2016年03月11日
あの日から5年 大胡温泉
<グラリと、とてつもない大きな揺れが東日本を襲った。「長年生きてきたけど、こんな揺れは初めてだよ」 と叫ぶ、女将の中上ハツヱさんをはじめ、息子で2代目主人の富男さんらとともに、屋外へ駆け出した記憶が昨日のようにありありと目に浮かぶ。>
( 『新ぐんまの源泉一軒宿』 より)
5年前の今日、みなさんは、どこで、誰と、何をしていましたか?
僕は毎年、あの日と同じ場所で、同じ人たちと、黙とうを捧げています。
「ご無沙汰して、すみません」
半年ぶりに現れた僕を、女将さんは、あの日と変わらぬ着物姿で出迎えてくれました。
「小暮さん、最近来ないねえって、いつも話しているのよ。電話してみようか?って言うと、『忙しい人なんだから、やめろよ』 って、そのつど息子に怒られてるのよ」
そう言って、満面の笑みを浮かべるのでした。
申しわけありません!
決して忙しぶっているわけじゃないんですよ。
そして、女将さんをはじめ、スタッフのみなさんのことを忘れていたわけでもありませんって。
いつもいつも、気にはかけていたのです。
だから絶対に、この日だけは会いに行こうと決めていたのです。
もう5年も経ったのですね。
まだ5年という人もいるでしょうけど、僕には5年も経ったことのほうが信じられません。
あの日、あの時、ふらりと湯を浴みに立ち寄った温泉で、あの未曾有の激震を体験しました。
たまたま僕以外に客はおらず、女将さんと息子さんと、従業員の方と全員で旅館の外へ飛び出し、駐車場の松の木の根元で、揺れがおさまるまで身をかがめていました。
「まだ黙とうまで時間がありますから、湯をいただいてきます」
とタオルを手に、離れの浴棟へ。
今日も、あの日と同じ、ガツーンと手応えのある熱めの湯が待っていました。
これまた、あの日と同じ、貸切状態。
窓を開け放ち、湯の中から池のまわりを囲む桜並木を眺めていました。
「今年は桜が咲くのが早いかもしれないな」
あの日、同じことを思った記憶がよみがえってきます。
湯から上がり、脱衣場で服を着ていると、男性客が入ってきました。
「小暮さんが来ていると聞いたもので……」
「あ、は、そうですか」
と面食らう僕。
最初はビックリしましたが、話を聞けば読者様でした。
なんでも僕の講演を聞きに来てくれたこともあるそうで、著書も持っていて、湯めぐりを楽しんでいるのだといいます。
気が付けば、服を着るのも忘れ、温泉談義を始めていました。
「黙とう!」
午後2時46分。
大広間に居合わせた浴客らとともに、テレビに向かって黙祷を捧げました。
あの日から5年。
被災地の人たちにとっては、長い長い5年間だったことでしょうね。
もう5年、まだ5年……。
日本全国で、思い思いの5年間を振り返っていることでしょう。
日本人として、あの日あの時を忘れないために、僕はここに来るのです。
Posted by 小暮 淳 at 21:35│Comments(2)
│温泉地・旅館
この記事へのコメント
このところ在宅介護から手が離れ、通いで面倒みてます。
夫には言えませんが、体調がよくなりました。
昨日は確定申告にやっとこ行き、車の中で震災の時刻を過ごしました。
夫には言えませんが、体調がよくなりました。
昨日は確定申告にやっとこ行き、車の中で震災の時刻を過ごしました。
Posted by ぴー at 2016年03月12日 17:51
ぴーさんへ
介護は自分で思っているより、だいぶ体には負担がかかっているようですね。
僕は13㎏体重が落ちたまま、一向に太りませんもの。
それでも両親そろってのショートステイが増えたので、精神的には楽になりました。
介護は自分で思っているより、だいぶ体には負担がかかっているようですね。
僕は13㎏体重が落ちたまま、一向に太りませんもの。
それでも両親そろってのショートステイが増えたので、精神的には楽になりました。
Posted by 小暮 淳
at 2016年03月13日 20:53
