭制 ※ペイペイ可
●問合 壽ちんどん宣伝社 TEL.090-8109-0480
☆小暮は9日のみ在社いたします。