温泉ライター、小暮淳の公式ブログです。雑誌や新聞では書けなかったこぼれ話や講演会、セミナーなどのイベント情報および日常をつれづれなるままに公表しています。
プロフィール
小暮 淳
小暮 淳
こぐれ じゅん



1958年、群馬県前橋市生まれ。

群馬県内のタウン誌、生活情報誌、フリーペーパー等の編集長を経て、現在はフリーライター。

温泉の魅力に取りつかれ、取材を続けながら群馬県内の温泉地をめぐる。特に一軒宿や小さな温泉地を中心に訪ね、新聞や雑誌にエッセーやコラムを執筆中。群馬の温泉のPRを兼ねて、セミナーや講演活動も行っている。

群馬県温泉アドバイザー「フォローアップ研修会」講師(平成19年度)。

長野県温泉協会「研修会」講師(平成20年度)

NHK文化センター前橋教室「野外温泉講座」講師(平成21年度~現在)
NHK-FM前橋放送局「群馬は温泉パラダイス」パーソナリティー(平成23年度)

前橋カルチャーセンター「小暮淳と行く 湯けむり散歩」講師(平成22、24年度)

群馬テレビ「ニュースジャスト6」コメンテーター(平成24年度~27年)
群馬テレビ「ぐんまトリビア図鑑」スーパーバイザー(平成27年度~現在)

NPO法人「湯治乃邑(くに)」代表理事
群馬のブログポータルサイト「グンブロ」顧問
みなかみ温泉大使
中之条町観光大使
老神温泉大使
伊香保温泉大使
四万温泉大使
ぐんまの地酒大使
群馬県立歴史博物館「友の会」運営委員



著書に『ぐんまの源泉一軒宿』 『群馬の小さな温泉』 『あなたにも教えたい 四万温泉』 『みなかみ18湯〔上〕』 『みなかみ18湯〔下〕』 『新ぐんまの源泉一軒宿』 『尾瀬の里湯~老神片品11温泉』 『西上州の薬湯』『金銀名湯 伊香保温泉』 『ぐんまの里山 てくてく歩き』 『上毛カルテ』(以上、上毛新聞社)、『ぐんま謎学の旅~民話と伝説の舞台』(ちいきしんぶん)、『ヨー!サイゴン』(でくの房)、絵本『誕生日の夜』(よろずかわら版)などがある。

2023年01月31日

裸の大将と埴輪風呂


 「はい、『みなかみ18湯』 の一つ、上牧(かみもく)温泉にやって来ました! (中略) ここ上牧温泉は、“裸の大将” で知られる放浪の画家・山下清が何度も訪れた温泉なんです。今回は、そんな上牧温泉と山下清の深~い関係に迫ります!」

 「はい!」
 「オーケー?」
 「ん~、……もう一回、行きましょう」
 「えっ、……ええ、何回でもやりますけど……」


 午前8時、マイナス7℃。
 寒風吹きすさぶ、利根川上流に架かる橋の上。
 足元には積雪、欄干は真っ白く凍結しています。

 手はこごえ、口が開かず、ろれつが回りません。


 「はーい、オーケーです。次のシーンに移動しま~す」
 若いディレクターが元気いっぱいに、声を張り上げます。
 「まだ屋外なの?」
 「はい、次は橋のたもで旅館を眺めながらのコメントをお願いします」

 この後の入浴シーンの撮影だけが、心のよりどころであります。


 群馬テレビ 『ぐんま!トリビア図鑑』。
 僕は、この番組のスーパーバイザー (監修人) をしています。
 が、時々、リポーターにも借り出されます。

 昨年からスタートしたシリーズ 「温泉王国ぐんま」 では、県内の温泉地を訪ね、その温泉にまつわる様々なトリビアを紹介しています。
 今回は、みなかみ町の上牧温泉 「辰巳館」 に行ってきました。


 辰巳館といえば、「上牧温泉は知らなくても辰巳館は知っている」 と言われるほどの人気旅館であります。
 人気の秘密は、“三つの温もり” にあります。

 温泉のぬくもり、人のぬくもり、炭火の温もり。

 炭火とは、「いろり献残焼(けんざんやき)」 のこと。
 山の幸を炭火で焼きながら食べる名物料理です。


 でも今回のトリビアでは、山下清と埴輪の謎に迫ります。

 “日本のゴッホ” とまで賞された山下清が、なぜ何度も上牧温泉を訪れたのか?
 残していった作品とは?

 そして、なぜ、館内いたるとこに埴輪が展示されているのか?
 湯舟の中に巨大な埴輪が鎮座している 「埴輪風呂」 が造られた経緯とは?


 前回、“モッコリ星人” の異名をいただいた温泉ライターが、今回も全裸で体当たりのリポートをいたします。
 ご期待ください!

 ※『ぐんま!トリビア図鑑』 温泉王国ぐんま vol.3 は、2月14日(火) 21時~の放送です。
  


Posted by 小暮 淳 at 11:10Comments(0)テレビ・ラジオ

2023年01月29日

吟遊詩人の夜


  悪い魂なんてない
  悪い考えがあるだけだ
  弱い魂なんてない
  弱い考えがあるだけだ
  お前の魂は
  何も諦めてなんかいない
  そんな器用に出来てない
  恐れるモノは何もない
  いいから
  泳ぎたいように 泳げ!
  踊りたいように 踊れ!

  ブギー!ブギー!ブギー!


 “尊敬する人” には、まま出会うことがあります。
 でも、“嫉妬する人” と会うことは、稀なことです。
 尊敬は、芸術、芸能、文学、音楽に限らず、作品に触れたときに抱く感情です。
 でも嫉妬は、その人の生きざまに触れたときに、湧き上がる情熱です。

 昨晩、久しぶりに魂が震えました。


 その人の名は、シンガーソングライターの西山正規さん。
 友人に誘われて、前橋市の 「クールフール」 というライブハウスへ行ってきました。

 ライブハウスへ行くなんて、何十年ぶりのことでした。
 でも、そこは、まるで時が止まってしまっているかのよう。
 薄暗く、大音響の中に立ち込める煙草の煙……
 その秘密めいて、不良っぽい雰囲気が、一気に僕の五感をあの頃に引きずり込みました。


 西山正規さんは、東京都出身。
 歳は、たぶん50代の後半。

 「一度、見てください」
 見る? 聴くじゃなくて、見るなの?
 友人に誘われた意味は、彼がステージに立った瞬時に分かりました。

 絶叫とも、雄叫びともつかぬ奇声を上げると、エレキギターをかき鳴らしながら、激しく語り始めました。


 ♪ 悪い魂なんてない! 悪い考えがあるだけだ! ♪


 独唱パンク?

 時に彼は床に寝転がりながら、客席のイスに飛び乗りながら、ギターをかき鳴らし、叫び続けるのです。
 その姿は、吟遊詩人のよう。


 あ! あああああ……
 胸が痛いのです。
 彼の言葉が、防御する間もなく、とがったキリの先のように刺し込んできます。

 え? なんだろう、この息苦しさは?
 いつから僕は言葉を、こんなにもオブラートにくるんで生きるようになってしまったのだろうか?


