2011年10月29日
月夜野温泉 みねの湯 「つきよの館」⑦
<“常宿” という言葉に、そこはかとない憧れがある。僕の敬愛する文人たちは、みんな温泉が好きで、滞在する宿を持っていた。いつか雑文書きから脱したら、気の置けない宿に逗留して、長編小説でも書き下ろしてみたいものである。 (中略) 常宿なんて言ったらおこがましいが、年に何度かお邪魔している、僕のお気に入りの宿である。>
上記の文章は、かつて僕が月刊 「Deli-J」 に連載していたエッセー『源泉巡礼記』第12話(2007年11月号) で「つきよの館」を紹介した記事の冒頭部分です。
あれからさらに4年の月日が経っていますが、「つきよの館」 は今でもよく訪ねている宿であります。
どーしてなんでしょうかね?
たぶん女将をはじめとして、スタッフの気さくでアットホームな姿が、心をひきつけるのかもしれませんね。
「ただいま」 と言いたくなるような雰囲気が、いつも宿全体に充満しているんですよ。
小さなお宿だけど、家族のように、みんなで一生懸命力を合わせている姿に、お客の方がが心を打たれてしまうんでしょうね。
縁は異なもの不思議なもの、と言います。
実は、僕が「つきよの館」へ通うようになって数年経った頃です。
女将とのたわいない話の中で、思わぬ人生の接点を見つけてしまったのです。
それは、僕の家内と女将が、若かりし頃、遊び仲間だったということ!
結婚前のことですから20数年も前のことですが、さっそく家に帰って家内にそのことを告げると、彼女もしっかりと女将のことを覚えていました。
そして、次に宿を訪ねたときに女将にそのこと話したときから、“Xデー” のカウントダウンが始まったのであります。
そして昨日、ついに念願かなって、そのXデーがやってまいりました。
「群馬県民の日」 ということもあり、学校が休みの末娘と家内を連れて、「つきよの館」 へと向かいました。
いやいや、家族で温泉へ行くなんて、いったい何年ぶりでしょうか?
僕にとって温泉地が仕事場になってしまった10数年前から、一度も家族とは温泉に行ってないはずです。
ついに、僕の聖地である “仕事場” へ家族を連れて行く日が来てしまいました。
やっぱり、なんだか、とても、照れくさいものです。
「Xデー」というイベントがなければ、とてもじゃないが、無理です。
ご対面~!
いゃあ、その瞬間は、それはそれは不思議な光景でしたよ。
女将のことを、いきなり 「○○ちゃーん」 と呼ぶ家内。
家内のことを 「○ー○ちゃ~ん」 と呼ぶ女将。
「変らないねぇ~!」 と互いに心にもないお世辞を言い合って、無事、旧友は再会を果たしたのであります。
もちろん、キューピット役は、僕であります。
部屋に通されて、末娘がいきなり 「うわぁ~、お父さんのことが書いてある」 とイヤ~な顔をしました。
見れば、テーブルの上に置いてある館内案内書をめくっています。
そこには、こんなことが書かれていました。
<当館は 「ぐんまの源泉一軒宿」 に紹介されました。
「ぐんまの源泉一軒宿」 の著者、小暮淳さんも毎年のように訪れ、窓辺の時間をゆっくり楽しんでいます>
「お父さん、恥ずかしくないの?」
「別に、恥ずかしいものか! これがお父さんの仕事だもの」
「目立ちたがり、なんだから。ったく…」
ま、そんな親娘の会話が交わされたのですが、娘は、その後、さらに “目立ちたがり” の父の実態を知ることになるのでした。
廊下や食堂には、先日掲載された朝日新聞の記事が、掲示されています。
またラウンジには、僕が過去に書いた雑誌の記事がカラーコピーされてイーゼルの上に展示されています。
そして、ところどころに僕の本が置かれいます。
極めつけは、浴室前の廊下です。
“小暮淳さんのブログから” と題して、前回(今年の9月15日) 訪ねた日のブログの内容が、顔写真入りで丸々コピーされて掲示されていました。
それを目にした末娘は、 「出たがりねぇ」 とひと言・・・。
まっ、父がどんな仕事をしているのか、知る良い機会となったんじゃないでしょうかねぇ。
昨晩は、時の経つも忘れて、女将と家内と昔なつかし話に大輪の花を咲かせました。
思えば、家内とこんなに笑って、話し込んだのも、本当に久しぶりのことでした。
女将と家内を再会させる “Xデー” は、実は僕ら夫婦の “Xデー” でもあったわけですね。
女将さん、本当に本当に、ありがとうございました。
そして、チーフの小林さんはじめ、スタッフのみなさん、大変お世話になりました。
今度は、孫を連れて、遊びに行きますね!
