2014年09月13日
パブロフの老人
ついに、オヤジが壊れてしまいました。
ま、以前から耳は遠いし、目は良く見えないし、頭は痴呆でボケまくっているし、かなり壊れかかってはいたんですけどね。
でも、足腰は丈夫なもので、ヒョイヒョイと一人で散歩に出かけていたんですよ。
家族としては、ちょっぴり心配はしていたのですが、今までに一度も迷子になったことはないし、ちゃんと帰ってきていましたから。
ところが!
ついに、保護されてしまいました。
たぶん、いつものように駅まで歩いて行ったんでしょうね。
駅前でオロオロしているところを、見知らぬ人に声をかけられたようです。
「おじいさん、どこへ行くの?」
「わからん」
「どこから来たの?」
「わからん」
きっと、そんなやり取りがあったのだと思います。
いつもなら住所と電話番号が書かれた名札付きのステッキを持って出かけるのですが、その日に限って、傘を杖代わりに持って行ったようです。
でもね、迷子の幼稚園児よろしく、名前と電話番号だけは言えたようで、見知らぬ人が連絡をくれました。
「と、いうことだからさ、2度とオヤジを一人で散歩にやっちゃダメだぞ!」
と、ふだん両親の面倒を看ているアニキは、怒り心頭であります。
「出かけるときは、門にカギをかけるのを忘れるなよ」
そう、言い残して、彼は家族の待つ東京へと帰って行きました。
実家の門には、通常の内カギのほかに、自転車のタイヤを固定するのに使用するワイヤー式のカギが、ガッチリと施錠されていました。
「おお、ジュンか~! 助けてくれ、ここから出してくれよ」
と、半ベソをかいたオヤジが、門の中から助けを呼んでいます。
「ちょうど、いい時に来てくれたよ。お父さんがかわいそうだからさ、散歩に連れてってやってくれないかね」
と、オフクロも僕に懇願します。
「ああ、今、連れてってやるよ。じいさん、散歩行くか?」
と声をかければ、
「行くよ~、行くよ~(ワンワンワン)」
なんて、まるで我が家の愛犬マロ君と同じであります。
これじゃ、“パブロフの犬” ならぬ “パブロフの老人” です。
と、いうことで僕は毎日、午前中は老人の散歩、夕方は愛犬の散歩に同行しているのであります。
どっちが可愛いかって?
そりゃあ、訊くだけヤボというものです。
Posted by 小暮 淳 at 19:55│Comments(0)
│つれづれ