 時に彼は、放送コードに引っかかりそうな言葉を発します。
 でもそれは、誰もが心に隠し持っている凶器なのです。
 その凶器が、オブラートの被膜を少しずつ、はがしていくのです。

 ライブ終了後、僕は年甲斐もなく、彼に嫉妬していました。
 カッコイイとも違うし、あこがれとも違います。
 理想でもないし、羨望でもありません。

 ただ単に、彼の “生きざま” への素直な感情でした。


 「カンパーイ!」
 彼が僕のテーブルに来ました。
 「アニキ、ありがとう!」
 いつしか彼は、僕のことを、そう呼んでいました。

 初対面なのにね。
 ステージとのギャップに、ちょっぴり “萌え~” とした夜でした。
   


Posted by 小暮 淳 at 13:06Comments(0)ライブ・イベント

2023年01月28日

祝! 四万&伊香保


 今日は、四万温泉大使および伊香保温泉大使からの、うれしいお知らせです。

 すでに新聞等で発表されているため、ご存じの方も多いと思いますが、先日、リクルートが発行する旅行情報誌 『じゃらん』 が、「タイムトリップ気分が味わえるレトロ温泉街ランキング」 を発表しました。

 調査は近年の昭和レトロブームを受け、2022年12月にインターネットを利用して実施。
 アンケートでは、「タイムトリップしたような感覚が楽しめそうだと思う温泉地」 を選んでもらったといいます。
 これに全国の20~50代の1,088人が回答しました。

 結果、栄えある1位に輝いたのは、四万温泉 (群馬県中之条町) でした!
 さらに、4位に伊香保温泉 (群馬県渋川市) が選ばれました!

 やったー!
 ともに僕が 「温泉大使」 を務める温泉地です。


 『じゃらん』 によると、2温泉地の人気の理由を、こう分析しています。
 <四万温泉は、国内では珍しい 「飲泉」 ができる温泉地としても知られ、四万川に沿って建つ温泉街は、信号、コンビニ、ネオンもなく、昔ながらの落ち着いた街並みで静かな風情を満喫できる点が評価された。>
 <伊香保温泉は、万葉集や古今和歌集などにも登場する歴史の古い温泉。シンボルである365段の石段街で自分の 「誕生段」 で写真を撮ったり、両側の土産店、飲食店、昭和の雰囲気を残す遊技場をのぞいたり、散策が楽しめる。>


 でもね、僕は、四万温泉と伊香保温泉の “共通点” に気が付いてしまったのです。
 それは、ともに、アニメ映画 『千と千尋の神隠し』 の舞台になったとされる老舗旅館があるということ。
 そして、宮崎駿監督が訪れているということ。

 ということは、映画で感じた懐かしさが、2つの温泉地にはあるということではないでしょうか?
 恐るべし、ジブリ効果!
 ジブリ様様であります。


 ちなみに、2位は銀山温泉 (山形県)、3位は渋温泉 (長野県)、5位は黒川温泉 (熊本県) です。
 やっぱり、なんとなく、ジブリっぽい温泉地ですよね。
 、  


Posted by 小暮 淳 at 11:31Comments(0)大使通信

2023年01月27日

群馬の地酒と温泉めぐり


 「11年前にサインしていただいた本を持ってきました」
 突然、控え室に初老の紳士が現れて、本を差し出しました。
 「えっ、なぜ、これを?」

 平成9(1997)年に出版され、すでに絶版となっている僕の処女エッセイ 『上毛カルテ』(上毛新聞社) でした。
 サインには、“2012.8.7” と記されています。

 「先生のセミナーを受講した時に、いただいた本です」


 思い出しました!
 11年前のこの年の夏、7月から8月にかけて、前橋元気プラザ21 (前橋市) という会場で、「必ず行きたくなる群馬の温泉」 と題した温泉講座が開催されたのでした。
 講座は1回90分で、<初級編><中級編><上級編>と3日間行われ、3回の講座をすべて受講した人には、講師のサイン本が進呈されるという企画でした。

 「ということは?」
 「はい、すべて受講しました」


 昨日は、高崎市で開催された講演会の講師を務めてきました。
 前述の一件は、その講演開始前の出来事です。

 演題は 『群馬の地酒と温泉めぐり』。
 今回は、「ぐんまの地酒大使」 として、2時間の講話をしてきました。


 1部では、群馬県内の酒蔵についてと、群馬の地酒の特徴について話しました。
 2部では、酒をこよなく愛し、旅をしながら群馬の温泉をめぐった歌人・若山牧水の 『みなかみ紀行』 を講談風(?) に演じました。

 大正11(1922)年10月14日~28日の14日間、牧水は草津温泉から白根温泉まで、旅をしながら9つの温泉地をめぐっています。
 当然、のん兵衛の牧水ですから毎晩、酒を浴びます。
 では、どこで、なんという酒を呑んだのか?

 著書の 『みなかみ紀行』 には、酒の銘柄までは記されていません。
 ということで、現代の若山牧水こと “ヨッパライター” の僕が、牧水が呑んだであろう地酒を推測しながら旅をしてみました。

 聴講されたみなさん、いかがでしたか?
 牧水が呑んだであろう群馬の地酒を、呑みたくなったのではありませんか?

 温泉と地酒は、付きものです。
 群馬の温泉に浸かり、群馬の地酒を呑む。
 こんな愉快なことはありません!


 また機会があれば、「酒説 みなかみ紀行」 をお披露目したいと思います。


 ※『上毛カルテ』 は現在、月1回開催している「神社かみしばい」 の会場でのみ販売しています。
   


Posted by 小暮 淳 at 11:40Comments(0)講演・セミナー

2023年01月26日

雪見講演


 気温マイナス3℃、快晴。

 日本列島が強い冬型の気圧配置による最強寒波に覆われる中、元気に前橋駅を発ちました。
 新前橋駅より上越線に乗り換え。
 列車は、北を目指します。

 渋川駅を過ぎたあたりから、視界には白い物が目に映るようになりました。
 しだいに雪の量は増していき、沼田駅を過ぎると、あたり一面の銀世界となりました。

 午前9時過ぎ、後閑駅着。
 駅舎を出ると、視界もままならないほどの吹雪です。
 そんな中、みなかみ観光協会のKさんが車で迎えに来てくれていました。


 僕は15年ほど前から講演活動を行っています。
 県内ならば自分の車で行くことが多いのですが、冬場のみ、渋川以北の会場へは電車を利用することにしています。
 だって、この雪ですよ。
 ノーマルタイヤの僕の車では、ムリです。
 今回も正解でした。

 「大寒波が来るからって、準備をしていたんですけど、大したことはなかったですね」
 とKさん。
 「えっ、これで大したことがないんですか?」
 「ええ、思ったほどの積雪量ではありませんでした」

