2015年12月09日
高崎観音山温泉 「錦山荘」④
♪ 秋の日脚は観音山に 落ちて夕闇立田の姫も
織るが紅葉の錦山荘は 浮世離れた別天地 ♪
これは昭和初期にブルースの女王として知られる歌手の淡谷のり子さんが歌った 『高崎小唄』(コロンビアレコード) の4番の歌詞です。
錦山荘の創業が昭和4年(1929) ですから、すぐに高崎名所として歌の歌詞に詠み込まれたことになります。
さらに歴史を紐解くと、錦山荘の前身は、大正4年(1915) からあった「清水鉱泉」 という鉱泉宿でした。
と、いうことは、今年は開湯100周年ということになります。
なんという偶然! ちょうど取材しに伺いたいと思っていたところでした。
100年という歴史の節目に、はずかしくない記事を書くためには、やっぱり、じっくり泊まって、湯に入り、話を聞かなくてはなりません。
ここでも “現場百遍” という言葉が、僕のライター魂を突き動かします。
高崎市は、前橋市の隣街。
我が家から車で、わずか40分程度の距離です。
それでも手を抜くわけにはいきません。
だって温泉宿には、昼の顔もあれば、夜の顔も朝の顔もあります。
まして、この時季、“織るが紅葉の錦山荘” ですぞ!
かつては、高崎の奥座敷とまで呼ばれた “浮世離れた別天地” を余すところなく満喫してきました。
高崎市街地から観音山へ向かう羽衣街道を上ると、やがて左手に錦山荘入口の門が見えてきます。
左にウィンカーを切った瞬間、「あっ」 と息をのみました。
そう、“もみじのトンネル” が出迎えてくれたのです。
まさに、その名の通り、「錦織り成す観音山」 の宿であります。
錦山荘の感動は、ロケーションだけではありません。
歴史を刻んだ建物こそ、じっくり泊まって味わう価値があります。
和風建築の高級料亭旅館として創業した当時の名残が、そこかしこに感じられるのです。
特筆すべきは、本館2階に現存する4室の客間。
「桐」 「竹」 「桜」 「楓」 の間は、それぞれ客室名どおりの銘木を使って、日本建築の粋を極めた内装が施されています。
これを見るだけでも、一泊の価値あり!
当時、新渡戸稲造や犬養毅などの政治家や実業家たちが 「高崎の奥座敷」 に足を運んだのも、むべなるかな。納得です。
ま、なんといっても僕がイチ押しなのは、丸太を組んだ湯小屋風の展望風呂です。
その絶景は、県内広しといえども、5本の指に入る眺望だと思います。
いや~、いつまで眺めていても飽きることがありません。
烏川越しに高崎市庁舎と市街地、遠く前橋市まで望め、ランドマークの県庁までくっきりと見えます。
そして借景には、まるで屏風絵のように赤城山が裾野を広げています。
夜になれば、一変して幻想的な光景が・・・
夜景と紅葉のライトアップです!
これだもの、日帰り取材では、とてもじゃないけど、読者に感動は伝えられませんって。
つくづく群馬の温泉って、素晴らしいと思います。
こんな身近なところに、こんなにも美しく歴史のある温泉があるのですから。
「今でも時々、小暮さんの本を持って泊まりに来られるお客様がいますよ。『本に書かれているとおりだ』 と感動されて帰られます」
と、支配人の川端大さん。
うれしいですね。
ライター冥利に尽きるお言葉です。
ありがとうございます。
Posted by 小暮 淳 at 15:50│Comments(0)
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