2014年10月24日
片品温泉 「さつき荘」
「うちの自慢は、お湯だけですよ」
開口一番、3代目女将の鏑木恵さんは、そう言うのでした。
ああ、僕は、もうそれだけでシビレテしまうのです。
だって、“湯” あっての温泉宿ですものね。
湯を自慢できるって、何より素晴らしいことです。
(湯に自信のない宿ほど、設備や料理、サービスを自慢したがるものです)
宿は、片品温泉街のちょうど真ん中あたり。
国道から尾瀬岩鞍スキー場 (現在の正しい名称は、「ホワイトワールド尾瀬岩鞍」 です) へ向かう道の入口にあります。
急坂をひと登りすると、赤い屋根にピンク色の外壁をしたロッジ風の建物が現れます。
宿の創業は、スキー場がオープンした昭和49(1974)年。
“ゲレンデに一番近い温泉宿” のキャッチコピーで、オープンしました。
女将さんに、いろいろ聞きたいこともあるのですが、そんだけ自慢されれば、もう、居ても立ってもいられませんって。
まずは、その “自慢の湯” とやらを、ご相伴に預かることにしました。
浴室は、内風呂が男女各1つずつあるだけ。
(湯が自慢の宿は、たいがい露天風呂はありません)
浴槽は、大きからず、小さからず。
壁も床も浴槽も、すべてタイル張りで、清潔感にあふれています。
サイズは、タテ2メートル×ヨコ4メートルくらいでしょうか。
湯を給湯する 「湯口」 は、向かって右奥にあります。
源泉の温度が約52度もありますから、この時季はまだ、だいぶ湯量を絞り込んでいます。
それでも、手前の湯縁からは、サラサラとせせらぎのような澄んだ湯が、かけ流されていました。
サイズ、よし!
湯量、よし!
理想的な浴槽の造りをしています。
案の定、左手前の湯はぬるく、右奥へ進むに連れて湯の温度は熱くなっていました。
泉質のアルカリ性単純温泉は、ごまかしのきかない “湯” であります。
加水すれば、特有の “ぬめり” が薄まってしまうからです。
さらに、こちらの温泉分析表をみれば、アルカリ度を示すpHは9.2もある強アルカリ性。
しかも、メタケイ酸の含有量が111mgもあります。
ちなみにメタケイ酸は、保湿力に優れ、美肌効果が高く、化粧品などに配合されている成分です。
その効果は、100mg以上で発揮されるといわれています。
う~~~ん、この全身にまとわり付くような浴感!
そして、全身を粘膜のように包み込む圧倒的な存在感!
女将さんが、「うちの自慢は、お湯だけ」 と言い切るだけのことはあります。
でも、そう言い切る女将さんこそが、宿一番の自慢だと思いますよ。
Posted by 小暮 淳 at 20:24│Comments(0)
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