 さすが、雪国の人たちは慣れていらっしゃる。
 僕は車の中で、ただただ、その雪の量と寒さに、おびえ震えていました。


 今回の講演会場は、「月夜野びーどろパーク」。
 そして主催は、一般社団法人 「日本自動車連盟」。
 そうです、「JAF」 であります。

 JAFということは、この大雪で大忙しなのでは?
 開催されるのだろうか?
 と心配しながら会場へ。


 ビュービューと相変わらずの吹雪です。
 公園内の駐車場も見渡す限りの大雪原。

 それでも赤々とストーブが燃える屋内で、主催者様が出迎えてくれました。
 「こんな日に開催して大丈夫なのですか?」
 と訊けば、
 「社員は出払っていますが、今日お見えになる方々は、会員優待施設の関係者ですから」
 とのこと。

 そういうことだったのです。
 よく観光地などで、JAFカードを提出すると割引料金になる施設のことです。
 ということは、群馬支部主催の講演会ですから、県内の観光施設の人たちが聴講者になります。

 案の定、
 「ご無沙汰しています。その節は大変お世話になりました」
 と声をかけてくださる温泉関係者が何人かいました。


 無事、講演も終わり、会場をレストランに移し、懇親会となりました。

 「えー、本当は乾杯といきたいところですが、みなさん、お車でしょうからソフトドリングでお願いします」


 えっ、電車で来ている人もいるんですけど……
 しかも、ここは地ビールが有名にところじゃないですか……
 いえいえ、メニューを見れば地酒だって置いてありますけど……
 誰か、誰か~!
 「先生は、お車ではないんでしょう?」 って言ってよ!

 ああ、もどかしい……
 「ビールください」 って、手を挙げちゃおうかな……
 待てよ、僕は講師じゃないか……
 講師が自ら注文するなんて、はしたない……


 ということで、しっかりとチャンスを逃し、清く正しいランチタイムとなりました。

 ああ、のん兵衛は、これだからイヤですね。
 雪だから電車で来たのであって、呑みたくて電車で来たんじゃないのにね。

 ちょっぴり反省した雪見講演でした。
   


Posted by 小暮 淳 at 10:12Comments(0)講演・セミナー

2023年01月24日

輝ける才能の片鱗


 「月刊○○○の編集長をしていた小暮です」
 「あーーッ! お久しぶりです」
 イベント終了後に、僕は彼に声をかけました。
 約20年ぶりの再会でした。


 アーツ前橋 (前橋市) では現在、全国で開催中の萩原朔太郎の没後80年を記念した 「萩原朔太郎大全2022」 の関連企画として 『朔太郎と写真』 展が開催中です。
 展覧会では、朔太郎が故郷、前橋を中心に撮影した風景写真に加えて、朔太郎が撮影した同じ場所で時代を超えて新たに撮影した萩原朔美氏の写真、朔太郎のポートレートをモチーフとする吉増剛造氏のポラロイド写真、朔太郎という詩人の痕跡をたどり、制作された木暮伸也氏の写真により構成、展示されています。
 ※(当ブログの2022年11月30日 「詩人の目 レンズの眼」 参照)

 この企画展に関連したトークショーが前橋文学館 (前橋市) で開催さるというので、出席してきました。


 『詩人と写真』 と銘打たれたトークショーの出演者は、下記の3人です。
 萩原朔美 (映像作家、エッセイスト、多摩美術大学名誉教授、前橋文学館館長)
 吉増剛造 (詩人、萩原朔太郎賞選考委員)
 木暮伸也 (写真家)

 僕が、このトークショーに出席しようと思ったのは、チラシの中に木暮 (きぐれ) 君の名前があったからです。


 彼との出会いは、編集者とカメラマンとしてでした。
 当時、僕は生活情報誌の編集長をしていました。
 撮影現場にも、たびたび立ち会うことがあり、何人ものカメラマンとご一緒しました。
 その中でも、異彩を放っていたのが木暮君でした。

 確か、彼は僕より、ひと回りほど若かったと思います。
 どこが他のカメラマンと、違っていたのか?
 僕は写真のことは詳しくないので、感覚的な違いを感じたとしか言えませんが、人物や商品を撮る目線が違っていたと思います。

 クライアントの指示通りに、キレイに撮り、スムーズに仕上げるのが商業カメラマンとすれば、彼は常に、被写体を自分の中に取り込もうとしているように見えました。

 当時、彼は美術学校を卒業して、現代アートの研究所に入所していました。
 すでに、アーティストとして活動していたのです。
 商業写真を撮っていたのは、生活のためでした。


 あれから20年近い月日が経ちました。
 ことあるごとに、彼の名前は見かけていましたが、なかなか会いに行くチャンスがありませんでした。
 「これで、やっと会える!」
 そう思い、会場へ足を運びました。


 現在、彼の作品は、下記の2会場で鑑賞することができます。
 ぜひ、お出かけください。

 ●アーツ前橋 「朔太郎と写真」 ~2023年3月5日(日)
 ●群馬県立近代美術館 「アートのための場所づくり」 ~4月9日(日)
   


Posted by 小暮 淳 at 11:41Comments(0)ライブ・イベント

2023年01月23日

うわさの同級生コンビ


 今年も始まりました!
 毎月恒例の 「神社かみしばい」。

 昨日、伊勢崎神社にて、令和5年の幕開けを告げる新春スペシャル口演が開催されました。
 新春を飾るにふさわしく、おめでたい獅子頭が笛の音に合わせて、華麗に舞い踊りました。
 ご来社された方々には、お慶びと御礼を申し上げます。


 この 「神社かみしばい」 も3年目に入りました。
 さっかけは、興行主の石原之壽(いしはらのことぶき)君に、民話紙芝居の創作を依頼されたことでした。
 石原君と僕は、高校の同級生です。

 ということで、2年前の第1回口演の時から、地元では、ちょっとした “うわさ” になっていました。

 「あのジュンとダルマ (石原君の当時のあだ名) が、なんだか面白そうなことを始めたぞ!」
 フェイスブック等でつながっている同級生の間で、情報が駆けめぐったといいます。

 高校を卒業してから45年が過ぎています。
 ほとんどの同級生が、卒業以来、会ったことがありません。
 そんな彼ら (男子校でした) が、“うわさ” を聞きつけて、会場にやって来るようになりました。

 この2年間で、その数は10人以上になります。


 「ジュン、久しぶり!」
 と声をかけられても、すぐには誰だか分かりません。
 しかもコロナ禍で、マスクを着用しています。
 「俺だよ、俺!」
 と、マスクを取った顔の中に、面影を探します。

 「おおおおおーーー!」
 と、感動の再会を何度となくしてきました。


 「ジュンもダルマも、変わらねーな」
 「そんなことはないだろう? 俺は白髪で、ダルマは坊主だぜ!」
 「外見じゃ、ねーよ! やっていることがさ」
 ごもっともで……