Posted by 小暮 淳 at 19:28│Comments(6)
│温泉地・旅館
この記事へのコメント
奥さま孝行されたのですね!
時の経つのを忘れるほど語り合うなんて…いい話だ~。
思わず久しぶりにコメントしてしまいました!
時の経つのを忘れるほど語り合うなんて…いい話だ~。
思わず久しぶりにコメントしてしまいました!
Posted by ゆう at 2011年10月30日 09:11
つきよの館は、アットホームで、食事が美味しくて大好きな旅館になりました(笑)
従業員さんは、女将をはじめとして皆さん親切でお綺麗で。
お風呂に行くのに、厨房と食堂の間を通って行くので、全てが見えてしまうのも、隠し事が無いようで良い。
露天風呂が無いのも、今時の風潮に流されないのが良い。
不思議と、温泉に一緒に入っている人と長話になるのが良い。
食堂や浴室からの眺めが良い。
スモークチーズなど旅館独自のお土産があるのが良い。
暖かい食事が次々と出てくるのが良い。
予約しなくても、晩御飯だけ食べられるのは最高に良い(笑)
又、つきよの館にお邪魔します。
小暮師匠と「つきよの館」でばったり会うかもしれませんね。
それとも女将が休みの日に前橋に呼んで飲みますか(笑)
従業員さんは、女将をはじめとして皆さん親切でお綺麗で。
お風呂に行くのに、厨房と食堂の間を通って行くので、全てが見えてしまうのも、隠し事が無いようで良い。
露天風呂が無いのも、今時の風潮に流されないのが良い。
不思議と、温泉に一緒に入っている人と長話になるのが良い。
食堂や浴室からの眺めが良い。
スモークチーズなど旅館独自のお土産があるのが良い。
暖かい食事が次々と出てくるのが良い。
予約しなくても、晩御飯だけ食べられるのは最高に良い(笑)
又、つきよの館にお邪魔します。
小暮師匠と「つきよの館」でばったり会うかもしれませんね。
それとも女将が休みの日に前橋に呼んで飲みますか(笑)
Posted by ヒロ坊 at 2011年10月30日 17:39
ゆうさんへ
孝行だなんて、まだまだ足りませんて。
本当に、苦労をかけ通しの連れ合いですからね。
でも、「ああ、この人は、こんなに笑う人なんだ」 と改めて家内の素顔に気づかされました。
25年も一緒にいるのに…ね。
ヒロ坊さんへ
ごひいきにしていただき、ありがとうございます。
女将に代わって、お礼を申し上げます。
その女将も前橋在住ですから、充分に可能な話ですね。
前橋で「つきよの会」でも、発足しますか?
孝行だなんて、まだまだ足りませんて。
本当に、苦労をかけ通しの連れ合いですからね。
でも、「ああ、この人は、こんなに笑う人なんだ」 と改めて家内の素顔に気づかされました。
25年も一緒にいるのに…ね。
ヒロ坊さんへ
ごひいきにしていただき、ありがとうございます。
女将に代わって、お礼を申し上げます。
その女将も前橋在住ですから、充分に可能な話ですね。
前橋で「つきよの会」でも、発足しますか?
Posted by 小暮 at 2011年10月30日 18:27
小暮師匠
女将を囲んで「つきよの会」良いですねえ~
ぜひ、やろやろ~(笑)
女将を囲んで「つきよの会」良いですねえ~
ぜひ、やろやろ~(笑)
Posted by ヒロ坊 at 2011年10月30日 18:56
師匠
奥さんに「また君に恋してる」ですか?
娘さんも実は一目置いてると思いますよ、娘だから分かります。
奥さんに「また君に恋してる」ですか?
娘さんも実は一目置いてると思いますよ、娘だから分かります。
Posted by ぴー at 2011年10月31日 08:52
ぴーさんへ
そうですね、少し恋をしたかもしれませんね。
この想いが冷めないように、時々、彼女を連れて出かけようと思います。
そうですね、少し恋をしたかもしれませんね。
この想いが冷めないように、時々、彼女を連れて出かけようと思います。
Posted by 小暮 at 2011年10月31日 11:51