2016年03月16日
倉渕温泉 「長寿の湯」④
“秘湯は人なり”
この言葉は今から10年前、ある人に出会ってから使い出した言葉です。
その人とは、倉渕温泉(群馬県高崎市倉渕町) の一軒宿 「長寿の湯」 の女将、川崎節子さんです。
当時の雑誌に、僕は女将さんとの出会いを次のように書いています。
<「女将さんに、つかまるなよだって! 私はさ、話好きだからね」 そう言って、声高に笑ってみせた。いい宿の条件は、人それぞれだと思う。温泉があり、情緒があれば、まずは文句はない。でも、やっぱり人情が旅のスパイスだ。宿に着くなり、女将の人柄に魅了されてしまった。>
「女将さん、ご無沙汰しています。病気をされたと聞きましたが、もう大丈夫なんですか?」
僕は昨日、2年半ぶりに宿を訪ねました。
女将さんは昨年の夏、体調を崩して入院していました。
「女将さんの笑顔を見て、ホッとしました。元気で良かった!」
と言えば、
「うん、私はね。でも犬が死んじゃったの。それとね、小暮さんと写っていた、あのおじいさんも去年、亡くなったのよ」
とショックを隠せない様子。
“あのおじいさん” とは、2011年2月に朝日新聞に掲載された 『湯守の女房』 という僕の連載記事のことです。
この記事の取材時、湯舟で一緒になった常連客と写真を撮ったのです。
今でも新聞のコピーが、宿のロビーに掲示されています。
<「ここは湯もいいが、やっぱり女将が一番いいね」>
記事には、常連客の言葉が載っています。
「とりあえず、ひと風呂浴びてきます。話は食事の時でいいですか?」
「ああ、それでいいよ。今日は他に泊まり客はいないからさ」
と言っていたのですが、いざ夕食をいただきに食堂へ行ってみると、他に男性客が1人いました。
「どれが美味しいの?」
40品目以上ある壁のメニューを見ています。
「全部だよ。私が作るんだからね」
そう言って女将さんは、いつものように声高に笑うのでした。
予約ではない、飛び込みの宿泊客のようです。
こんな急な客でも女将さんは、嫌な顔せず、満面の笑みで気さくに迎えてくれるんですね。
「では、取材は食事の後にしましょう」
ということで、まずは湯上がりの生ビールをジョッキで飲み干したのであります。
女将さんの元気に、カンパ~イ!
Posted by 小暮 淳 at 17:25│Comments(2)
│温泉地・旅館
この記事へのコメント
群馬県の研修で、竹村節子氏の講演を聴いてきました。
物凄くいろんな意味で、スゴイ人だと感じました。
ご病気されたとかで、話し方がゆっくりになったとおっしゃいますが、だとすると、若いころは豪傑だったかな?と。
物凄くいろんな意味で、スゴイ人だと感じました。
ご病気されたとかで、話し方がゆっくりになったとおっしゃいますが、だとすると、若いころは豪傑だったかな?と。
Posted by ぴー at 2016年03月17日 12:00
ぴーさんへ
竹村さんは最近、新刊を出版されましたよね(まだ読んでいませんが)。
ぴーさんは、意欲的に勉強していますね。
頭が下がります。
竹村さんは最近、新刊を出版されましたよね(まだ読んでいませんが)。
ぴーさんは、意欲的に勉強していますね。
頭が下がります。
Posted by 小暮 淳
at 2016年03月18日 00:31