 思い返せば、予せん会などの学校行事で、ステージに上がっていたのは、やっぱり僕と石原君でした。
 そんな旧友同士が、45年ぶりにタッグを組んだのです。
 であれば、音信不通だった同級生たちだって、物珍しさにやって来ます。


 昨日は、I 君が顔を出しました。
 彼と僕は、高校の3年間、同じクラスでした。
 2年前に、真っ先に駆けつけてくれた同級生の一人です。

 「ジュン、相変わらず、ご活躍だね」
 「えっ、何が?」
 「S (同級生) からメールが届いたぜ」
 と差し出したスマホには、僕が高崎のフリーペーパーに連載している記事が写っていました。
 「Sは高崎市に住んでるの?」
 「ああ、ジュンに会いたいってさ。今度、連れてくるよ」

 そう言って I 君は、会場で販売している僕の本を手に取りました。
 「今日は、これを買っていくよ」
 彼は、来るたびに、必ず僕の本を買っていってくれるのです。
 「また、同級生に自慢するんだ」
 I 君は、うれしそうに帰っていきました。


 アクションを起こせば、誰かが見ていてくれます。
 その誰かが、また誰かを連れ来てくれます。
 時には、大きな時間の流れを超えて、懐かしい人たちがやって来てくれます。

 雨にも風にも日照りにも負けず、今年も一年間頑張り通したいと思います。
 よろしくお願いいたします。


 ※次回2月口演は2月19日(日)。新作紙芝居の初上演となります。
  


Posted by 小暮 淳 at 11:17Comments(0)神社かみしばい

2023年01月21日

5つの神社に同一の神様


 高崎市民のみなさん、こんにちは!
 「ちいきしんぶん」 の1月20号は、もう、ご覧になりましたか?

 「ちいきしんぶん」 は、高崎駅を中心に10万部配布されているフリーペーパーです。
 僕は長年、このタウン誌に 「謎学の旅」 という紀行エッセイを連載しています。
 すでに一部は、2018年に出版された 『ぐんま謎学の旅 民話と伝説の舞台』(ちいきしんぶん出版) に収録されています。


 昨年11月より、このエッセイの中で 「消えた東村をゆく」 というシリーズが始まりました。
 たびたびブログでも話題にしているので、ご存じの方もいるかと思いますが、もう一度簡単に、ご説明します。

 群馬県にはかつて、5つの 「東村」 がありました。
 群馬郡東村、利根郡東村、佐波郡東村、勢多郡東村、吾妻郡東村です。
 しかし昭和と平成の大合併により、次々と消滅しました。

 なぜ群馬県には、こんなにも 「東村」 が存在したのか?


 第1話では、一番最初、昭和29(1954)年に前橋市との合併により消えた群馬郡東町を訪れました。
 そして第2話となる今号は、2番目の同31年に消えた利根郡東村を取材しました。

 すると……

 第1話で見つけた小さな疑問が、さらに大きくなりました。
 旧村内に点在する5つの神社の祭神 (その神社に祀ってある神) が、すべて同一人物だったのです。

 さらに、突き詰めていくと、「あづま」 というキーワードにたどり着きました!


 いよいよ、謎は核心に迫ります。
 次回は、佐波郡東村を訪ねます。
 ご期待ください。


 ※謎学の旅 「消えた東村をゆく」 は、「ちいきしんぶん」 のHPより閲覧できます。
   


Posted by 小暮 淳 at 12:07Comments(0)謎学の旅

2023年01月20日

呑んで残そう! 群馬の地酒


 新年のあいさつを兼ねて、群馬県酒造組合の事務局に立ち寄ってきました。
 僕は令和元(2019)年から 「ぐんまの地酒大使」 を委嘱されています。

 最新の 「群馬の地酒」 パンフレットをいただくと、残念なことに、また1つ酒蔵が姿を消していました。
 現在、組合に登録されている県内の酒蔵は26軒です。
 当然ですが、群馬県の地酒の数は、温泉ほど多くはありません。
 そして、酒蔵の数も全国順位は26位とのこと。

 それでも温泉同様、僕は群馬の地酒が大好きなので、エールを送り続けるために地酒大使になりました。


 ちなみに酒蔵数の全国トップは、ダントツ新潟県で約90軒。
 続いて2位は長野県(約70軒)、そして3位の座を約60軒の兵庫県と福島県がしのぎを削っています。

 ということで、一見地味な感じを受ける群馬の地酒ですが、一人でも多く人に魅力を知ってほしくてPR活動を続けています。


 事務局を出て、ロビーの地酒ディスプレーを眺めた時でした。
 ギョ、ギョギョギョーーー!
 この数は、なんだ!

 見ると、壁一面に描かれた “つる舞う形の群馬県” の地図上に、おびただしい数の地酒銘柄が書き込まれています。
 数えてみると……

 沼田地区6、中之条地区4、高崎地区4、富岡地区4、藤岡地区5、前橋地区7、伊勢崎地区3、桐生地区2、太田地区4、舘林地区5

 なんと、その数、44種!
 今はなき酒蔵の代表銘柄も含め、ズラリと並んでいました。


 「すみません、この地図は、いつ描かれたものですか?」
 すかさず僕は、事務員に訊きました。
 「古いですよね。昭和に書かれたものだと思いますよ」
 「数えたら44ありました。だいぶ減りましたね?」
 「ええ、こうして見ると、特に前橋が激減しました」

 確かに現在、残っている前橋地区の酒蔵は、たった2軒です。


 どうして地酒は、平成~令和にかけて急速に消えてしまったのでしょうか?

 いくつか理由は考えられます。
 ①嗜好の多様化により、日本酒以外の酒も吞むようになった。
 ②流通やネットショッピングなどの発達により、全国の酒が吞めるようになった。
 ③若者の飲酒離れ。


 でも僕は、こう思うのです。
 人々がものぐさになり、“旅をする人” が減ったせいではないかと?

 食とは、その土地の風土が育てたものです。
 海の土地には海のもの、山の土地には山のもの。
 酒も同じで、その土地でなければ食せないものだったはず。

 でも今は違います。
 その土地に行かなくても手に入る時代になりました。
 でも、それは本来の酒の呑み方とは違うと思うのです。

 だから、群馬の人は群馬の酒を吞む。
 そして、群馬に来たら群馬の酒を呑む。

 僕も他県へ行ったときは、必ず、その土地の酒をいただくようにしています。
 それが、旅の礼儀だし、旅の醍醐味だと思うからです。


 群馬県民のみなさ~ん!
 「呑んで残そう、群馬の地酒」
 他県民のみなさ~ん!
 「呑んで知ろう、群馬の地酒」

 よろしくお願いいたします。
   


Posted by 小暮 淳 at 11:56Comments(0)取材百景

2023年01月18日

「群馬といえば温泉」 から 「温泉といえば群馬」 へ


 <「群馬といえば温泉」 から 「温泉といえば群馬」 へ>

 これは来週、みなかみ町で開催される某企業主催による講演会の演題です。
 近年、このテーマで講話をすることが増えました。

 では、2つの言葉は、どこがどう違うのでしょうか?


