2012年02月12日
温泉分析書の見方
僕は温泉宿を取材する場合、着いたら、まず最初に 「温泉分析書」 のコピーを提出してもらいます。
すべての取材は、ここから始まります。
最近は、浴室の脱衣所に掲示されているので、みなさんも見たことがあると思います。
ただ、小さな字で書かれているため、とても読みづらく、宿によっては読めない高い位置に掲示されていることもあります。
なので、僕は取材資料として、必ずコピーをいただきます。
では、温泉分析書の何を見るのか?
その前に、温泉分析書とは何か? また何が書かれているのかについてお話ししましょう。
温泉分析書は、環境省に登録された分析機関によって作成された “温泉のカルテ” です。
温泉の温度や湧出量、成分、分量などが、細かく書かれています。
かなり専門的な分野なので、一般の人には何のことか分かりませんし、どうでも良かったりする事柄も多いのです。
が!
この中には、これから入ろうとする温泉の状態を知る手がかりが、たくさん書かれています。
いわば、温泉の “取り扱い説明書” なのであります。
僕は分析書を手にすると、まず1番最初の項目 「1.依頼者」 を見ます。
依頼者(申請者) とは、源泉の所有者のことです。
自家源泉を所有していれば、宿の住所と主人の名前があります。
また地域で共同所有している場合は、代表者の住所と名前が書かれています。
次に 「2.温泉地名・源泉名および湧出地点」 を見ます。
この欄には、「○○温泉」 などといった温泉地名と、源泉の所有者が付けた固有の源泉名(「○○の湯」「共有○号泉」など) が記載されています。
で、この2つの項目から、大事なことが読み取れます。
まず、依頼者が宿の主人であれば、“自家源泉” であること。
次に、湧出地点の住所と宿の住所を見れば、源泉が浴槽へ届くまでの “距離” を知ることができます。
同一、もしくは番地違い程度であれば、新鮮な源泉を使用している可能性が高くなります。
いかがですか?
これだけでも、お湯の状態が見えてきましたよね。
さらに、「3.採水地点における調査および試験成績」 を見てみましょう。
この欄には、調査した年月日やその時の気温から、泉温(源泉の温度)、湧出量、それに 「自然湧出」か「掘削自噴」か「動力揚湯」 かの湧出形態までが記載されています。
ここで一番チェックしたいのは、泉温と湧出量です。
泉温が低ければ加温の可能性がありますし、湧出量が少なければ加水をしている可能性があるからです。
泉温は、入浴の適温とされる42℃を基準に考えれば、判断がつくと思います。
問題は、湧出量です。
いったい、毎分何リットルあれば、新鮮な温泉をかけ流しにできるのか?
自家源泉ならば、すべて利用できますから、数十リットルの湧出量で充分かと思います(浴槽のサイズにもよりますが)。
ただし、共同源泉から引き湯している場合は、判断しかねます。
どのくらいの量を分湯しているのか、これは宿の主人に直接たずねるしかありませんね。
ちなみに、一般家庭の水道の蛇口から出る水の量が毎分約12リットルですから、これを目安にしてください。
さて、たかが3項目を見ただけでも、たくさんの温泉情報が詰まっていることが分かっていただいたと思います。
しかし、これは、あくまでも “湧出地での源泉のデータ” であることをお忘れなく!
これから入る “浴槽の中の温泉” ではありません。
浴槽の中の温泉の状態を知る手がかりについては、また次回にお話しします。
Posted by 小暮 淳 at 18:28│Comments(2)
│温泉雑話
この記事へのコメント
温泉大好きの私。温泉のことをとても分かりやすく説明いただきありかとうございます。お話の続きをたのしみにしております。
Posted by しをりちゃん at 2012年02月13日 15:36
しをりちゃんへ
いつもコメントをありがとうございます。
承知しました。
いつもコメントをありがとうございます。
承知しました。
Posted by 小暮 at 2012年02月13日 20:17