2013年07月31日
感謝、感激、雨、あられ。
無職で無趣味の老人には、困ったものです。
いくつになっても畑仕事をしたり、ゲートボールなどをして仲間と遊んでいる元気な年寄りを見ると、うらやましく思います。
だって、うちのオヤジときたら、飯食っているか、寝ているか、ボーっと宙を眺めている毎日なのですから・・・
本当に、困ったものです。
特に、オフクロが入院してしまってからは、話し相手までもがいなくなってしまいました。
「おい、オレは今日、何をするんだい?」
これが、オヤジの口グセです。
「なんでも好きなことをしなよ!」
と言えば、
「別にないんだ」
と、また宙を見つめてしまいます。
オヤジは今年、9月で89歳になります。
若い頃は、バードウォッチングが趣味で、県内外の山々を歩いていた健脚の持ち主です。
でも、80歳の時に、僕とアニキで相談して、自動車の運転免許を取り上げてしまいました。
(だって、一時停止は止まらないし、自転車やバイクを引っかけてしまう事故が多くなったからです)
アウトドアだけが生きがいだったオヤジにとって、現在の日常は、退屈きわまりないはずです。
目が悪いので、新聞や本は読めません。
耳が遠いので、テレビやラジオも聴きません。
唯一の楽しみは、散歩ぐらいなもの。
でも、連日、この猛暑ですからね。
僕もアニキも、日中の散歩は禁止しています。
だから、ますます、オヤジはやることがなくなって、
「オレは今日、何をすればいいんだろうなぁ~?」
と、朝から悲しい声を上げるのであります。
だから今日、見るに見かねた僕は、オヤジを連れ出すことにしました。
向かったのは、高崎市にある 「群馬の森」。
ここは、明治100年記念事業の一つとして、昭和49(1974)年に旧東京第二陸軍造兵廠(ぞうへいしょう)岩鼻製造所跡地に整備された県立公園です。
造兵廠とは、兵器製造工場のこと。
(ここには、「我が国 ダイナマイト発祥の地」 の碑が立っています)
東西約1㎞、南北約250m、面積約26.2ha。
シラカシやクヌギ、ムクノキなどの樹木が生い茂り、野鳥の宝庫でもあり、四季を通じて県民の憩いの場として親しまれている公園です。
ここならば日陰も多く、鳥や昆虫、草花も咲いていて、さながら山の中をハイキングしている気分にひたれます。
「どうだい、じいさん! ここは涼しいだろう?」
と訊くと、
「ああ、いいね、いいね。昔、さんざんバードウォッチングで来たところだ。昔も今も、ここは変わらず、自然がいっぱいだ。気持ちいいね」
と、杖を突きながら木立の中を歩くオヤジは、上機嫌であります。
たっぷり1時間、親子で森林浴を楽しんで来ました。
帰りの車の中。
「ああ、オレには子どもいて、良かった」
と、オヤジがポツリ。
「そうだよ、世の中には子どものいない年寄りだって、いるんだからな。いたって、面倒看てくれるとは、限らないんだよ。だから、じいちゃんは、幸せなんだぞ!」
と言ったら、
「そうだ、そうだ。ありがとうよ。感謝、感激、雨、あられ」
と言ったので、僕は吹き出してしまいました。
「なんだよ、それ?」
と、返せば、
「感謝、感激、雨、あられだ!」
と、もう一度言って、うれしそうに笑うのでした。
確かに、子どもの頃から、使う言葉ではあります。
でも、なんで、“雨” と “あられ” なんでしょうかね?
ま、そんなことは、どうでもイイことなのです。
ただ僕は、これでまた1つ、過去の親不孝を消せたようで、ホッとしたのであります。
(でも、まだまだ、消したい親不孝が、たくさんあるんですよ)
Posted by 小暮 淳 at 22:06│Comments(0)
│つれづれ