2011年11月24日
師匠が愛した温泉
『オイ、客よ、生まれてきたンだろ なら酔えよ、
そして文句をたれてりゃいい』
『酔うことよ 酒と煙草を止(や)める奴ぁ
最も意志の弱い奴である』
『人生なんて 知るもんか 勝手に生きりゃ それでいい』
最初に鎌田温泉の 「梅田屋旅館」 を訪ねたとき、その襖(ふすま)いっぱいに書かれた躍るヤンチャな文字と、軽妙かつ辛らつな言葉の数々に、圧倒されました。
その文字の主は、今月21 日に亡くなられた天才落語家の立川談志師匠であります。
4代目女将の星野由紀枝さんによれば、今は亡きご主人の賢二さんが、仲間らと高崎で寄席を企画した際に、出演した師匠をお連れしたときの “落書き” なのだといいます。
いやいや、これは落書きなんぞじゃありませんぞ!
今となれば、貴重な “書” いや、立派な “アート” であります。
お宝になることは、間違いありませんって。
「これは、師匠が酔っ払って書いたものなんです。次にお見えになったとき、『この間は酔っ払っていたから』 と、今度は隣の部屋に素面(しらふ) で書かれていきました(笑)」
と、見せてくれた別の部屋にも、なななんと!4枚の襖すべてにブチ抜きで書かれていました。
『何ィ俺は素面だァ この野郎 人生を 何だと思ってやんでぇ
人生なんて全て 成り行きだァな……』
いゃ~、酒を飲んでいようが、素面だろうが、師匠の “毒舌” は健在だ!
落書き(?) は、全部で襖12枚。
どれも “毒” と “笑” があって、すべて面白いのだが、僕がお気に入りなのは、右の部屋の一番左の文言です。
『俺の人生 梅田屋程度で 充分なのだ』
いいですね~っ!
一見、侮蔑しているようでいて、実は師匠の温かい愛情が伝わってくる言葉です。
最高の賛辞では、ないでしょうか。
いつか僕も、こんな言葉を、常宿にしている温泉旅館で、毒づいてみたいものです。
談志師匠、ありがとうございます。
師匠は、落語だけでなく、カッコイイ大人の男の生き方を見せてくださいましたよね。
大したファンではありませんでしたが、いつもどこかで尊敬申し上げておりました。
いつぞや、梅田屋旅館で奥様とお会いしたことがありましたが、残念ながら師匠とは一度もお会いできませんでした。
でも、師匠が群馬の温泉を愛してくださったこと、常宿にしていた旅館に “書” を残されたことを、群馬県民として誇りに思っています。
謹んでご冥福をお祈りいたします。
Posted by 小暮 淳 at 17:50│Comments(2)
│温泉雑話
この記事へのコメント
常宿に書をのこして、いかれるあたり素敵です
いい人生と家族をおもちなお人柄がにじみます
人生なんて成り行きだーーーー
いい人生と家族をおもちなお人柄がにじみます
人生なんて成り行きだーーーー
Posted by ぴー at 2011年11月25日 14:17
ぴーさんへ
ぜひ一度、梅田屋旅館に泊まって、師匠の生“落書き” をご覧ください。
圧巻!ですぞっ!
ぜひ一度、梅田屋旅館に泊まって、師匠の生“落書き” をご覧ください。
圧巻!ですぞっ!
Posted by 小暮 淳
at 2011年11月25日 18:34
