2016年05月17日
バカになりたい
「群馬の男の人は、すぐ 『バカ』 って言うよね」
昔、東京で暮らしていた頃に、そう他県の女性から言われたことがありました。
「バカ、気をつけろよ!」
「バカ、危ないじゃいないか!」
「バカ、雨が降ってきたぜ!」
ってね。
確かに言われてみれば、何かに付けて、驚いた時や相手を注意する時などに、知らず知らずのうちに 「バカ」 という言葉を発しているのです。
でも、この場合の 「バカ」 は、決して、相手を見下した <おろか> とか <頭が悪い> という意味じゃありません。
どちらかと言えば、「ああ」 とか 「おお」 とかと同じ感嘆語に近い使い方なのであります。
この 「バカ」 という言葉、実に広い意味を持っています。
広辞苑によれば、【馬鹿・莫迦】 とは、
① おろかなこと。社会的常識に欠けていること。また、その人。
② 取るに足りないつまらないこと。無益なこと。また、とんでもないこと。
例=「バカを言うな」 「バカなことをしたものだ」
③ 役に立たないこと。 例=「ネジがバカになる」
ま、ここまでは通常の 「バカ」 の解釈であります。
そして、どれも、あまり良い意味では使われません。
でも 「バカ」 には、まったく真逆の称賛する意味で使われることがあります。
バカ正直、バカ丁寧、バカ陽気、バカ真面目など、「並はずれた」 「度を超した」 ときに接頭語的に使われる “バカ” です。
これは、ある意味、ほめ言葉でもあります。
「なんでもいいから、一つのこと一心に取り組みなさい。他人からバカと呼ばれるようになりなさい」
子どもの頃、そう親や教師に言われた記憶があります。
野球バカやサッカーバカに、あこがれた友人はたくさんいました。
さしずめ僕の10代は、フォークソング狂いの音楽バカでしたけど…。
でも、人は誰も、そう呼んではくれませんでした。
いつしか僕は、大人になる過程で 「バカ」 は、永遠のあこがれとなっていました。
「ああ、バカと呼ばれたい」 「バカになりたい」ってね。
月日は流れ流れて、2012年の秋。
生まれて初めて、僕のことを 「バカ」 と呼んでくれた人がいました。
その人は、ジャーナリストの木部克彦氏であります。
著書 『続・群馬の逆襲』(言視舎) の中で、彼は僕のことを、こう記しています。
<ここまで 「人生のすべて」 を温泉につけこんでしまう人は、なかなかいません。まさに 「温泉バカ一代」。>
うーーーーん! バカバカバカ!
苦節ウン十年、夢に見たバカと呼ばれた瞬間でした。
しかも言葉ではなく、今でも活字として残っている 「バカ」 であります。
木部さん、ありがとうございました。
この言葉に恥じることのないよう、さらに “バカ道” を極めたいと思います。
Posted by 小暮 淳 at 21:17│Comments(2)
│つれづれ
この記事へのコメント
うちの主人は、結婚の理由が
ぴーが、ばかだから と言われます。
ちび・でぶ・ぶす とも言われます。
ぴーが、ばかだから と言われます。
ちび・でぶ・ぶす とも言われます。
Posted by ぴー at 2016年05月18日 11:37
ぴーさんへ
「バカ」 とは最高のほめ言葉です。
ご主人には、ぴーさんが並はずれた女性に映ったのですね。
ステキな結婚理由です。
「バカ」 とは最高のほめ言葉です。
ご主人には、ぴーさんが並はずれた女性に映ったのですね。
ステキな結婚理由です。
Posted by 小暮 淳
at 2016年05月19日 11:44