 僕は2009年に出版した 『ぐんまの源泉一軒宿』(上毛新聞社) をはじめとして、今日までに10冊の温泉関連本を世に出してきました。
 しかも、すべて群馬県の温泉です。

 「たった1つの県で、こんなにも温泉の本が出せるんだぞ!」
 「それだけ群馬は、すごい県なんだぞ!」
 という郷土愛から書きました。

 だから最初は、県の観光PRへの不満から始まった実力行使だったのです。
 「あれもある」 「これもある」
 という割には、結局、他県に秀でたモノなんてねーじゃねーか!

 「温泉もあります」
 と言われた時に、カチンと来ました。
 「温泉も」 だ?

 何を言ってるんだ!
 「温泉しかないじゃないか!」
 でもね、“しか” というのは最強の誉め言葉なんだよ!

 すると、こう言い返されました。
 「“しか” ということはないでしょう。群馬には温泉以外にも、いいところがたくさんあれます」
 だと!

 売り言葉に、買い言葉。
 これにより僕と県の全面戦争が始まったのであります。
 ※(勝手に僕がケンカを仕掛けて、勝手にムキになっただけですけど)


 あれから14年が過ぎました。
 ことあるごとに僕は、「群馬といえば温泉」 と言い続けて来ました。
 ところが……
 ここ数年、群馬の温泉に対する流れが変わって来たのです。

 それは、県外者からの目です。


 これまでも県外の企業や自治体から講演依頼を受けることはありました。
 そんな時は、当たり障りのない温泉の基礎話をしてきました。
 でも、ここ数年は変わりました。

 「ぜひ、群馬の温泉の話を聞かせてください」
 と、テーマの指定まで受けるようになったのです。
 「いいんですか? マニアックな話になりますよ?」
 と言えば、
 「だって、温泉といえば群馬じゃないですか!」
 と返されました。

 やったー!
 ついに、この時が来たと思いました。

 「群馬といえば温泉」 は、内から外へのメッセージ。
 でも 「温泉といえば群馬」 は、外から内へのエールであります。

 これは僕にとって、活動への励みになりました。
 いわば、このために長年、取材活動を続けてきたのですからね。

 努力が報われた瞬間でもありました。


 群馬県民のみなさん!
 あなた方が思っている以上に、他県の人たちは群馬が日本を代表する温泉県だと知っています。
 もっと、自信を持ってください!
 胸を張って、大きな声で言ってください。

 「温泉といえば群馬」 と!
  


Posted by 小暮 淳 at 11:14Comments(2)温泉雑話

2023年01月17日

青春の脱け殻


 野暮用があり、実家に顔を出してきました。
 すでに僕が子どもの頃に住んでいた家は無く、両親も他界し、兄夫婦が、建て替えた家に暮らしています。

 現在、僕が暮らしているA町と実家のあるK町は同じ市内ですが、5キロほど離れています。
 いつもは、なんらかの荷物が伴うため車で行き来をしていますが、天気も良いので日がな一日、のんびりと自転車に乗って行ってきました。


 5キロの間には、僕が通っていた中学校があります。
 当然、周辺は学区内ですから、よく遊びに行った同級生たちの家がありました。

 「確か、ここにT君の家があったはずだけど……」

 半世紀前の記憶をたどりながら、友だちの家を探すのは楽しいものです。
 住宅街も路地裏も自転車ならば、スーイスイ!


 でも、ほとんどの同級生の家が見つかりませんでした。
 時代の変遷ともに区画整理が進み、新しい道路が通り、記憶の中の地図は、まったく使い物になりませんでした。

 「そうだ、Aちゃんの家は、まだあるだろうか?」
 と、元カノの顔が浮かびました。
 初恋ではないけれど、とても仲良しで、中学~高校と付き合っていた女の子です。

 デートをした帰り道、よく家の前まで送り届けた記憶があります。
 その記憶をたどりながら、住宅街の中をウロウロ、ウロウロ……

 「確か、大通りから一本南に入った道の……、そう、真ん中あたりの家だったよな……」


 あった! ありました!
 なんと、今でも門柱には、彼女の旧姓の表札が出ています。

 でも……
 家は完全なる廃墟でした。

 伸び放題の庭草が枯れ果てて、ガラス窓越しに見える障子も破れ放題です。


 確か、お兄さんがいたと思ったけど、実家は継がなかったようです。
 両親も年齢を考えると、すでに他界していることでしょう。
 風の便りで彼女自身は、はるか昔に嫁いで、他の土地で暮らしていることは知っていました。

 しばし僕は、呆然と立ち尽くしながら、その廃墟を眺めていました。


 「じゃあ、また明日!」
 「おやすみなさい」

 半世紀前に交わされた言葉たちが、よみがえります。
 そして、その言葉たちは、次から次へと廃墟の中に吸い込まれて行きました。

 まるで青春の脱け殻のように……
   


Posted by 小暮 淳 at 12:10Comments(0)つれづれ

2023年01月16日

高齢者および予備軍に告ぐ!


 年を重ねて (還暦を過ぎて) 得をしたと思うのは、シニア割引が使えること。
 通常は1,700円もする映画が、1,000~1,100円で観られるのですから、このサービスを利用しない手はありません。

 もちろん僕も60歳の誕生日を過ぎて、すぐに 「シニアカード」 を作りました。


 シニアカードを持っている映画館の場合、窓口でカードを提出すれば、そのままサービスを受けられます。
 が!
 シニアカードのない映画館の場合、シニア料金を払うには、身分証明書の提示が必要となります。

 ということで、先日、運転免許証を持参して、映画館に入りました。
 「シニアでお願いします」
 「はい、1,100円になります」
 と何の疑いを持たずに係員の女性は、僕にチケットを渡しました。

 「あっ、免許証は?」
 「結構です。お入りください」

 年齢確認をしないとは、なんという職務の怠慢だ~!
 と一瞬、思ったのですが……
 悲しいかな、僕はシニア料金適合年齢である60歳から、すでに5年も時が過ぎていたのですね。
 今年から世間で言う、“前期高齢者” という正真正銘の高齢者の仲間入りをすることを、すっかり忘れていました。

 係員の女性にしてみれば、
 「身分証明書なんて提示されなくても、見た目で高齢者って分かりますから」
 ということなんでしょうね。

 でもね、嘘でもいいからさ、提示を求めてほしかったな。
 映画館だって、サービス業でしょう!?
 もう少し、おべっかを使ってよ、ね!
 「あら、お客さん、シニアなんですか? お若いので分かりませんでした」
 とかなんとか言ってくれたら、その日一日の気分がいいじゃありませんか!


