2016年11月09日
涙のマーチン
別れを告げた、あの日あの時……
こんな日が訪れるとは……
今日僕は、テレビカメラの前でギターを抱えて、歌いました。
僕は現在、毎週火曜日に放送されている群馬テレビ 『ぐんまトリビア図鑑』 のアドバイザーをしています。
年に数回開かれる企画会議に出席したり、時々は 「トリビア博士」 という役で番組にも出演しています。
でも、あくまでも制作の “裏方” であります。
まさか、僕が主役になるテレビ番組が作られるとは、夢にも思っていませんでした。
『ぐんまトリビア図鑑』 第67回のタイトルは、なななんと! 聞いてビックリ! 見てビックリ!
<温泉ライター小暮淳の素顔>
なぜ、温泉ライターになったのか? なぜ、温泉に興味を持ったのか? 温泉ライターになる前は何をしていたのか?
50代の現在から40代、30代、20代へと、まるでタイムマシーンに乗ったように、番組は僕の “ヒストリー” を追い続けます。
今日、某温泉旅館を舞台に、ロケが敢行されました。
僕を “裸にしよう” とイジワルな質問を次々に投げかけてくるのは、群馬テレビの若きホープ・小松正英アナウンサーです。
一緒に温泉に入り、湯の中で詰問攻めに遭いました。
そして時代は、ついに僕の人生の “恥部” へ……
「編集者になったのは、いくつの時ですか?」
「子どもができた30歳からです」
「では、その前は?」
「……ミュージシャンを目指していました」
「ミュ、ミュ、ミュージシャーン!! (驚く小松)」
そして番組のエンディングで、僕はついに “幻のギター” を取り出して歌い出します。
幻のギター
そう、我が青春のマーチンHD-28
※(なんで幻なのかは、当ブログの2013年12月5日 「我が青春のマーチン」 を参照)
僕は20年ほど前から、バンド活動をしています。
でも、これは、あくまでも僕にとっては娯楽の域を出ない趣味です。
だから使用しているギターも、40歳を過ぎてから買った安物のギターです。
僕にとってマーチンは特別な存在ですから、30歳の封印を境に手に取ることはありませんでした。
では、どうして今回は封印を解いたのか?
正直なところ理由は分かりません。
ただ、番組の台本を読んだ時、僕の心の扉を開けさせる琴線に触れる何かがあったことは確かです。
バンドではなく、ソロの弾き語りをする……
それには、遠い日に決別した相棒と仲直りをしなくてはならない……
きっと、そんな思いになったのだと……
台本を受け取った日、僕は迷うことなくマーチンのギターケースを開けました。
陰干しをし、ボディーを磨き、弦を張り替えました。
その行動は、何十年ぶりとは思えないほど、自然なものでした。
テレビカメラの前で歌い終わった時、聴いていたディレクターやスタッフ、旅館の女将さんたちから拍手が沸き起こりました。
ただただ、感動です。
まさか、また、こんな日が来るなんて……
「では、この後、ギターだけ撮らせてください」
業界用語で “インサート撮り” というやつです。
ギターのネック部分からボディへと、まるで女体をなめ回すように、カメラのレンズが動きます。
「良かったな、お前」
そう心の中でつぶやいた時、熱いものが込み上げてきて、不覚にも目尻に涙がにじんできました。
「あの時、お前を手離さなくて良かったよ」
そう詫びるように、何度も何度もギターに向かってつぶやいていました。
この収録の放送は、12月6日(火) 21:00~です。
Posted by 小暮 淳 at 22:40│Comments(0)
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