2015年05月17日
ピンピン コロリ
「ばあちゃんは、どうしたかなぁ?」
「どうしたって、どういう意味よ?」
「……いつ、病院から帰ってくるのかなぁ……」
もう!勘弁してしてくださいよ!
たった今まで、一緒に夕飯を食べていたじゃないか!
「おやすみ」 まで言って、2階の自分の部屋まで来たところだろ!
オヤジは満90歳。
ますますボケのテンションは、上がりまくっています。
僕は今週も、実家に泊まり込んで、両親の面倒を看ています。
「そうだね、明日かな」
「明日、退院するのか?」
「ああ、明日の朝、起きたらリビングに行ってごらんよ。きっと、ばあちゃんがいるよ」
「そうか、ばあちゃんが帰ってくるのか……」
そう言って、昨晩、オヤジは床に就きました。
1階に下りて行くと、足の不自由なオフクロが、手押し車を頼りながらベッドにもどるところでした。
「おとうさんは?」
「今、寝たよ」
「そう、ご苦労さまでした。私も寝るから、お前も、もう休みな」
て、言われても、まだ午後の7時ですから。
しかも、2人の食事の準備と洗い物に追われて、僕はまだ食べていません。
「ああ、そうするよ。おやすみ」
「ありがとね。明日も頼みます。おやすみなさい」
ふーーーっと、長いため息を1つ。
と同時に、僕は冷蔵庫から缶ビールを取り出して、思いっ切りプルタブを引きます。
いったい、いつまで続くのでしょうか?
永遠に続くわけはありませんが、長いような気もするし、短いような気もします。
一夜明けて。
オヤジはすでに、昨晩の僕との会話も、オフクロが入院していたことさえも忘れています。
いつもと変わらぬ、日曜日の朝です。
朝食の後、僕はオヤジの手を引いて、日課の散歩へでかけます。
一年前までは、平気で1時間ぐらい歩けたんですけどね。
今は、歩き出すとすぐに 「疲れた」 と音を上げるので、20分ぐらいが限度です。
近くの鎮守様なら、オヤジの足でも10分とかかりません。
1日に何回も2人で歩いて行き、お賽銭を上げます。
二礼、ニ拍手、一礼
(ペコペコ、パンパン、ペコリ)
そのたびに僕は、ニ拍手一礼の 「パンパン、ペコリ」 のところで、こう心の中でつぶやいています。
「ピンピン、コロリ」
どうか神様、よろしくお願いいたします。
Posted by 小暮 淳 at 14:45│Comments(0)
│つれづれ