 ということで、ここからは最近聞いた高齢者および予備軍たちの “あるあるネタ” を紹介いたします。

 僕と同世代のH (女性) さんは、その日、おしゃれをして、いつもより少し大きめのイヤリングをして出かけたといいます。
 すると、知り合いの若い男性から、
 「それ、補聴器ですか?」
 と言われて、その日は一日落ち込んだそうです。

 同世代のMさん (女性) の場合は、笑うに笑えない誤解を招きました。
 役所へ母親の介護認定の申請に行った時のことです。
 いきなり職員に、
 「ご本人ですか?」
 と言われたといいます。

 M女史いわく、
 「本人が来れるわけ、ねーだろうが!」
 ごもっともです。


 高齢者および予備軍のみなさ~ん!
 自分が思っているほど、我々は若くないんですよ~!
 若いのは、中身だけ。
 包んでいる外身は、正真正銘の高齢者だってこと、もっと自覚しましょうね。

 でないと、若い人たちから “年寄りの冷や水” なんて言われてしまいますよ。
 年相応に生きていくのが、一番賢明だと思います。


 ※国連の世界保健機関 (WHO) の定義では、65歳以上のことを高齢者としています。65~74歳を前期高齢者、75歳以上を後期高齢者と呼びます。
  


Posted by 小暮 淳 at 12:04Comments(0)つれづれ

2023年01月15日

「玉村かみしばい」 開催決定!


 “アクションを起こす”

 若い頃から、そう自分に言い聞かせて生きてきました。
 人生で、二者択一の選択を迫られる場面では、必ず “動き” を伴う手段を選びました。

 成功するも失敗するも、確率は2分の1。
 だったら、やらずに後悔するくらいなら、やって後悔したほうが、その後の人生の糧(かて)になると思うからです。

 2年前に高校の同級生から誘われて始めた、伊勢崎市で毎月開催している 「神社かみしばい」。
 迷うことなく、“アクションを起こす” という理由から制作と運営の協力を引き受けました。


 アクションは、一朝一夕には伝わりません。
 コツコツ、コツコツと続けることに、意味があります。
 そして、忘れてはならないのが、「どこかで誰かが見ている」 ということ。

 みなさんは、覚えていますか?
 昨年の6月、突然、2人の首長が街頭紙芝居の会場に現れた話を?
 ※(当ブログの2022年6月20日 「2つの舞台と2人の首長」 参照)

 視察に来られたのは、伊勢崎市の市長と、隣接する玉村町の町長でした。


 あれから半年。
 玉村町からオファーが来ました!
 「玉村町でも紙芝居をやってほしい」 と。

 ということで、下記の場所と日時で、第1回 「玉村かみしばい」 を開催することになりました。
 もちろん、玉村町にまつわる伝説や民話をもとにした創作紙芝居の上演を予定しています。

 尚、開催時間については、まだ暫定的なものです。
 詳細が決まり次第、追ってご報告いたします。


 玉村町のみなさ~ん、紙芝居がやって来ますよ~!
 楽しみに待っていてくださいね!



     「玉村かみしばい」 第1回口演
 
 ●日時  2023年3月21日(火・春分の日)
        10時、11時、12時、13時 (予定) 
        ※屋外開催 (悪天候時は室内)
 ●会場  玉村八幡宮 境内 (群馬県佐波郡玉村町下新田1)
 ●入場  投げ銭制 ※ペイペイ可
 ●問合  壽ちんどん宣伝社 TEL.090-8109-0480
  


Posted by 小暮 淳 at 11:30Comments(4)神社かみしばい

2023年01月13日

曼珠沙華のごとく


 「売れない詩ばかり書いて! 詩では、お腹はいっぱいになりません」
 「売れるものが、世の中で大切なものだとも限りません」

 いつかどこかで、交わされたような会話に、我が身がつまされました。


 詩人・萩原朔太郎の没後80年を記念して、企画展 「萩原朔太郎大全2022」 が全国52か所の文学館や美術館、大学等で開催中です。
 映画 『天上の花』 も、記念事業として制作されました。

 原作は、萩原朔太郎の娘である萩原葉子の同名小説 『天上の花 ―三好達治抄―』。
 監督/片嶋一貴、主演/東出昌大、入山法子


 すでに原作を読んでいたため、さっそく映画館に足を運んできました。
 見終わった感想は、“原作以上”。
 これは、あくまでも僕個人の感想ですが、誤解を承知でコメントするならば、「美しい映画」 だったということ。


 昭和になってすぐのこと。
 萩原朔太郎を師と仰ぐ三好達治は、朔太郎家に同居する美貌の末妹・慶子と運命的に出会い、たちまち恋に落ちてしまいます。
 しかし達治は慶子の母に、「貧乏書生」 とあなどられて拒絶され、失意の中、佐藤春夫の姪と見合い結婚をします。
 時は過ぎ、昭和17年に朔太郎が病死をして2年後。
 三回忌で再会した達治は、慶子に16年4か月の思いを伝え、妻子と離縁し、慶子を家に迎えます。


 ここまでの話だと純愛のようにですが、その後、壮絶なる苦悩の日々が2人に訪れます。
 達治のDV (ドメスティックバイオレンス) です。
 これが僕が “誤解を承知で” と付け加えた、美しさなのであります。

 「愛しているから殴る」 という、到底、現代社会では理解されない作家特有の理論を達治は振りかざします。
 「殴られることに慣れていく自分が怖い」 と、慶子もおののきます。
 さらに、貧困が2人の亀裂に拍車をかけていきます。

 どうにもならない負のスパイラルから抜け出せない2人がもどかしくもあり、時に羨ましくも映るのはなぜでしょうか?


 実は僕、上映中、終始、自分の過去と重ね合わせていました。
 三好達治と僕では、比較にはならないのですが、“貧困” には苦しんだ時期がありましたからね。
 さすがに、暴力には走りませんでしたが、酒には逃げました。

 そして、追い打ちをかけるように浴びせ続けられる 「売れるもの」 という幻想のような現実。


 現在、朔太郎や達治よりも、はるかに長生きをして、いまだ文筆の仕事にしがみついている自分がいます。
 答えの出ない人生という点では、偉人たちも同じなのだと思えた映画でした。


 ちなみに 「天上の花」 とは曼珠沙華 (彼岸花) のことで、“天から降りてきた花” の意。
 花言葉は 「想うはあなただけ」。
   


Posted by 小暮 淳 at 11:43Comments(0)シネマライフ

2023年01月11日

「神社かみしばい」 新春スペシャル公演



 「あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします」
 と、座長が申しております。


 早いもので、毎月開催している 「神社かみしばい」 も丸2年が経ち、今月から3年目に入りました。
 新年第一回目となる1月口演は 「新春スペシャル公演」 と銘打ち、おめでたくもにぎやかに、獅子頭舞いが登場いたします。

 新しい年のスタートに、景気をつけましょう!
 スタッフ一同、ご来社をお待ちしております。


 演/石原之壽 (壽ちんどん宣伝社 座長)
 文/小暮 淳 (フリーライター)
 画/須賀りす (画家・イラストレーター)


 
   「神社かみしばい」 令和5年新春スペシャル公演
 
 ●日時  2023年1月21日(土)、22日(日)
       10時、11時、12時、13時 
       ※屋外開催 (悪天候時は室内)
 ●会場  伊勢崎神社 境内 (群馬県伊勢崎市本町21-1)
 ●入場  投げ銭制 ※ペイペイ可
 ●問合  壽ちんどん宣伝社 TEL.090-8109-0480

 ☆小暮・須賀は22日のみ在社いたします。
  


Posted by 小暮 淳 at 10:59Comments(0)神社かみしばい

2023年01月10日

銀蛇降臨


 昔、子どもの頃。
 オフクロの財布には、ヘビの抜け殻が入っていました。

 「お金が貯まるから」
 とのことですが、どうみても、お金が貯まった様子はなく、いつもオフクロは内職をしていました。
 たぶん、お守りのようなものだったのだと思います。


 なぜ、ヘビの抜け殻を持つと、金運がアップすると信じられているのでしょうか?

