2010年09月23日
謎学の旅⑦ 「化粧をする薬師像」
「そりぁ、昔は、木がうっ蒼と繁った淋しいところだったよ」
畑仕事の手を休めて、おじいさんはお堂の方を指さして、言いました。
前橋市元総社町。
元総社北小学校の南側。牛池川に架かる薬師橋のたもとに、奇妙な石像が鎮座しています。
数年前、はじめて通りかかったときは、その異様さに「ギョッ」としたものです。今も変わらず、顔に白粉(おしろい)を塗りたくり、赤い口紅をつけています。
地元では化粧薬師と呼ばれているそうですが、なぜ化粧をするようになったかには、こんな悲しい伝説が残っています。
今から4~500年前のこと。
牛池川に大蛇が棲みついて、嫁入り前の娘を食べさせないと暴れ、台風が通ったあとのように田畑を荒らしていました。
村人たちは、泣く泣く順番で、自分たちの娘たちを大蛇に差し出していたといいます。犠牲になった娘をあわれんで、石の薬師像を造り、白粉と口紅をつけて供養したとのことです。
以来、嫁に行く娘は、ここを避けて通るようになり、離縁を願う女にはご利益を授けたことから、別名を「縁切り薬師」とも呼ばれています。
「地元では毎年8月の祭日に掃除をして、さい銭をあげて、お参りをしているだけ。なのに薬師さんは、いっつも化粧をしているんだいねぇ。不思議だいねぇ……」と、おじいさんは首をかしげました。
さらに、こんなことも言いました。
「しばらく見に行かないと、さい銭が貯まっているんだよ。誰かが、縁を切りに来ているんだね」
そして、願いが叶ったお礼に、化粧をして行く。
小さな石仏を奉納して行く人もいるらしい。
「最近、またよく薬師さんの場所を聞かれるんだよ。若い女性だったり、年配だったり、いろいろだ。今の人は簡単に離婚しちゃう人が多いようだけど、自分から別れを言い出せずに願掛けに来る女性が、こんなにもいるんだいね」
お堂のなかを覗き込むと、真新しい小さな石仏が何体もありました。
そして、白粉と口紅も、ごく最近に塗られたもののようです。
また1つ、縁が切れたのですね。
謎学の旅はつづく。
畑仕事の手を休めて、おじいさんはお堂の方を指さして、言いました。
前橋市元総社町。
元総社北小学校の南側。牛池川に架かる薬師橋のたもとに、奇妙な石像が鎮座しています。
数年前、はじめて通りかかったときは、その異様さに「ギョッ」としたものです。今も変わらず、顔に白粉(おしろい)を塗りたくり、赤い口紅をつけています。
地元では化粧薬師と呼ばれているそうですが、なぜ化粧をするようになったかには、こんな悲しい伝説が残っています。
今から4~500年前のこと。
牛池川に大蛇が棲みついて、嫁入り前の娘を食べさせないと暴れ、台風が通ったあとのように田畑を荒らしていました。
村人たちは、泣く泣く順番で、自分たちの娘たちを大蛇に差し出していたといいます。犠牲になった娘をあわれんで、石の薬師像を造り、白粉と口紅をつけて供養したとのことです。
以来、嫁に行く娘は、ここを避けて通るようになり、離縁を願う女にはご利益を授けたことから、別名を「縁切り薬師」とも呼ばれています。
「地元では毎年8月の祭日に掃除をして、さい銭をあげて、お参りをしているだけ。なのに薬師さんは、いっつも化粧をしているんだいねぇ。不思議だいねぇ……」と、おじいさんは首をかしげました。
さらに、こんなことも言いました。
「しばらく見に行かないと、さい銭が貯まっているんだよ。誰かが、縁を切りに来ているんだね」
そして、願いが叶ったお礼に、化粧をして行く。
小さな石仏を奉納して行く人もいるらしい。
「最近、またよく薬師さんの場所を聞かれるんだよ。若い女性だったり、年配だったり、いろいろだ。今の人は簡単に離婚しちゃう人が多いようだけど、自分から別れを言い出せずに願掛けに来る女性が、こんなにもいるんだいね」
お堂のなかを覗き込むと、真新しい小さな石仏が何体もありました。
そして、白粉と口紅も、ごく最近に塗られたもののようです。
また1つ、縁が切れたのですね。
謎学の旅はつづく。
Posted by 小暮 淳 at 20:34│Comments(0)
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