 一説には、ヘビは弁財天の使い、もしくは化身だといわれています。
 弁財天は、金運・財運の守り神です。

 またヘビは、脱皮をして成長することから、細く長く生きる長寿の象徴ともいわれ、昔から抜け殻は縁起物としてお守りにされてきたようであります。


 ということは、ヘビの夢だって、絶対にいい夢のはずです。
 ところが、いまだかつて、ヘビの夢なんて見たことがありませんでした。

 が、がーーーッ!!!
 つ、つ、ついに! 見たのです!!

 しかも、銀色に輝く、おびただしい数のヘビが現れました。
 それも、線路の枕木よろしく、一列に行儀よく、並んでいるのです。


 さっそく、夢占いでチェックしました。
 すると、案の定!
 今年の行方を占う、素晴らしい夢だったのです。

 まず、たくさんのヘビが現れる夢は、運気上昇を意味します。 
 自身が実感できるほどに仕事や学業がうまくゆく、幸せな人生の前兆とのことでした。


 しかも僕が見たのは、銀色のヘビであります。

 銀色のヘビが現れる夢は?
 「第六感が優れているとき。その直感は間違っておらず、成功につながる」
 とのこと。

 こいつぁ~、春から縁起がええわいの~!


 今年は、盛りだくさんの新しいことが待っています。
 そのほとんどは、まさに僕の直感による発想から生まれたものです。

 がんばれ、前期高齢者!
 ネバーギブアップ!
 挑戦は続くよ、どこまでも!


 銀色のヘビのペンダントでも買おうかな……
  


Posted by 小暮 淳 at 11:55Comments(2)夢占い

2023年01月09日

不思議な年賀状


 めっきり、届く年賀状が少なくなりました。
 したがって、出す年賀状の数も減りました。

 僕だけなのかな?と思って調べてみると、全国的に年賀状離れが進んでいるようです。


 ピーク時 (2003年) の発行枚数は、約44億枚。
 昨年の発行枚数は約16億枚ですから、約3分の1に減りました。
 この減少率は、そのまま僕が昨年購入した年賀状の枚数と合致します。

 では、なぜ、年賀状を出さない人が増えたのでしょうか?

 一番の理由は、メールやSNSなど通信手段の普及です。
 若い人ほど、手軽で慣れている手段で、新年のあいさつを済ませてしまうことでしょう。


 次に考えられるのが、義理で増えてしまった人間関係の整理ではないでしょうか。
 年賀状じまい (終活年賀状) などと呼ばれる、年賀状のやりとりを辞退する動向です。
 高齢者に多いようですが、僕のところにも数年前から終活年賀状が届くようになりました。

 3番目の理由は、やっぱりコスト削減でしょうね。
 ハガキの値段も上がっていますし、年末の忙しい時期に年賀状を書くのも大変です。
 手間と費用の問題は大きいと思います。


 僕は、もう一つの理由も関係していると思います。
 それは、個人情報の問題。
 昔のように、相手の住所を簡単に知れなくなったということです。

 たぶん、学校や会社でも住所録なんて配布していないでしょうからね。


 そう考えると、時代の流れを感じざるを得ません。
 これまた昭和の風景が遠のいていくようで、寂しさを感じます。

 でもね、面倒くさくても、手間と費用がかかっても、通信手段が発達しても、年賀状の良さは健在です。
 それは年賀状が “過去と現在をつなぐタイムメール” だからです。

 今年もタイムメールが届きました。


 僕は、いまだに年賀状のみの付き合いをしている同級生が何人かいます。
 中学、高校の卒業以来ですから半世紀近くも毎年、一回だけ近況報告のみをしている人間関係です。
 中には卒業以来、今日まで一度も再会をしていない同級生もいます。

 なのに、年賀状だけは来ます。


 その中に、小学5年生の時に転校した女の子がいます。
 そして、転校した翌年から年賀状の交換を続けています。
 東京に引っ越して、結婚して、現在は神奈川に暮らしています。
 子どもも生まれ、その子どもが結婚をして、孫が生まれたといいます。

 今年の年賀状には、こう書かれていました。
 <お変わりありませんか? 3月に3人目の孫が生まれ、近所に転居してきたため、孫育てに奮闘中です。>

 転校してから54年間、一度も会ったことのない彼女ですが、少女から乙女になり、妻になり母になり、そして、おばあちゃんになった姿が、こうして毎年、一枚の年賀状に記されて来るのです。


 不思議ですね。
 僕が知っている彼女は、最後にクラスの送別会で見た、そばかすだらけのショートヘアの女の子なんですから。
 僕が歳を重ねて老いてきたように、彼女のイメージもモンタージュ写真のように僕の脳裏で合成して楽しんでいます。


 ちえみちゃん、いつか会えたら、また、缶蹴りをして遊ぼうね!
   


Posted by 小暮 淳 at 12:08Comments(0)つれづれ

2023年01月08日

なぜ今 『ヨー!サイゴン』 なのか?


 「今日、小暮さんに会えるというので、改めて 『ヨー!サイゴン』 を読み返してきました」

 Tさんにお会いすると開口一番、そう言われました。
 Tさんは70代前半の男性。
 現在は定年退職され、悠々自適な生活をされています。


 『ヨー!サイゴン』 とは、24年前に僕が自費出版したベトナム旅行記です。
 なぜか今になって、この本が、たびたび話題に上がります。
 昨年暮れにも、某アナウンサーとの電話で、この本が話題になりました。
 ※(当ブログの2022年12月30日 「こいつぁ~、暮れから縁起がいいわい!」 参照)


 「コロナが終息したら、ベトナムへ行こうと思います。ぜひ現地で、生のアオザイを見てみたくなりました」
 アオザイとは、ベトナム女性の民族衣装です。
 僕は著書の中で、こう記しています。

 <アオザイは完全オーダーメイドである。バスト、ウエスト、ヒップ以外にも、数十箇所を採寸して作られる。体のラインおよび下着のラインまでもシルエットとして強調されるこの衣装は、余程のボディラインの持ち主でなければ着こなせない。>

 「いゃ~、読んでいて興奮しました。絶対にベトナムへ行きます!」


 Tさんは定年退職後、日本語教師の資格を取り、60代は中国へ渡り、日本語学校で働いていました。

 「私の人生はね、クソみたいな60年間だったんですよ。ただ生活のために働き、上司に頭を下げ続けた人生でした。『いつか辞めてやる』 と、いつも思って生きていましたが、ついに定年まで勇気がなかった」
 そして、こうも言います。
 「こんな意気地なしの自分と、残りの人生を過ごすのかと思ったら死にたくなったんです。でも、そこで初めて気づいたんですよ。死ぬくらいなら、もう一度、人生をやり直してみようって。だから家族に反対されても、中国へ行ったんです」

 70歳を前に帰国。
 また、「元のありふれた毎日が戻ってきてしまった」 といいます。
 そんな時、知人に誘われ入った居酒屋で、僕の本と出合ったといいます。


 「読み返して、改めて思いました。実によくできている小説です」
 「これはエッセイですよ!」
 「いや、私は小説として読みました。特にラストシーンが素敵です」
 「ラストシーン?」
 すでに書いた本人は忘れています。

 「プンさんとの別れのシーンですよ」
 「プンさんって、誰でしたっけ? ……ああ、見送りに来た旅行会社の女性ね」
 おぼろげに、最後の場面を思い出しました。
 「出迎えてくれた時はTシャツとジーパンだったのに、見送りの時はアオザイを着ていたんですよね。あのシーン、グッときました」


 <今日は目が覚めるような鮮やかなブルーのアオザイを着ている。入国初日に出迎えてくれたときは、確かTシャツとジーンズ姿だった。その気配りに感謝するとともに、つくづくアオザイという衣装は女性をより美しく引き立てる魔法の衣装だと思った。今日のプンさんは、あの日の百倍は美しい。>


 Tさんは、ビールのグラスを手に取り、かかげました。
 「ヨー!」
 ベトナム語で “乾杯” のことです。
 「ヨー! 今年もよろしくお願いします」
 と僕も応えました。



 『ヨー!サイゴン』 (でくの房/500円) は、一般書店では販売されていません。
 毎月、伊勢崎市で開催している 「神社かみしばい」 の会場にて、販売しています。
 ご希望の方は、ぜひ伊勢崎神社へお越しください。
 今月の開催は、22日(日) です。
   


Posted by 小暮 淳 at 12:38Comments(0)著書関連

2023年01月07日

昭和大好き! GS歌合戦


 昨日、初Hを済ませました。
 といっても、“姫始め” のことではありませんよ!

 ご存じ、我らのたまり場、酒処 「H」 であります。


 まあ、何度も言うようですけど、カウンター8席のみの “どじょうの寝床” のような細くて狭くて小さい店ですからね。
 あっという間に、満席となります。

 僕は毎回、一番乗りを目指して午後4時過ぎには店に入るのですが、惜しくも新年一番乗りにはならず。
 すでに先客がいました。

 「残念、先を越されました」
 と言えば、常連のKさんは、
 「今来たところです。早く来ないと、ここは前橋一、座れない店で有名ですからね」
 「まるで、イス取りゲームのようですね」
 と笑いました。

 すると、ママがひょっこり厨房から顔を出して、
 「残念でした。一番乗りはSさん。2時半に来て、3時半には帰って行きました」
 とは、殺生なことで。
 開店は午後4時ですからね。
 Sさんは、完全なるルール違反であります。

 ママは、仕込み中を襲われたようです。


 とかなんとか、「おめでとう!」 「今年もよろしく!」 と言いながら呑んでいると、1時間後には満席状態に。
 散歩の途中に 「トイレを貸して」 と立ち寄った常連まで、そのまま居ついて、立ち呑みを始める始末です。

 「H」 は、今年も絶好調であります。


 午後8時を過ぎると、客らのテンションもマックスになり、いよいよ、恒例の歌合戦の始まりです。
 客層は、昭和20~30年代前半生まれですからね。
 当然、どっぷり昭和大好き人間たちであります。

 その都度、演歌だったり、ムード歌謡だったり、テーマは変わるのですが、なぜか昨晩はGS (グループサウンズ) しばりとなりました。
 ブルーコメッツ、タイガース、テンプターズ、スパイダース、ワイルドワンズ、オックス、カーナビーツ……


 「なぜか、みんな知ってるし、みんな歌える」
 「昭和って、そういう時代だったんだよ」
 「だって、テレビは茶の間に1台だもの」
 「そうそう、だから家族全員で、同じ番組を観ていた」
 「歌番組も多かったよね」
 「だからヒット曲は、子どもからお年寄りまで、みんなが歌えたんだ」

 歌は世に連れ、世は歌に連れて、令和の歌声酒場は大盛り上がりであります。

 「では最後に、ジュンちゃんも一曲、お願いします」
 とマイクが回ってきました。
 もちろん、GSにはGSで返します。


 「それでは、みなさん、ご一緒に!」

 ♪ 初めての 口づけに 知った恋のよろこびよ
    帰れ僕の この胸に 
    My baby Want you Want you see again ♪   

 ザ・ジャガーズの 「君に会いたい」 で、締めくくりました。 


 のん兵衛のみなさん、今年も大いに、吞み明かしましょう!
  


Posted by 小暮 淳 at 12:20Comments(0)昭和レトロ

2023年01月06日

ただ今、八合目!


 山登りをする人なら分かると思いますが、登頂した瞬間よりも、下山後に振り返り、たった今登ってきた山の全景を仰ぎ見た時のほうが、感慨は無量になります。
 登頂は行程の途中であり、下山後にこそ制覇の喜びを味わえるものだからです。

 以前から僕は、 “本の出版は登山に似ている” と言い続けています。


 また新たな出版という、長い長い山登りが始まりました。

 取材をして、文章を書き、原稿にする。
 ここまでが登山でいえば、山頂を目指す上りです。

 原稿が出そろった時点が、登頂といえます。
 現在、僕は八合目付近にいます。
 もう、ひと息で原稿がそろい、山頂に立てるところまで来ています。


 でも登山は上りよりも、下りのほうが慎重になります。
 危険も伴いますから、ここからはチームプレーとなります。
 足元を確かめながら、声を掛け合い、ルートを間違えないように、細心の注意を図ります。

 ということで昨日、第1回目の出版会議が開かれました。
 いわば、登頂前に下山ルートの確認を始めたことになります。


 何ページになるのか?
 本文は何章に分けるのか?
 どのようなページ割になるのか?
 グラビアは付けるのか?

 まだ今の段階では、そこまでです。
 すべての原稿がそろった時点で、タイトルや装丁、帯コピーの制作に入ります。


 早くも活気が沸いてきました。
 ワクワク、ドキドキする新年のスタートです。

 春かな? 夏かな?
 順調に進めば、そんなに待たずに、読者のみなさんのもとへ届けられると思います。

 がんばります!
  


Posted by 小暮 淳 at 12:06Comments(0)著書関連